約8,500人分の1日分の水分摂取量を「サクラ」1台で賄えることを証明
より人の命にかかわる災害対策に踏み込んだ利活用が可能に
【THE 視点】日産自動車/日立ビルシステム/日産自動車/日立産機システムの3社は、マンション・ビル向けの自動給水ユニットをEVの電源で稼働させる実証実験を行なった。
「サクラ」をフル充電させた状態から、給電限界の残電力10%となるまで連続運転。繋がれた日立産機の自動給水ユニット「ダイレクト・ウォーターエース」が、2万1,171Lの水を給水できた。8,468人分の1日の水分摂取量またはトイレ4,234回使用分の水量に相当するという。
日産と日立ビルシステムは、EVを建物の電源として活用するV2Xの普及を目指した取り組みを推進している。日立ビルシステムは、EVを非常時電源としてEVを活用できる点に注目し、EVからエレベーターに給電・稼働させるシステムを開発し、2023年7月に発売を開始した。
今回の実証実験は、より人の命に関わる水の問題に踏み込んだものだ。「サクラ」の電力で8,468人の1日分の水分摂取量を供給とは驚いた。バッテリー容量40kWhの「リーフ」の基準車であれば、その倍の量が供給可能と計算できる。
気になるのは排水で、今回の発表ではその情報については明記はない。しかし、もし排水ポンプを同じ「サクラ」の電源で別に駆動したとしても、数千人分の飲料水の供給能力は確保されるはずだ。
先日のデイリーでも触れたが、日立ビルシステムは、三菱自動車と共同で「アウトランダーPHEV」の使用済みバッテリーを活用したトレーラー型の移動可能バッテリー「バッテリーキューブ」を開発し、事業化を目指している[詳細はこちら<click>]。V2Xを介してエレベーターの稼働に成功したと発表しており、今回の給水システムの稼働もできると思われる。
今回の実験も含めて、エレベーターと水の供給がEVの電力で可能ということが証明された。災害時のEVの利活用の模索は今後も続くだろう。強力なバックアップ電源になることは間違いない。
(福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)
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デイリーEVヘッドライン[2023.10.18]