シャープさと柔らかさを巧みに両立したリアエンド
前方からリアエンドを眺めると、とても潔く、垂直に切り落とされているように見える。このシャープなラインがクルマ全体にタイト感をもたらしている。ところが、いざ後方へ回ってみるとボディ後端のパネルはしなやかなラウンドシェイプとなっており、視覚的な柔らかさがむしろ強調されている。
その上に配置されるテールランプもモダンな形状だ。携帯電話にもPCにも実現できないような抑揚で魅せ、かつそれらデジタルガジェットと同様の繊細さが注入されるのがこれからのカーデザインの主流だと思う。楔のようなかたちをした、いくつかの光源で構成されるヘッドライトはその象徴で、このEX30が自ら意思を持った知能的な「自動車」であることを示す。
今回インテリアの撮影は許されなかったが、観察することが可能だった。全体のプロポーションとしては、前述したコンパクトさの中にホイールベースを長く配置する。BEV(バッテリー電気自動車)ゆえ、これまでの“エンジンルーム”に収めるべき部品は少ないから、あまり意識させないがキャビンはフロントへ押し出すようなかたちになっているので、前席の足元が広い。
さらに興味深いのは、内燃機関(ICE)車と異なりダッシュボード周りに余裕があることを活用して、オーディオシステム(展示車はハーマン・カードンだった)をダッシュボードだけに収めてしまい、左右ドアからはスピーカーを排除してしまったことだ。ドライブシャフトや排気管のためのセンタートンネルが必要ないため、センターコンソールの部分にはトレイを折りたたみ式として床面まで荷物置き場として利用できるユーティリティが面白い。
中国で全車が生産される予定であるEX30のプラットフォームは、吉利汽車の「SEA」アーキテクチャを採用し、スマート「#1」や、今後加わるポールスターのサブコンパクト・カーと共有する予定。「そんな前提のなかで、ボルボらしさをはっきりと作り込んでいったことに強い印象を受け、自信を持った」とボルボ・カー・ジャパンの製品企画担当者はいう。
最後に、これほどコンパクトなボディに割り切ったのは挑戦的ですね、と、パーソン社長に切り込んでみた。「ボルボの電気自動車ラインナップが拡大していく中で、お客様に最適なモデルを選んでいただきたい。このコンパクトなボディサイズが日本市場では成功すると確信しています」と、彼は締めくくった。