2025年1月
TEXT:琴條孝詩
じつは凄い「のっぺり顔」! EVの「グリルレス」「フラットボトム」が生む多大なるメリットとは

EVには従来型のグリルが不要 <エンジン冷却不要で実現するクリーンなフロントフェイス> 電気自動車(EV)の普及が進むなか、その特徴的なデザインに気付いた読者も多いだろう。とくにフロントマスクに注目すると、従来のガソリン車などの内燃機関車(ICE)で当たり前だった大きなラジエーターグリルが存在しないケースが多い。これは単なるデザイン上の選択ではなく、EVの構造特性がもたらす空力性能の向上だ。 ICE車では、エンジンを冷却するためのラジエター、冷却風を導くためのインテーク、そしてそれを排出するためのアウトレットが必要不可欠である。そのため、フロントグリルは車両にとって必須のものだった。一方、EVは電動モーターと電池システムの冷却方法が根本的に異なるため、従来型のグリルが不要となる。この変化は単なる外観の問題ではなく、空気抵抗を劇的に低減する重要なイノベーションだ。 代表的な例として、テスラ・モデルYやフォルクスワーゲンID.4などの最新EVモデルでは、従来の大型グリルを完全に排除、または大幅に縮小している。これにより、空気の流れを妨げる障害物が減少し、車両前面の空力特性が大きく改善される。 <フラットアンダーボディがもたらす空力革命> EVのもうひとつの特徴は、車体下面の構造にある。ICE車では、エンジン、トランスミッション、排気系統など、多くの部品が車体下部に配置されている。これらは不規則な形状となり、空気の流れを乱す要因となっていた。 対してEVでは、バッテリーパックを床下に平面的に配置できる。この特性を活かし、多くのEVは車体下面を可能な限りフラット化されている。下面を流れる空気の乱れを抑制し、揚力の低減と空気抵抗の軽減を実現し、はるかに空力学的に洗練されたボディデザインを可能にした。 とくに高速走行時には、このフラットアンダーボディの効果が顕著に表れ、航続距離の向上にも貢献。また、車体底面を流れる空気の速度が増すことで、ダウンフォースと呼ばれる“車体を地面に押し付ける力”が働き、走行安定性も向上する。

TAG: #デザイン #空気抵抗
TEXT:高橋 優
2024年の日本国内のEV販売は完全に失速! 2025年に明るい材料はあるのか?

EVシェア率は2年前と同等に 日本国内の最直近11月のEV販売動向が判明しました。販売台数、EVシェア率ともに前年比マイナス成長というEVシフト停滞模様を解説します(商用軽EVである日産クリッパーEVとホンダN-VAN e:の販売台数は執筆時点では判明していないため、販売台数とシェア率は微増の見込み)。 まず、このグラフは2018年以降のBEVとPHEVの合計販売台数を月間ベースで示したものです。2024年11月の販売台数は1万504台と前年同月比でマイナス7.6%。とくに2023年12月以降12カ月連続で前年同月比マイナス成長という、EVシフト減速の流れが一過性のものではなくなっている様子が見て取れます。 次に、新車販売全体に占めるBEVとPHEVの販売台数の合計の比率を示したグラフを見てみると、直近の11月は2.9%と、前年同月に記録した2.99%と比較してもシェア率が停滞しています。 そのうえ2年前である2022年11月のEVシェア率が2.74%であったことから、じつは2年前のEVシェア率と同等水準と、EVシフトが後退状況にある様子が見て取れます。 次に、普通車セグメントの日本メーカーと輸入車メーカー、さらに軽自動車セグメントにわけて示したグラフを見てみると、白で示されている輸入EVは前年同月並みの販売台数に留まったものの、ピンクで示されている日本メーカーの普通車セグメントのBEV販売台数は889台と、前年同月比-22.7%という落ち込み具合です。 つまり、現在の日本国内のEVシフト後退のもっとも大きな要因は、日産リーフやアリア、トヨタbZ4Xのような国産の普通車セグメントの需要低下が要因であると結論づけることができます。 また、BEVの累計販売台数を年別に比較すると、2024年11カ月間において6万台弱ものBEVを発売したものの、2023年の11カ月間では8.4万台強を発売していたことから、2024年シーズンはEVシフト後退の一年となることがほぼ確定的となりました。 さらに、日本のBEV販売シェア率が世界の主要国と比較してどれほどの立ち位置であるのかを確認してみましょう。日本はデータが確定した直近の10月において1.56%という販売シェア率だったものの、最新データが判明している10月の世界全体のシェア率は16%に到達。さらに、10月の中国市場は30%に到達しています。 つまり、中国国内で売れている新車のうち10台に3台がBEVという状況です。いまだにBEVが64台に1台という日本とは別次元である様子が見て取れます。

TAG: #EVシフト #販売
TEXT:小鮒康一
リーフやi-MiEV以前にも量産EVはあった! じつは長〜い国産EVの歴代モデルを振り返る!!

1990年代にもEVが量産されていた いまでは日常的に見かけることも増えてきたEVたち。その普及の第一歩といえるのが、2010年に市販モデルがリリースされた三菱i-MiEVと日産リーフによるところが大きいといえる。 ただ、それ以前にも量産されたEVは存在していた。今回はそんな黎明期に登場した量産EVを何台かピックアップしてご紹介しよう。 トヨタRAV4 EV 現在はPHEVモデルもラインアップするトヨタのミドルクラスSUVのRAV4。ただ、EVモデルはなんと初代モデルの時代にすでに存在していたのだ。 1996年7月に発表、同年9月に発売を開始したRAV4 EVは、初代RAV4の3ドアモデルをベースとし、駆動用バッテリーを床下に収納したもの。駆動方式は前輪駆動となり、最高出力は45kW/165N・mと現代のEVに比べるとかなりマイルドなものとなっていた。 搭載されていたバッテリーはニッケル水素バッテリーで、満充電の航続可能距離は10・15モードで215kmとなっており、4人分の座席とヒートポンプ式エアコンを装備して実用にも十分に耐えうるものとなっていた点も特筆すべきポイント。 ただ、メーカーの希望小売価格は495万円と高額で、ユーザーのほとんどが官公庁などのリース契約となっており、結局328台をリリースするに留まっている。 ホンダEVプラス 現在、電動化を推し進めているホンダも1990年代にEVをリリースしていたメーカーのひとつで、1997年9月にEVプラスというハッチバックモデルのリース販売をスタートさせている。 このEVプラスは、一見すると当時のコンパクトカーであるロゴに似たスタイルをもっており、ロゴをベースとしたEVと勘違いされることもあるが、全長は4045mmとロゴよりも30cm近く長く、全幅も1750mmの3ナンバーサイズとなっていることからもわかるように、EV専用に開発されたオリジナルボディだったのだ。 EVプラスは今後のEVの開発にフィードバックを行う目的で実際の走行・使用状況のデータを収集可能な記録装置を備えており、リース販売が終了後はすべてホンダが車両を回収していた。 10・15モードの航続可能距離は210kmとなっており、最高速度は130km/h以上と日常使いには十分な性能をもっていたが、本格的なホンダの量産EVは2020年に登場したHonda eまで待たねばならなかった。

TAG: #名車 #量産 #電気自動車
TEXT:御堀直嗣
スマホならまだイケるのにEVのバッテリーは容量が70%を切ったら交換ってなぜ? 容量以外に求められるEV独特の性能とは

EVのバッテリーにはゆとりが不可欠 世界的に、ほとんどの自動車メーカーは電気自動車(EV)の車載リチウムイオンバッテリーについて、保証期間以前に容量が70%を切った場合、交換などの補償をするとしている。バッテリー容量がまだ7割近く残っているというのに、なぜ交換対象になるのか? 理由は、電気の利用の仕方による。これまで、一般的な電気製品はある一定の電流の使い方だったが、EVはそれと異なる使用条件になる。 電灯はもとより、冷蔵庫や電子レンジ、あるいはスマートフォンなども、基本は一定の電気の流れで稼働する製品だ。もちろん、スマートフォンの場合、動画を観る際などにより多くの電気を必要とする例もあるが、それでもEVほど急な増減はないので、一定電流で機能する定格出力が表示されている。 一方、EVに限らずクルマは、発進・停止を含め頻繁に加減速する使われ方なので、電気の利用も電流が増えたり減ったりし、なおかつ急加速では大量の電気を一気に必要とするので、バッテリー側のゆとりが不可欠だ。 EVのバッテリー容量が70%以下になったとすると、一充電走行距離が減るだけでなく、アクセルペダルを踏んでも運転者の操作(意図)どおりに加速できなくなる。それでは、交通の流れに乗りにくくなるばかりか、緊急回避のような場面で遅れを生じる懸念も出る。そこで、容量が70%を切るような状態になったら、クルマとしての使用には耐えないことになる。 対して、ある一定の電気を使うのが前提の電気製品では、じわじわと電気を使い続けるので、バッテリー容量がゼロになるまで使えるというわけだ。ことに、ニッケル水素バッテリーや、かつてのニッケル・カドミウム・バッテリーは、容量がゼロになってから充電したほうがよいとされている。いわゆるメモリー効果といわれる特性による。

TAG: #バッテリー #リチウムイオンバッテリー
TEXT:山本晋也
EVとV2H機器があれば停電時でも普通に家で生活できる? 使用電力について計算してみた!

出力制限は存在するのか? EVのもっている電力は、モデルによって走行以外に利用できるのもメリットになっている。EVに備わる100Vコンセントなどを利用してアウトドアなどで家電を利用するのはV2L(Vehicle to Loadの略称)といって、通常は1500W(15A・100V)が上限となっている。 その上をいくのがV2H (Vehicle to Homeの略称)で、日本ではCHAdeMOの急速充電ポートを利用して専用機器とつなぎ、EVの電力を家庭に供給するシステムがスタンダードとなっている。 太陽光発電と組み合わせて日常的に家庭全体のエネルギー最適化を図るという狙いで利用することもあれば、災害時のバックアップとして捉え、長時間の停電でもストレスなく生活を送るためにV2H機器を設置することもある。なお、V2Hを設置できるのはおもに戸建てとなる。 しかし、巷では「じつはEVには出力制限があるのでV2Hを使っても日常生活は送れないらしい」というネガティブなウワサも流れている。はたして、EVでV2Hを活用するときに問題となるような“出力制限”は存在するのであろうか。 その前に、家庭ではどのくらいの電力を使用しているのか整理してみよう。 個別のケースでは差は生じるだろうが、一般論でいえば戸建ての家庭の月間消費電力量は約400kWhとされている。オール電化の戸建てで電力によりお湯を沸かしていたり床暖房を利用していたりすると、冬季では1000kWhを超えるケースもあるようだが、ひとまず月間消費電力量が400kWhという条件で考えてみよう。 単純計算すると1日あたりの消費電力量は13kWhだ。 多くの家庭では電気契約をアンペア数によっているだろうが、日本の電圧は100Vのため30Aであれば瞬間的に使える上限は3kW、60Aでは6kWといった風に計算できる。常時、ギリギリの電力消費をしているわけではないだろうし、13kWhという数値を24時間で割ると、おおよそ平均的に5A相当の消費をしているイメージになる。 電気ヒーターやアイロン、ヘアドライヤー、トースターなど瞬間的に大きな電力消費をするものを我慢すれば、計算的にはV2Lの活用でも災害時に生活することは不可能ではないともいえる。 ただし、車内のコンセントに延長コードをつないでエアコンや冷蔵庫などを稼働させるというのはいろいろな意味で現実的ではない。V2Lは避難所の駐車場で車中泊するようなシチュエーションでは十分に活用できても、家庭全体に供給するには力不足であるし、利便性も悪い。

TAG: #V2H #給電 #蓄電池
TEXT:高橋 優
中国メーカーEVの安さには誰も追いつけない! 驚異のコスパで「Xpeng P7+」が登場するや3時間で3万台以上が売れた

バッテリー容量60.7kWhで航続距離615kmを実現 中国Xpengが新型フラグシップセダンのP7+の正式発売をスタートしました。発売開始3時間で3.1万台以上の確定注文を獲得するなど、爆発的ヒット状態となっている最新動向を解説します。 今回取り上げていきたいのが中国のEVスタートアップXpengの存在です。Xpengは最新の11月単体で3万台以上の販売台数を達成。史上最高の販売台数に大きく貢献したのがMONA M03という大衆セダンの存在です。Xpengの強みである高性能ADASを採用しながら11.98万元(約250万円)からというコスト競争力を実現することで、3カ月連続で月間1万台以上の納車台数を達成しています。 そして、このM03の流れを止めないために間髪入れずに投入してきたのが、フラグシップセダンとして長らくラインアップしていたP7の上級バージョン、P7+の存在です。全長5056mm、全幅1937mmと、P7と比較しても車両サイズをひとまわり大きくすることで、競合のシャオミSU7をベンチマークとしながら、もともとスポーツセダンというP7のコンセプトを刷新し、車内空間の快適性に振ったファミリーセダンとして追求してきた格好です。 P7+において特筆するべきは、電費性能を極限にまで引き上げてきたという点でしょう。P7+の電費性能は11.4kWh/100kmと、中国で発売されているミッドサイズ以上のEVとしては最高水準の効率性を実現。よって、60.7kWhというバッテリー容量で615kmという航続距離を確保しています。このバッテリー容量の少なさこそ、P7+のコスト競争力において決定的に重要な指標につながるのです。 この電費性能の追求のために空力性能を示すCd値は0.206を達成しながら、ヒートポンプシステムを含めた熱マネージメントを統括する最新のX-HP 3.0を採用することで、少ないバッテリー容量でも最大の航続距離を実現。 充電性能もCレートで3Cを達成することによって、SOC80%まで20分の充電時間を達成。Xpengは中国全土に480kW級の液冷式の超急速充電器を配備しており、最新の急速充電器「S5」の場合、最大電流値800A、最大電圧800V、最高出力800kWとテスラスーパーチャージャーの1.6倍もの充電出力を発揮可能です。 2024年7月末時点で中国全土1300箇所の充電ステーションを運営しているものの、2026年末までには4500カ所もの液冷式の超急速充電器を含む、1万カ所の充電ステーションを構築する方針も表明済みです。 また、中国のEVEエナジーと開発した、800Vシステムとしては業界最薄の109mmを実現する超薄型バッテリーパックをCell to Bobyとして搭載することで、車高を抑えながら車内空間の最大化を実現。トランク部分の収納スペースが725リットルと、たとえば競合となるアウディA6Lが430リットル、メルセデス・ベンツEクラスが540リットルと圧倒。SUVセグメントのアウディQ5Lとメルセデス・ベンツGLCが550リットルと比較しても圧倒。後席を倒した1列目以降の最大積載量は2221リットルと、テスラ・モデルYをも凌ぐ積載性を実現しています。 ちなみに前後のアンダーボディに対して最大1万6000トン級のギガキャスティングを導入することによって、そのぶんだけアンダーボディのコンパクト化、軽量化、剛性向上に貢献するなど、とにかく最新EVテクノロジー満載です。 そして、なんといっても18.68万元、日本円にして399万円という破格の値段設定を実現してきたのです。

TAG: #P7+ #Xpeng

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