2025年1月
TEXT:斎藤充生
東京オートサロンのテスラ全部撮る! 台数増加のカスタムテスラが激旬だった

緊急企画「サロンのテスラ全部撮る」 それは突然のことでした。1月10~12日まで開催されたカスタムカーショー「東京オートサロン2025」を取材中、ちょっと休憩のつもりで報道関係者が集まるプレスルームに戻り、THE EV TIMESのF氏と会場内の展示車両について情報交換をしていた時のことです。 斎藤「いや~、今年はEVの展示が増えましたね~」 F「増えた、増えた。とくにテスラが目立つよね」 斎藤「確かにいわれてみればチラホラ見かけた気がします。各車でテイストも違っていて面白いです」 F「ならさ~、斎藤君まだ取材続けるでしょ? 移動している最中に見つけたテスラ全部撮影してさ、それで記事でも作ってよ!」 斎藤「(!!!! えぇぇぇぇ) は、はい、かしこまりました。やらせていただきます(大汗)」 簡単にいうな~! と心のなかで叫びつつ、笑顔は崩さず最敬礼。下っ端フリーライターの悲しい性で、来るもの拒まず折角のご発注に対してはありがたく頂戴いたします。 とはいえ、出展社数389社、会場のあちこちに点在する展示車両の合計は857台。出展社の名前と展示位置は会場マップを見ればわかるものの、その389社がどんなクルマを展示しているのかまでは、細かく情報が掲示されていません。そうです、広い会場を歩いて探すしかありません。 ほかにも取材すべきクルマやブースはあるのですが、残りの取材可能時間は約4時間、立ち止まっている暇はありません。会話から生まれた思いつき企画、題して「サロンのテスラ全部撮る」実行です。 オートバックス:A PIT EV MODEL Y オートバックスの旗艦店「A PIT AUTOBACS SHINONOME」が製作したモデルYは、EVでもカスタマイズする楽しさは健在であることを証明するための1台になっています。 EVというとカスタムやチューニングはできないんじゃないか、と構えてしまうところがありますが、A PITの手にかかればそんなことはありません。むしろA PITととしては、どうやったらお客さんがEVでもカスタムを愉しんでもらえるか、ユーザーに先行してEVカスタムの可能性を探っているわけです。そのため、ラッピングすることでセンサー類に異常が発生しないかもテストしているといいます。 カスタムというと、外見の変化に目が行きがちですが、車内の快適性向上も立派なカスタムのひとつです。モデルYはそのキャラクターから長距離移動の需要が高いと考え、レカロシートを導入するうえではセンターコンソールに肘が置きやすくなるように、シートレールを独自開発し最適な高さになるよう調整が施されています。 また、車内の音楽視聴環境にも注目。ビーウィズとフォーカルのテスラY、モデル3専用スピーカーキットをラインアップするほか、静音キットを開発して両者を組み合わせることで、静粛な車内を創り出し、クリアな音質を響かせることに成功しています。 走りの面でも、A PITオリジナルのサスペンションキットとアンプラグドの調整式スタビライザーで質感を高める工夫がされていますし、BBSのLMホイールも前後異なるサイズをスマートに装着してみせています。もちろんエアロも車検対応品で、Maxton Designのものが採用されています。 YOKOHAMA&YOKOHAMA WHEEL:リバティーウォークEV向けエアロ装着 モデル3 横浜ゴムのADVANブランドをPRするブースで光り輝いていたのは、リバティーウォークのEV向けエアロシリーズ「LB-E-WORKS」をまとったテスラ・モデル3。迫力のワイドフェンダースタイルは誰が見てもリバティーウォークのそれで、米国を中心に海外でウケること間違いなしのルックスです。 足もとは「走りのホイール」として絶対的な人気を誇るADVAN Racing GTの進化型ホイール、ADVAN Racing GT Beyondの19×11Jを前後に装着。深くコンケープしたスポークが、凄みを感じさせます。もちろんここは横浜ゴムのブースなので、タイヤも275/35R19のADVAN Sport V107を履かせてビシッときめてます。 リヤも存在感のあるダックテールウィングとディフューザーで完全武装。王道のリバティーウォークスタイルでありながら、上質さを感じるのはそのデザインが完成の域に達しているからでしょうか。 黒基調のブースに真っ白なド迫力ボディとレーシングチタニウムブラックのADVANホイールの組み合わせは、オートサロンのEV関連展示では間違いなくもっとも「映え」ていた1台です。 MID WHEELS:EV専用ホイール「TW025」装着 モデルY アルミホイールの老舗メーカー「マルカサービス」が展開する「MID」ブランドは、モデルYにEV用ホイールとして開発されたTW025を装着して展示。車両の左右で装着ホイールの色を変え、オプションパーツの有無でも違いを表現していました。 マルカのMIDといえば軽量かつ高強度なホイールを生み出す「フローフォーミング製法」が有名ですが、このホイールの場合はEV特有の静かな走りを阻害しないよう、ホイールのインナーリムの厚さをあえて厚くするEV専用チューニングが施されています。 厚みを増やすことで重量は多少重くなる反面、バネ下から発する共鳴音を抑え、車内に侵入する不快なノイズを低減できるそうです。とくに後部座席は後方に大きなラゲッジスペースを抱えていることから、その効果を顕著に感じられるとのことです。 また、このホイールには「エアロコンセプトプレート」と呼ばれるリムに沿って装着するプレートがオプションで設定されています。 見た目の印象が大きく変化するだけでなく、空力的な洗練さを感じさせることから、メカ好き男子には堪らないアイテムではないでしょうか。

TAG: #カスタム #テスラ #東京オートサロン2025
TEXT:高橋 優
テスラ・モデルYをいま買うと5年間充電無料!? MC前の在庫限りだけど計算してみたら驚くほどお得だった!

2025年3月までの納車でスーパーチャージャーが5年間無料 テスラジャパンがモデルYの在庫車両に対して5年間のスーパーチャージャー無料特典を付与しました。このキャンペーン内容の詳細について、2025年3月31日までに納車を完了できる場合に限り、現在ラインアップされているモデルYの在庫車両に対して、納車後5年間のスーパーチャージャーの無料充電特典が付与されます。 ここでキャンペーンによってどれほどお得に運用できるのかを実際に計算してみましょう。 まず月間走行距離が1500km(年換算で1.8万km)の場合、 ・モデルYの平均電費は、冬における電費悪化や乗る前エアコンやセントリーモードを使用すると仮定して、年間平均で5km/kWh程度 ・充電ロスを考慮に入れると、実際に課金される電力量は約330kWh程度 ・電気料金は自宅充電の場合1kWhあたりおおむね30円 ・月間の電力料金は約9900円(年間でおおよそ12万円) ・スーパーチャージャーの無料充電特典の期間が5年間 となります。 よって仮にすべての充電をスーパーチャージャーのみで運用することになった場合、5年間でおよそ60万円もの充電料金を節約することが可能となります。 次に、この電力料金の節約がガソリン車に換算するとどれほどのインパクトになるのかを計算していきましょう。今回比較対象にしたのがトヨタのミッドサイズSUVであるRAV4です。とくに燃費性能で優れるRAV4のハイブリッド車の場合、 ・EPA基準における燃費性能は39MPG。およそ17km/Lと換算可能 ・2025年1月のレギュラーガソリン価格は平均165円程度 ・年間走行距離が1.8万kmの場合、年間のガソリン代はおよそ17.5万円 となります。 よって5年間におけるガソリン代は87.4万円が必要となります。 もちろん、この計算方法の場合、RAV4では冬における燃費性能の悪化を考慮しておらず、さらに乗る前エアコンに代替する乗る前アイドリングの使用は想定せず、しかもテスラのセントリーモードに代わる機能は実装されていないという点は押さえておく必要があります。そしてその場合、5年間で車両を動かすのに必要なエネルギーコストの差が、無料充電特典を有するモデルYとRAV4で最大150万円程度つくことになるわけです。 モデルYはRAV4ハイブリッドと比較して圧倒的に航続距離が短いという点は挙げられるものの、 ・車両サイズがひとまわり大きく居住空間や収納スペースがより広く確保できている ・動力性能でさらに優れている ・内燃エンジンが搭載されていないことで車内の振動対策や静粛性が優れている ・音響システムやレベル2ADAS性能をはじめとして標準装備内容が充実している ・OTAアップデートに対応しているため、インフォテインメントまわりのUIや車両制御に関連するファームウェアを常に最新の状態にキープすることが可能 などの長所があります。 これらの観点で、モデルYはRAV4よりもユーティリティに優れており、その上で5年間所有した際のエネルギー補充代だけで150万円差がつくとイメージしてみれば、まさに今回のモデルYの在庫車両のコスト競争力の高さを容易にイメージすることができるでしょう。

TAG: #スーパーチャージャー #モデルY
TEXT:琴條孝詩
「30分で80%」って聞いてたのに半分しか充電されない……は普通に起こりうる! EVの急速充電の真実とは

EVの充電速度は条件によって変わる 電気自動車(EV)の普及が進んでいる。ガソリン車に比べて環境に優しく、ランニングコストも低いEVは、まさに次世代のクルマのスタンダードとなりつつある。 そんなEVを選ぶうえで、多くの人が気にするポイントのひとつが「充電時間」だろう。ガソリン車であれば、ガス欠寸前でも数分の給油で再び走り出すことができる。しかし、EVの場合は、充電に少なからず時間がかかってしまうのが現状だ。 EVには“普通充電”と“急速充電がある。一般的に、EVでは「30分で80%まで充電可能」といった謳い文句を目にする機会も多い。 これは“急速充電”の場合だ。しかし、これには注意が必要だ。じつは、メーカーが提示する急速充電時間は、あくまで「理想的な条件下」での数値なのである。今回は、その背景にある技術的な要素と、ユーザーが知っておくべきポイントを解説しよう。 <「30分で80%」は最良の条件下での数値> EVの急速充電において、メーカーが公表する充電時間は、もっとも理想的な条件下での値である。具体的には、以下の条件が整った状況での測定値となる。 まず、バッテリーの温度が最適範囲内ということ。実際のEVでは、バッテリー管理システム(BMS)が搭載されており、バッテリーの温度を監視し、必要に応じて冷却または加熱を行うことで最適な温度を維持する。しかし、寒い地域の早朝などは外気温が低すぎて、理想的なバッテリー温度になりきらないこともある。 次に、充電開始時のバッテリー残量。「30分で80%」は概ね20%前後から充電した場合だ。ほぼ0%に近い充電残量だと当然30分で80%まで充電できないことが多くなる。また、急速充電器が最大出力で作動していることも重要ポイントだ。真夏の暑い日は出力制限をかけて出力を落としている急速充電器もある。 これらの条件が揃わない場合、充電時間は大幅に延びる可能性がある。また、バッテリー残量が80%を超えると、バッテリー保護のため充電速度が自動的に低下する仕組みとなっている。とくに90%以上になると、充電スピードは大幅に遅くなるので、急速充電で100%にしようなどとは思わないほうがいい。時間とお金の無駄である。通常100%にするのは、自宅での普通充電か、そうでなければショッピングモールの無料の普通充電で行ったほうがいい。

TAG: #充電 #充電速度
TEXT:桃田健史
EVの先行きはわからないが気がつけば選び放題! いまの日本は輸入車だけで7ブランド136車種ものEVが買える!!

輸入電動車は現在7ブランド・136モデル 最近、日本でもEVラインアップが一気に増えた。そう感じている人が少なくないだろう。とくに、輸入車でのモデル拡充が目立つ。 たとえば、11月中旬にはJR東京駅周辺に輸入車ブランドのEVや燃料電池車など数多く展示されたり、また筆者もドライバーとして参加したユーザー向けの公道試乗会が実施された。これは、輸入車関連企業がつくる業界団体、日本自動車輸入組合(JAIA)が実施した「JAIAカーボンニュートラル促進イベント in 東京」だ。 その際、JAIAが提示したデータが興味深い。同イベントが開催された約4年前の2020年10月に電動車は、JAIA登録ブランドのうち10ブランドで20モデル。それが、2024年6月末時点で7ブランド・136モデルと急激に拡大している。 そうしたモデルは、コンパクトカーから大型SUV、さらに超高価格のスポーツカー、さらに二輪車など多種多様だ。 また、JAIAの上野金太郎会長によれば、「2024年上半期でJAIAの電動車販売台数が初めて1万台の大台を超えた」という。シェアで見ると16.7%。ただし、ブランド別で、しかもEVに限定した販売比率についてはJAIAとして公開していない。 また、グローバルにおけるEVシェアはどうなっているのだろうか。 これについても、メーカーやブランドによって、それぞれで電動車の定義が若干違うこともあり、EVに限定したシェアを抽出することは現時点で難しい。 そこで、市場全体での状況についてデータを紹介しておく。 欧州オーストリアの自動車関連大手のAVLが、日本国内で9月に実施したシンポジウムで公開したデータがある。 それによれば、7月時点でグローバルでのEV(及び燃料電池車、レンジエクスタンダー)の販売比率は14.4%だ。エリア別で見ると、やはりもっとも販売比率が大きいのは中国だ。中国で言うNEV(新エネルギー車)の販売比率は23.6%に及ぶ。 2010年代に世界一の自動車生産・販売国となった中国では、政府主導のNEV政策を推進してきた効果が大きい。 次いで、欧州が11.1%。ただし、欧州連合の執務機関である欧州委員会がこれまで推進してきた欧州グリーンディール政策における電動化関連法案が宙に浮いている状態であり、こうした販売比率が今後、さらに減少する可能性も否定できない。 メルセデス・ベンツやボルボなど、自社のEVシフト戦略を見直す動きもあるなか、メーカー各社の今後のEV販売比率の変化を予想することは難しい。

TAG: #EVシフト #普及
TEXT:斎藤充生
EVのチューニングカーに新車とトピックが目白押し! 東京オートサロン2025を彩ったEVたちを一挙公開

EV勢力拡大中の東京オートサロンから気になるトピックをお届け 東京オートサロン2025では、電気自動車(EV)の出展が例年にも増して目立った印象だ。ここまでいくつかのトピックを独立した記事としてお届けしてきたが、当記事ではそのほかの注目すべきEV関連トピックをまとめて紹介したい。 BBS:新素材を採用したEV・SUV向け新作ホイールを発表 高級ホイールとして確固たる地位を築いているBBSは、開発に10年を要したといわれる新素材「FORTEGA」を使用した新作の1ピース鍛造ホイール「FL」を発表。 高負荷・高荷重になりがちな重量級SUVやEVをターゲットとしたホイールで、早速ポルシェ・タイカン4 クロスツーリスモにフロント9.5J、リヤ11.5Jの21インチを装着して展示。 新素材のFORTEGAは、従来のアルミニウム合金と比較して高剛性を維持しながらも、約10%の重量軽減効果が得られる素材で、同じくBBSのハイスペック素材である「超超ジェラルミン」を上まわる剛性を確保したという。EVの電費を犠牲にすることなく、運動性能と乗り心地の向上に貢献することだろう。 オートバックスセブン:小型電動モビリティ取り扱いの動き オートバックスは、運転免許不要で乗れるパーソナルモビリティとして近年注目を集める小型電動モビリティ・特定小型原付の販売にも力を入れている。 現在は、世の中に数多とあるなかからオートバックスがセレクトした8メーカーの車両を取り扱う。店舗により扱いメーカー数は異なるようだが、各店舗では乗り方や交通ルールに関する研修を受けた専任スタッフが、事前に試乗も行ったうえで顧客の購入相談に乗ってくれるというから、安心感が高い。 また、これらを扱う全国35の店舗では、店頭で試乗することも可能なうえ、クルマに積めるかも確認させてもらえるなど、大型カー用品店ならではの強みを活かした販売スタイルが特徴だ。今後も専任スタッフが常駐する取扱店舗は拡大予定だという。 ヤマハ発動機:フォーミュラE GEN3 Evo「Lola T001」を本邦初公開 EVのフォーミュラマシンによって争われる「ABB FIAフォーミュラE世界選手権」の2024/2025シーズンから参戦を開始したヤマハ発動機が、今シーズンから使用されている新型フォーミュラEマシンGEN3 Evoの「Lola T001」を国内初披露した。 F1より30%ほど速い0-100km/h加速性能を持つフォーミュラEで、ヤマハはモーター、インバーター、ギヤボックスを開発し、車体開発を行うLolaに対して供給を行っている。新型マシンはレース中のアタックモード効果が増大したことで、従来以上にカオスな展開を見せている今シーズンのフォーミュラEだが、会場で話をうかがったヤマハの担当者によれば、「(カオスな状態になるのは)十分想定していた範囲」とのこと。 5月には再び東京ビッグサイト周辺の公道を使用して2日間レースが行われる。日本のヤマハと日産にとっては凱旋レースとなり、白熱するレースの中で活躍が期待される。 ケータハム:プロジェクトV イギリスの名門スポーツカーブランド「ケータハム」は、現在日本のVTホールディングス傘下に入り、新たなEVクーペを開発中だ。 「プロジェクトV」と呼ばれるこの計画、日本の東京R&Dとプロトタイプ車両の開発・製作が進められており、ヤマハ発動機がパワートレインの主要部あたるeアクスルを供給し、車両の運動制御においても技術提供がされるなど、英国ブランドにあって日本企業の存在感が大きいプロジェクトとなっている。 2024年の東京オートサロン出展時とは異なる白色のボディが展示されたことに加え、EVの中核を成す台湾のシン・モビリティーが開発した液浸冷却バッテリーも展示され、プロジェクトが順調に進んでいることをうかがわせた。

TAG: #オートバックス #ケータハム #ヒョンデ #ヤマハ発動機 #東京オートサロン2025
TEXT:御堀直嗣
クルマの屋根をソーラーパネルにしたらタダでずっと走れるEVができるんじゃ……が現実的じゃない理由

プリウスPHEVやbZ4Xに採用されている 再生可能エネルギーの普及へ向け、ソーラーパネル(太陽電池)への期待は大きい。最近は、ペロブスカイト太陽電池の話題が出て、日本政府は、2040年までに原子力発電20基分相当の普及を目指すと表明した。 一方、たとえば屋根に装備したソーラーパネルでクルマが走れるようになるかというと、簡単ではない。それでも事例はあって、現行プリウスPHEVやトヨタの電気自動車(EV)bZ4Xは、ソーラーパネルを屋根に装備した仕様を設けている。 プリウスPHEVは1日の発電で6.1km走行でき、bZ4Xの場合は、年間で1800km走行できる電力を発電できるとする。たとえば1年365日で割ると、1日4.9km平均走れることになる。そのために投じる注文装備価格は、どちらも28万円だ。 一般に、ソーラーパネルの発電効率は約20%とされてきた。これに対し、ペロブスカイト太陽電池は最高で33%以上ともいわれる。時代とともに、素材の新たな研究などで性能が高まるとともに原価低減への動きも実用化へ向けた重要課題である。 ペロブスカイトに期待が集まる理由のひとつが、素材が柔らかく曲げやすいため、これまでのソーラーパネルのように硬い板状でなくても使え、さまざまな形状の表面に適用すると、いろいろな場所で発電できるようになることだ。当然ながら、曲面で構成されるクルマの屋根や、車体側面などにも適応できる可能性はあるだろう。 とはいえ、発電効率を最大にできるのは、太陽の光が直接あたる部分の話であり、太陽光が斜めに当たるとか、影になる面は発電効率が落ち、また発電しない状況もあり得る。 さらに、晴天の日中であれば発電できるだろうが、曇り空になったら発電量は落ち、夜はどうするのか? クルマの利用は、天気のよい日の日中だけに限らない。また、梅雨の季節や秋の長雨、冬の降雪時期はどうするのか? ソーラーカーレースに出場する車両が、畳のような表面の屋根にソーラーパネルを張り巡らせ、乗れるのはひとりといった姿で、自転車のような細いタイヤであるのは、ソーラーパネルが発電できる電力に制約があるからだ。それを4~5人乗りの乗用車や、屋根が平らとはいえパネルトラックなどにソーラーパネルを用い、その電力のみで移動するのは容易でない。 それより、建物の屋根はもちろん、あらゆる建造物に適応できるペロブスカイト太陽電池が普及する折に、それで発電した電気をEVに充電して走らせるほうがより現実的ではないだろうか。 たとえば、ドイツのアウディの急速充電設備であるチャージングハブでは、設備の屋根に太陽光発電を用い、系統電力に加えて充電の電力を補っている。 EVに象徴される電気の時代は、一個の製品だけで課題を解決するのではなく、適材適所、周辺のインフラストラクチャー(社会基盤)を含めた設備の総合的な活用で利便性を高め、適正価格で快適な暮らしや移動ができる道を探るべきではないだろうか。

TAG: #ソーラー #ルーフ #充電
TEXT:高橋 優
急速充電器使用時の充電性能はやや不満! ヒョンデIONIQ 5 Nをガチで使い倒してわかったマルとバツ

IONIQ 5 Nの性能を全方位チェック! 韓国ヒョンデのハイパフォーマンスEVであるIONIQ 5 Nで恒例の航続距離テストと充電性能テストを行いました。通常のIONIQ 5と比較してどれほどのEV性能を実現することができたのか。リアルワールドにおける航続距離や充電スピードを詳細リポートします。 *航続距離テスト まず、航続距離テストの前提条件は以下のとおりです。 ・GPSスピードの平均車速が時速100kmになるように調整 ・途中ノンストップ ・充電残量100%までサービスエリア下り線で充電したあと、途中のインターで折り返して、同じサービスエリア上り線まで戻ってくる。充電残量は10%以下まで減らし切る ・車内の空調システムは基本的に21℃オート。一部車種で温度調整あり(今回のIONIQ 5 Nの場合は22℃オートに設定) ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のIONIQ 5 N・21インチ純正タイヤ装着の場合はGPS距離比で1.7%の下振れ) 結果:駿河湾沼津SA下り→大府IC→清水PA上り ・走行距離:387.4km ・消費電力量:100%→6% ・平均電費:5.19km/kWh(192.8Wh/km) ・外気温:23℃〜25℃ 航続距離テストの結果から、充電残量100%状態からSOC0%になるまで、412kmを走破可能であることが確認できました。 *ハイスピードテスト 次に、ハイスピードテストの前提条件は以下のとおりです。 ・GPSスピードの平均車速が時速120kmになるように調整 ・途中ノンストップ ・車内の空調システムは基本的に21℃オート。一部車種で温度調整あり(今回のIONIQ 5 Nの場合は22℃オートに設定) ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のIONIQ 5 N・21インチ純正タイヤ装着の場合はGPS距離比で1.7%の下振れ) 結果:駿河湾沼津SA下り→新静岡IC→駿河湾沼津SA上り ・走行距離:96.3km ・消費電力量:90%→65.5% ・平均電費:3.97km/kWh(252Wh/km) ・外気温:23℃〜23℃ ハイスピードテストの結果から、充電残量100%状態から空になるまで、310kmを走破可能であることが確認できました。

TAG: #充電 #長距離
TEXT:斎藤充生
東京オートサロンに現れた異色のアリアはなんと学生ひとりで作った力作! ここまで仕上がっててじつはまだ進化途中だったってマジか

ひとりの学生が電気自動車のカスタマイズに果敢に挑んだ! 東京オートサロンといえば、各自動車メーカーやチューニングショップが手塩にかけて作り上げたカスタムカーが所狭しと並び、その華やかさに圧倒されるものだが、未来の自動車産業の一端を担う学生たちの出展も魅力的だ。 今回注目したのは、関東工業自動車大学校のブースに飾られた日産アリア。ベースのアリアは、SUVタイプの電気自動車(EV)ではあるが、泥臭さとは無縁な洗練された印象のイマドキのSUV。しかし、展示されたアリアはその真逆をいくもの。 制作者は車体整備課3年の大野祥聖さん。通常、こうした自動車大学校の出展車両は、クラスや数名単位でコンセプトから予算管理、設計、製造までを行うものなのだが、このアリアはなんと大野さんがほぼひとりで製作したというのです。 もともと日産リーフのレーシングカー(LEAF NISMO RC_02)を見て、EVでもここまでカスタマイズできるものなのかと衝撃を受けた大野さんは、いつか自分でもEVのカスタムカーを作ってみたいという願望を抱いていたそう。 そこに関東工業自動車大学校へ、日産自動車からアリアの開発用テスト車両を寄贈する話が舞い込む。ボディのスタイリングとしてはクロカンタイプが好きだという大野さんにしてみれば、EVかつSUVというまたとない好材料が目の前に転がり込んできたわけで、この好機を逃すわけにはいきません。 学校を介して日産側へカスタムするためにボディの切断を含むカスタマイズを施してもよいか確認をしたところ、これを日産側が快諾。ここに電気自動車のアリアをカスタマイズする計画がスタートしたわけです。 泥臭さを感じられるクロカンタイプのアリアを作ろうと構想したはいいものの、アリアに適したオーバーフェンダーは無いし、専用のロールバーだって存在しない。となれば「無いものは作ってしまえ」の精神で、鉄パイプ1本でどこまでハードコアなクロカン風アリアが作れるのかチャレンジしたくなってしまった大野さん。若さと勢いって大事です。 スタイリッシュなアリアは複雑な面構成を持っており、キャラクターラインも尊重しながらそのボディに沿うようにパイプを曲げていくのは、なかなか難儀したそうです。しかも、ひとりで作業しているものだから、カーブに沿ってパイプの曲げ加工を行っていても、若干のズレを修正しようにも付けたり外したりも含めて全部己に頼るのみ。俯瞰してチェックしようにも、他に作業スタッフがいないのだからさあ大変。 とはいえ、大野さん自身が加工にあたって行き詰ってしまう場面や、そもそもの作業方法で苦戦する場面では、学校から紹介してもらったショップ「カスタムハウス」にアドバイスをもらいに行くなど、先人の知恵を借りたそう。 車高は今後の配線関係の作業にゆとりを持たせるため、メンバーを下ろして角度をつけたうえでスプリングで100mmのアップを敢行。さらに、タイヤ外径を変更し50mmリフトさせたことで、合計約150mmのリフトアップを施しています。 車高を上げパイプフェンダーを組んだこのアリアに見合うホイールとして、納期も考えながらワークのマイスターL1を選んだものの、果たしてイン側のクリアランスは確保できているのかなど、学生にはハードルの高い未知の領域に挑んでおり、その調整はオートサロン前日までかかったそうです。

TAG: #アリア #東京オートサロン2025 #関東工業自動車大学校
TEXT:すぎもと たかよし
同じ中身とは思えない見た目! 日産サクラと三菱eKクロスEVをデザインのプロが比較分析した

両社の「らしさ」を組み合わせたeKクロスEV ガソリン仕様の軽自動車ではボディを共有する日産と三菱ですが、好評の軽EVではサクラに対してeKクロスEVと独自の展開を図っています。その走りの違いも気になりますが、デザインの違いも興味のあるところ。そこで、今回はグループ内2台の軽EVのエクステリアの違いに迫ってみたいと思います。 まずはeKクロスから。eKワゴンをSUVテイストのクロスオーバーモデルに仕立てた同車ですが、ご存じのとおり、そのeKワゴンは先代の3代目から日産との合弁会社であるNMKVで企画・開発、日産では初代デイズとしてラインアップされています。 それまでバッジエンジニアリングに徹していた日産ですが、いよいよ本格的に軽の開発を行うに当たって提示したのは「普通車」のようなエクステリアデザイン。とりわけ、ボディサイドのキャラクターラインは従来の軽では見られなかった「深さ」をもち、強い躍動感を表現しました。 2019年に発売された現行型は、プラットフォームやエンジン、CVTなど主要コンポーネントを刷新した意欲作ですが、デイズ(2代目)、eKワゴン(4代目)とも基本的なスタイリングは先代を引き継いでいます。 たとえば、eKワゴンのデザインコンセプトは「THE CUTE CHIC(キュート・シック)」で、大らかで張りのある曲面に活き活きとした躍動感を与えたもの。新型でも流れるようなキャラクターラインが大きな役割を果たしています。 そして、SUVテイストであるeKクロスのデザインコンセプトは「THE CUTE BEAST(キュート・ビースト)」。可愛らしさと野生という相反した要素を両立させるのが、三菱自慢のデザインフィロソフィ「ダイナミックシールド」です。垂直のメッキバーや上下2段構造のランプなどの迫力ある造形は「クロス」独自の顔を作り出しました。 つまり、EVを含めたeKクロスは、日産らしい普通車感と三菱らしい力強さが融合したエクステリアといえるのです。

TAG: #デザイン #新車 #軽EV
TEXT:桃田健史
日本はクリーンな「再生可能エネルギー」による発電を倍増の予定! できればスゴイことだが世間は受け入れるか?

温室効果ガスの大幅削減は実現するのか? 再生可能エネルギーは、社会にとって重要だ。世間でそういわれるようになって久しい。EVなど次世代電動車についても、再生可能エネルギーを活用することで、地球温暖化の抑制など地球環境にプラス効果があるとされている。 ところが、日本ではこれまで、再生可能エネルギーの拡大スピードがけっして早くなかった。たとえば、再生可能エネルギーの代表格とされる太陽光発電については、日本で2009年11月に「余剰電力買取制度」が始まった。その後、一般的にFIT制度と呼ばれることが多い「固定価格買取制度」に事実上、移行したという経緯がある。 これに伴い、一般家屋で屋根に太陽光パネルを設置したり、空いた土地に太陽光パネルがずらりと並ぶ風景が当たり前という感覚をもつ人が着実に増えた。 だが、買取価格が段階的に下がり、買取期間の満了によって、いわゆる「卒FIT」が増えたことで、再生可能エネルギーに対する世間の見方も沈静化した印象がある。 また、一部地域の大手電力会社では、太陽光や風力など再生可能エネルギーで発電した電力に対する系統連系の度合いを大幅に制限する、といった経営方針を打ち出す場合もある。 一方で、岸田政権下での国会の議論では、日本では今後、生成AIなどの技術進化によってデータセンターの増大における電力需要拡大などを理由として、原子力発電を含めて電力量全体の拡大が必要という議論があった。 そうした考え方が、2021年10月に閣議決定された第六次エネルギー基本計画に盛り込まれた。 ところが、それ以降から現在(2024年末)にかけて、グローバルでは地域紛争や大国での政権交代などさまざまな要因から、エネルギー安全保障や地球環境対策に関する議論に変化が生じている。 これを受けて、2024年12月に公表された、第七次エネルギー基本計画(素案)では、総論として、今後の電力需要増加に伴い、日本経済の成長機会を失うことはあってはならないとし、そのためには、再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論は避けるべきと記載されている。その上で、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底することを目指すとした。 同素案の参考資料として、2040年度におけるエネルギー受給の見通しを示している。それによれば、日本のエネルギー自給率は、2023年度(速報値)で15.2%で、これを2040年度には3〜4割まで引き上げる。電源構成としては、再生可能エネルギーを22.9%から4〜5割への倍増。原子力についても増加し、8.5%から2割程度へ。 一方で、火力は68.6%から3〜4割への縮小させる計画だ。 これにより、CO2を中心とする温室効果ガス削減割合が大きく変化する。具体的には、2013年比で2022年度実績は22.9%だったが、2040年度には73%と高まることを目指す。 こうした国の政策が予定通り実現すれば、再生可能エネルギーの活用は拡大することにはなるが……。果たして、実社会における受け止めはこれからどうなるのだろうか?

TAG: #C02 #再生可能エネルギー

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