最新サスペンションシステムにも注目!
さらに、この独自内製の2リッター水平対向エンジンは燃費性能にも優れています。たとえばレクサスLS 500hは7.15L/100km。3.5リッターエンジンとシングルモーターというハイブリッドで0-100km/h加速が5.1秒を実現。また、メルセデス・ベンツS500 L 4MATICは8.4L/100km。3リッターV6エンジンとモーターを搭載する48Vマイルドハイブリッドシステムで、0-100km/h加速は5.0秒です。
一方で、今回の8.7L/100kmを実現するU7は、52.4kWhの大容量バッテリー、4つのモーター、2リッターエンジンを搭載するEREVであり、0-100km/h加速は2.9秒を実現。いずれにしても、この1300馬力以上という動力性能とEV航続距離180kmを実現するEREVの燃費が8.7L/100kmであることが、いかに驚異的であるのかが、競合の高級セダンと比較すれば一目瞭然なわけです。
そして、U7のもうひとつの目玉テクノロジーがDisus-Zと名付けられた最新サスペンションシステムです。BYDは電子制御サスペンションのDisus-C、エアサスペンションのDisus-A、U8などに採用されている油圧制御サスペンションのDisus-P、U9専用のDisus-Xなどという独自内製サスペンションシステムを幅広く展開しながら、U7にはDisus-Zという、サスペンションをモーター可動させることによって緻密な制御を可能としながら、そのモーターサスペンションは回生エネルギーすら回収可能という、サスペンションの電動シフトを行おうとしてきています。
各サスペンションに電磁モーターを搭載することによって、電磁誘導の原理と極めて低い摩擦抵抗のボディ設計に基づいて、50kWというパワフルな出力を実現。電磁モーターのシステム電圧は、高電圧バッテリーとまったく同様の800Vシステムで駆動し、路面の振動エネルギーを素早く相殺することで、車体姿勢を安定的に保つことができるのです。しかも、アクティブなサーマルマネージメントシステムも搭載されており、これは電池やモーター、そしてキャビンの空調システムなども含めて一括制御されています。
また、油圧制御ではなく電気エネルギーによってコントロールするため、油圧制御と比較しても、桁の異なる迅速、かつ正確な制御が可能です。センサーは業界でもっとも速い50μ秒の応答速度を実現しており、瞬きする間に4000回の車体姿勢のコントロールが可能。これは業界の主流の20倍の速度であり、精度もμメートルと、紙の厚さの10分の1に相当します。
よって段差の乗り越えだけではなく、急減速や高速旋回時におけるノーズダイブやロールを限りなく抑えることも可能です。
また、U7のBEVバージョンには135.5kWhもの800V LFPバッテリーが搭載され、航続距離は720kmを確保。急速充電性能は最大500kWという出力に対応し、SOC30%から80%まで20分で充電可能です。
このU7のEV性能とコスト競争力が競合と比較してどれほど実現しているのかを、とくにメルセデスAMG EQS 53 4MATIC+と、さらにはNIO ET9と比較してみましょう。このとおり、EQSと比較しても航続距離や充電性能、動力性能で圧倒。さらに20度もの角度に対応する4WSによって、最小回転半径も4.85mと、同じく4WSを採用するEQSを圧倒しています。
そして62.8万元(約1302万円)からという、破格の値段設定を実現しました。EQSは156.6万元(約3200万円以上)からですが、 現在は販売低迷を理由に約2500万円強に値引きして販売中です。いずれにしても、EQSの半額で、すべての性能を上まわるハイエンドセダンを購入できるとイメージしてみれば、技術の結晶であるU7のコスト競争力の高さが見て取れるでしょう。
また、コクピットまわりは、プロセスノード4nmのBYD9000チップを採用するDiLink 150を採用することでシームレスな操作性を実現。自動運転システムは3つのLiDARとNvidia Drive Orin-Xプロセッサーをふたつ搭載するGod’s Eye Aを採用することで、シティNOAと高度駐車機能に対応させながら、e4プラットフォームとを組み合わせることによって、リヤタイヤを滑らせることで縦列駐車に対応します。
はたして、BYDのフラグシップセダンU7が、BMW7シリーズ、アウディA8L、メルセデス・ベンツSクラスという通称「78S」や、マイバッハやベントレーなどの超高級車のシェアをどれだけ奪えるかに注目です。