EVヘッドライン
share:

商用EV充電対策の切り札か……三菱ふそう、バッテリー交換式EVトラックの実証実験を国内で[2023.08.01]


TEXT:福田 雅敏、ABT werke
TAG:
実証に導入するAmpleのバッテリー交換ステーションと三菱ふそう・eキャンター(photo=三菱ふそうトラック・バス)

プラグ式の充電では不可能な、たった5分での満充電状態回復
急速充電の必要がないためバッテリーにも優しい

【THE 視点】三菱ふそうトラック・バスは7月26日、日本国内でバッテリー交換式EVトラックの実証実験を行うと発表した。アメリカのAmpleと、バッテリー交換技術の共同実証に関する契約を締結。三菱ふそうのEVトラック「eキャンター」をベース車両とし、今冬から実証を開始する。

2023年3月に発売された「eキャンター」は、航続距離が99km〜324km。今回の実証を通じて、より長距離に対応できるかといった車両面の開発はもちろん、バッテリー交換システムの日本でのビジネスの可能性も探るという。

バッテリーの交換は自動で行われる。Ampleのモジュールを搭載した「eキャンター」が交換ステーションに入庫すると、ロボットが自動で作業を開始する。交換に要する時間は5分を目指す。

2010年に筆者もバッテリー交換式のEVタクシーの実証実験を経験した。それゆえに、バッテリー交換式のメリットは理解している。ちなみに中国ではバッテリー交換式が増えており、2022年の時点で2,000ヵ所程度のステーションが設置されていると思われる。

バッテリー交換式は、特にバッテリー容量が大きく充電時間もかかる商用車に向く。プラグ式の充電では不可能な、5分程度の時間で満充電状態に回復できるのがメリットだ。

また交換式はバッテリー自体にも優しい。バッテリーの熱を覚ましてから充電ができるからだ。常温状態のバッテリーを普通充電で回復させれば寿命も長くなる。

それに急速充電は、実際は「バッテリー容量の約80%までの充電が速い」というシステム。それ以上の容量を充電することは、空気を圧縮して入れるようなイメージとなる。ゆえに満充電に至るには、急速を利用しても相当の時間がかかるのだ。

バッテリー交換式は一般車にもメリットがある。EVの中古車の価値はバッテリーの劣化具合で変わる。もしそれが交換式バッテリーだった場合、価値を大きく左右する要因がバッテリーから車両そのものになると言えるのだ。ちなみに劣化したバッテリーは、「電力系統用蓄電池」などとして再利用に回すことができる。それから交換ステーション自体も電源としての活用が可能で、非常時に有用だ。

ここまでメリットを書いたが、もちろんデメリットもある。それはコストの問題だ。ステーションの導入と同時に、交換用として多数のバッテリーを抱える必要があり、初期費用がかなりかかる。今回の実証を通じて、コスト面の改善やサポートの施策ができることを願う。行政にも交換式のメリットが伝われば、補助金の対象ともなりえよう。

ともあれ、筆者が10年以上前に経験した交換式バッテリーEVが日本でも注目されるようになってきたのは嬉しい。最新の技術をぜひとも見学したいものだ。
(福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)

★★トヨタ、EVの研究開発組織を中国に設立……従来の現地法人を「トヨタ知能電動車研究開発センター(中国)有限会社」に改称、EV・FCEVなどを現地にて開発

★★スバル、パナソニックエナジーとバッテリー供給について協議開始……EV用円筒型リチウムイオン・バッテリーの採用(2020年代後半から)を視野に[関連記事はこちら<click>]

★BYD、正規ディーラー「BYD AUTO 山梨」<山梨県甲府市>が8月4日(金)にオープン……中央道甲府昭和ICから5分、成約特典も用意

★東陽テクニカ、東京都江東区に「R&Dセンター」を開設……屋内にてEV実車による充電評価が可能

★JAF、EV向けのロードサービス「EV充電サービス」の試験運用を開始……電欠停止の現場に“電気の救急車”が駆けつけ

★ホンダ、開発中の空飛ぶクルマ「Honda eVTOL」が「レッド・ドット・デザイン賞」に選出……同賞の「デザインコンセプト部門」を受賞

★フォーミュラEシーズン9が全戦終了、チームランキングは電費の良さが際立ったジャガー・パワートレインがワン・ツー……1位:エンヴィジョン、2位:ジャガーTSC

デイリーEVヘッドライン[2023.08.01]

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
ZF・AxTrax2(photo=ZF)
被けん引車を補助動力装置化し電費・燃費を向上……ZF、トレーラ用EV駆動システムを開発[2023.09.25]
ZF・CeTrax 2デュアル電動セントラルドライブ(photo=ZF)
完全低床フルフラットバスが実現へ……ZF、EVバス用の新型駆動ユニットを発表[2023.09.22]
ホンダ・モトコンパクト(photo=アメリカン・ホンダ・モーター)
「モトコンポ」がEVで復活……米ホンダ、超小型電動スクーター「モトコンパクト」を発表[2023.09.21]
more
ニュース
BYDの新型EV「ドルフィン」は363万円から。補助金で200万円台も可能
大型トラックのEV化進む。メルセデスが航続距離500kmの「eアクトロス600」を発表
新モデル「iX1 eDrive20」がBMWのEVに追加。実質500万円前後で購入可能かも?
more
コラム
元町工場で様々なモデルが混流生産される様子。出典:トヨタ
トヨタの「からくり」やカイゼンに満ちたクルマづくりを、EVも混流生産する現場で見た
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?
宇都宮駅東口の周辺を走る、宇都宮芳賀ライトレールの様子。筆者撮影
8月開業の宇都宮「LRT」が拓く電動モビリティの可能性。渋滞解消と新しい街づくりに大きく前進
more
インタビュー
電気自動車で自由に旅できる世界を目指して。シュルーターさんと「ID.BUZZ」の旅物語
ボルボ「EX30」は「脱炭素」をキーワードにインテリアの“プレミアム”を再定義する
フォルクスワーゲン「ID.BUZZ」は人や荷物だけでなく笑顔もはこぶクルマ
more
試乗
BYDドルフィンのフロントビュー
新型BYD「ドルフィン」の商品力に見る凄み。中国発の最新コンパクトハッチに国内試乗
BYDドルフィンのフロントビュー
BYD「ドルフィン」で感心した3つのポイントとは。中国発の最新コンパクトハッチに国内試乗
BYDドルフィンのフロントビュー
BYD「ドルフィン」は日本製EVの脅威となるか。中国発の最新コンパクトハッチに国内試乗
more
イベント
ジャパンEVラリー白馬2023(photo=日本EVクラブ)
今年の最長距離の参加者は⁉︎……「ジャパンEVラリー白馬2023」は充電計画も愉しい
ジャパンEVラリー白馬2023(photo=福田 雅敏)
ぶっちゃけトークの夜がやっぱり本番⁉︎……72台のEVが集まった「ジャパンEVラリー白馬」
ジャパンEVラリー白馬2023(photo=福田 雅敏)
「ホンダ・クラリティ FUEL CELL」でEVイベントに参加……長距離走の燃費を計測してみた
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択