#普及
TEXT:高橋 優
EVシフトの減速は幻想!? 世界規模でみたEVシェア率の伸びは想像を超えていた!

BEVとPHEVの合計販売台数は163.5万台超 2025年3月における世界全体のEV販売動向が判明しました。EVシフト減速といわれるなか、EVシフト減速のリアルとともに、2025年シーズンに注目するべき最新EV動向を含めて解説します。 まず初めに、最新のデータが判明している2025年3月の世界全体でのBEVとPHEVの合計販売台数は163.5万台超に到達し、前年同月比+24.4%となりました。成長率の内訳について、PHEVは前年同月比+14%だった一方で、BEVは+32%で成長しており、PHEVよりも販売台数が伸びています。 さらに、新車販売全体に占めるBEVとPHEVの合計販売台数のシェア率も、3月単体では25%に到達しています。前年同月が19%だったことを踏まえると、シェア率の伸びが加速している状況です。 次に、BEVに絞った販売動向について、1月から3月のQ1合計におけるBEV販売台数とBEVシェア率の変遷を2023年シーズンから追ってみると、黄色で示されたBEVの販売シェア率は9%、10%、そして14%とシェア率が上昇中です。2025年通期でのBEVシェア率20%にも期待可能でしょう。 また、世界の主要マーケットと比較したBEVシェア率の変遷について、日本市場のBEVシェア率は3月単体で1.56%と低迷しているものの、世界全体では17%に到達しており、主要先進地域において日本のBEVシェア率がまったく伸びていない様子も見て取れるでしょう。 次に、このEVシフト減速という言説が間違っているといえる世界全体のEVシフト成長の流れにおいて、人気のEVを分析しましょう。まず2025年Q1におけるBEVとPHEVの販売台数ランキングトップ20を見てみると、トップからテスラ・モデルY、BTD Song、テスラ・モデル3、ジーリーXingyuan、BYDシーガル、Hong Guang Mini EV、シャオミSU7と続いています。 また、トップ20のうちBYDが9車種、ジーリーが3車種ランクイン。とくにトップ20のうち、テスラと中国勢以外でランクインできたのはフォルクスワーゲンID.4だけであり、BYDやジーリーを筆頭とする中国勢の躍進の様子が見て取れます。 その一方で、それらの人気車種を2024年Q1での販売台数と比較しましょう。まず注目するべきは、ジーリーのXingyuan、Starship 7、シャオミSU7、BYD Qin L、Seal 06、Xpeng Mona M03、Li Auto L6であり、これらは1年前には発売されていなかった新型モデルです。また、BYD Song、テスラ・モデル3、BYDシーガル、Hong Guang Mini EVは、前年比で販売台数を伸ばしているものの、テスラ・モデルY、BYD Qin Plus、Yuan Plusは前年比で販売台数が減少しています。BYD Qin PlusとYuan PlusはQin LやYuan Upが登場したことによる販売が鈍化したことが推測可能です。モデルYはモデルチェンジにおける買い控えと生産ラインの切り替えが要因として考えられます。 そして、この人気車種ランキングにおいて注目するべきさらなるポイントとして、中国とアメリカ、欧州という主要マーケットを抜いたその他のマーケットにおける人気EVランキングについて、トップからBYD Song、テスラ・モデルY、Vinfast VF3、BYD ATTO 3が人気です。とくにベトナムの振興メーカーVinfastの小型SUV「VF3」の快進撃には驚かされるでしょう。 また、ピックアップトラックセグメントについて、3月単体でトップに躍り出たのがBYD Shark 6です。Q1全体だと、フォードF-150 Lightningが販売台数トップを維持しているものの、このShark 6はオーストラリアやメキシコ市場などの一部マーケットでしか販売されておらず、ピックアップが人気のタイ市場をはじめとする東南アジアで本格的に発売がスタートすると、F-150 Lightningを抜くはずです。 Q1のテスラ・サイバートラックは約6300台と、F-150 Lightningを下まわるという販売低迷に見舞われています。一時は予約台数200万台に達したなどといわれていたサイバートラックの低迷は、在庫過剰、生産ラインの稼働率低下によるテスラ全体の収益性低迷の理由とも推測でき、今後の販売動向には注目が集まります。

TAG: #EVシフト #普及 #販売
TEXT:高橋 優
日本のEVシェアはたった1%台! この先続々投入される新型EVで停滞ムード解消なるか?

BEVとPHEVの販売台数は約6400台 日本国内における2025年4月のEV販売動向が判明しました。テスラ、BYD、ヒョンデそれぞれが新型モデルを投入することで販売を増加させた一方、日本メーカー勢は深刻なEV販売低迷が続いています。2025年シーズンの国内EVシフトの展望を含めて解説します。 まず、2025年4月のBEVとPHEVの合計販売台数は約6400台と、前年同月比でわずかなプラス成長を実現しました。商用軽EVの日産クリッパーEVとホンダN-VAN e:の販売台数は月末にならないと判明しないため、実際にはEV販売は少しプラスされます。前月である2025年3月の販売実績は1万1985台となりましたが、前年比−9.5%に留まりました。 次に、新車販売全体に占めるBEVとPHEVの合計販売台数の比率について、4月は2.01%となりました。ここにN-VAN e:などの販売台数が合わさると、おそらく前年同月のシェア率2.12%を超える見通しです。ちなみに確定した3月度のシェア率は2.62%であり、前年同月に記録していた3.17%から下落しています。 さらにBEV単体の販売動向について、白で示されている輸入EVは4月に1763台と、前年同月比+51.2%と販売が大幅増加したものの、ピンクで示されている日本メーカーの普通車セグメントのBEV販売台数は348台と、前年同月比で半減と落ち込みました。また、シェア率が確定した3月のBEVシェア率は1.56%であり、前年同月が1.89%だったことから、国内のBEVシフトが後退している様子が見て取れます。 また、現在の日本のBEV販売シェア率を世界の主要国と比較すると、日本はデータが確定した3月において1.56%と低迷しています。その一方で、3月の世界全体のBEVシェア率は17%に到達しており、2024年3月が13%だったことから着実にBEVシフトが進行中です。 日本は2025年の間に1%台というBEVシェア率の低迷を脱出できるのか、世界全体では2025年平均でBEVシェア率20%の大台にどこまで近づけるのかに注目でしょう。

TAG: #EVシフト #普及 #販売
TEXT:桃田健史
ただEVを作ってお終いじゃない! ソフトもインフラにも本気で取り組むホンダのEV事業が熱い!!

ホンダのEV事業に注目! EVシフトが踊り場。ここ1〜2年で、そういわれることが増えてきている。だが、自動車メーカー各社としては、中長期的にはEVシフトが確実に起こることを前提として、事業戦略を練っている。 なかでもホンダは、2040年にグローバル販売でのEV・FCEV(燃料電池車)100%を目指す。日系メーカーで、年次を決めて100%EVシフトを宣言しているのはホンダのみだ。 足もとで動いているホンダEV戦略は大きくふたつある。ひとつは、日米を中心とした「0シリーズ」。もうひとつは、中国に特化した「イエシリーズ」だ。 4月末に開幕した中国上海モーターショー(上海国際自動車工業展覧会)では、「広汽ホンダGT」「東風ホンダGT」を世界初公開した。ホンダは中国で、広州汽車と東風汽車のそれぞれと合弁事業を進めており、「GT」はレーシングマシンを連想させるトップモデルだ。 また、中国市場向けEVの駆動用バッテリーでは、CATLとのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを共同開発し、イエシリーズの第三弾に投入することも明らかにした。 0シリーズについては、米CES2025(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)で、「サルーン」と「SUV」を世界初公開した。 注目されるのは、ホンダ独自の車載OS(オペレーティングシステム)として「アシモOS」を採用したこと。自動車産業界では近年、ソフトウェアに重きを置いた自動車の設計思想SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)が競争領域として注目されているところだ。 ホンダとしては、次世代EV導入のタイミングで、クルマづくりを抜本的に変革する姿勢を社内外に向けて発信したといえるだろう。 また、EV普及のために重要な充電インフラについても、国や地域の社会状況に応じた対策を打つ。 たとえばアメリカでは、メルセデス・ベンツ、BMW、GM、ステランティス、ヒョンデ、キアと連携するEV高出力充電用を構築するための合弁事業「アイオナ」を設立した。 アイオナの充電施設では、CCS(コンボコネクター方式)やNACS(ノース・アメリカン・チャージング・スタンダード)など、多様な急速充電をユーザーに提供する。2030年にはカナダを含めて3万基の設置を目指す。 日本でも、軽EVのさらなる普及や0シリーズの導入、そして充電インフラとの連携に加えて使用済み電池のリユース・リサイクルなど、バリューチェーンにおける新しい仕組みづくりを進めているところだ。 これからも、グローバルにおけるホンダEV事業の動きに注目していきたい。

TAG: #EVシフト #普及
TEXT:琴條孝詩
いくら急速充電器が増えても「加速」とか「ゼロエミッション」とかに興味がない人はいる! EVはそれでいいんじゃないか?

充電インフラの現実とBEV普及の壁 日本政府は2035年までに新車販売のすべてを電動車(BEV、PHEV、FCVを含む)にするという目標を掲げている。これは、カーボンニュートラルの実現に向けた国家的な方針で、乗用車に関しては「新車販売で電動車100%」を目指すと明言されている。しかし、現実的には、「本当にBEV(バッテリーのみの電気自動車)を無理に普及させる必要があるのか?」という疑問が浮かぶ。 CO2削減という観点から見れば、BEVの製造過程でもCO2は排出される。そのため、燃費性能に優れたHEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)の普及だけでも十分な効果が期待できるのではないだろうか。むしろ、充電インフラの現状を考えると、BEVはその走りや静粛性、加速感といった特性を本当に愛する人だけが乗ればよいという考え方の人がいてもおかしくはない。 国内のBEV充電インフラは、近年急速に整備が進んでいるものの、依然として課題が多い。経済産業省の調査では、2024年3月時点で、国内のEV急速充電の設置数1万128基、普通充電(200V)3万195基という状況である。EV充電スタンドは上記の数にテスラ専用のスーパーチャージャー(SC)のステーション数128の急速充電器数が加わるが、いずれにしても普及率や設置数の面で、利用者の利便性を十分に支える水準には達していない。 また、都市部では急速充電器の設置スペースの確保が難しく、駐車料金が別途かかるケースも多い。地方では自宅充電がしやすい一方、公共充電スポットの利用頻度は限定的となる。さらに、長距離移動時の経路充電、とくに高速道路のサービスエリアでは混雑や台数不足が問題となっており、繁忙期には「充電渋滞」が発生することもある。 設置から8~10年が経過して老朽化する充電器も増えており、更新や維持のためのコスト負担が事業者の重荷となっている。一部の古いCHAdeMO充電器は故障や老朽化が進み、設置場所に行ってみると利用困難なケースがあったり、採算が合わず撤去されたりしているケースも少なくない。 以上のことを考えると、家庭用充電設備の設置ができない集合住宅住まいのユーザーや長距離移動が多いユーザーにとって、BEVの選択は依然としてハードルが高い。 一方、ガソリンスタンドの数は2023年度末で2万7414カ所。政府は、2030年までに「公共用の急速充電器3万基を含む充電インフラを15万基設置する」との目標を掲げているが、給油時間と充電時間の違いもあり、利便性としてBEVの充電環境は厳しいといわざるをえない。

TAG: #EVシフト #普及
TEXT:高橋 優
中国勢が次に目を付けたのはトルコ! いまトルコはEV激戦区になっていた

トルコはEUと関税協定を結んでいる 欧州の玄関口として近年注目を集めているトルコ市場でEV販売が急加速中です。とくに中国勢がシェアを大きく伸ばしながら、現地工場を建設して関税を回避しようとする動きも確認されています。 まず、今回取り上げていきたいトルコ市場は、人口約8750万人、国土面積は78.35平方キロメートルと、日本の2倍強の国土を有します。また、2023年シーズンにおける自動車販売台数はおよそ129万台と世界第14位であり、ロシアやオーストラリアと同等という規模感です。自動車生産も年間で147万台と、フランスと同等の生産規模であり、自動車産業が国の主力産業のひとつにもなっています。 このトルコについて重要なポイントは、欧州連合には加盟していないにもかかわらず、EUとトルコは独自の関税協定を結んでおり関税がかからないという点です。さらに、20カ国以上の国と自由貿易協定も締結しています。また、欧州各国と比較しても人件費が比較的安いことから、欧州の自動車メーカーが生産コストを下げるために、関税のかからないトルコを自動車工場に選んでいます。トルコは海に面していることから、自動車の輸出という観点でも地理的に強みを持っています。 なによりもエルドアン大統領はEVに注力する方針をかねてより示しており、実際に国策として自国の自動車メーカーを立ち上げに成功。Toggと名付けられたEVメーカーはすでにEVを発売中であり、トルコ国内で人気を博しています。 そして、トルコに目をつけたのが中国勢の存在です。まず、BYDがBEVとPHEVの生産工場などの設立のために10億ドルを投資中です。年間生産能力は15万台であり、おもに欧州市場向けに出荷されます。さらにCheryも黒海の面するサムスンにおいて、年産15万台となるEV生産工場の建設を正式に発表しています。 このようにして、Toggをはじめとする国内のEVメーカーやサプライチェーンに投資しながら、さらに国内に中国勢などの生産工場を誘致することによって、欧州向けのEV生産拠点の構築を目指そうとしているのです。 それでは、このトルコ市場最新のEV販売動向や人気のEVランキングを俯瞰しましょう。まず3月単体のBEVの販売台数は約1万2800台と、前年同月比+113.5%であり、急速にBEVシフトが進んでいる様子が見て取れます。 次に新車販売全体に占めるBEVの販売シェア率は10.94%と、前年同月の5.46%と比較しても倍増。すでにトルコ国内で販売されている10台に1台以上がBEVに置き換わっているとイメージしてみれば、驚きのペースであるとイメージできるはずです。 さらに、PHEVとEREVの販売台数も着実に上昇しており、3月単体では3600台以上が売れています。よって、PHEVも含めたNEVシェア率は史上最高水準となる14.25%に到達。2025年末にNEVシェア率25%達成にも期待可能でしょう。 ちなみにこのグラフは、日本やオーストラリアと比較してどれほどBEVシフトが進んでいるのかを比較したものです。この通りトルコは日本市場と比較すると、10倍以上という圧倒的な差をつけてEVシフトを進めている様子が確認できます。

TAG: #トルコ #普及 #販売
TEXT:高橋 優
頼みの綱の日産サクラも大幅減! 日本のEV販売動向は世界と逆の動きで縮小していた

2025年3月の販売台数は約1万1220台 日本国内における最直近の3月のEV販売動向が速報され、テスラの販売が絶好調だったものの、日本メーカー勢は深刻なEV販売低迷が続いている状況が判明しました。 まずこのグラフは、2018年以降のBEVとPHEVの合計販売台数を月間ベースで示したものです。最直近2025年3月の販売台数はおよそ1万1220台と、前年同月比でマイナス成長に留まってしまいました。2カ月連続で販売台数が前年割れという状況です。 ちなみに、商用軽EVである日産クリッパーEVとホンダN-Van e:の販売台数は4月末にならないと判明しないため、若干販売台数とシェア率は増加する見込みです。確定版となる2025年2月の販売実績は8400台となったものの、前年比マイナス21.1%という苦しい状況は変わりません。 次に、新車販売全体に占めるBEVとPHEVの販売台数の合計の比率を示したグラフを見てみると、直近の3月は速報値で2.45%と、前年同月に記録した3.17%と比較してもシェア率は大きく低下しています。数値が確定した2月度のEVシェア率は2.21%であり、前年同月の3.32%から急落している状況でもあります。 次に、そのなかでもとくにBEVの販売動向を詳細に確認していきましょう。このグラフは普通車セグメントの日本メーカーと輸入車メーカー、さらに軽自動車セグメントにわけて示したものです。白で示された輸入EVは3303台と、前年同月比で17.8%もの増加を記録。その一方で、ピンクで示された日本メーカーの普通車セグメントのBEV販売台数はたったの707台と、前年同月比でマイナス36.7%という落ち込み具合です。 また、すでにシェア率が確定している2月は1.42%というBEVシェア率でした。2024年2月が1.88%だったことを踏まえると、BEVシフトが後退している様子が見て取れます。 ちなみに、現在の日本のBEVの販売シェア率が世界の主要国と比較してどれほどの立ち位置であるのかを確認すると、日本はデータが確定した直近の2月において1.42%と低迷しています。その一方で、2月の世界全体のシェア率は13%に到達。2024年2月の世界全体のBEVシェア率は8%だったことから、世界のBEVシフトは着実に成長していることがわかります。 それでは、この日本国内においてどのようなEVが人気であるのかを確認していきたいと思います。まず初めに、2025年累計での主要自動車メーカー別のBEV販売台数の変遷を見てみると、やはり日産が頭ひとつ抜けた存在感を見せています。 日産は3カ月で7800台以上を発売したものの、2025年シーズンは2月と3月連続して前年比で販売台数を落としてしまっています。リーフやアリアだけでなくサクラも前年割れと低迷しており、2025年中のモデルチェンジに期待が集まります。もちろん年末までに発売される新型リーフがどれほどのコスト競争力を実現して、どれほど販売台数を復活させることができるのかにも注目です。

TAG: #日本 #普及 #販売
TEXT:高橋 優
EVは踊り場を迎えている? それ、間違ってます! 2024年の全世界EVの「本当の」販売状況

世界で売れたクルマの5台に1台以上がBEVまたはPHEV 2024年シーズン、世界全体でEVシフト減速といわれていたなかにおいて、果たしてどれほどEVシフトが減速してしまっていたのか。そして2025年はEVシフト減速の流れがさらに強まるのか。世界全体のEVシフト動向を解説します。 まず初めに、最新のデータが判明している2024年12月の世界全体でのBEVとPHEVの販売台数の合計は193万台超で前年同月比で24%アップしました。 さらに、新車販売全体に占めるBEVとPHEVの販売台数のシェア率も、12月単体では史上最高の30%に到達。とくに2021年シーズンから15%、21%、20%、そして2024年最新の30%と、明らかにEVシフトが加速している様子が見て取れます。 また、世界の主要マーケットと比較したBEVに絞った販売シェア率の変遷を比較すると、まず世界全体のシェア率は12月単体で史上最高の19%に到達。つまり、12月単体で世界全体で売れた自動車のうち5台に1台がBEVだったことを意味します。 なかでも中国市場は30%に到達。アメリカ市場も9%に到達しながら、さらに東南アジアのタイ市場も15%に到達するなど、世界各国でBEVシェア率が想定以上に上昇している様子が見て取れます。その一方で、日本市場は2.16%と、世界平均の19%と比較しても低迷している点は注目するべき動向でしょう。 また、年間ベースでのEVシフト動向について、このグラフは世界全体におけるBEVとPHEVそれぞれの年間販売台数の変遷、およびNEV(BEV+PHEV)とBEV単体の販売シェア率の変遷を示したものです。2024年シーズン通しでの世界全体のNEVシェア率は22%に到達。つまり、2024年通しで世界全体で売れた自動車の5台に1台以上がBEVかPHEVだったということになります。 また、BEVシェア率も14%に到達。つまり、2024年通しで世界全体で売れた自動車の7台に1台がBEVだったことになります。BEV販売は2023年シーズンは踊り場を迎えていたという背景が存在します。ところが、2024年シーズンというのは力強い成長を実現しており、このことからもEV減速という表現は誤りなのです。むしろ2023年シーズンの踊り場を乗り越えて、再び成長軌道に乗っていた1年だったという表現が正しいわけです。 さらに注目するべきは、欧州・米国・中国という主要マーケット3つを除いた、その他のマーケット全体では、NEV販売台数は前年比27%も増加しているというデータでしょう。つまり、この世界全体のEVシフト動向を考察する際にどうしても最大マーケットの中国市場や欧米市場の動向に左右されてしまい、本当に世界全体のEV動向を細かく分析することが難しいものの、じつは欧米中以外のマーケットでは、2024年シーズン、欧米以上にEVシフトが進んでいたということなのです。 いずれにしても、2024年シーズンにEVシフトが減速したという言説は、PHEVを含めないBEVのみという観点、また欧米中という主要マーケットを含めないその他のマーケットという観点でも明確に誤りであるといえるのです。

TAG: #2024年 #普及 #販売
TEXT:高橋 優
BYDの強みはEVだけじゃなくバッテリーメーカーという点! 世界規模でシェアを伸ばすバッテリー供給戦略の次なる一手

BYDが全固体電池に関するスケジュールを発表 中国BYDが全固体電池の見通しについて、2027年中に全固体電池搭載EVの量産をスタートしながら、2030年までに普及モデルに対しての導入を行うと発表しました。EVのリーダーであるBYDの全固体電池開発に対する期待と懸念を解説します。 まず、BYDは現在、世界最大のEVメーカーでありながら世界で2番目のバッテリーサプライヤーです。このグラフは世界の主要バッテリーサプライヤーのBEVに搭載された電池量の変遷を示したものです。CATLのあとにつけるのがBYDであり、2024年シーズンは153GWhを納入しています。 BYDについて注目するべきは生産能力の拡張のスピードです。2021年シーズンは26.4GWhという納入量だったことから、たったの3年間で6倍も成長したことになります。これまでは自社EV分のバッテリーを生産していたものの、2024年シーズン以降、外販にも本格的に注力。すでにテスラやトヨタ、シャオミなどにバッテリーを供給しており、今後はさらに中国メーカー勢やスズキ、ステランティスなどへも供給する見込みです。 その一方で、シェア拡大という観点で苦戦が続いているのが日韓勢の存在です。韓国最大手のLGエナジーソリューションは2024年シーズンに96.3GWhと、2023年シーズンと比較して納入量をほとんど増やすことができていません。さらにパナソニックは、前年比マイナス18%という結果に落ち込んでいます。 また、このグラフはバッテリーサプライヤーのマーケットシェア率の変遷を示したものです。トップのCATLは2024年に37.9%、BYDも17.2%を実現。上位2社で世界のEV用バッテリーの過半数を抑えてしまっている状況です。とくに3位以下のLGやSK、パナソニックなどが軒並み前年比で成長することができていないという点を踏まえると、2025年もCATLとBYDのシェア拡大が続くものと見られます。 そして、この世界のEV向けバッテリーで存在感を高めるBYDは、2030年に向けてバッテリー技術革新でふたつのアプローチを採用しようとしています。まずは独自開発のLFPブレードバッテリーの改良、コストダウン、そして生産拡大です。 すでに生産中の第一世代のブレードバッテリーのエネルギー密度は、LFPとして業界最高水準を実現済みです。たとえばATTO 3のエネルギー密度はパックレベルで150Wh/kgを実現。これは、三元系のトヨタbZ4Xや日産アリアと同等水準のエネルギー密度です。まさに一部メーカーの三元系バッテリーと同等のエネルギー密度を実現することで同等のEV性能を担保しながら、その上でLFPの強みである安さによって生産コストを大幅に削減することに成功しています。BYDのEVが高いコストパフォーマンスを実現できている最大の理由が、このバッテリーなのです。 また、BYDは3月中にも長らく待望されていたブレードバッテリーの第二世代を発表する見通しです。第二世代に関するリーク情報では、おもに超急速充電にフォーカスするショートブレードと、エネルギー密度のさらなる向上にフォーカスするロングブレードの2種類に分割する見通しです。 まず主力車種に搭載されるロングブレードでは、セルあたりのエネルギー密度を概ね200Wh/kg級にまで高めることでセルの搭載数を最適化し、車両重量の軽量化などを実現する模様です。 そして、フラグシップに搭載されるショートブレードでは、エネルギー密度は第一世代とさほど変わらない見込みながら、超急速充電に対応。Han Lには83.212kWhバッテリーが搭載されることが判明済みで、少なくともCレートで6Cとなる500kW級の超急速充電出力に対応し、充電時間は10分程度を実現する見通しです。 さらにBYDは、既存のLFPバッテリーの改善と同時並行で、トヨタ、ホンダ、日産という日本勢も研究開発を進める全固体電池の開発にも注力しています。BYDの全固体電池の研究開発は2016年から基礎研究がスタート。2023年までに基礎研究段階を終了して、2024年中に20Ahと60Ahの全固体電池セルの試作品の生産をスタート済みです。

TAG: #全固体電池 #普及
TEXT:渡辺陽一郎
国内EV市場はサクラと輸入車で8割にも達する偏りっぷり! EVが売れないというより「売っていない」に等しい国産メーカーの状況

EVを普及させるには車種を増やす必要がある 2024年におけるEV(エンジンを搭載しない純粋な電気自動車)の国内販売台数は、前年に比べると33%減って約6万台だった。2024年の国内販売総数は約442万台だから、EVの販売比率は1.4%に留まる。 そして、2024年に国内でもっとも多く販売されたEVはサクラで、2023年に比べると売れ行きを38%減らした。それでも約2万3000台を売ったから、国内で販売されたEVの38%を占める。 また、輸入車のEVは、2024年に約2万4200台が販売された。国内で新車として売られたEVの40%を占める。 つまり、いまの国内におけるEVは、38%を占めるサクラと40%の輸入で成り立ち、両方を合計すると78%に達する。きわめて偏った売れ方になっているのだ。 EVの新車販売で、輸入車の比率が40%に達した理由は、EVのラインアップが豊富にあるからだ。販売の主力となる輸入ブランドでは、ボディタイプ別に見ると、メルセデス・ベンツとBMWが各7車種、アウディは3車種を用意する。さらに、EVに特化したテスラ、BYD、ヒョンデも複数のEVを用意するから、価格帯は高めでも車種の選択肢は多い。 その一方で日本車は、EVの車種がもっとも多い日産でも、乗用車はサクラ/リーフ/アリアだけだ。トヨタは2024年における国内シェアが31%、小型/普通車に限れば47%に達するメーカーだが、エンジンを搭載しいない乗用EVは、bZ4XとレクサスRZ/UX300eに限られる。ホンダはHonda eの生産を終えたので、2024年1月時点で販売されているEVは、軽商用車のN-VAN e:のみだ。 このようなラインアップでは、日本のユーザーが日本のメーカーからEVを買いたいと思っても、購入するのは困難だ。日本では「EVが売れない」といわれるが、実際には「売っていない」に等しい。 その結果、サクラと輸入車だけで、新車EV市場の約8割に達してしまう。輸入車については、1車種当たりの販売台数はわずかだが、車種の数が多いから40%に達した。 EVの国内販売台数が前年に比べて33%減った理由も、車種の数が少ないからだ。サクラがほしい人達に行き渡って売れ行きを下げると、車種が少ないために、EV市場全体の販売不振を招いてしまう。EVは新しいカテゴリーだから、乗り替え需要も乏しく、新車の車種数を増やさないと売れ行きも伸びない。 今後の日本で必要なEVは、サクラのヒットからもわかるように、セカンドカーとして使える軽自動車やコンパクトカーだ。複数のクルマを所有する世帯には、一戸建てが多いから、充電設備を設置しやすい。EVをセカンドカーとして使えば、遠方への外出では乗らないから、1回の充電で走れる距離が短くても不満は生じにくい。 このような日本のEV事情を考えると、ホンダはHonda eを廃止すべきではなかった。価格の割安なグレードを加えるなど、改良を行って作り続けるべきだった。今後、ホンダはN-ONE e:を投入する予定で、他社についても、魅力的な軽自動車のEVが望まれている。

TAG: #日本 #普及
TEXT:渡辺陽一郎
「EVはメンテにお金がかからない=ディーラーは儲からない」は事実……だけどそれだけじゃない! EVをラインアップする多大なるメリットとは

EVが新しい需要を生み出している EV(エンジンを搭載しない電気自動車)は、ハイブリッドなどと異なり、エンジンオイルやオイルフィルターの交換を必要としない。そのため、ユーザーから受け取るメンテナンス費用も下がる。 首都圏の日産ディーラーに尋ねると以下のように返答があった。 「メンテプロパックの価格は、初回車検までをサポートするコースの場合、エクストレイルは約25万円だ。それがEVのアリアになると18万円少々に下がる。アリアはエクストレイルと違って、6カ月ごとのエンジンオイル交換と、1年ごとのオイルフィルター交換を必要としないためだ。その代わりアリアでは、6カ月ごとのEV診断、1年ごとのタイヤローテーションを実施するが、それでもアリアのメンテプロパック価格は、エクストレイルに比べて約30%安くなる」。 それならEVは、販売会社にとってラインアップしたくない商品なのか。 「そのようなことはない。たとえばサクラは、いままでデイズなどの軽自動車を所有していないお客さまが、2台目のクルマとして購入されている。サクラがなければ、単数所有のままだったから、EVのサクラは新たな日産車の需要を開拓している」。 単純にメンテナンスの売り上げだけを考えれば、オイル交換などを必要としないEVは儲かりにくいカテゴリーだろう。しかし実際には、EVがセカンドカーの新しい需要を生み出している。ガソリン車を下取りに出してEVを買うのではなく、ガソリン車と併せて複数のクルマを使うようになっている。そうなれば日産車の保有台数も増えるから、EVを扱うメリットは大きい。 日産のブランドイメージに与える影響も見逃せない。リーフやサクラがあるから、日産は「環境性能の優れた電動車のメーカー」と判断され、e-POWERを搭載するノートやセレナの売れ行きも高めている。日産に限らず、EVを扱うことには、さまざまなメリットや相乗効果があるのだ。

TAG: #ディーラー #普及

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【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
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イベント
公道レース「フォーミュラE東京」が帰って来る! チケットを持っていなくとも無料で1日遊び尽くせる2日間
災害に備えて未来を楽しむ! 「AWAJI EV MEET 2025」の参加はまだまだ受付中
災害時にも活躍できるEVの可能性を淡路島で体験! 「AWAJI EV MEET 2025 from OUTDOOR FEELS」開催決定
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