#普及
TEXT:高橋 優
EVは踊り場を迎えている? それ、間違ってます! 2024年の全世界EVの「本当の」販売状況

世界で売れたクルマの5台に1台以上がBEVまたはPHEV 2024年シーズン、世界全体でEVシフト減速といわれていたなかにおいて、果たしてどれほどEVシフトが減速してしまっていたのか。そして2025年はEVシフト減速の流れがさらに強まるのか。世界全体のEVシフト動向を解説します。 まず初めに、最新のデータが判明している2024年12月の世界全体でのBEVとPHEVの販売台数の合計は193万台超で前年同月比で24%アップしました。 さらに、新車販売全体に占めるBEVとPHEVの販売台数のシェア率も、12月単体では史上最高の30%に到達。とくに2021年シーズンから15%、21%、20%、そして2024年最新の30%と、明らかにEVシフトが加速している様子が見て取れます。 また、世界の主要マーケットと比較したBEVに絞った販売シェア率の変遷を比較すると、まず世界全体のシェア率は12月単体で史上最高の19%に到達。つまり、12月単体で世界全体で売れた自動車のうち5台に1台がBEVだったことを意味します。 なかでも中国市場は30%に到達。アメリカ市場も9%に到達しながら、さらに東南アジアのタイ市場も15%に到達するなど、世界各国でBEVシェア率が想定以上に上昇している様子が見て取れます。その一方で、日本市場は2.16%と、世界平均の19%と比較しても低迷している点は注目するべき動向でしょう。 また、年間ベースでのEVシフト動向について、このグラフは世界全体におけるBEVとPHEVそれぞれの年間販売台数の変遷、およびNEV(BEV+PHEV)とBEV単体の販売シェア率の変遷を示したものです。2024年シーズン通しでの世界全体のNEVシェア率は22%に到達。つまり、2024年通しで世界全体で売れた自動車の5台に1台以上がBEVかPHEVだったということになります。 また、BEVシェア率も14%に到達。つまり、2024年通しで世界全体で売れた自動車の7台に1台がBEVだったことになります。BEV販売は2023年シーズンは踊り場を迎えていたという背景が存在します。ところが、2024年シーズンというのは力強い成長を実現しており、このことからもEV減速という表現は誤りなのです。むしろ2023年シーズンの踊り場を乗り越えて、再び成長軌道に乗っていた1年だったという表現が正しいわけです。 さらに注目するべきは、欧州・米国・中国という主要マーケット3つを除いた、その他のマーケット全体では、NEV販売台数は前年比27%も増加しているというデータでしょう。つまり、この世界全体のEVシフト動向を考察する際にどうしても最大マーケットの中国市場や欧米市場の動向に左右されてしまい、本当に世界全体のEV動向を細かく分析することが難しいものの、じつは欧米中以外のマーケットでは、2024年シーズン、欧米以上にEVシフトが進んでいたということなのです。 いずれにしても、2024年シーズンにEVシフトが減速したという言説は、PHEVを含めないBEVのみという観点、また欧米中という主要マーケットを含めないその他のマーケットという観点でも明確に誤りであるといえるのです。

TAG: #2024年 #普及 #販売
TEXT:高橋 優
BYDの強みはEVだけじゃなくバッテリーメーカーという点! 世界規模でシェアを伸ばすバッテリー供給戦略の次なる一手

BYDが全固体電池に関するスケジュールを発表 中国BYDが全固体電池の見通しについて、2027年中に全固体電池搭載EVの量産をスタートしながら、2030年までに普及モデルに対しての導入を行うと発表しました。EVのリーダーであるBYDの全固体電池開発に対する期待と懸念を解説します。 まず、BYDは現在、世界最大のEVメーカーでありながら世界で2番目のバッテリーサプライヤーです。このグラフは世界の主要バッテリーサプライヤーのBEVに搭載された電池量の変遷を示したものです。CATLのあとにつけるのがBYDであり、2024年シーズンは153GWhを納入しています。 BYDについて注目するべきは生産能力の拡張のスピードです。2021年シーズンは26.4GWhという納入量だったことから、たったの3年間で6倍も成長したことになります。これまでは自社EV分のバッテリーを生産していたものの、2024年シーズン以降、外販にも本格的に注力。すでにテスラやトヨタ、シャオミなどにバッテリーを供給しており、今後はさらに中国メーカー勢やスズキ、ステランティスなどへも供給する見込みです。 その一方で、シェア拡大という観点で苦戦が続いているのが日韓勢の存在です。韓国最大手のLGエナジーソリューションは2024年シーズンに96.3GWhと、2023年シーズンと比較して納入量をほとんど増やすことができていません。さらにパナソニックは、前年比マイナス18%という結果に落ち込んでいます。 また、このグラフはバッテリーサプライヤーのマーケットシェア率の変遷を示したものです。トップのCATLは2024年に37.9%、BYDも17.2%を実現。上位2社で世界のEV用バッテリーの過半数を抑えてしまっている状況です。とくに3位以下のLGやSK、パナソニックなどが軒並み前年比で成長することができていないという点を踏まえると、2025年もCATLとBYDのシェア拡大が続くものと見られます。 そして、この世界のEV向けバッテリーで存在感を高めるBYDは、2030年に向けてバッテリー技術革新でふたつのアプローチを採用しようとしています。まずは独自開発のLFPブレードバッテリーの改良、コストダウン、そして生産拡大です。 すでに生産中の第一世代のブレードバッテリーのエネルギー密度は、LFPとして業界最高水準を実現済みです。たとえばATTO 3のエネルギー密度はパックレベルで150Wh/kgを実現。これは、三元系のトヨタbZ4Xや日産アリアと同等水準のエネルギー密度です。まさに一部メーカーの三元系バッテリーと同等のエネルギー密度を実現することで同等のEV性能を担保しながら、その上でLFPの強みである安さによって生産コストを大幅に削減することに成功しています。BYDのEVが高いコストパフォーマンスを実現できている最大の理由が、このバッテリーなのです。 また、BYDは3月中にも長らく待望されていたブレードバッテリーの第二世代を発表する見通しです。第二世代に関するリーク情報では、おもに超急速充電にフォーカスするショートブレードと、エネルギー密度のさらなる向上にフォーカスするロングブレードの2種類に分割する見通しです。 まず主力車種に搭載されるロングブレードでは、セルあたりのエネルギー密度を概ね200Wh/kg級にまで高めることでセルの搭載数を最適化し、車両重量の軽量化などを実現する模様です。 そして、フラグシップに搭載されるショートブレードでは、エネルギー密度は第一世代とさほど変わらない見込みながら、超急速充電に対応。Han Lには83.212kWhバッテリーが搭載されることが判明済みで、少なくともCレートで6Cとなる500kW級の超急速充電出力に対応し、充電時間は10分程度を実現する見通しです。 さらにBYDは、既存のLFPバッテリーの改善と同時並行で、トヨタ、ホンダ、日産という日本勢も研究開発を進める全固体電池の開発にも注力しています。BYDの全固体電池の研究開発は2016年から基礎研究がスタート。2023年までに基礎研究段階を終了して、2024年中に20Ahと60Ahの全固体電池セルの試作品の生産をスタート済みです。

TAG: #全固体電池 #普及
TEXT:渡辺陽一郎
国内EV市場はサクラと輸入車で8割にも達する偏りっぷり! EVが売れないというより「売っていない」に等しい国産メーカーの状況

EVを普及させるには車種を増やす必要がある 2024年におけるEV(エンジンを搭載しない純粋な電気自動車)の国内販売台数は、前年に比べると33%減って約6万台だった。2024年の国内販売総数は約442万台だから、EVの販売比率は1.4%に留まる。 そして、2024年に国内でもっとも多く販売されたEVはサクラで、2023年に比べると売れ行きを38%減らした。それでも約2万3000台を売ったから、国内で販売されたEVの38%を占める。 また、輸入車のEVは、2024年に約2万4200台が販売された。国内で新車として売られたEVの40%を占める。 つまり、いまの国内におけるEVは、38%を占めるサクラと40%の輸入で成り立ち、両方を合計すると78%に達する。きわめて偏った売れ方になっているのだ。 EVの新車販売で、輸入車の比率が40%に達した理由は、EVのラインアップが豊富にあるからだ。販売の主力となる輸入ブランドでは、ボディタイプ別に見ると、メルセデス・ベンツとBMWが各7車種、アウディは3車種を用意する。さらに、EVに特化したテスラ、BYD、ヒョンデも複数のEVを用意するから、価格帯は高めでも車種の選択肢は多い。 その一方で日本車は、EVの車種がもっとも多い日産でも、乗用車はサクラ/リーフ/アリアだけだ。トヨタは2024年における国内シェアが31%、小型/普通車に限れば47%に達するメーカーだが、エンジンを搭載しいない乗用EVは、bZ4XとレクサスRZ/UX300eに限られる。ホンダはHonda eの生産を終えたので、2024年1月時点で販売されているEVは、軽商用車のN-VAN e:のみだ。 このようなラインアップでは、日本のユーザーが日本のメーカーからEVを買いたいと思っても、購入するのは困難だ。日本では「EVが売れない」といわれるが、実際には「売っていない」に等しい。 その結果、サクラと輸入車だけで、新車EV市場の約8割に達してしまう。輸入車については、1車種当たりの販売台数はわずかだが、車種の数が多いから40%に達した。 EVの国内販売台数が前年に比べて33%減った理由も、車種の数が少ないからだ。サクラがほしい人達に行き渡って売れ行きを下げると、車種が少ないために、EV市場全体の販売不振を招いてしまう。EVは新しいカテゴリーだから、乗り替え需要も乏しく、新車の車種数を増やさないと売れ行きも伸びない。 今後の日本で必要なEVは、サクラのヒットからもわかるように、セカンドカーとして使える軽自動車やコンパクトカーだ。複数のクルマを所有する世帯には、一戸建てが多いから、充電設備を設置しやすい。EVをセカンドカーとして使えば、遠方への外出では乗らないから、1回の充電で走れる距離が短くても不満は生じにくい。 このような日本のEV事情を考えると、ホンダはHonda eを廃止すべきではなかった。価格の割安なグレードを加えるなど、改良を行って作り続けるべきだった。今後、ホンダはN-ONE e:を投入する予定で、他社についても、魅力的な軽自動車のEVが望まれている。

TAG: #日本 #普及
TEXT:渡辺陽一郎
「EVはメンテにお金がかからない=ディーラーは儲からない」は事実……だけどそれだけじゃない! EVをラインアップする多大なるメリットとは

EVが新しい需要を生み出している EV(エンジンを搭載しない電気自動車)は、ハイブリッドなどと異なり、エンジンオイルやオイルフィルターの交換を必要としない。そのため、ユーザーから受け取るメンテナンス費用も下がる。 首都圏の日産ディーラーに尋ねると以下のように返答があった。 「メンテプロパックの価格は、初回車検までをサポートするコースの場合、エクストレイルは約25万円だ。それがEVのアリアになると18万円少々に下がる。アリアはエクストレイルと違って、6カ月ごとのエンジンオイル交換と、1年ごとのオイルフィルター交換を必要としないためだ。その代わりアリアでは、6カ月ごとのEV診断、1年ごとのタイヤローテーションを実施するが、それでもアリアのメンテプロパック価格は、エクストレイルに比べて約30%安くなる」。 それならEVは、販売会社にとってラインアップしたくない商品なのか。 「そのようなことはない。たとえばサクラは、いままでデイズなどの軽自動車を所有していないお客さまが、2台目のクルマとして購入されている。サクラがなければ、単数所有のままだったから、EVのサクラは新たな日産車の需要を開拓している」。 単純にメンテナンスの売り上げだけを考えれば、オイル交換などを必要としないEVは儲かりにくいカテゴリーだろう。しかし実際には、EVがセカンドカーの新しい需要を生み出している。ガソリン車を下取りに出してEVを買うのではなく、ガソリン車と併せて複数のクルマを使うようになっている。そうなれば日産車の保有台数も増えるから、EVを扱うメリットは大きい。 日産のブランドイメージに与える影響も見逃せない。リーフやサクラがあるから、日産は「環境性能の優れた電動車のメーカー」と判断され、e-POWERを搭載するノートやセレナの売れ行きも高めている。日産に限らず、EVを扱うことには、さまざまなメリットや相乗効果があるのだ。

TAG: #ディーラー #普及
TEXT:小鮒康一
結局EV普及のネックは「価格」! 補助金を抜きにした価格が下がらないと売れない

「価格」がEV購入のハードルになっている ここのところ街なかで見かける機会も増えてきた電気自動車。航続距離の問題や充電設備の有無などでオススメできるユーザーは限られてしまうものの、そういった諸問題がクリアになっている人にとっては、モーター駆動の俊敏なレスポンシブな走りや高い静粛性、そして先進性などが魅力的に映っているのではないだろうか。 電気自動車の出始めのころは駆動用のバッテリーの耐久性も難点のひとつとなっており、数年運用するだけで劣化が進み、航続距離が一気に減少してしまうということもあったが、技術の進歩は目覚しく近年のモデルであればそこまで極端な劣化もしにくくなっているというのも嬉しいところだ。 また、一時期に比べれば大容量バッテリーを搭載するモデルも増え、満充電での航続距離も長くなるなど、電気自動車にまつわる問題は徐々に解決しつつあるのだが、いまだに高いハードルとなっているものがある。それが「価格」である。 たとえば日産の電気自動車であるサクラは、ユーザーのほとんどが近距離移動を中心としているというデータのある軽自動車規格でリリースされ、電気自動車の特性とマッチしたことでスマッシュヒットを記録したモデルだ。 このサクラ、クルマに詳しい人であればご存じのとおり、ガソリンエンジンを搭載するデイズと基本骨格を共有しており、いわば兄弟車の関係となっているのだが、サクラのエントリーグレードである「X」の価格が259万9300円なのに対し、デイズの同じ「X」では147万8400円と100万円以上の価格差があるのだ。 仮にデイズの最上級グレードである「ハイウェイスターGターボ アーバンクロム プロパイロットエディション」と比較しても200万6400円とこれでも60万円近くサクラが高いことになってしまう。 一応、サクラには国からの補助金が55万円出ることになっているが(令和6年度の場合)、補助金は未来永劫出る類のものではないし、補助金に頼った販売というのも健全ではない。 ではなぜ電気自動車が内燃機関を搭載した車両よりも高額となってしまうのかというと、それは駆動用バッテリーが高額であるからにほかならない。 ただ、駆動用バッテリーの価格も電気自動車が出始めのころに比べるとかなり下がってきている。これはバッテリーを開発、生産する企業の努力ももちろんだが、電気自動車が広く普及したことも確実に影響していることは間違いない。 そのため、今後も順調に電気自動車の需要が伸び続け、開発がより進んでコストダウンが可能となれば、電気自動車もより買いやすい価格となっていくことだろう。

TAG: #普及 #購入
TEXT:桃田健史
同じ車格のハイブリッドやエンジン車に比べてEVは高い! そもそもEVが高額になるのはナゼ?

同じ車格でもガソリン車の2倍! ウチでもそろそろEVに買い替えようか。そう思って各モデルをネットでチェックすると、「やっぱりEVは、けっこう(価格が)するな」と思う人がいるだろう。 これは、同じ車格のガソリン車やハイブリッド車と比べてのことだ。 メーカーやグレードにもよるが、軽自動車や小型車で比較すると、100万円とか200万円とかいうより、ざっくり2倍といったケースも珍しくない。 そうした価格差を、国や地方自治体からの購入補助金を使って抑制している。補助金がなければ、明らかに高いと感じるだろう。 では、そもそもなぜEVの価格は高いのか。 一般論としては、いわゆる量産効果によるもの。開発や製造にかかるメーカー側のコストが高いので、その分を生産・販売量を増やすことで下げることを指す。 ただし、たとえばハイブリッド車の場合、先行導入されたトヨタ・プリウスがガソリン車と比べてかなり高い買い物というイメージはなかった。トヨタとしては、新しい領域のクルマをユーザーに少しでも早く馴染んでもらうため、いわば赤字覚悟で価格を設定したということになる。 そうならば、EVについても導入当初はメーカー側の利益を大きく抑えた価格設定をすればいい、と考える人もいるだろう。

TAG: #普及 #販売
TEXT:桃田健史
EVの先行きはわからないが気がつけば選び放題! いまの日本は輸入車だけで7ブランド136車種ものEVが買える!!

輸入電動車は現在7ブランド・136モデル 最近、日本でもEVラインアップが一気に増えた。そう感じている人が少なくないだろう。とくに、輸入車でのモデル拡充が目立つ。 たとえば、11月中旬にはJR東京駅周辺に輸入車ブランドのEVや燃料電池車など数多く展示されたり、また筆者もドライバーとして参加したユーザー向けの公道試乗会が実施された。これは、輸入車関連企業がつくる業界団体、日本自動車輸入組合(JAIA)が実施した「JAIAカーボンニュートラル促進イベント in 東京」だ。 その際、JAIAが提示したデータが興味深い。同イベントが開催された約4年前の2020年10月に電動車は、JAIA登録ブランドのうち10ブランドで20モデル。それが、2024年6月末時点で7ブランド・136モデルと急激に拡大している。 そうしたモデルは、コンパクトカーから大型SUV、さらに超高価格のスポーツカー、さらに二輪車など多種多様だ。 また、JAIAの上野金太郎会長によれば、「2024年上半期でJAIAの電動車販売台数が初めて1万台の大台を超えた」という。シェアで見ると16.7%。ただし、ブランド別で、しかもEVに限定した販売比率についてはJAIAとして公開していない。 また、グローバルにおけるEVシェアはどうなっているのだろうか。 これについても、メーカーやブランドによって、それぞれで電動車の定義が若干違うこともあり、EVに限定したシェアを抽出することは現時点で難しい。 そこで、市場全体での状況についてデータを紹介しておく。 欧州オーストリアの自動車関連大手のAVLが、日本国内で9月に実施したシンポジウムで公開したデータがある。 それによれば、7月時点でグローバルでのEV(及び燃料電池車、レンジエクスタンダー)の販売比率は14.4%だ。エリア別で見ると、やはりもっとも販売比率が大きいのは中国だ。中国で言うNEV(新エネルギー車)の販売比率は23.6%に及ぶ。 2010年代に世界一の自動車生産・販売国となった中国では、政府主導のNEV政策を推進してきた効果が大きい。 次いで、欧州が11.1%。ただし、欧州連合の執務機関である欧州委員会がこれまで推進してきた欧州グリーンディール政策における電動化関連法案が宙に浮いている状態であり、こうした販売比率が今後、さらに減少する可能性も否定できない。 メルセデス・ベンツやボルボなど、自社のEVシフト戦略を見直す動きもあるなか、メーカー各社の今後のEV販売比率の変化を予想することは難しい。

TAG: #EVシフト #普及
TEXT:桃田健史
「ガソリン旧車価格が爆騰」「クルマを所有しなくなる」 数十年後の自動車社会はどうなるのか現実的に想像してみた

EVの普及と社会の変革は同時に行われるべき いまから十数年後の2040年代、さらにその先の2050年代。仮に、日本で新車購入できる自動車がEVのみになったら、どうなるのだろうか? あくまでも私見としての仮定を、いくつか紹介してみる。 たとえば、ガソリンスタンドの数が極端に少なくなっていて、ハイブリッド車の所有はかなり大変になっているのかもしれない。 EVではなくても、少なくともPHEVではないと、日常生活のなかで自動車を使うことが不便に感じるのかもしれない。 充電施設についても、自宅での基礎充電機器が量産効果によって価格が下がり、出力10kW程度が標準化になっているのかもしれない。そうなれば、電池容量が100kWh級でも、自宅でひと晩で出来るようになる。 または、交換式バッテリーシステムが一気に進化して、バッテリーパックの標準化も進み、充電するという感覚がなくなっているかもしれない。 国や地域によっては、期限を決めてガソリン車やディーゼル車を公道で使用することが禁止、または制限される時代になるかもしれない。その先には、内燃機関を搭載するハイブリッド車ですら、使用制限がかかるかもしれない。 こうした動きを、別の方向から見れば、ガソリン車の付加価値が一気に上がることも十分考えられる。実際、2020年代中盤の現時点でも、昭和の時代を感じるネオクラシックカーの中古車価格が一部車種では高騰する社会現象が起こっている。 それが、ガソリン車の使用禁止や使用制限が法的にかかれば、在りし日を思い起こすような一部のガソリン車はプレミアム価格になって、専用の売買市場のなかで取引されるようになるかもしれない。 また、サーキットなどのクローズドエリアで開催される、ガソリン車の試乗会や同乗体験会などもかなり高い料金設定でも、事業が十分成り立つようなビジネスモデルになるかもしれない。 以上のような予測は、EVをガソリン車の単なる代替として見た場合の話だ。だが、本来のEVシフトは、社会のなかで多く使われている電気というインフラを「クルマにも適用する」ことだと思う。つまり、EVの普及と社会の変革は同時進行で行われるべきことなのだ。 たとえば、大量生産・大量消費という「所有」から、シェアリングを基本とする「共有」への大きなシフトが考えられる。ただし、「所有から共有」といっても、カーシェア、ライドシェア、さらにサブスクといった小さな括りではない。もっと大きな時代の変化を、ユーザー自身が感じる社会がやってくるのかもしれない。 EVしか買えなくなる時代とは、そんな社会変化を伴うことになるのではないだろうか。

TAG: #EVシフト #普及
TEXT:琴條孝詩
結局正解は日本のアプローチ! 新車販売のBEV割合がたった1.3%でも焦る必要なし!!

日本の新車販売に占めるBEVの割合は約1.3% 2024年の一般社団法人日本自動車販売協会連合会(自販連)の最新データ(1〜10月)によると、日本の新車販売に占めるバッテリー電気自動車(BEV)の割合は約1.3%。この数値は、2023年のノルウェー(83%)、アイスランド(54%)、スウェーデン(33%)、中国(22%)、アメリカ合衆国(7%)と世界各国と比較しても非常に低い水準にある。一見すると暗たんたる状況に思えるが、本当にそうなのだろうか。 <EVの普及は待ったなしではない> BEVが普及したからといって、私たちの生活に支障が出るわけではない。確かに、街を走るクルマの8割がBEVに変われば、空気の質は劇的に改善されるだろう。しかし、その道のりは段階的であり、焦る必要はまったくない。 日本の自動車メーカーは、長年にわたりハイブリッド車(HEV)の開発と普及に注力してきた。トヨタを筆頭に、日産、ホンダといった大手メーカーは、すでに電動化技術において世界トップレベルの技術を蓄積している。2030年までに、多くの自動車メーカーがBEVとハイブリッド車の販売比率を50%以上に引き上げる計画を発表しており、技術的な準備は着々と進んでいる。 充電インフラの課題も徐々に解決されつつある。経済産業省の支援のもと、全国各地に急速充電器の設置が進められ、2024年時点では約3万基の充電設備が整備されている。都市部だけでなく、地方においても充電ステーションの整備が加速しており、EVの実用性は確実に高まっている。

TAG: #普及 #販売
TEXT:高橋 優
じわじわ日本でのシェアを伸ばすBYDはシトロエンやルノーと同等規模に! 一方で日本のEV販売台数は前年同月比10カ月連続でマイナスだった

普通車セグメントの需要が低下している 日本国内の2024年9月のEV販売動向が速報され、EVシェア率が前年比マイナス成長という、日本国内のEVシフト停滞模様を解説します。 まずこのグラフは、2018年以降のバッテリーEVとプラグインハイブリッド車の合計販売台数を月間ベースで示したものです。2024年9月の販売台数は9587台と、前月である8月よりもプラス成長だった一方、前年同月は1.3万台強という販売台数であり、前年同月比でマイナス29.8%と、大幅なEV減速の兆候が見てとれます。2023年12月以降、10カ月連続、前年同月比でマイナス成長です。 そして、そのEVシフトの変遷をさらにわかりやすくするために、新車販売全体に占めるバッテリーEVとPHEVの販売台数の合計の比率を示したグラフを見てみると、9月は2.62%と、前年同月に記録した3.76%と比較してもシェア率が低下している状況です。 次に、バッテリーEVの販売動向として、このグラフは普通車セグメントと軽自動車セグメントそれぞれのバッテリーEVの販売台数の変遷を示したものです。9月はバッテリーEV全体で6421台と、前年同月と比較して19.7%ものマイナス成長です。 さらにこのグラフは、その普通車セグメントを、日本メーカーと輸入車メーカーそれぞれにわけて示したものです。白で示されている輸入EVは、前年同月比で13.4%のマイナス成長に留まったものの、ピンクで示されている日本メーカーの普通車セグメントのバッテリーEV販売台数は972台と、前年同月比でマイナス41.3%という落ち込み具合です。このことからも、現在の日本国内のEVシフト後退のもっとも大きな要因というのは、とくにリーフやアリア、bZ4Xのような日本メーカーの普通車セグメントの需要が大きく低下しているからであるといえます。 また、バッテリーEVの累計販売台数を年別に比較すると、2024年9カ月間において4.5万台ものバッテリーEVを発売したものの、2023年は9カ月間で7万台近くを発売しています。年末までにどれほど販売台数で巻き返しを図れるのかに期待です。 また、現在の日本のバッテリーEVの販売シェア率が世界の主要国と比較して、どれほどの立ち位置であるのかを確認してみると、9月は1.75%というBEV販売シェア率でした。まだ9月の各国の最新販売データが更新されていないものの、7月の世界全体のシェア率は12%に到達。さらに、8月の自動車大国中国市場は30.6%を達成しています。 それでは、この日本国内においてどのような電気自動車が人気であるのか、とくに懸念視されている、日本メーカーのEVがどのような販売動向であるのかを確認しましょう。

TAG: #日本 #普及 #販売

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