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EVとV2H機器があれば停電時でも普通に家で生活できる? 使用電力について計算してみた!


TEXT:山本晋也 PHOTO:TET 編集部/写真AC
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普段と同様の生活が送れるケースが多い

では、V2H機器を用いれば安心なのかといえば、たしかに前述した“出力制限”というハードルはいくつか存在している。

簡単に整理すると、車載の駆動用バッテリーの能力、EVとV2H機器をつなぐときの制限、そしてV2H機器自体の出力制限という3カ所でのハードルが考えられる。

まず、車載用バッテリーの能力についてだが、ここについては心配無用だ。たしかにバッテリーにはそれぞれ設計値としての定格出力・最高出力があり、それはある種の出力制限となるが、軽EVであってもモーターの最高出力は40kWを超えるくらいである。家庭では瞬間的な最大値でも6kW程度であり、駆動用バッテリーの能力が足かせになることは考えづらい。

V2Hのイメージ

続いて、EVとV2H機器をつなぐ部分の制限について。

いきなり話が逸れるが、太陽光発電を利用している人であれば「10kW未満」という数値に見覚えがあるかもしれない。一般家庭で利用できる太陽光発電は10kW未満と認識されていることが多いが、それは10kW以上になると産業用と定義されているためだ。これにより補助金などの制度における境目になっているが、この10kWという数値は家庭で流すことのできる電力の上限といった意味合いといえるだろう。

じつはEVとV2H機器を流れる電力は10kW未満となるよう設計されている。これが第二の出力制限といえるものだが、これまた前述したように、オール電化で暖房をフルに利用するというシチュエーションでもない限り、家庭での消費電力が瞬間的にであっても10kWを超えることは考えづらく、ユーザーがネガを感じるような状況にはならないだろう。

EVのボンネット内

最後に、V2H機器が家庭へ給電する部分の出力上限について見てみよう。現在、市販されているV2H機器が停電時に家庭に供給できる出力は6.0kVAが業界的には最大値となっている。

6kVAは6000VAであり、100V×60Aに相当する。厳密には異なるが、日常的には60A契約で問題なく利用できている家庭であればV2H機器の出力上限が日常生活を送るための制限となることはないだろう。ただし、オール電化の戸建てでは10kVAを前提にしているケースもある。その場合は電力消費が大きい家電の利用を我慢するなどする必要があるかもしれない。

複数のハードルや単位が出てきたので混乱してしまったかもしれないが、まとめるとオール電化で暖房をガンガン利かせるのでなければ、EVとV2Hの組み合わせにおいて家庭に供給される瞬間的な電力が足りないというケースは考えづらい。

V2Hのイメージ

ただし、EVのバッテリー総電力量や、そこにどれだけ充電してあるかで利用できる日数は変わってくるのは別の話だ。

1日の電力消費量が13kWhだとすると、20kWhのバッテリーを積む軽EVでは満充電であっても一日半くらいしか持たないことになる。また、90kWh級の大きなバッテリーを積むEVが満充電の状態であっても、1週間もつかどうかといったレベルとなる。

EVとV2Hの組み合わせはスペック的には出力制限を気にせずに普段と同じ生活が送れるわけだが、先の見えない災害時に利用するときには、節電を心がける必要があるといえそうだ。

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