EVを普及させるには車種を増やす必要がある
2024年におけるEV(エンジンを搭載しない純粋な電気自動車)の国内販売台数は、前年に比べると33%減って約6万台だった。2024年の国内販売総数は約442万台だから、EVの販売比率は1.4%に留まる。
そして、2024年に国内でもっとも多く販売されたEVはサクラで、2023年に比べると売れ行きを38%減らした。それでも約2万3000台を売ったから、国内で販売されたEVの38%を占める。
また、輸入車のEVは、2024年に約2万4200台が販売された。国内で新車として売られたEVの40%を占める。
つまり、いまの国内におけるEVは、38%を占めるサクラと40%の輸入で成り立ち、両方を合計すると78%に達する。きわめて偏った売れ方になっているのだ。
EVの新車販売で、輸入車の比率が40%に達した理由は、EVのラインアップが豊富にあるからだ。販売の主力となる輸入ブランドでは、ボディタイプ別に見ると、メルセデス・ベンツとBMWが各7車種、アウディは3車種を用意する。さらに、EVに特化したテスラ、BYD、ヒョンデも複数のEVを用意するから、価格帯は高めでも車種の選択肢は多い。
その一方で日本車は、EVの車種がもっとも多い日産でも、乗用車はサクラ/リーフ/アリアだけだ。トヨタは2024年における国内シェアが31%、小型/普通車に限れば47%に達するメーカーだが、エンジンを搭載しいない乗用EVは、bZ4XとレクサスRZ/UX300eに限られる。ホンダはHonda eの生産を終えたので、2024年1月時点で販売されているEVは、軽商用車のN-VAN e:のみだ。
このようなラインアップでは、日本のユーザーが日本のメーカーからEVを買いたいと思っても、購入するのは困難だ。日本では「EVが売れない」といわれるが、実際には「売っていない」に等しい。
その結果、サクラと輸入車だけで、新車EV市場の約8割に達してしまう。輸入車については、1車種当たりの販売台数はわずかだが、車種の数が多いから40%に達した。
EVの国内販売台数が前年に比べて33%減った理由も、車種の数が少ないからだ。サクラがほしい人達に行き渡って売れ行きを下げると、車種が少ないために、EV市場全体の販売不振を招いてしまう。EVは新しいカテゴリーだから、乗り替え需要も乏しく、新車の車種数を増やさないと売れ行きも伸びない。
今後の日本で必要なEVは、サクラのヒットからもわかるように、セカンドカーとして使える軽自動車やコンパクトカーだ。複数のクルマを所有する世帯には、一戸建てが多いから、充電設備を設置しやすい。EVをセカンドカーとして使えば、遠方への外出では乗らないから、1回の充電で走れる距離が短くても不満は生じにくい。
このような日本のEV事情を考えると、ホンダはHonda eを廃止すべきではなかった。価格の割安なグレードを加えるなど、改良を行って作り続けるべきだった。今後、ホンダはN-ONE e:を投入する予定で、他社についても、魅力的な軽自動車のEVが望まれている。