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VW ID.2allの発表会の様子
TEXT:小川フミオ
フォルクスワーゲンが邦貨換算300万円台のEVを出す狙いとは。VW首脳陣に訊く電動化のミライ

  ハッチバック、SUV、ミニバンを続々投入 消費者に広く愛されるベーシックカーを作り続けてきたフォルクスワーゲンは、果たして電動化時代にも「大衆のためのベーシックBEV」を提供する代表選手となれるのか。今後のブランドの舵取り役ともいえるフォルクスワーゲン乗用車部門セールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役、イメルダ・ラベー氏に、自動車ジャーナリスト・小川フミオが戦略を訊いた。 BEVの新戦略を着々と進めるフォルクスワーゲン。とりわけ注目は、製品コンセプトのユニークさだ。 ID.シリーズ第1弾としてローンチされたID.3は、従来のハッチバックスタイルを踏襲した、どちらかというと常識路線。 そのあと、日本でも発売されたID.4を発表。そして、2021年5月に全輪駆動のパワフルなID.4 GTXを欧州市場に投入。続けて、2022年3月には60年代テイストあふれるミニバン、ID.BUZZを、そして2023年3月にID.2 all(アイディーツーオール)を発表した。 ID.2 allは、都市内でも使い勝手のよさそうな全長4050mmのサイズと、2万5000ユーロ(邦貨約370万円)以下で販売するという大胆な価格戦略で大きな話題を呼んでいる。 「なにより、ID.2 allは、従来のフォルクスワーゲン・ユーザーが、いいね!と思ってくれるデザインを重視しました」 従来の、という点が強調ポイントのようだ。それこそ、ユーザーとVW車が蜜月にあった時代。日本を含めて世界のいたる市場において、“なるほど”と納得するユーザーが簡単に見つかりそうだ。 フォルクスワーゲンでセールス&マーケティング部門担当取締役をつとめるイメルダ・ラベー氏は、いわばBEV時代を迎えつつあるいま、生き残り戦略に必要なのはなにかを考える立場にある。 「誰でも普通に受け入れられる」のがVW流 下記は、ユーザーに愛される「Love Brand」を目指すフォルクスワーゲン(VW)の製品戦略をめぐる、ラベー氏との一問一答。 ──このところ、VWのBEVをめぐる製品コンセプトのユニークさが際だっているように思えます。とりわけ内外装のコンセプト。単にパワーを誇示したりするのでなく、いってみれば、もっとやわらかいかたちで、自動車好きの心を刺激するものがあります。 そもそも、従来のVW車オーナーは、自分のクルマに名前をつけたり、エモーショナルな関係を結んでいることが多かったように思います。私たちはBEVにおいても、そこを重視します。名前をつけて乗っていたくなるクルマを作って提供することこそ、VWの使命ではないかと思うのです。 ──たしか、Love Brandというコンセプトを使いだしたとき、同じタイミングで発表されたのがID.2 allのコンセプトモデルでしたね。そこには、なんらかの関係性が働いている、と考えてもいいでしょうか。 見た目ですぐVWとわかるデザインと、直感的に使いやすいユーザーエクスペリエンスの提供。このふたつを重視してデザインしたクルマです。 空調やラジオのコントローラーをダイヤルにすれば、従来のクルマに乗ってきたひとたちが直感的に操作できます。シンプルで操作が容易というのが、顧客のニーズだと思います。 Love Brandとしては、そんなふうに顧客の使い勝手を優先しているととらえてもらうことが大事です。私たちにとって、ユーザーに抵抗感なく受け入れてもらうことが重要なのです。 今後私たちが発表するニューモデルにおいては、誰でも迷わず使えるようなデザインを採用していきます。 ──クルマに慣れろというのではなく、パワートレインがどうなろうと、それとは関係なく、これまで慣れ親しんでいた気持ちが損なわれることなく、BEVにだって乗ってもらう。そんな関係をユーザーとのあいだに取り結ぶことこそ、Love Brandとして生き残っていくために大切、ということなのですね。 これまでBEVというと、特別なフロントマスクとか、差異化のためのデザインを重視してきたところがありますが、ID.2 allは誰でもふつうに受け入れられるスタイルでしょ。操作系も、温度とかはあえて物理的なコントローラーにして、簡単で気持ちよく使えることを目指しています。 つづく (プロフィール) Imelda Labbé(イメルダ・ラベー)氏 フォルクスワーゲン乗用車部門 セールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役 1967年に、フランス国境ちかくの南西ドイツ(Steinfeld/Pfalz)で生まれ、ユニバーシティ・オブ・マンハイムで経営学を学ぶ。その後米スタンフォード・ユニバーシティで経営学の修士号を取得。1986年から2013年にかけて、独オペルで経験を積んだのち、2013年にVW傘下のシュコダに転職し、同社取締役会のスポークスパースンに。2016年からVWグループでグローバルのアフターセールスなどを担当。2022年7月1日より現職。

TAG: #コンパクトカー #マーケティング #戦略
TEXT:烏山大輔
トヨタ、GR H2 Racing Conceptを発表。エンジンはヤマハ製V8か?

トヨタが6月9日、ルマン24時間の決勝を翌日に控えるサルト・サーキットにおいて、水素エンジン車両のコンセプトカー「GR H2 Racing Concept」を発表した。 静かで、迫力を失ってきたレースシーン 世界三大レースに数えられるルマン24時間は、ACO(フランス西部自動車クラブ)が主催団体だ。そのACOも水素の可能性を信じ、以前よりデモランでFCEV(燃料電池車)レースカー「ミッションH24」を走らせているが、いまだにデモランで終わっていること自体がFCEVレースカーの難しさを物語っているのかもしれない。 しかし、近年FCEVは大型トラックや建機への搭載に向けた開発が進んでいることはTHE EV TIMESでも度々伝えてきた。つまり現状のFCEVは一定の出力を出し続ける場面において力を発揮することが得意ということなのだろう。それは全開の加速と急激な減速を繰り返す、「一定の運転」とは真逆のレース界においては、まだ難しい技術なのかもしれない。 そして、レースの世界でも省エネが叫ばれるようになって久しい。ハイブリッド化やターボ化も進み、サーキットに行っても魅力的なエキゾーストノートを聞く機会が少なくなっている。 ルマンにおいても、あのフェラーリでさえ、今年からハイパーカークラスに参戦している499Pも、LM-GTEクラスでライバルと鎬を削っている488 GTE Evoもターボエンジンだ。F1においても2013年をもって、NAの甲高い咆哮は聞かれなくなった。

TAG: #レースカー #水素エンジン
TEXT:岡崎 宏司
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第13回:もし、ドイツやアメリカに住んでいたら

道路事情や駐車環境は国によって様々。プジョー 「e-208GT」は、日本ではジャストサイズで愛用される岡崎さんですが、時には「ドイツやアメリカだったら」と思いを巡らします。 日本ではコンパクト。ドイツやアメリカだったら……。 僕は常々「コンパクト系が好き!」と言っている。だが、これは、あくまでも日本でのこと。日本の道路や駐車場を中心にした使用環境下ではコンパクト系がいいということだ。 だから、僕がこれまでに所有したLクラス車は3台。テールフィン全盛期のアメリカン2ドアハードトップ……、「デソート・ファイアスイープ」、そして、5.3L V型12気筒を積んだ「デイムラー・ダブルシックス」が2台の、計3台だけだ。 それ以外は、数台のDセグメントを除けば、すべてCセグメント以下。でも、ドイツやアメリカに住んでいたら……車歴はまったく変わっていただろう。 僕の現在の愛車は、プジョー e-208GT。Bセグメントサイズの使い勝手の良さは、大いに気に入っている。 ドイツに住んでいたら、と思えば―e-tron GT ……が、もしも、サイズのことなど考えず、ストレートに「ほしいEV」を選んでいたとしたら……「アウディ e-tron GT」か、「GT RS」が愛車になっていたはず。 つまり、僕が、道路環境も駐車環境もいいドイツに住んでいたら、迷わず「いちばんほしいEVをゲット」していたということ。 アウディ e-tron GTでアウトバーンを……いったいどんな気分なのだろうか。 ヒューンという微かなモーターの唸り、抑制の効いたロードノイズと風音……「素晴らしく心地よくもインテリジェンスなハイスピード クルージング」……といったところが、僕の描くイメージだ。 さらに、ドイツは充電環境の整備も進んでいる。これも、大型で高性能なEVをゲットする垣根を低くする。 充電環境といえば、同じ欧州でも、イタリアなどは遅れている。かつて、ガソリンが無鉛化されたタイミングで、ミュンヘン~シエナを往復する家族旅行をしたが、イタリアでの無鉛ガソリンの供給遅れには困惑した。 ドイツで手に入れた「無鉛ガソリン供給スタンド マップ」では、イタリアでも難なく無鉛ガソリンは給油できるはずだった。だが、現実はまるで違った。多くの丸印付きスタンドでの給油は叶わなかったのだ。 クルマのレンタル先(ドイツ)に電話を入れ、有鉛ガソリン使用の許可を得て旅を続けることはできたが、冷や汗ものだった。

TAG: #e-208GT #e-tron GT #F-150
TEXT:TET 編集部
かわカッコ良さのヒントがここに。アバルト500eのデザインスケッチから知るデザイナーのこだわり

ステランティス・グループの伊アバルトは、電動ホットハッチ「アバルト500e」のデザインモチーフを公開した。アバルト500eは本国ではすでに実車が公開済みだが、このたび公にされたデザインイラストからは、アバルトのデザイナーが車体細部のデザインに込めた狙いを知ることができる。 ディテールに込められたブランドのアイコン 昨年世界初公開されたアバルト500eは、フィアットのコンパクトEV「500e」をベースに、モーターのパワーを引き上げ(118ps→155ps/87kW→114kW)、スポーティなスタイルを身にまとう、量産車初のホットハッチモデルと言われるモデルだ。今回公開されたスケッチでは、カーデザイナーがボディ細部の形状に込めた、その意図がわかるものとなっている。 例えばフロントのデザインスケッチによれば、特徴的なグリルの形状とホイールのスポークはサソリの両ハサミで構成される台形をイメージしており、確かに前者では下部が張り出したグリルサラウンドが台形になっているし、後者ではスポークによって作り出されるスペースが同じく台形を形作っている。また、フロントグリルはベースモデルより30mm延長され、空力性能もアップしているそうだ。 ホイールについては17インチと18インチのダイヤモンドカットバージョンの両方でこうしたサソリのモチーフが採用されているとのことだ。 もうひとつ、フロントグリルにはサソリのモチーフが隠されている。それは、一番下の開口部に配された4つの突起で、このディテールはサソリの4本の脚をイメージしたとのこと。 さらに、ヘッドライト上部のLEDエレメントは、よりスポーティな表情とするためにベースとなったフィアット500eからあえて取り除かれたが、そこにもサソリの脚をイメージした突起が3つ付与され、目力強化に寄与している。 >>>次ページ インテリアも随所にサソリが生息

TAG: #BEV #ホットハッチ #発売前モデル
TEXT:桃田 健史
新型「セレナ」試乗で感じた「e-POWER」の超進化

日産のミニバン新型「セレナ」の販売が好調だ。2022年11月11日にガソリン車2WDの受注を始め、2023年2月4日から受注開始のe-POWER車を含めた累積販売台数は5月22日時点で4万7,200台。日産主催の公道試乗ではでe-POWERの進化を実感した。 第1世代を回顧、BEV技術を使った新しい技術とはいうものの e-POWERといえば、今や「技術の日産」における代名詞になっている。 技術的に見れば、エンジンを発電機として使うシリーズハイブリッド車なのだが、最新e-POWER搭載の新型「セレナ」を高速道路やワインディングで走らせた感想は「まるでBEV」という走り味である。 だが、この走り味に到達するまで、日産として地道な研究開発を積み重ねてきた。時計の針を少し戻してみると、e-POWERが登場したのは、約7年前のことになる。 「ノート」のマイナーチェンジの際に、新しいパワートレインを導入することが発売前から噂されており、自動車業界内では「日産がレンジエクステンダーを導入か?」という予測があった。 レンジエクステンダーとは、BEVの航続距離(レンジ)を延ばす(エクステンド)する意味であり、当時はBEVの「リーフ」で世界最大の出荷台数を誇っていた日産が、リーフの技術から派生したパワートレインを市場導入するのは“当然の流れ”というイメージが自動車業界内にあった。 蓋を開けると、それはレンジエクステンダーではなく、シリーズハイブリッド車だった。 シリーズハイブリッド車は、レンジエクステンダーに比べると搭載するバッテリーの容量や特性が違い、また発電機として使うエンジンの排気量も大きめというのが一般的な解釈である。 その上で、2016年に初試乗した「ノートe-POWER」は走行中にエンジンが始動する頻度がかなり多く、「BEV技術を使ったとはいえ、やはりエンジン主体のハイブリッド車」という印象が強かった。

TAG: #e-POWER #セレナ
TEXT:桃田 健史
大型BEVトラックは当面無理!? ダイムラー・トヨタ大連携の訳

トヨタ、ダイムラートラック、三菱ふそう、日野の4社は2023年5月30日、都内で共同会見を開き、「CASE技術開発の加速を目指すとともに、三菱ふそうと日野を統合する基本合意書の締結」について発表した。その背景に何があるのか? トップシークレットでのサプライズ まさか、このタイミングでここまで大きな話が動くとは! 5月30日午後3時15分に4社が一斉にプレスリリースを出し、またトヨタから午後4時30分から会見がある旨の連絡が入った。 午後4時に会見会場のホテルに到着すると、すでに在京キー局のテレビカメラがズラリとスタンバイしており、テレビ、新聞、通信社などの経済部の記者が集まっていた。 彼らの口からは「まさか」「驚いた」「いつのまに」といった声が漏れてくる。 トヨタ含めた4社内でも、本件はトップシークレット扱いで、これまで機密保持を徹底してきたようだ。 それほどまでに、今回の4社連携は自動車業界のみならず、グローバル経済界に対するインパクトが大きいと言えるだろう。 会見の概要は、ダイムラートラックとトヨタが、三菱ふそうと日野を対等な立場で統合するための株式会社(上場)を設立して、同会社の株式を50:50で保有する。2024年3月期中に最終契約を締結し、2024年中に統合を完了させることだ。 質疑応答を含めて2時間弱に渡る共同会見の中で、興味深い点がいくつかあった。 まず、統合に向けた口火を切ったのは、ダイムラートラックで、時期は昨年だったという。昨年といえば、日野がエンジン認証不正によって”揺れに揺れていた”時期である。 そのタイミングで、ダイムラートラックは日野ではなく、日野の親会社のトヨタに対して”友好的な関係”を持ちかけてきたことになる。 ダイムラートラックとトヨタとの交渉が、三菱ふそうと日野を含めて最終的にまとまった大きな理由を、4社のCEOは「未来はみんなでつくること」という共通を想いが共有できたと表現した。 そもそも、4社が係わる小型・中型・大型のトラック・バス市場は乗用車市場と比べるとかなり小さい。記者からの質問に対して、トヨタの佐藤恒治社長は市場規模を「年間300~350万台程度」と表現したほどだ。 だからこそ、4社は「スケールメリットが必要だ」と強調した。

TAG: #ダイムラートラック #トヨタ #三菱ふそう #日野 #統合
TEXT:福田 雅敏
「下町ロケット」の魂、日の丸サプライヤーの縁の下の技術をメーカーは見逃すな[THE視点]

来場者数6万3,810人・出店社数484社と、昨年を上回る規模での開催となった「人とくるまのテクノロジー展 2023 YOKOHAMA」<パシフィコ横浜(横浜市みなとみらい地区)/5月24日〜26日>。 本レポートの第1回[詳細はこちら]ではメーカー、第2回[詳細はこちら]ではサプライヤーの第1弾としてモーター一体型駆動装置(イー・アクスル)の展示を紹介してきたが、最終回となる今回は、サプライヤーの中でも、普段はあまり注目されないバッテリー・カバーなど、縁の下を支える部品を紹介する。 自動車技術会……EVのホワイトボディを展示 本イベントの主催である自動車技術会のコーナーには、ホワイトボディ(骨格のみのボディ)の展示があった。 展示されていた車種は、「日産アリア」「トヨタbZ4X/スバル・ソルテラ」(兄弟車)、「マツダCX-60」「いすゞ・エルフ」の4車種。 この中から、EV、PHEVに関連する、3車種のホワイトボディを紹介する。 「日産アリア」は、最新のEV用プラットフォーム「EV-PF」を採用している。 エアコン関連(HVAC)のモジュールを、モーター・ルーム(ボンネット)に収め、室内はフラットフロアを実現。フロント周りのサブフレームの一部およびバッテリーパックには、アルミを使用し軽量・高剛性化も実現した。 「トヨタbZ4X/スバル・ソルテラ」は、トヨタとスバルの技術を融合し共同開発されたプラットフォームを使用している。 バッテリーパックをボディの一部として活用しているのが特徴で、高い安全性と操安性を実現している。バッテリーパックはスチール製だが、パックとボディをつなぐ部分には、アルミの押し出し材を使用する。 「マツダCX-60」は、PHEVではあるもののアルミ・ダイキャスト製のバッテリーパックを使用していることに目を引かれた。詳しくは後述する。

TAG: #イー・アクスル #人とくるまのテクノロジー展 #燃料電池車(FCEV)
TEXT:福田 雅敏
変速機付きイー・アクスル増加の予感……「人テク展」を写真で振り返る[THE視点]

5月24日〜26日まで開催された「人とくるまのテクノロジー展 2023 YOKOHAMA」<パシフィコ横浜(横浜市みなとみらい地区)>。 自動車メーカーとサプライヤーが最新技術を持ち寄るこの展示イベントは、今年は前回以上の来場者数と出展者数を記録した(来場6万3,810人/出展484社)。 前回[詳細はこちら<click>]のレポートはメーカーを中心に紹介したが、今回は中編として、サプライヤー系から昨今の注目パーツであるモーター一体型駆動装置(イー・アクスル)を紹介する。 TOP……小型EV対応のイー・アクスル TOP(タケフ・オリジナル・プロダクション)ブースには、小型EVとともに、イー・アクスル+減速機が展示されていた。 モーターは使用電圧48Vに対応した最高出力(定格)6.0kW(8.2ps)のもので、「モーターのみ」「モーター+インバーター」「モーター+インバーター+減速機」から選べるのが特徴。現在はGen1と呼ばれるものが主流だが、より小型化された、Gen2も展示されていた。 住友化学……軽量・高剛性の次世代プラスチック製イン・ホイール・モーターケース 住友化学のブースには、スーパーエンプラ(スーパー・エンジニアリング・プラスチックス)のPES(ポリ・エーテル・サルフォン)材を、イン・ホイール・モーターのケースに採用したものを展示。 アルミニウム製カバーに比べ約30%軽量化できるうえ、モーターに必要な放熱性も保持するという。 アイシン……電費が10%向上するイー・アクスル アイシンブースでは、イー・アクスルを展示。現在は第1世代のミディアムクラスの展示であったが、将来的(第2世代以降)には、スモール、ラージともラインナップを増やしていくという。このイー・アクスル化により、電費が10%向上するという。 デンソー……前・後輪搭載可能で電費が向上するインバーター(モックアップ) デンソーは、樹脂製のイー・アクスルのモックアップを展示し、その中にインバーターを組み込んだものを紹介していた。フロント用とリア用の2種類を展示。損失低減により、電費を向上、航続距離が延伸できるという。 マグナ・インターナショナル・ジャパン……商用車向けのイー・アクスル マグナでは、商用車向けイー・アクスルを展示。スペック等は明らかにされなかった。

TAG: #THE視点 #人とくるまのテクノロジー展 #国内ビジネス
TEXT:生方 聡
悲報! 充電料金が大幅値上げに [ID.4をチャージせよ!:その13]

食料品や電気料金など物価上昇が止まらないなかで、ついに電気自動車の充電料金も値上げに。「ID.4 Pro」オーナーの私も、その影響をモロに受けそうです。 7月からe-Mobility Powerが値上げに ふだん私が利用しているのが、e-Mobility Power(イーモビリティパワー、以下eMP)ネットワークの急速充電器です。2023年3月現在、全国に約7,800口の急速充電器があり、日産や三菱、トヨタ、メルセデス・ベンツ、BMWといった自動車ディーラーをはじめ、高速道路のサービスエリア/パーキングエリア、道の駅、ショッピングモール、コンビニエンスストア、ガソリンスタンドなど、さまざまな場所にある急速充電器が、専用の充電カードをかざすだけで利用できます。 フォルクスワーゲン・ジャパンでも、ID.4や「eゴルフ」のオーナー向けに、eMPネットワークが利用できる「フォルクスワーゲン充電カード」(以下、VW充電カード)を用意しており、私も加入しています。 そのeMPが2023年7月1日から、eMP会員向けの料金改定を発表しました。「急速・普通併用プラン」の新旧料金は次のとおりです。   基本料金 急速充電料金 普通充電 旧 4,620円 16.5円/分 2.75円/分 新 4,180円 27.5円/分 3.85円/分 月額料金が4,620円から4,180円に値下がりする一方、充電時間に応じて支払う都度利用料金が大幅にアップ。急速充電では1分あたり16.5円から27.5円。67%の値上がりです。普通充電も1分あたり2.75円から3.85円と40%上昇します。30分急速充電した場合の料金は、これまでの495円が825円になりますから、今回の値上げ幅がかなり大きいことがわかります。

TAG: #ID.4 #急速充電
TEXT:福田 雅敏
観光型EVバス普及で浮き彫りになる問題……専用の充電インフラがない[THE視点]

「2023 バステクフォーラム」が5月12日、大阪・舞洲スポーツアイランド「空の広場」<大阪市此花区>にて開催された。前編[詳細はこちら]では、会場にて試乗ができた路線型のEVバスを紹介した。 しかし会場には、路線型以外にも観光型のEVバスが展示されていた。現在、日本はインバウンド需要などが再び高まり、観光バスの出番も増えていると聞く。今後導入が検討されるであろう観光型のEVバスは一体どのような特徴があるのか、むしろ、無視できない問題が浮き彫りとなってきた。 EVモーターズ・ジャパンが提案する観光型のEVバス EVモーターズ・ジャパンが会場に持ち込んだもうひとつのEVバスが、観光型の「F8 シリーズ6 コーチ」だ。 全長8.85m×全幅2.49mの観光バスで、定員は35人。最大容量210kWhのバッテリーで、280km(社内基準値)の航続距離を持つ。モーターは最高出力240kW(326ps)。ステンレスのシャシーにFRPのボディや「アクティブ・インバーター」を搭載しているところなど、根底の設計は路線バスタイプと同じだ。 この観光タイプも現在は中国生産だ。内外ともに品質のレベルは高いが、内装面ではUSBソケットが付く程度。簡素ではあるが、国内の観光バスのクオリティに合わせるには、価格やバッテリー容量の問題を解決しなければならないのだろう。 ちなみにバッテリーは、床下はもちろんトランク・ルームにも設けられていた。価格は5,500万円(標準車)で、観光型としてはリーズナブルに思える。 EVモーターズ・ジャパンは現在、北九州にEVバス工場を建設中であり、完成次第国内生産に切り替える予定だという。国産化するということは、内外の完成度に相当のクオリティが求められることになる。 しかし逆に捉えれば、国産の観光型EVバスのリーディングカンパニーになれるチャンスとも言えよう。是非とも日本の商用EV企業としての底力を見せて頂きたい。 ちなみに参加者には、帰る際にアンケート代わりにシール3枚が渡され、それを良かったブースに貼って帰るのがこのイベントの特徴。今回印象的だったのは、私が帰る時点で、EVモーターズ・ジャパンに一番多くのシールが貼られていたことだった。

TAG: #EVバス #EVモーターズ・ジャパン #THE視点
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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