コラム 記事一覧

コラム コラム
TEXT:斎藤 聡
EVにはこれまでのタイヤじゃ厳しい事情がある! 最近増えている「EV専用タイヤ」は何が違うのか?

EVのタイヤには多くの性能が求められる 欧州から始まった急激なEV化の波は、世界中の自動車メーカーを混乱に巻き込み、一部にほころびを見せながらも、徐々に浸透してきています。私見ですが、この先すべてのクルマがEVになるなんてことはないと思いますが、それなりに真剣に自動車メーカーがEV開発に取り組んだ結果、EVならではの優位点というのも見えてきて、この先も一定数のEV需要が見込めるのではないかと思っています。 やや強引に我々の生活のなかに入り込んできた感のあるEVですが、先にも述べたように内燃機関に比べ明らかな優位点があります。たとえば静粛性。音源はモーターの駆動音だけですから静粛性は抜群です。また、極低速トルクが太いのも特長に挙げていいと思います。車重は内燃機関の乗用車に比べ200~300kg程度は重くなりますが、低速トルクがぶ厚いので、案外スルスルと走り出すことができます。 その一方、デメリットももちろんあります。とくにタイヤという視点から見ると、車重増加によるタイヤの負荷増大は見逃せません。静粛性のよさも、タイヤノイズを隠せないので、克服すべき問題となります。 電費をよくするための転がり抵抗の低減もタイヤに求められる性能です。転がり抵抗が少なくなると、ウエットグリップとの両立が難しい問題となります。 低速トルクの厚いモーターは、発進時のタイヤの負担が大きくなります。重い車重と合わせて、タイヤの摩耗も克服しなくてはならない問題となります。 こうやってあげつらってみただけでも、従来の乗用車用タイヤに加えて、さまざまな性能が求められていることがわかります。 整理すると、問題点として挙がるのは、ケース剛性(耐荷重性)、耐摩耗性、転がり抵抗、静粛性、といったところでしょうか。 当然ながらタイヤメーカーでも対応は順次進められています。そんななか、規格として素早く形になったのが欧州のタイヤ規格でEV用に作られたHLとかHLCと表記される「ハイロードキャパシティ」規格です。

TAG: #HL #HLC #タイヤ
TEXT:桃田健史
買い替えずとも乗ってるクルマの「自動運転レベル」が進化する! テスラが火を付けた「OTA」ってなに?

自動運転技術に対して積極的にOTAを導入 テスラに関して、自動運転技術のアップグレードについてのさまざまな情報をネット上で見かける。モデルによって、また販売時期や購入時期によって、テスラユーザーの想いは異なるようだ。また、いわゆる認定中古車ではない状態で中古車市場に出まわるテスラ車についても、状況は異なることが考えられる。 そのため、本稿では対象をテスラに限定するのではなく、テスラが自動車産業界に大きなインパクトを与えたOTA(オーバー・ジ・エアー)の観点で話を進めていきたい。 まずは、話の前提として、自動運転レベルについて触れておきたい。グローバルでの共通認識として、自動運転技術を示すレベルにはレベル1からレベル5の5段階があり、レベル1とレベル2では運転の主体はドライバーだ。そのため、この領域は先進運転者支援システム(ADAS)となる。レベル3、レベル4、そしてレベル5になると、運転の主体はクルマのシステムが担う。 このうち、レベル3では気象状況などにより、クルマのシステムが自動運転の継続が難しいと判断した場合、ドライバーに運転をリクエストする。それが、レベル4になると、ハンドル、アクセル、ブレーキなど車内操作類がなくなり、いわゆる自動運転という感じのクルマとなる。 さらに、レベル5になると、そのような走行環境でも完全な自動運転を行うとしているが、これはあくまでも理想論であり、実質的にはレベル4が最上位の自動運転という考え方が、自動車産業界での常識になってきている。 こうした自動運転レベルやそれに伴うODDと呼ばれる走行環境・条件を、通信によって車載システムのデータを書き換えることを、OTAと呼んでいる。 自動車メーカー各社は2010年代前半頃から、OTAを含むコネクテッド技術の研究開発を加速させてきた。2010年代半ばにはアメリカのハッカーが車載システムを遠隔操作する模様をネット上に広めるなどしたことがきっかけとなり、自動車産業界全体でサイバーセキュリティ強化の動きが強まった。 OTAについても慎重な姿勢を示す自動車メーカーが多かったなかで、テスラは自動運転技術に対して積極的にOTAを導入した。 その当時、アメリカのテスラ本社を取材したが、担当者はまずは先行して高性能なハードウェアを製造時に組み込み、その後にOTAによってアップグレードする計画を示した。 こうしたハードウェアの先行導入時期とその基本性能、OTAのソフトウェアのアップデートのタイミングについてのバランスをどう取るのかは、コネクテッド技術が急速に発達するなかで、コストと利便性の観点でとても難しいと思う。 こうしたコネクテッド技術の進化の過程で、OTA導入により先行したテスラが今後、どのような対応をするのか興味深いところだ。 テスラは10月、レベル4によるロボタクシーの社会実装計画に加えて、モデルYやモデル3などの乗用モデルについても自動運転レベル3相当の標準装備化を進めると発表している。

TAG: #OTA #オン・ザ・エアー #テスラ
TEXT:石橋 寛
寒中EV航続距離レースでぶっちぎりの優勝! テスラを破った中国の高級EV「HiPhi Z」ってなにもの?

中国の新興EVメーカーから登場した「HiPhi Z」 寒くなるとEVはバッテリーの性能が低下して、航続距離や充電時間などが通常時よりも悪化する。 EVユーザーならば先刻ご承知かと思いますが、これをきちんとテストしている「極寒のEV航続距離レース」があるのはご存じでしょうか。1月とか2月、もっとも気温が下がり、積雪まであるというノルウェーの地で行われるテストで、各国メーカーのEVが競い合っているのです。 ご想像のとおりというべきか、2020年から3年はテスラが圧勝。ですが、2024年の冬はテスラ・モデル3が23台中22位という惨敗に終わっただけでなく、中国の高級EV「HiPhi Z」がトップに躍り出るという予想外の結果となったのです。 HiPhi Zは、中国の新興EVメーカーHuman Horizons(華人運通)が2022年に発売した4ドアセダン。GT-Rにどことなく似た顔つきや、4066個のLEDで構成される世界初のラップアラウンド・スターリングISDライトカーテン、120kWhという数値を誇る高性能かつ大容量なバッテリーパックを搭載し、航続距離705km、0-100km/h加速は3.8秒というスペックを引っさげての登場でした。 これが、ノルウェー自動車協会が主催する「El Prix」すなわち、毎年夏と冬に行われるEV航続距離レースに参戦。今回は気温がマイナス10°以下の環境で航続距離を競い合ったということです。ちなみに、El Prixは実際に走り切った航続距離のほか、WLTP基準の航続距離と、氷点下で実際に走行できる航続距離との差も明らかにしています。

TAG: #HiPhi #中国
TEXT:高橋 優
アリアよりも130万円安くて230kmも長く走れる! ヒョンデ新型IONIQ 5のスペックが驚異的な内容だった

新型IONIQ 5の航続距離は700km超え! 韓国ヒョンデがIONIQ 5のモデルチェンジバージョンが発売されました。バッテリー容量を大幅増量したことによって、航続距離は700km超えを実現。800V充電にも対応させるなど、競合の電動SUVと比較したコスト競争力を分析します。 韓国ヒョンデは2022年に日本市場に再参入を果たし、EVとしてはIONIQ 5、Kona、およびIONIQ 5のハイパフォーマンスグレードであるIONIQ 5 Nを発売中です。 日本国内の販売台数は直近の10月で32台と低迷しており、大きくふたつの問題が存在すると考えられます。まずはディーラーを介さない直販方式を採用するという点です。これにより、ヒョンデというブランドの存在が知られる機会が少なく、仮に知ったとしても車両に触れることができないのです。 また、同じく2022年に参入を表明した中国BYDが、安価でありながら販売ディーラーを構築するという、いってみればヒョンデの上位互換のような販売手法を展開してきたことによって、ヒョンデ自体の存在感が薄まってしまったことも大きいと感じます。 そしてヒョンデは、IONIQ 5のモデルチェンジを行って商品力を強化してきました。とくにインテリアについて、IONIQ 5の売りのひとつであるスライド可動式のセンターコンソールのデザインを刷新しながら、EV性能を飛躍的に改善してきています。 もともとヒョンデは2種類のバッテリー容量をラインアップしていましたが、今回のマイナーチェンジで1種類に統一することでラインアップをシンプル化。バッテリー容量は84kWhと、IONIQ 5 Nに搭載された新型バッテリーを流用してきた格好です。最長航続距離はついに大台の700kmを突破し、極めてゆとりある航続距離を確保しました。しかも、AWDグレードでも648kmを達成しており、これであれば豪雪地帯に居住しているユーザーもEVを購入する選択肢が出てきたのではないかと感じます。 さらに、充電性能も最大240kW級に対応させることに成功しました。IONIQ 5は800Vシステムを採用しているため、日本初の800V充電対応EVということになります。とはいうものの、国内には800V級の急速充電器はほとんど設置されていないため、今後の充電インフラにおいて800V級に対応する充電器が普及するかどうかがポイントになります。 ちなみに新型IONIQ 5には、韓国SK On製の第四世代の三元系バッテリーセルが採用され、パックレベルのエネルギー密度も173Wh/kgと高密度です。これまでの72.6kWhバッテリーのエネルギー密度も160.2Wh/kgと、日産アリアよりも高密度であったものの、84kWhバッテリーは173Wh/kgと、さらに高密度化を実現しています。エネルギー密度を高める正極材のニッケルの配合割合が9割という「NMC9.5.5」を採用することで、これほどまでの高密度化を実現しています。 そして、旧モデルの値段設定からほとんど値上げせずに発売されているという点も驚きです。エントリーグレードはもともと519万円から発売されていましたが、新型は523.6万円からと値上げ幅は最小限です。さらにIONIQ 5には45万円の補助金を適用することができるので、実質478.6万円から購入することが可能となります。

TAG: #モデルチェンジ #新型
TEXT:御堀直嗣
じつは一充電200kmも走れば十分な人が多数! 日産サクラ&三菱eKクロスEVが売れている現状に世界は目を向けるべき

サクラとeKクロスEVの生産台数が10万台に到達 日本の電気自動車(EV)販売を牽引するのが、日産サクラと三菱eKクロスEVだ。両車をあわせた生産台数が、2022年5月の発売から2年5カ月で累計10万台に達した。 日産の初代リーフは、2010年12月に日米で発売が開始され、2014年1月に世界累計販売台数が10万台に達した。 生産と販売では、作ったというのと売れたという点で同列で比較するのは不都合だ。とはいえ、軽EVが国内での販売を目的に2年5カ月で10万台生産されたことは、日米欧を含め世界(グローバル)で販売を行ってきたリーフが3年2カ月で10万台を売ったのに比べ、どれほど短期間に人気を得たかを知ることに役立つ。そして、いかにサクラとeKクロスEVが、人々に喜ばれているかがわかる。 世間、あるいはいくつかの報道などでは、「軽EVはたった180kmしか走れない」という。だが、それは一充電での走行距離であって、経路充電で急速充電すれば、もっと遠くへ行ける。180kmしか走れないのではなく、満充電すれば最低でも180km走れると解釈すべきだ。 世界的に、1日のクルマでの移動距離は多くが50km前後とされている。だから、プラグインハイブリッド車(PHEV)のEV走行距離は、余裕を見て100km前後なのだ。たとえば、2代目アウトランダーで追加されたPHEV初代のEV走行距離は60.2kmであった。まさしく、1日のクルマでの移動距離の多数を占める50kmを視野に入れた性能といえる。 EVにおいても100km前後が日常的な利用の中心であり、ただEVでは充電したバッテリーの電力を使い切れば止まってしまうので、その分のゆとりを見て150kmほど走れれば一般に事足りることになる。 そのうえで、四季を通じ空調を使うことを考慮するなら、200km前後の基本性能をもっていれば、不安なくEVを使えることになる。サクラとeKクロスEVの一充電走行距離が180kmであるのは、日々の利用に適切な性能である。 さらに遠出をするのなら、経路充電すればいい。経路充電しなくても、目的地に基礎充電(200V)の設備があり、一泊するならそこで寝ている間に充電すれば、経路充電の必要さえなくなる。 これが、EVの基本だ。 諸元で、一充電走行距離が300~400kmないと遠出ができないといういい方や考えは、急速充電に30分かかるという数字しか考えず、利用の実態を見過ごした解釈の誤りだ。

TAG: #販売 #軽EV
TEXT:桃田健史
全固体電池でも燃えないワケじゃない! EVの車両火災対策は製造工程からインフラまで多角的に進行中だった

車両火災の原因はさまざま 海外事例として、EVが燃えてしまうショッキングな映像や画像がニュースで流れることがある。国や地域の警察当局や、事故調査委員会などによる事故報告がなされる場合もある。 燃焼した原因はさまざま考えられる。たとえば、クルマ同士または自損事故によって外部から大きな衝撃がクルマに加わったことによるもの。 近年、EVに限らず衝突安全技術が進歩し、また電池パックへの外部からの衝撃に対しても、設計および製造時に自動車メーカーは最大限の注意を払っていることに間違いはない。それでも、衝撃が極めて激しければ、どのようなパワートレイン搭載車であっても、車両火災の可能性はゼロとはいい切れないだろう。 筆者はこれまで、さまざまな国や地域でEVに関する基礎実験や実証試験、そして量産にいたるまでの過程を現場で取材してきた。それと平行して、EVに搭載する各種バッテリーの製造メーカーの研究開発や製造工程も詳しく見てきた。 そうしたなかで、現在EVの主流となっているリチウムイオン電池について、内部短絡と呼ばれる現象などによって電池が発火する実験についても立ち会っている。 また、車載電池に関する国際カンファレンスも数多く取材してきたが、リチウムイオン電池研究の権威らは「燃えないようにするため、電池をどう管理するかが重要」という表現を使っていたことを思い出す。 この「どう管理するか」は、さまざまな視点で捉えることができる。

TAG: #事故 #車両火災
TEXT:すぎもと たかよし
「A390_β」はアルピーヌファン納得の4枚ドアのA110! 見事すぎる外観デザインをプロが解説

アルピーヌがパリで「A390_β」を公開! フランスのアルピーヌは、パリモーターショー2024にて新型のEVコンセプトである「A390_β」を初公開しました。「A290」に続く本格的な電動車であることが大きな話題ですが、その斬新なスタイリングも魅力的です。そこで、今回は公開された写真からエクステリアデザインの特徴をチェックしたいと思います。 流行のファストバックSUVとスポーティの融合 まずは、何といってもファストバックの5ドアというパッケージに注目です。ルノーグループのEV専用プラットフォームであるAmpRミディアムを採用したボディの諸元は不明ですが、「5人乗りの大型A110」と称されるように、4枚のドアによる居住性の高さとスポーティな凝縮感のバランスが絶妙です。 さらに、フロント22インチ、リヤで23インチという大径タイヤの存在感により、たとえばプジョー408やシトロエンC4のように流行のSUV風味もしっかり表現しています。もちろん、ホイールアーチやサイドシルに施される素材色のプロテクターは「お約束」。 ボンネットフードを含めたフロントセクションは、2022年に発表されたコンセプトカー「アルペングロー」のエッセンスを強く感じさせるところ。とくに左右をつないだヘッドライト部の表情はそのままで、強い先進感を表現しています。 また、「コズミックダスト」と呼ばれる三角形のイルミネーションに呼応するようなロアバンパーの網目状グラデーションは、たとえば最近のフィアットやレクサスにも見られる手法。いずれも、開口部をもたないEV的なフロントパネルでこそ効果のある表現です。 ブラックのルーフは高性能の証? サイド面に目を移すと、ドア面の大きな凹面はA110と共通のイメージですが、そこに引かれるキャラクターラインはずいぶんとシャープに。この鋭いラインは、突き出した形状のボディ前後につながるよう引かれており、高い疾走感を生んでいます。 一方、曲線基調の柔らかいルーフラインはまさにA110的で、とりわけリヤガラス周辺は高い近似性を感じるところ。また、ブラックのルーフはあたかもA110Rのようなレーシングイメージです。 ボディカラーはBlue Specular(ブルー・スペキュラー)と呼ばれる鮮やかな青。これは最近流行りのソリッドカラーというより、透明感を伴ったメタリック系ですが、写真でみる限り陰影を美しく打ち出す塗装のようです。もちろん、雪の結晶をイメージしたホイールとの相性は抜群。 さて、開発途中を示すβの名前が示すとおり、A390のスタイリングはまだ調整中の部分があるのかもしれません。ただ、観音開きのドアや超未来的なインテリアを除けば、それほど大きな変更は要らない完成度に達していると思えます。

TAG: #A390_β #コンセプトモデル #デザイン
TEXT:高橋 優
マツダ期待のEVセダン「EZ-6」が中国で発売! 競争力十分の価格も中身もデザインも全部見せます

中国市場で苦境にあえぐマツダを救えるか? マツダが中国市場でマツダ6の後継となる新型EVセダン「EZ-6」の正式発売をスタートしました。中国メーカーのプラットフォームを活用して、中国市場撤退するかどうかの存亡をかけた一台となる可能性を解説します。 まず、マツダの2023年シーズンにおけるグローバル販売台数は124万台と、2022年シーズンと比較しても11.5%もの販売台数増加を記録しました。なかでもマツダの販売総数の3割を占める北米市場は前年比23%ものプラス成長と好調です。 他方で厳しい販売動向が中国市場です。2023年シーズンの中国販売は8.5万台と、前年比21.4%ものマイナス成長です。 次に、中国国内の車種別の販売動向を確認していきましょう。現在マツダは、マツダ3、CX-5、CX-50、そしてCX−30という4車種をラインアップしています。2024年初頭まではCX-30のEVバージョンをラインアップしていたものの、販売が低迷していたことを受けて販売終了に追いやられています。 もっとも売れ筋のマツダ3のセダンは8万5900元、日本円で188万円からとなっていますが、日本国内では260万円で発売されています。やはりトヨタ、ホンダ、日産と同様にかなりの値下げを強いられている様子が見て取れます。 そしてもっとも重要なことは、CX-30 EVの販売を停止してしまっていることから、EVのラインアップがない状況であり、中国市場では販売総数のうちの一定割合をバッテリーEVかPHEVという新エネルギー車にしなければならず、早急に新エネルギー車をラインアップする必要性に迫られていたわけです。 そして、このような背景において、マツダが中国市場において新型EVセダンである「EZ-6」の発売をスタートさせました。このEZ-6について押さえるべきは、マツダが独自に開発したEVではなく、合弁先であるChanganのEVプラットフォームを流用しているという点です。 ChanganのEV専門ブランドであるDeepalが現在発売中のSL03(最新モデルとしてL07も登場)とプラットフォームを完全に共有しています。全長4921mm、全幅1890mm、全高1485mm、ホイールベースが2895mmという寸法、およびレンジエクステンダーEVとバッテリーEVをそれぞれラインアップするという点も含めて、Deepal SL03の兄弟車となります。 いわゆるOEM供給車であり、やはりマツダが単独で、競争力があり、なおかつ中国市場の最新動向にキャッチアップしたEVを開発することが難しいという実態が見て取れます。 その一方で、合弁先であるChanganのDeepal SL03の兄弟車として期待できるのが、レンジエクステンダーEV(EREV)をラインアップできるという点です。現在中国市場では、急速にEREV市場が盛り上がっており、BEVとともに幅広い需要を開拓することが可能です。実際にSL03はBEVよりもEREVのほうが売れているので、EZ-6の販売ボリュームという点でも期待できます。

TAG: #EZ-6 #セダン
TEXT:御堀直嗣
太いし重いしぶっちゃけ重労働! EVの急速充電ケーブルはもっと「細くて軽量」にできないのか?

急速充電器のケーブルは重い! 電気自動車(EV)に急速充電する際、充電器に備えられた充電ケーブルは太くて重いのが難点だ。コネクターも、普通充電用に比べ、大きく頑丈にできており、それも重さのひとつといえる。 200ボルト(V)のコンセントから、家庭などで行う基礎充電は、車載の充電ケーブルなどを使うが、そのケーブルやコネクターは比較的軽い。それと比べても、急速充電器のケーブルは格段に重い。 理由は、充電のために流す電力の大きさによる。 基礎充電として行われる普通充電は、3~6kWであるのに対し、現在広がっている急速充電器は50kWが多く、さらに高出力への要望があることから、90kW、150kWという大電力がケーブルを流れる欧州などでは、250kWといったさらに高性能な急速充電器が求められ、日本でもそれを望む声がある。 いずれにしても、急速充電器で使う電力は、普通充電の10~30倍くらいか、それ以上になる。 電気の流れは、川にたとえることができる。少ない水しか流れない川の幅は細い。逆に、一級河川と指定されるような大河は川幅が広い。電気も、流れる量によってケーブルの太さが細くなったり太くなったりする。 加えて、流れる電気の電圧によっても、流れる電気の量=電流に違いが生じる。200Vの普通充電では、3kWなら15アンペア(A)、6kWなら30Aという電流量だ。 急速充電になると電圧は500V以上だろう。500Vと仮定して、50kWなら100Aの電気が流れる。同じ急速充電ケーブルでも、太さに違いがあるとすれば、細めのケーブルは使われる電圧がもっと高いと考えられる。 この事例も、川の流れにたとえられる。急峻な山を流れる上流の川は、標高差(電気でいえば電圧差)があるので、川幅は細い。下流へ流れていくにしたがい標高差が少なくなるので、川幅は広がる。

TAG: #ケーブル #急速充電器
TEXT:桃田健史
急速充電器はさまざまな規格が乱立状態! EVの普及を目指すなか充電器事情はこの先どうなる?

CHAdeMOは当分の間150kWまで 普通充電と急速充電。こうした表現が最近、日本でもかなり浸透し、その違いについての理解も広まってきている印象がある。 最近では、経済産業省によるEV普及施策の一環として、ベンチャー企業などを巻き込んで全国各地でEV用充電インフラ整備が進んでいることも影響しているのだろう。また、消防法などによる高出力型充電器の設置に関わる規制も段階的に緩和されている状況だ。 そうしたなか、急速充電については、高速道路のSAやPAで最新設備の導入を急いでいるところだ。EV所有者に限らず、そうした機器をSAやPAで見かけることもあるだろう。 具体的には、1基を単独使用した場合の最大出力が90kWで同時に複数のEVに対応できるタイプや最大出力150kWの仕様だ。輸入車ブランドでは、アウディとポルシェが連携し、全国の新車販売店で出力150kWの充電器を設置する事業戦略を進めているところだ。 こうした急速充電の高出力化の傾向は、いつまで続き、またこの先はどこまで出力が上がっていくのだろうか。 IT、電子・電気に関する各種カンファレンスや商業見本市、また自動車メーカーの報道陣向け試乗会など、さまざまな機会に急速充電に関わる人たちと急速充電の今後について話を聞いているが、「CHAdeMOは当分の間、150kWまで」という声が主流だ。 高出力化の最大の課題は、充電器単体のコストではなく電気代だという。イニシャルコスト(初期投資)としては、急速充電器が数百万円かかり、さらに設置工事にも数百万円が必要であり、トータルで1000万円を超えてしまうことも珍しくない。さらに、ランニングコストとしての電気代がかさむ。 そのため、急速充電器をさらに高出力化するのであれば、新しいサービス事業の開拓が必然であろう。 たとえば、家庭や企業における普通充電やV2H(ヴィークル・トゥ・ホーム)、また電池のリサイクル・リユース、さらにスマホなど通信機器の購入・データ通信・通話代を含めるといった、エネルギーマネージメント事業の構築が考えられるだろう。 一方で、グローバルに目を向けると、急速充電方式については、CHAdeMO、アメリカでのCCS1、欧州でのCCS2、中国でのGB/T、そしてテスラ方式であるNACSが並行して存在する状態が続いている。EVシフトがいま、「踊り場」といわれるなか、急速充電の規格について実質的な標準化や統一に関する議論が自動車産業界で盛り上がっているとはいえない状況だ。 それでも、自動車産業界では「2030年代にはEV本格普及の目処が見えてくる」との見解が一般的だ。そのため、急速充電の規格、またエネルギーマネージメント事業を勘案した適正な高出力についても2020年代後半までには、自動車産業界で何らかの動きが起こるのではないだろうか。

TAG: #急速充電 #急速充電器
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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