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クルマを「所有する資産」から「利用するサービス」へ
<ソフトウェア課金が生む継続的収益>
テスラは将来的に「ソフトウェアアンロック機能」というバッテリー容量の制限を解除することで約100kmの航続距離延長を有料提供するという話もある。この手法は製造コストを抑えつつ、顧客のニーズに応じた課金を可能にする。そのほかにもSDV(ソフトウェア定義車両)技術を活用すれば、安全性向上機能やエンタメアプリの追加など、購入後のアップグレードで継続収益を得られる仕組みが構築できる。
実際、テスラは「プレミアムコネクティビティ」というモバイルデータ通信を利用したネット接続サービスを月額980円で提供している。このサブスクリプションを契約すると、衛星画像マップの表示、YouTubeやそのほかの動画サービスやAppleMusic、Spotifyのプレミアムサービスなどさまざまな機能が利用できる。
最近は、駐車中にセキュリティのために録画された動画を手元のスマートフォンで見られるというサービスも追加された。このように次々とサービスを追加できるのも、メーカー、ユーザーともに感じられるSDVのメリットである。
ちなみにテスラは、米国で運転支援機能『FSD(Full Self-Driving)』を月額99ドルで提供している。ただし、現時点では完全自動運転ではなく、高度な運転支援システムとしての位置付けだ。しかし、この「ハードウェア販売+ソフトウェア課金」の二重収益モデルが、初期の値引きを可能にする資金繰りを支えている。
<充電インフラとデータ活用の未来像>
テスラにとってスーパーチャージャーネットワークの充電料金収入も重要な収益源だ。テスラは、世界で6万基以上の急速充電器を展開し、運営している。これらの充電においても車両データは収集され、バッテリー性能の改善や運転パターン分析に活用されてソフトウェアアップデートの精度向上に寄与する。
加えて保険会社との連携によるUBI(使用量ベース保険)など、新たな収益機会を創出する可能性も秘めている。また、テスラはその充電システム(NACS)を他社にも開放しているため、今後、非テスラ車両の利用頻度も増えていくだろう。
自動車産業のパラダイムシフトは単なる動力源の変更を超え、製造から運用までを包含するエコシステム戦争へと発展している。先行するテスラをはじめBYDなど、多くのEVメーカーは初期コストを抑えて顧客を囲い込み、ソフトウェアとサービスで継続的に収益を生み出そうとしている。
このビジネスモデルは、自動車を「所有する資産」から「利用するサービス」へと変容させつつある。EVメーカーたちが仕掛ける価格競争の裏側では、21世紀型モビリティビジネスの新たな基盤が着々と築かれているのだ。