28億円の資金調達で2025年の市場投入に向け開発を加速
日本と台湾の企業から構成されるEVメーカーのLean Mobility社(以下、リーンモビリティ)は、台湾の自動車関連企業連合から総額28億円の出資を受け入れたことを2024年2月22日に発表した。これにより同社が開発を進めている都市型小型EVの「Lean3 (リーンスリー)」は量産開発の最終段階に入り、市場への展開をさらに加速させる構えだ。
リーンモビリティは東京大学工学部を卒業後トヨタ自動車に入社し、シャシー設計や走行制御プログラムの開発、新コンセプト⾞両の企画や都市交通システムの研究開発を担当してきた谷中壯弘(やなかあきひろ)CEOが2022年に愛知県豊田市で立ち上げた、スタートアップのモビリティ開発企業だ。
今回の資金調達は、同社がビークル製造エコシステムの特性を知り尽くしたメンバー、モビリティビジネスや各業界でのマーケティングセールスに長けたメンバー、都市型小型EVの実証実験を取りまわしてきた経験のあるメンバーなど、各業界の経験豊富なスペシャリストを集結させた企業であることに加え、パートナー企業と強固な関係性を築くことで進めてきたプロダクト開発が、順調に進捗していることへの信頼と今後に対する期待感によるものだ。
その期待を集めるプロダクトというのが、都市型小型EVのリーン3だ。
開発中のリーン3はいわゆるマイクロモビリティの一種で、サイズは原動機付自転車、つまりはミニカーに該当する。全長2470mm、全幅970mm、全高1570mmというコンパクトなボディながら、都市空間にマッチするエクステリアデザインが与えられ、雨風を防ぐキャビンと空調を備える。車内はタンデム配置のふたり乗りで、後部座席はISO-FIX F2X規格に準拠したチャイルドシートの設置に対応している。ただし、日本で正式にミニカー登録となった場合には、残念ながら乗車定員は1名となってしまう。
車体はフロントが二輪、リヤは一輪の三輪タイプで、フロントステアに適応したアクティブ・リーン・システムを搭載する。これはGジャイロセンサーによって常に車両姿勢を推定しつつ、コーナリング時には前輪左右のサスペンションをダイナミックにコントロールし、車体を最適な角度に傾斜させることで、旋回時や荒れた路面でも安定かつ爽快な運転体験を実現する機構だ。
コンパクトで高機能なキャビンに、姿勢制御というロボティクス技術と自動車の走行技術を高度に融合させた新ジャンルモビリティを、リーンモビリティでは「RideRoid」と名付けている。RideRoidは都市部での移動効率を飛躍的に向上させることを目指しており、エコフレンドリーな移動手段として生活者に利便性と創造性をもたらしてくれるという。
バイクは安心感と快適性、クルマは取りまわしの面で不便さを感じるが、その両方を解決する都市型モビリティには数百万台規模の潜在需要が市場にあるとリーンモビリティは推定している。これらの需要を捉えていくことが今後の成果タスクとなるわけだが、RideRoidの第一弾となるリーン3の量産車を構成する部品の大半については、供給サプライヤー候補が決定してきており、サプライチェーンの構築は、すでに最終段階にあるという。
今回の資金調達により、2025年内の市場投入に向けて開発を加速させ、まずは台湾市場でのローンチを皮切りに、日本や欧州市場への展開も視野に入れていくとしている。そして市場投入5年目までに5万台以上の生産を見込んでいると同社は説明する。