コラム
share:

クルマの屋根をソーラーパネルにしたらタダでずっと走れるEVができるんじゃ……が現実的じゃない理由


TEXT:御堀直嗣 PHOTO:トヨタ/トリナ・ソーラー・ジャパン/TET 編集部
TAG:

プリウスPHEVやbZ4Xに採用されている

再生可能エネルギーの普及へ向け、ソーラーパネル(太陽電池)への期待は大きい。最近は、ペロブスカイト太陽電池の話題が出て、日本政府は、2040年までに原子力発電20基分相当の普及を目指すと表明した。

一方、たとえば屋根に装備したソーラーパネルでクルマが走れるようになるかというと、簡単ではない。それでも事例はあって、現行プリウスPHEVやトヨタの電気自動車(EV)bZ4Xは、ソーラーパネルを屋根に装備した仕様を設けている。

トヨタbZ4Xのソーラールーフ

プリウスPHEVは1日の発電で6.1km走行でき、bZ4Xの場合は、年間で1800km走行できる電力を発電できるとする。たとえば1年365日で割ると、1日4.9km平均走れることになる。そのために投じる注文装備価格は、どちらも28万円だ。

一般に、ソーラーパネルの発電効率は約20%とされてきた。これに対し、ペロブスカイト太陽電池は最高で33%以上ともいわれる。時代とともに、素材の新たな研究などで性能が高まるとともに原価低減への動きも実用化へ向けた重要課題である。

ペロブスカイトに期待が集まる理由のひとつが、素材が柔らかく曲げやすいため、これまでのソーラーパネルのように硬い板状でなくても使え、さまざまな形状の表面に適用すると、いろいろな場所で発電できるようになることだ。当然ながら、曲面で構成されるクルマの屋根や、車体側面などにも適応できる可能性はあるだろう。

トヨタ・プリウスPHEVのソーラールーフ

とはいえ、発電効率を最大にできるのは、太陽の光が直接あたる部分の話であり、太陽光が斜めに当たるとか、影になる面は発電効率が落ち、また発電しない状況もあり得る。

さらに、晴天の日中であれば発電できるだろうが、曇り空になったら発電量は落ち、夜はどうするのか?

クルマの利用は、天気のよい日の日中だけに限らない。また、梅雨の季節や秋の長雨、冬の降雪時期はどうするのか?

ソーラーカーレースに出場する車両が、畳のような表面の屋根にソーラーパネルを張り巡らせ、乗れるのはひとりといった姿で、自転車のような細いタイヤであるのは、ソーラーパネルが発電できる電力に制約があるからだ。それを4~5人乗りの乗用車や、屋根が平らとはいえパネルトラックなどにソーラーパネルを用い、その電力のみで移動するのは容易でない。

ソーラーカーレースのようす

それより、建物の屋根はもちろん、あらゆる建造物に適応できるペロブスカイト太陽電池が普及する折に、それで発電した電気をEVに充電して走らせるほうがより現実的ではないだろうか。

たとえば、ドイツのアウディの急速充電設備であるチャージングハブでは、設備の屋根に太陽光発電を用い、系統電力に加えて充電の電力を補っている。

EVに象徴される電気の時代は、一個の製品だけで課題を解決するのではなく、適材適所、周辺のインフラストラクチャー(社会基盤)を含めた設備の総合的な活用で利便性を高め、適正価格で快適な暮らしや移動ができる道を探るべきではないだろうか。

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
日本は3年連続「日産サクラ」がトップ! じゃあ中国・欧州・アメリカで一番売れてるEVってなにか調べてみた
電気自動車って「お金的に」得? エンジン車と諸々の費用を比べてみた
リーフのバッテリーパックをバラして積むって意外に大変! 初代フィアット・パンダのEV化に挑戦してみた【その5】
more
ニュース
これまでに40万人が参加したeモータースポーツイベント! 「Honda Racing eMS 2025」の開催が決定
ついに「コルベットがEV」に!? 2種類のコンセプトカーでシボレーが未来のハイパフォーマンスカー像を描く
ホンダが2026年に発売予定の新型EVは「アシモ」も搭載! アキュラRSXプロトタイプを米国・モントレーで初披露
more
コラム
マイクロEVには「ミニカー」「側車付き軽二輪」と法的に分類される2種がある! それぞれの免許や保険は走れる場所の違いとは?
4つ輪エンブレムじゃなく「AUDI」! VWは「ID.UNYX」! ワーゲングループが中国のZ世代獲得に動く!!
ガソリン車よりも安くね? ジーリーの6人乗り大型SUVのEV「M9」のコスパが「嘘だろ」レベル
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】いい意味で「EVを強調しない」乗り味! 本格4WDモデルも用意される期待のニューモデル「スズキeビターラ」に最速試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
more
イベント
マンションでもEVが身近になる! 官⺠連携で既存マンション全274駐⾞区画にEV充電コンセントを導⼊した事例リポート
公道レース「フォーミュラE東京」が帰って来る! チケットを持っていなくとも無料で1日遊び尽くせる2日間
災害に備えて未来を楽しむ! 「AWAJI EV MEET 2025」の参加はまだまだ受付中
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択