コラム
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「テスラセンター千葉稲毛」国内最大規模。試乗・納車・修理・急速充電機能まで備えたファクトリーに潜入した


TEXT:曽宮 岳大 PHOTO:曽宮 岳大

テスラ国内初の総合サービス施設

低く構えた個性的なデザインやEVとしては長い航続距離、そしてなにより時代の先を進んでいる先進的なブランドという雰囲気を放ち、ユーザー数を着々と伸ばしているテスラ。自動車産業が発展し、自国生産車に乗るユーザー比率が高い独特のマーケットである日本においても、その数は日に日に増えており、街で見かける頻度も増している。背景には、充電設備やサービス工場の拡充といった企業努力があり、ユーザー側としてもビジネスが軌道に乗っている安心感を持てる部分はあるだろう。そんな上り調子な勢いをさらに加速させそうな大規模な施設が千葉に登場した。「テスラセンター千葉稲毛」がそれだ。

東関東自動車道の千葉北ICから5分という立地にある同センターは、車両の見学や試乗ができる「ストア」、修理やメンテナンスを行う「サービスセンター」、納車場所となる「デリバリー」、そしてテスラの特徴である独自の充電設備「スーパーチャージャー」という4つの機能を併せ持つ。実はこの4つの機能を集約した施設というのは国内初で、これまでは機能が限定された比較的小規模な施設が多かった。

「テスラセンター千葉稲毛」は、約850坪の敷地面積、最大充電出力250kWを誇る8基のスーパーチャージャーを持つ国内随一の規模であり、サービス工場は千葉県初、関東では横浜・東名川崎・板橋・東雲に続く5拠点目となる。これだけの規模と設備を持つ総合型サービスセンターが都心に程近い場所にできたことは、ユーザーにとって大きな利便性と安心感の向上につながりそうだ。

EVゆえのクリーンなサービススペース

この「テスラセンター千葉稲毛」のプレオープンを記念に、普段は公開されていないセンター内を見学させてもらうことができたので紹介したい。なお、同センターは11月12日(土)にオープンしたものの、一部のサービスは順次開始予定となっているのでテスラユーザーの方は注意いただきたい(スーパーチャージャーは2022年末頃、デリバリーは2023年初旬より稼働予定)。

サービス工場の中は、白い床と白い壁に覆われ、見るからにクリーンな雰囲気。排ガスが発生しない電気自動車専用の工場であることが建物のデザインにも反映されているようだ。ちなみにお客さんは、この工場の入り口でクルマを受け渡し、その場でできる軽作業の場合には、カスタマーラウンジでくつろいで待つことができる。

サービス工場の中には、アライメントテスターやリフトが備わり、車検や重整備を含む、ひと通りの作業を行えるようになっている。また印象的だったのは、それ以外の何もない空間が広く、がらんとしているのだ。

聞けば、そもそもテスラの場合、エンジンを搭載していないため、下回りから行う作業自体が少ないという。通常のクルマであれば、オイル交換を行う排液口や、マフラー周りの部品など、リフトアップでの作業を前提とした造りになっているが、テスラはさにあらず。床下がフラットでツルンとしている。見るからに空力性能も良さそうだが、下回りの部品が少ないこともこうした構造に関係しているようだ。それゆえサービス工場もフレキシブルに対応できるように自由スペースを多く残しているのだろう。

EV専業ならではの出張メンテナンス「モバイルサービス」

またテスラでは、「モバイルサービス」と呼ぶ、いわゆる出張修理サービスを展開している。その車両も見させてもらったが、中型セダン「モデルS」のラゲッジルームと後席部分にメンテナンスツールがぎっしりと積み込まれ、出張修理に万全に備えている。現在モバイルサービスは20台ほど稼働しており、全体の修理の約6割を担っているという。これも部品点数が少なく、リフトアップの必要性が少ないテスラならではのアフターサービス形態といえるだろう。

ちなみにサービスの予約は、スマホのアプリから可能で、日時や利用するサービスセンターの指定までを同アプリ上でできるようになっている。その予約リクエストを受けて、モバイルサービスでの対応が可能な場合は、別途テスラの方から連絡が入るという。そうしたコミュニケーションは、すべてアプリのチャットボックスを介して行われ、見積りなどもアプリ上で完結するという。

利便性の高い「スーパーチャージャー」

独自の急速充電システム「スーパーチャージャー」についても紹介しておこう。テスラの充電サービスは、充電速度(時間ではない)に応じて料金が変わるシステムを採用している。これは電気自動車の場合、バッテリー残量に応じて充電速度が変わるから。バッテリーが空に近い状態では、早い充電が可能な一方、満充電に近くなると充電速度が落ちてしまう。同じ時間充電しても充電量に差が出てしまうことを避け、フェアに対応するため、テスラでは4段階の速度に応じた料金体系で展開しているのだ。

目安としては、250kWのスーパーチャージャーを使用した場合、15分から20分程の充電で約270km走行できるとのこと。充電料金は、〜60kWまでが25/分、61100kW50/分、101-180kW85/分、181-250kW140/分。搭載バッテリーサイズにより異なるものの、10%から80%ぐらいの充電の場合、約1600円で充電できるという。

「テスラセンター千葉稲毛」ではこの高出力スーパーチャージャーを24時間解放し、顧客に快適な充電サービスを提供する。現状、スーパーチャージャーは全国に53箇所ほどあり、そのうち12箇所が今年新設されたもの。月に1箇所ほどのペースで増えている計算となり、今後も全国規模に充電環境を整えていきたいとしている。

着々と環境整備が進むテスラのネットワーク。そのエンブレムを見る機会は今後ますます増えそうな気配だ。

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