最大出力250kWアップのGEN4マシンで電動化技術の開発を加速
では長期参戦が表明されたことで、日産ならびにフォーミュラEにはどのような変化があるのかみていきたい。
フォーミュラEで使用される車体は、全チーム共通のワンメイクシャシーだ。しかし、モーター、トランスミッション、それらの補機類においては、参戦メーカー独自の開発が可能になっている。
日産は長期の参戦発表により、現行の第3世代マシン「ジェネレーション3(GEN3)」だけでなく、2026-2027年のシーズン13から導入が予定される第4世代マシン「ジェネレーション4(GEN4)」においても、フォーミュラEを開発の舞台として革新的な電動化技術を推進するとしている。
なお、「GEN4」マシンではエネルギー効率がさらに向上し、回生量はGEN3の600kWから最大700kWに、最大出力は350kWから600kWへと、大幅な進化が見込まれている。
日産は2018-2019年シーズン5のフォーミュラE初参戦以来、活動を継続して拡大している。その一環として2023年にチームの本居地をパリに移転し、より優れた開発環境を整え、競争力を高めてきた。それと同時にフォーミュラEは、日産にとって市販車の電動化技術を開発する重要なプラットフォームのひとつになっており、長期ビジョンとして掲げる「Nissan Ambition 2030」の実現に向け、2024年度から2030年度の間に計34車種の電動車両を投入することを発表している。グローバルな電動車両のモデル構成は、2026年度に40%、2030年度には60%になる見込みだ。
日産は今後もフォーミュラEへの参戦を通じて、より多くの顧客に電気自動車を届け、よりクリーンで安全かつインクルーシブな社会の実現を目指したいとしている。
この発表の2日後、記念すべき初のフォーミュラE東京E-Prix開催日。予選ラウンドでは前戦までの好調さをそのままに、今大会だけの特別リバリーを纏う22号車のオリバー・ローランドが勝ち上がり、今シーズン初のポールポジションを獲得。
午後の決勝レースでは、レース大半をリードしながらもエネルギー消費量の調節のため一時2番手へ後退。そのままエネルギーをマネージメントしながらトップと1秒以内の僅差の攻防を展開。迎えた最終ラップで前を走るマシンへ果敢に挑むも、巧みなブロックラインにオーバーテイクまでには至らず2位でフィニッシュした。
しかし、混戦必至のフォーミュラEにおいて、3戦連続の表彰台獲得は殊勲に値し、その走りと攻防に場内は大いに盛り上がりを見せた。また、SNS上でも一時トレンド入りするなど、凱旋レースとして十分以上に見せ場を作ったといえる。
日産はフォーミュラEに参戦以来、勝ち星には恵まれていないものの、今シーズンは一種のブレークスルーを果たしたように見える。長期的な参戦確約は開発環境の安定・充実には必要不可欠な要素だ。日産のフォーミュラE初優勝、さらには年間チャンピオン獲得に期待が膨らむが、我々消費者として重要なのは、それらから得た技術によって一層ワクワクさせてくれるEV量産車が登場することだ。
フォーミュラEでの活躍と量産車へのフィードバックに期待したい。