BEVとEREVをラインアップ
BYDの高級ブランドYangwangがフラグシップセダンのU7を発売しました。世界初となる完全な電磁サスペンションを採用しながら、中国メーカーとしては初めてとなる水平対向エンジンも採用するレンジエクステンダーシステムを開発。EV時代に世界をリードしているBYDの最前線を解説します。
まずYangwangについて、すでに大型SUVのU8、スーパースポーツのU9を発売中です。U8はレンジエクステンダーEV(EREV)であり、4輪にそれぞれモーターを搭載することでタンクターンなどを可能とする「e4プラットフォーム」を採用。さらに、「Disus-P」という独自内製の油圧制御サスペンションを採用することでオフロード走破性能を高めることに成功。そのうえ、緊急フロート機能では、30分間、水上を浮遊しながら、タイヤの駆動力を使って移動することが可能です。
U8は、2024年シーズンに7245台を発売することに成功しました。U8は109.8万元(約2200万円超)という超高級車であり、この販売台数はメルセデス・ベンツGクラス(5258台)とメルセデスAMG G(1863台)の合計や、レクサスGX(2990台)とLX(2674台)の合計台数と比較しても上まわっているという売れ行きです。
次に、U9はe4プラットフォームを採用しながら、さらにDisus-Xと名付けられたボディコントロールシステムを採用することで、サーキット走行などにおける車両の安定的な制御をはじめとして、タイヤがひとつ外れた状態でもボディを安定させて走行させることが可能です。
また、最高出力960kW、最大トルク1680Nm、0-100km/h加速も2.36秒を実現。ニュルでも7分17秒9というタイムを実現するなど、高い運動性能を発揮します。
そして、今回発売したのがフラグシップ大型セダンのU7です。U8・U9と同様にe4プラットフォームを採用したBEVであるとともに、EREVもラインアップ。
このラインアップ構成で問題となるのが、50kWh以上の電池パックと4つのモーター、そして発電用の内燃エンジンをすべて搭載して、そのうえでセダンとしてのプロポーションを維持する必要があり、スペース効率を引き上げる必要があるという点です。
そして、BYDが初めて採用したのが発電用水平対向エンジンです。現在水平対向エンジンはポルシェとスバルくらいしか開発しておらず、中国メーカーとしては初めて採用してきました。水平対向エンジンの強みは、高さを抑えることによって、そのぶん重心点を引き下げられる点です。
その一方で、BYDがなぜ重心の低いEVのために、わざわざ水平対向エンジンを開発してきたのかというと、ボンネットの高さを抑えるためという点が挙げられます。U7はセダンでありながら、フロントにモーターをふたつ搭載する必要があり、高さ方向を抑えないとセダンとして成立しなくなるからです。
もちろん前面投影面積を抑えることは、EVの航続距離を改善するうえで極めて重要です。実際にU7は、空力性能を最大化することでCd値は0.195を実現しており、世界最高クラスの空力性能を誇ります。
いずれにしても、e4プラットフォームと空力に優れるセダン、そしてBEVとEREVを両方ラインアップする必要があるという点をすべて両立させるために、水平対向エンジンを一から設計開発する必要があったのです。