田中 誠司 記事一覧

TEXT:田中 誠司
テスラの売れ筋SUV「モデル Y」はライバルと比べてどうなの?[消費者派チェック]

モデルYはテスラの5番目の車種として、日本では2022年6月に注文受付を開始、納車は9月からだった。それからまだ1年しか経っていないが、一番街で見かけるテスラではないかと思うくらいにヒットしている。ライバルと比較しながらその要因を探った。今回の[TET消費者派チェック]の概要はこちら。リーフの回はこちら。アイオニック5の回はこちら。 乗る前に考えたこと 「餅は餅屋」という言い回しがある。誰かに何かを頼むにあたっては、その専門家を訪ねるのがベストだ、という格言だ。 もう15年近く前のこと、ロータス・エリーゼのシャシーをベースとした電気自動車「テスラ・ロードスター」を日本自動車研究所テストコース(高速周回路)に持ち込んだ時、思い出したのはまさにこの言葉だった。「自動車は自動車屋にまかせなさい」と。一般路を誰もが快適なペースで走らせる限りはそこそこ軽快でも、全開加速ではまるで小船のようにノーズが浮いてしまい、フロントタイヤの接地感のなさに恐怖を感じたことを覚えている。 けれども最近になって思うことは、「電気自動車は電気自動車屋に任せるのがいいのでは?」ということだ。毀誉褒貶あるテスラだが、なにしろ彼らはずっと電気自動車のことしか考えていない。そうだからこそ生まれ得た長所をアーリーアダプターが見出し、世界に名を轟かせる存在になったのだろう。 電費 車重がジャスト2トンとリーフよりも320kgも重いにもかかわらず、電費は80km/hが8.8km/kWh、100km/hが6.7km/kWhと、3台中最も良い値だった。前面投影面積も小さい方ではないので、Cd値(空気抵抗係数)がリーフより0.05、アイオニック5より0.09も良い0.23と最小であることが奏功しているはずだ。 パッケージング   パッケージングは、今回の3台の中では圧倒的に優れている。唯一、後席の膝前スペースだけアイオニック5(26cm、ホイールベース3,000mm)に及ばなかった(22cm、ホイールベース2,890mm)が、それはホイールベースの差によるところが大きいはずだ。ホイールベースの差が110mmあるのに対し、膝前スペースの差がわずか4cmにおさまっているのは立派だ。 荷室も854Lと圧倒的に大きい。そしてBEV専業メーカーらしく最初からエンジンのことを考える必要がないので、フランク(ボンネット下の荷室)も大きく深く、容量117Lを確保していて圧勝だ。 テスラのフランクは、最初からそのためのスペースを想定して設計されているように思える。取ってつけたような空間ではなく、とても使い勝手がいい。これはリヤエンジン車のポルシェ911に通じるところがあり、だからこそ顔つきもちょっとポルシェと似ているのではないか。車体全幅に対しちょっとグリーンハウスを絞ってスポーティーさを強調していることは、絶対的なスポーツカー・ブランドを見習った結果であるような気がする。 運転してわかったこと 外観からはそれほどがっしりした印象に思えないのだが、実際に乗ってみると各部品の建て付けや足回りの剛性感に優れていることを感じる。ボディの裏側を覗くと、他社と異なり、モーターを覆いサスペンションの付け根となっている前後のサブフレームは、巨大なアルミの鋳物でできている。コスト低減にも効果的だというこの機構が、車体剛性の面でも威力を発揮しているのだろう。 加速力もいわゆるファミリーカーの範疇を超える強烈さだが、コントロールしにくいと思わせる部分はなかった。 デザイン的には突飛とも思えるサイズのモニターに、多数の情報を高解像度で並べる。ドライバーの目の前には何も遮るものがない。最近になって多くの既存自動車メーカーは小さめのモニターを横にいくつか並べることに腐心しているが、最初からEV世代であるテスラはそうした既成概念から逃れられているのだろう。

TAG: #テスラ #モデルY #消費者派チェック
TEXT:田中 誠司
自動車部品&輸入販売の超・老舗とBYDがコラボ、東京・品川に新ディーラーをオープン

BYDオートジャパンが新ショールーム「BYD AUTO 東京品川」を東京・品川駅港南口から徒歩10分の旧海岸通り沿いにオープンし、10月2日、報道陣及び関係者に公開した。営業開始は9月20日。現在は「アット3」「ドルフィン」をラインアップするBYD車の試乗・販売および、日常的なメンテナンスを手掛ける。 歴史ある商社が品川のディーラーを担当 同ショールームの経営にあたるのは、自動車部品商社として90年の長い歴史を誇る明治産業株式会社および、その子会社である明治モータース株式会社だ。かつてはインポーター(輸入総代理店)としてシンガー、アルヴィス、ロイヤルエンフィールド(二輪車)などを手掛けていた。現在はポルシェセンター高輪があり、少し前はBMW TOKYO高輪ショールームだった場所において、日野ルノーの販売にも携わっていたといえば、東京の自動車史との深いかかわりを理解してもらえるだろうか。 明治産業はしばらくは車両の輸入から遠ざかっていたが、ブレーキ、エンジン、サスペンション関連をはじめ幅広い守備範囲で部品の輸出入を手掛け、年商は400億円超を誇るほか、2018年からは新生アルヴィスの輸入代理店も担う。 BYDとの縁は、同社の日本乗用車市場参入に際して、アフターセールスのプロフェッショナルとして全国のディーラーに対する技術指導を任せられたことだった。部品商社として培ったノウハウを活かして販売スタッフ、整備スタッフにEVの実車を使った独特な研修を2022年9月から実施し、BYDの乗用車部門であるBYD AUTO JAPANの「2025年までに全国にディーラー100社を展開する」という目標をサポートしている。

TAG: #BYD #ディーラー #東京
TEXT:田中誠司
ハンドリングはピュアスポーツ 乗り心地は高級サルーン[ポルシェ・タイカン・ターボS試乗記]

素晴らしい乗り心地 パナメーラなどと同じく3チャンバー式エアスプリングと可変ダンパーを備えるタイカンの乗り心地は、素晴らしいの一言に尽きる。ただし、乗用車ではなくあくまでもスポーツカーの概念で設計されたシャシーであることを片時も忘れさせることはない。 どういうことかというと、例えばメルセデス・ベンツやBMWはがっしりした重いボディにしっかりしたラバーマウントを介してサスペンションの動きを返してくる。対してポルシェは同じボディサイズならより軽量で、快適性よりも軽さを優先しているから、路面の段差をサスペンションのコンプライアンスでごまかそうと言う意識が少なくなるのだろう。 できるだけサスペンションアームの長さを取って、理想的かつ精密に動くような形態とし、サスペンション自体の力で優れた乗り心地を見出そうとしていることがヒシヒシと感じられるのだ。 具体的には一つ一つの入力に対してボヨンとした反応が少なく、全てをびしっと受け止める。その上で精密に作られたコンプライアンスの少ないサスペンションピボットが限られた範囲だけ動く、という感じ。それゆえときに高級車らしくない衝撃を感じることもあるのだが、まぁそれは生まれ育ちの違いだと言うことで、ポルシェのオーナーになろうとする人ならば納得できる範囲であり、そういった一種のハードさをむしろオーナーの側が求めているのだと思える。まさにスポーツカー、あるいはレーシングカーの延長線上にあるのだと言うことをはっきり主張してくる乗り心地だ。 ワインディングロードにおいても、上記の印象は変わらない。走行モードを問わず、ステアリング操作に対して、あるいはブレーキの操作に対して非常に繊細なレスポンスを返してくれる。あらゆるシーンでドアが4枚付いた車だと言うことを忘れてしまうような鋭いレスポンスを発揮し、2380kgの重さを、少なくとも一般公道で走らせている限りは全く感じることがない。 使い勝手と電費 低く構えたサスペンションは、一部のスーパーカーのようにリフトさせることが可能になっている。前後のリップスポイラーがカーボンゆえコンビニの車止めにも気を使わせられるから、この機能は助かる。ただしホイールベースは2900mmと極端に長いので、山なりの路面では腹を擦らないように気をつける必要があるだろう。 クルーズコントロールの動作は、加減速や先行車をとらえた瞬間の動きなど十分にスムーズといえる。ドライバーの操作が途切れたときに自動操縦を中断してしまうまでの時間は、比較的短いようだ。 電費は、高速道路が8割、順調に流れている一般道が2割という比率で577.1kmを走り、平均で5.4km/kWhであった。平均速度は49km/hで、途中2度ほど継ぎ足し急速充電をしている。 結論 タイカン・ターボSは、ポルシェのスポーツカーとしての伝統を完璧に受け継ぎながら、4人の乗員と彼らのためのラゲッジを全て収容するパッケージングを持ち、充分すぎるほどの加速力も備える。世界的には911を上回る販売実績も納得の出来栄えであった。 そんな中であえて苦手分野をと問われれば、やはり航続距離だろう。自宅充電が可能な人であっても、出先での充電を避けたければ実質400km程度の旅が限界だろうし、大きなバッテリーは急速充電するにも時間がかかる。1時代前に比べればかなりいい線まで来ているとはいうものの、この点ばかりはポルシェにしても難しかったと捉えざるを得ない。充電拠点の少ない日本においてはなおさらである。 Porsche Taycan Turbo S 全長:4,963mm 全幅:1,966mm 全高:1,378mm ホイールベース:2,900mm 車両重量:2,380kg 前後重量配分:前1,170kg、後1,210kg 乗車定員:4名 交流電力量消費率:234-219Wh/km 一充電走行距離:454km 最高出力:560kW(761ps) 最大トルク:1050Nm(107.1kgm) バッテリー総電力量:93.4kWh モーター数:前1基、後1基 トランスミッション:2速 駆動方式:4WD フロントサスペンション:3チャンバーアダプティブエアサスペンション リアサスペンション:3チャンバーアダプティブエアサスペンション フロントブレーキ:ディスク(PCCB) リアブレーキ:ディスク(PCCB) タイヤサイズ:前265/35R21、後305/30R21 最小回転半径:5.6m 荷室容量:後366L 前84L 車体本体価格:24,680,000円

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TEXT:田中誠司
ピュアスポーツの伝統を受け継ぐ4シーター[ポルシェ・タイカン・ターボS試乗記]

タイカン最新ラインナップの概要 ポルシェ初の量産BEVである「タイカン」は2019年にワールドプレミア、日本では2020年に発売された。スペック表の通りなかなかの大型セダンだが、乗車定員は4名と割り切っている。ただしオプションで5人乗りを選ぶこともできる。 パワートレーンは大きく2種類に分けられる。1モーター後輪駆動と2モーター4輪駆動だ。前者を用いるのは素の「タイカン」のみで、最大出力300kW/408ps。これがエントリーモデル的な扱いになっている。後者は最高出力の違いで390kW/530psの「4S」、440kW/598psの「GTS」、500kW/680psの「ターボ」、560kW/761psの「ターボS」の4機種を揃える。 今回乗ったのはパワーレベルの最も高い「ターボS」。ポルシェジャパンの駐車場で対面すると、ポルシェの市販車ラインナップ中で最も高価かつパワフルなものに与えられてきたグレード名だけあって、外観もとても引き締まって見える。素のタイカンのホイールは19インチだがターボSは21インチ。オプションのボディ同色リムから覗く巨大なブレーキディスクは、標準でPCCB(ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ)となる。 インテリアは、タイプ997以降のポルシェの流儀に従って整然としたレイアウトだ。ダッシュボードの中央にはクロノグラフが備わり、助手席前のパネルにはタッチスクリーン(いずれもオプション)が配置されるなど、テクノロジーを前面に打ち出している。一方で、センターコンソールにはカップホルダーとして丸い2つの穴が開いており、そこだけがあまりにもアナログな光景でユーモラスであった。     スリムなシートはターボSの場合、標準で18way調節機構付きで、実はポルシェのシートが苦手な筆者でも、長時間のドライブでどこも痛くならなかった。リアシートは2名分と割り切っているおかげで、フロントシートに劣らないパーソナライズ感がある。 ラゲッジスペースは、位置は高いが床はフラットだ。ボディ形状からはあまり期待できそうもないと想像してしまうが、ヒンジの形状がよく考えられており、有効に使える体積は思ったより大きい。メジャーで計測してみると幅x奥行きx高さは90〜148x104x45cmだった。BEVだけにフロントにも“フランク”と呼ばれるラゲッジスペースがあり、こちらは55x30x36cmだった。 ターボSの車両本体価格は2468万円。これにボディ色アイスグレーメタリック39万6000円をはじめとする有償オプション28種544万4000円が加わり、試乗車は総額3012万4000円である。素のタイカン1286万円が破格にすら感じる。 強烈な加速 筆者は「タイカン4S」がデビューまもない頃に走らせたことがある。率直に言ってこの世のものとは思えないほど強烈な発進加速性能を持っていた。言い換えれば「これ以上もう何もいらない」という印象だったわけで、今回さらにハイパワーなターボSに乗っても、正直なところ公道上では加速性能に関してさほどの違いは感じられなかった。 カタログ上の0-100km/h加速は4Sの4秒フラットに対しターボSは2.8秒とかなり開きがあるが、いずれにしろ凄い領域なので胸のすくひまもない。テスラ・モデルSもそうだが0-100km/h加速2秒台というのは、もはやパワーユニットの性能というより路面の性能、つまり摩擦係数の問題になってくるのではないかと思える。 フィーリングとしては、かつて4Sを走らせた時に感じたような生々しい、電気自動車ならではのトルクの強烈さみたいなものを、むしろ最新モデルでは敢えて抑えているような印象を受けた。このことも、前述の格別な加速感を感じないことに一役買っているのかもしれない。 Porsche Taycan Turbo S 全長:4,963mm 全幅:1,966mm 全高:1,378mm ホイールベース:2,900mm 車両重量:2,380kg 前後重量配分:前1,170kg、後1,210kg 乗車定員:4名 交流電力量消費率:234-219Wh/km 一充電走行距離:454km 最高出力:560kW(761ps) 最大トルク:1050Nm(107.1kgm) バッテリー総電力量:93.4kWh モーター数:前1基、後1基 トランスミッション:2速 駆動方式:4WD フロントサスペンション:3チャンバーアダプティブエアサスペンション リアサスペンション:3チャンバーアダプティブエアサスペンション フロントブレーキ:ディスク(PCCB) リアブレーキ:ディスク(PCCB) タイヤサイズ:前265/35R21、後305/30R21 最小回転半径:5.6m 荷室容量:後366L 前84L 車体本体価格:24,680,000円

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TEXT:田中 誠司
あらためて、一泊二日の小旅行で学んだこと:フォルクスワーゲン「ID.4 Pro Launch Edition」

EVにちょうどいい距離を旅する フォルクスワーゲン「ID.4 Pro Launch Edition」で都内から銚子まで、一泊二日の小旅行をしませんか? という誘いがTET編集部に舞い込んだ。EV(電気自動車)専門媒体を対象にした小規模なイベントであるという。 銚子は昔から僕が気に入っている街だ。太平洋を一望できる展望公園、犬吠埼灯台、古めかしい町並み、銚子電鉄、醤油工場といった数々の観光名所にくわえて、いくつかの魅力的な寿司屋とカフェがある。 出発地から宿泊先まで単純な往復距離は260kmと、メーカーが公称する一充電走行距離が613kmにおよぶID.4 Pro Launch Editionにとっては造作ない範囲だ。 最近、長距離移動の際に意図してBEV(バッテリーEV)を利用させてもらうようにしているのだが、現地での寄り道や渋滞、途中での人の乗せ下ろし等、一充電走行距離が目的地までの往復距離より100kmくらい多くないと余裕を持って旅を楽しめない気がしている。 最近では道の駅や高速道路のSA・PAに急速充電器が増えたとはいえ、多くの場合30分に限られる充電時間では“注ぎ足し”程度の効果しかない。朝までに回復できるよう、普通充電器を用意してくれている宿泊施設も最近増えてはきたものの、それが備わるホテルはまだまだ数が限られる印象だ。 VWグループ車両ならPCAを利用できる! 旅の途中での充電に関して、もうひとつの選択肢が各メーカーが自動車ディーラーに用意する急速充電器だ。VWグループではPCA(プレミアム・チャージング・アライアンス)と称して、フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェの各ディーラーが連携してそれぞれの充電器を共通で利用できる試みが2022年から始まった。このPCAの傘のもと、全国で急速充電器を利用できるディーラーは207拠点(2022年末時点)におよび、充電器総数は218であるという。 VWグループに属する車両のオーナーは、スマートフォンにPCAアプリをインストールし、月額会員か都度会員かを選んで利用者登録を行う。月額会員は月会費が1,800円、登録に2,000円を要するものの、150kWの急速充電が都度会員では1分あたり200円であるところを、1分あたり75円で利用できる。 われわれが立ち寄ったフォルクスワーゲン江戸川の急速充電器は90kWスペックだったので、月額会員は1分あたり45円、都度会員は1分あたり120円の利用費になる。充電の開始はアプリで充電器のQRコードを読み込んでケーブルを指すだけと簡単だ。個別に専用のカード等を用意しなくてもいい手軽さと安心感も好ましい。時間の都合からほんの少しだけ充電した際のペースは71kW。仮に30分充電したとすれば36kWを補充でき、今回の総電費が6.2km/kWhであったことから計算すると約226km分を蓄電できたことになる。 ひとくちに急速充電器と言っても、充電速度が思いのほか伸びないケースは多々あるし、そもそも充電器とクルマの相性か、まったく充電が始まらなかったり、途中で終わってしまうこともある。そこへ行くと、確実に90または150kWの充電器を用意してくれているPCAの取り組みはオーナーにとって大きな安心要素になるだろう。

TAG: #ID.4 #VW #試乗
TEXT:田中誠司
ほんの一瞬、日本メディアの前に実車が登場 ボルボ「EX30」のデザインからわかること

「C40」「XC40」よりはっきりコンパクト。立体駐車場にも入る 2023年6月14日、ボルボ注目の新型車「EX30」の主要メディアに対するスニーク・プレビューが東京・青山のボルボスタジオ東京で実施された。これがアジア初お目見えでもある。 1週間前にミラノで披露されたばかりのこのクルマ、個体は違うとはいえ試作段階のものを空輸で持ち込み、「一刻も早く日本メディアに肉眼で見て確かめてもらいたい」というのが趣旨だ。ボルボ・カー・ジャパンのマーティン・パーソン代表取締役は「数少ないクルマをいち早く持ち込めたことには、ボルボグローバル本社の、日本市場に対する関心の強さが表れていると言っていいでしょう。大変嬉しく、心強いです」と笑顔を見せる。 ボルボ・カー・ジャパン マーティン・パーソン代表取締役とボルボ「EX30」 ショールームのフロントに並んだボルボ「C40」「XC40」に比べると、はっきりとコンパクトであることがEX30の第一印象だ。そして従来のボルボの、あるいは従来の乗用車のデザインからさらに垢抜けて、工業デザイン、ガジェット的な目新しい印象を受ける。コンポーネンツを凝縮した、エモーションに訴えかけるデザインだと思った。 ボディサイズは全長4,233mm、全幅1,837mm、全高1,549mmと、前出の2台に比べて全長が20cmほど短く、日本の立体駐車場にも入る全高がポイントだ。 フロントエンドはボルボのエンブレムを控えめに配したフロントパネルと、その上を覆う抑揚に富んだボンネットフードを組み合わせる。むろん、そこに風を通すグリルの機能は備わらない。その下の樹脂パネルはボディサイドにも同様の素材が用いられる。細かな縦格子が刻まれるこの素材は高級感を醸すが、一部にリサイクル素材を用いてサステイナビリティの向上に貢献しているという。

TAG: #EX30 #コンパクトカー #ボルボ
TEXT:田中 誠司
「i4の使い勝手、◯と✕」BMW伝統の後輪駆動スポーツセダン「i4」試乗記 その3

キャビンはクーペ的にコンパクト、ラゲッジルームは意外な使い勝手の良さ パッケージングと実用性についても述べておきたい。身長172cmのドライバーが適切な運転ポジションを選び、その背後に移った状況において、後席頭上の余裕は3cmほど。あくまでグランクーペの一員として割り切っているi4では、座高の高い人なら頭がルーフラインに触れてしまうだろう。膝前に生まれる空間も18cmほどと、それほど大きな余裕はない。 一方、オートマチック・テールゲートが備わるラゲッジスペースはフラットな床面を持ち、奥行きの最大値が98cm、幅の最大値が132cm、トノカバーまでの高さ47cm、幅の狭い部分でも89cmが確保されていた(以上、すべて編集部による実測値)。ラゲッジルーム容量はカタログ値で470L、後席を折りたためば1290Lまで拡大可能だ。グランクーペのよいところは、テールゲートがガバっと大きく開くうえに、床面が低いので荷室の奥のほうまで容易に手が届くところだ。 今回、東京都心から伊豆半島南部まで、半分高速道路を利用しておよそ400kmの往復で電費は6.6km/kWhであった。途中ほんの少し急速充電で注ぎ足したため余裕はあったが、伊豆のワインディングロードで思う存分340psを解き放とう、という心の余裕はなかった。エンジン車で残りが100km、というのと、電気自動車で残りが100km、というのは心理的な切迫感がずいぶん違うものだ。

TAG: #i4 #クーペ
TEXT:田中 誠司
「見た目以上に重厚な乗り心地」BMW伝統の後輪駆動スポーツセダン「i4」試乗記 その2

車重とボディサイズにふさわしい重厚なラグジュアリー・ライド サッシュレスの重いドアを開けてドライバー・シートに乗り込むと、ここからの風景もほとんどエンジン車と変わらない。湾曲した巨大なスクリーンが視覚的にかなりのボリュームを占めている。音楽やエアコンや外部機器接続の選択が中央の画面からできるようになっているのだが、BMWといえばドライビング・ポジションを低めに決めて運転に没入したいオールド・ファンの私には画面のあまりの大きさがちょっと目障りであることも否定しない。 全幅が1,850mmに達するボディにあってコクピットはかなりゆったりした印象で、自分がしばらく乗っていた先代6シリーズ・クーペのラグジュアリー感を思い出す。シンセティックなサウンドとともに起動し、しずしずと走り出しても思い出すのは6シリーズの重厚感だ。実際、車重は最終型の640iクーペより200kgも重い。幹線道路や高速道路の巡航スピードに乗ってしまえば、リアにエアスプリングを備えるこのi4は実にゆったりと上品に走る。電動パワートレインの静けさと相まって、どこまででも走れてしまいそうだ。

TAG: #i4 #セダン #試乗
TEXT:田中 誠司
「EVで味わうBMW伝統の後輪駆動スポーツセダン i4」試乗記 その1

エンジン車と同じフォルム、同じ駆動方式 BMW伝統の低いフォルムを備えたスポーツセダンで、ディーゼル/ガソリン車と同じフォルムの後輪駆動。こんな、ごく普通のスタイルでBEV(バッテリー電気自動車)バージョンの4シリーズが登場したと聞いて、「ああ、やっと電気自動車は自動車産業の中でスタンダードな存在になったのだな」と、安堵の混ざった感慨を覚えた。 2013年にBMWがはじめて量産電気自動車として「i3」を投入したとき、それは専用のオールアルミ・シャシーをカーボンFRPボディで包み、エネルギー消費を徹底的に抑えるためのパッケージングを与えたきわめて特殊なクルマだった。そのようにアイコニックであることが、当時マイナーもマイナーだったEVをマーケティング上成り立たせるためにも不可欠なのだった。 しかしさらに大幅に時代を遡ると、1972年ミュンヘン・オリンピックの折に大会オフィシャルカーとしてBMWが送り出した「BMW 1602 エレクトリック」は量産のBMWセダンと何も変わらない外観に、350kgの鉛バッテリーを搭載し、航続距離わずか60kmというプロトタイプだった。フルマラソンの先導がようやく果たせるか、というレンジである。時代は第一次オイルショックの直前、環境保護に対する注目も高まりつつある時期だった。BMWには「人々が自由に選べ、活用できるモビリティの選択肢を提供する」という強い意思が昔からある。BMWのユーザーは内燃機関と並んで公平に電気自動車を選べなければならない、という意図がこのプロトタイプには込められていたのだろう。

TAG: #i4 #セダン #試乗
TEXT:田中 誠司
EV市場はブルーオーシャン! フォロフライ×丸紅×太陽インキ製造が合同セミナー[後編]

商用EVを日本で開発し中国で生産して輸入するファブレス・メーカー、日本屈指の大手総合商社、そして電子部品基盤用絶縁材料を供給する化学メーカー。それぞれの関係性がつかみにくい3つの企業が合同で報道セミナーを東京・大手町で実施した。 総合商社・丸紅が狙うEV関連事業領域 数十兆円の規模を持つ日本の自動車産業のうち、毎年数%がこれから電気自動車へ移り変わっていく中で、産業全体の動きに敏感な総合商社の動きも見逃せない。丸紅の産業システム・モビリティ事業部モビリティ事業第3課佐倉谷 誠課長が次のスピーカーだ。 丸紅では4つの領域からEV化に携わっている。ひとつはモービルアイのADASシステムを中心とした「自動運転関連事業」。ふたつめはウーバー、アマゾンなどのビッグプレイヤーが関わる「AIオンデマンド交通事業」。3つめはここ10数年世界中で急速充電器の販売を手掛け続けてきた「EV充電事業」。そして最後がフォロフライに対する資本提携を含む「EV事業」だ。 「EV事業」においては、フォロフライを確実に自動車産業の一員としてローンチさせることがひとつのターゲット。これを丸紅とバッテリーで世界最高峰であるパナソニック、そしてフォロフライが協業し、物流のEV化支援会社を立ち上げることでバックアップする。 佐倉谷課長によると、現段階において商用EVを成功させるための最大のハードルは、バッテリーの劣化とともに車両の価値が大きく毀損することだという。充電中のトラブルも商用利用における問題点で、「本当に充電できているのか、明日そのクルマは動くのか」を管理することが、大量のフリートを持つ事業者であるほど難しくなるのだという。 そこで丸紅が取り組んでいるのが、「電動車フリートマネジメント」(eFMS)である。各車両の使用状況、充電状況を管理することでバッテリーの劣化やトラブルを防ぐ仕組みを大手物流企業と共同開発している。同時に、普通充電と急速充電を統合管理するシステムも開発し、車両や充電器の製造ブランドにかかわらず柔軟な管理ができることを目指す。 日本における事業構築だけでなく、シンガポールの大手物流会社SMRTグループと提携して海外進出も目指す。世界で中立的に、フリート事業者向けマルチブランド対応の管理サービスを提供したい、と意気込む。

TAG: #充電 #商社 #材料
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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