物理スイッチ3つだけ、極限までシンプルなインテリア
3点目にインテリアをピックアップした。テスラはスイッチの少ないシンプルなインテリアも特徴の一つだ。特にモデル Yの物理スイッチはステアリングホイールスポーク部の2個とヘッドコンソール部のハザードスイッチだけ(パワーウインドーとドアオープナーを除く)。エアコンは設定温度の変更だけでなく、風向きの調整さえもセンターディスプレイで行う。ドライバー用のメーターディスプレイも無い。
ところが戸惑うのは最初だけですぐに慣れる。ガラケーからスマホに難なく乗り換えられた人ならきっと大丈夫だろう。
多くの設定、例えばドアミラーの角度やシート位置の調整は、ディスプレイとスポークにあるスイッチで行う。一度自分のポジションに合わせておけば頻繁に変える必要はないので問題ないし、それらの物理スイッチを減らすことによるコスト削減も見込めるはずだ。
さすがにここまで割り切ったメーカーはまだないが、エアコンや車両の設定をディスプレイで行うモデルは増えてきている。
番外編として挙げておきたいのは、ボンネット下の荷室スペースである「フランク」だ。ポルシェ・911などリヤにエンジンのある車は従来からフランクがあったが、リヤの荷室はエンジンがあるため、そのスペースは限定される。
しかしテスラはEV専業でエンジンの概念が毛頭ないので、リヤは広いスペースを、フロントにも十分な深さを持つフランクを、前軸にモーターのあるモデル YのAWDでさえも確保しているのは、素直にすごいと思える。
北米充電規格はNACSが掌握の気配
プラス1として取り上げるのはNACS(North American Charging Standard)だ。北米におけるEVの充電規格はCCSとテスラのNACSが大半だ。しかもテスラが自前で整備を進めたNACSは、充電ステーション数で1万2000とCCSの2倍に達する。
今年5月以降、フォード、GM、ボルボ、ポールスター、リヴィアン、フォルクスワーゲン、日産が、北米においては2025年以降にNACSを採用すると相次いで発表するなど、ステーション数の多さや対応メーカーの増加で、文字どおりの「北米標準規格」を勝ち取りそうな勢いだ。
NACSは、クルマにプラグを差し込むだけで充電が始まり支払いも完了するプラグ・アンド・チャージに対応しているため、日本のチャデモのように画面を見ながらカードやスマホの操作が要らない手軽さが特徴だ。最大250kWの充電によりモデル Yは15分で最大261km、モデル Sは15分で最大322kmと超高速充電が可能だ。
そしてNACS=テスラのスーパーチャージャーの分布を見ると、北米、欧州、日本、韓国、中国に多数整備されている。例えば日産が日本でもNACS充電口を装備したら、前述の手軽さと充電の速さを率直に喜ぶ日産オーナーもいるのではないだろうか(もちろんクルマ側の充電能力も関係してくる)。NACSが北米以外でも勢力をより拡大していくのかに注目だ。
そして日本メーカーもテスラをフォローするだけではなく、追い越せる見込みも出てきた。
最も注目しているのはトヨタと日産が開発を進める全個体電池だ。航続距離を2倍に、充電時間を1/3に出来ると言われており、2027~2028年にかけての実用化を目指している。日本勢の反撃攻勢にも期待したい。