コラム
share:

新型メルセデス・ベンツEQSをロングランで試した! 日本の急速充電設備だと充電性能はやや不満!!


TEXT:高橋 優 PHOTO:EV NATIVE/THE EV TIMES
TAG:

NACS規格を採用すべきか

【総評】

まず、航続距離テストについて、外気温は平均1.5℃程度、最低気温は-2.5℃まで下がっていたこともあり、EVの電費という観点では厳しいコンディションだったはずです。そして、新型EQS450+のもっとも信用に値するEPA基準の航続距離は、まだ米国で発売前ということもあり公表されていないものの、旧モデルのEPA航続距離とWLTP基準の航続距離による増加比率から約601kmと概算可能。よって、真冬に暖房を常時使用してカタログスペックをやや下まわる結果ということになりました。

表

とはいえ、新型EQSからは暖房による冬場の電力使用量を抑えるヒートポンプシステムが標準搭載されています。以前実施した旧式EQS450+の夏場の航続距離が約681kmを記録していたことを踏まえると、新型EQS450+では夏場に700km以上の航続距離を達成することはまず間違いありません。

また、時速120km巡航でのハイスピードテストでは511kmを達成しており、高速域での電費のよさが見て取れます。仮に東京大阪間を真冬に暖房をつけて時速120kmで巡航し続けても走り切ることができてしまう(実際に日本で時速120kmを長時間出せるのは新東名区間のみ)とイメージしてみると、EVの航続距離の長さの進化を実感できるでしょう。

次に充電性能テストについて、150kW級の急速充電器を使用した場合、充電時間は45.5分程度を達成。他方で、90kW級の急速充電器を使用した場合、充電時間は63分とかなり長くなっています。

そして、30分間の充電時間で回復可能な航続距離を、航続距離テストの結果である556kmから概算すると、およそ257km。個人的にEVの経路充電において最低限必要な充電性能を「30分充電すると300km分程度の航続距離を回復可能」と定義しているため、その意味においてやや物足りない充電性能であるといえます。とくに日本国内で普及している90kW級を使用すると、30分充電したとしても185kmぶんしか充電できないとイメージしてみると、どうしても冬場の電費の低さをカバーできていない印象です。もちろん今回は真冬での検証だったことから、仮に夏場の電費で計算すれば30分の充電で300km以上の航続距離を回復できるはずです。

とはいうものの、EQSは欧米仕様の場合200kW以上という充電出力に対応しており、充電時間も30分強程度(SOC10%-80%)と、日本仕様と比較しても充電性能の差は歴然です。メルセデス・ベンツ・ジャパン側に確認したところ、途中で充電出力が低下する理由は、車両の充電インレット側にある可能性を指摘しており、いずれにしても日本のチャデモ規格に対応する際に海外仕様と比較して、ある種の「デチューニング」を感じざるを得ません。これはメルセデス・ベンツだけの問題ではなく、BMWやアウディ、ボルボ、BYDなど多くの輸入車メーカーのEVにも当てはまります。

メルセデス・ベンツEQSのフロントスタイリング

私個人の意見としては、すでにガラパゴス規格となってしまっているチャデモ規格にわざわざ対応させるのであれば、世界第2位の自動車マーケットである北米市場の統一規格として利便性の高さに定評があり、なおかつ日本国内でもテスラをはじめテンフィールズファクトリーやPower X、ユビ電、DMMなどがすでに採用を表明しているNACS規格を採用するべきなのではないかと感じます。

※メルセデス・ベンツはすでに北米市場で発売するEVに対してNACS規格採用を表明。開発期間短縮やコスト低減のために、日本でもNACS規格採用を決断するときが来ているのではないでしょうか?

また、私がEV性能とは別の評価軸として独自設定している6つの項目についても確認しましょう。

・乗り心地:9/10ポイント
メルセデス・ベンツの電子制御付きエアサスペンションシステム「Airmatic」を標準搭載。不快な突き上げもなく高速道路を快適に移動可能。

・静粛性:9.5/10ポイント(100km/h:59-61dB・120km/h:61-63dB)
前後に2重ガラスの採用はじめとして万全の静粛性対策のため検証車両のなかでもトップクラスの静粛性を実現。

・自動運転支援機能:9.5/10ポイント
EQEや旧式EQSの検証と同様にレーンキープ&ACCの安定感は抜群。渋滞時における前車追従も滑らかな加減速。日本国内におけるレベル2ADASの最高水準。

・音響性能:7.5/10ポイント
15スピーカーシステム(Burmester 3D Surround Sound System/システム最高出力:710W)
ドルビーアトモスにも対応しているハイエンドなサウンドシステム。高音領域はクリアであるものの、サブウーファーがないことで重低音はやや物足りない。何よりもメルセデス・ベンツのフラグシップという点を踏まえると、15スピーカーシステム、システム出力710Wというのはスペック不足感を感じる。

・回生ブレーキのフィーリング:7.5/10
完全ワンペダル可能なものの完全停止時のつまみ方がラフでつんのめってしまい、毎回停止時のブレーキが下手なドライバーのように感じてしまう。

また、インテリジェント回生モードを使用すると、前方車を認識してコースティングから強回生までを自動調整することで電費の改善に寄与。

・小まわり性能:9.5/10
最小回転半径は5.5mと4WSを標準採用することで取りまわしの良さを実現。さらに、有償のOTAアップデートを通じてリヤステアリングの角度を拡大可能となり、最小回転半径を5.0mまで短縮可能。

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
ヒョンデの魅力を日本に伝える新たな拠点! 「ヒョンデ みなとみらい 本社ショールーム」がグランドオープン
中国から地球上最強コスパの新星EV現る! IMモーターL6の驚くべきスペックとは
BYDの売り上げ鈍化に注目しても意味なし! むしろ心配すべきはテスラか? BYDは利益率も投資額も驚くべき水準だった
more
ニュース
ヒョンデNはサーキットでも速かった! アイオニック5 N TA Specがタイムアタックの聖地・筑波で57秒台のEV最速ラップをマーク
ヒョンデ話題の新型EV「インスター」をいちはやく試せる! 東京を皮切りに全国5都市で先行体験会を開催
レクサスのBEVユーザーに特報! 「LEXUS Electrified Program」が急速充電サービス「PCA」と業務提携
more
コラム
BYDが全車に「神の眼」を搭載! 高度な自動運転システムを積んでも「値上げゼロ」でさらなる普及を狙う!!
エンジン車よりもEVが有利な点は「空気抵抗」にもある! ポイントは「顔の穴」と「平らな床下」
同じ車格のハイブリッドやエンジン車に比べてEVは高い! そもそもEVが高額になるのはナゼ?
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
ボルボEX30で11時間超えの1000km走行チャレンジ! 課題は90kWまでしか受け入れない充電性能
more
イベント
売り物ではなく概念を展示するモデリスタ! 正体不明なトヨタbZ4Xはブランドの「新化」という概念を示すスタディモデルだった【大阪オートメッセ2025】
子どもに大人気の電動バギーに大迫力のエアロキットや色が変わるフィルムまで登場! 大阪オートメッセのEV関連出展物はどれもユニークすぎた
大阪は電動モビリティも元気いっぱい! ヒョンデの超注目EVにスズキ初の電動モペットなど見どころたくさん
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択