インタビュー
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フォルクスワーゲン「ID.BUZZ」は人や荷物だけでなく笑顔もはこぶクルマ


TEXT:小川 フミオ PHOTO:Wolfgang Grube/Volkswagen Japan
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スイス・ロカルノで行われたID. MEETINGで、小川フミオ氏は印象的なID.BUZZオーナーと出会う。

ID.BUZZと1年間を過ごした旅の物語

北イタリアとスイスのあいだに横たわる巨大なマジョーレ湖。湖畔のロカルノで、2023年9月5日から9日にかけて開催されたのが、フォルクスワーゲンのBEV、ID.シリーズのミーティングだ。

「ID.TREFFEN」(ID. MEETING)には興味ぶかいひとたちが大勢集まった。

そのなかでも”お、あれは??”と興味を惹かれたのが、ライムイエローとホワイトの2トーン塗装のミニバンタイプのBEV、ID.BUZZ。

米国式にいうとオーバーランダー的なルーフトップテントを載せ、さらに、同じ塗り分けのキュートなキャンピングトレーラーを牽引していた。

そして車体には「55,000 km 120 nights 33 countries」の文字。

あのーすみません、どういう意味ですか? まるでテレビの旅番組のノリで、つい話しかけてしまった。

すると、ライムイエローのID.BUZZのわきにいたひとは、「自分がこのクルマで走った距離、車内で寝た日数、訪れた国の数です」と教えてくれた。

そのひとの名はクリスチャン・シュルーター氏(48歳)。ID.BUZZの発売とともに、2022年5月に旅を開始し、23年4月にドイツに最終的に戻ってきた。

「ID.BUZZは、むかしのタイプ2(初代が1950年に登場したVWのミニバン)を思わせるモデルで、1960年代はタイプ2は北米のヒッピーたちにも愛されました。ひととひととをつなぐ力あるクルマといえ、それを精神的な後継車ともいえるID.BUZZでもういちど、といろんなひとに乗ってもらうべく旅に出たんです」

シュルーター氏は言う。

なにか目標を設定しましたか、と訊ねると「ひとつは訪問国の数です」という答えが返ってきた。

「かつてタイプ2でもって、1年で26カ国を訪問したベルギーのひとがいたのを知っていたので、自分は少なくとも27カ国にしようと思いました」

笑いとともに答えてくれた。

クルマでの移動なので、旅はゆっくりしたものとなる。アイスランドに出かけたときはデンマークから3日間かけて船による移動となった。美しい光景が見られて行ってよかった、とのことだ。

アイスランドには、筆者も行ったことが何度かある。レイキャビクなどの市外に出ると美しいコケが一面を覆っていて、そこに足を踏み入れると多額の罰金をとられると注意された。ドライブは幻想的な景色だ。

時代を超えて共鳴した環境への想い

ユニークなひととの出合いもあったそうだ。

たとえば、イングランドではT2(タイプ2の2世代目のトランスポーター)に乗っている男性(78歳)と、シュルーター氏は会った。海岸に散乱しているPETボトルを拾い集めていて、「環境問題に強く関心を持っている」と言っていたとのこと。

さらにそのひとがユニークだったのは……と氏は続ける。

「排ガスの問題も大きな関心事で、エンジンを改造して、ガソリンでなく、食用油を使えるようにしていたことです。英国名物のフィッシュ&チップスの廃油で、そのひとのT2は走るんです」

電気でないが、カーボンニュートラルを実現したいという思いは、最新のBEVであるID.BUZZの開発コンセプトと、どこかでつながっているということか。

ID.BUZZのいいところはどこだったか、訊ねると、シュルーター氏は2つ挙げた。

「ひとつは、クルマの中で寝られること。やっぱり疲れるし、どこでもホテルが見つかるわけでないので。もうひとつは、知らない街へ行っても、周囲のひとが笑顔で手を振ってくれること。デザインの力ですね」

Vol.3へ続く

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