EVヘッドライン
share:

商用燃料電池(FC)の普及にさらにテコ入れ、トヨタが次世代FCセルを開発[2023.06.15]


TEXT:福田 雅敏、ABT werke
TAG:
現行「MIRAI」のFCシステム(photo=トヨタ自動車)

航続距離1,000kmで次期型「ミライ」にも採用の可能性
FCEVのほか定置式発電機としての活用も視野

【THE 視点】トヨタ自動車は、次世代燃料電池(FC)システムを開発し2026年中の実用化を目指す。東富士研究所(静岡県裾野市)にて「トヨタテクニカルワークショップ2023」を開催し、次世代FCシステムについての計画を発表した。

トヨタは現在、商用車を中心に、国内外のメーカーと協力しながらFCEVの実装を推進している。今回発表した内容は、それに加えてFCの普及を促す範囲を拡大するというもの。FCEVのみならず、定置式発電器としてのFCの開発・実証実験も進めているという。

今回のトピックは、次世代のFCの開発を発表したことだ。高寿命・低コスト・低燃費性能を追求し、商用ユースに応えられる業界トップクラスのFCセルを開発。そのFCは、メインテナンスの容易さや、現行比1/2のスタックコストの低減、航続距離の20%向上を見込み、2026年中の実用化を目指すという。

FCEVの「ミライ」とも無関係ではない。初代が登場したのは2014年。そして2代目は2020年にデビュー。このサイクルに乗ると、2026年に3代目が登場することになる。新世代FCの実用化目標と重なっているのだ。

現在の「ミライ」の車体価格は710万6,000円からで安価とは言えないが、新世代FCの低コスト化が実現できれば、その価格を下げられるかもしれない。そして航続距離は、現行の850km(参考値)をベースに考えると、1,020kmとなる。

トヨタは、FCを商用を軸に普及させる姿勢だ。確かにFCEVは、水素充填の時間が短いため、シビアな時間管理が求められる配送用途に向いている。しかしそのメリットは乗用車でも同じで、「ミライ」においても5分の充填時間で1,000km走れることは大きなセールスポイントになろう。

FCEV普及の枷となっている要因は水素ステーションの少なさ(現在約170ヵ所)だが、1,000km走れるFCEVが実現できれば、それに泣くことも少なくなると思う。1,000kmの距離があれば、東京・大阪間の移動も不自由なく行えるはずだ。

しかし、どれだけFCが進歩しようとも、水素ステーションが少ないようではFCEVの普及は難しい。2030年には国策として水素ステーションを1,000ヵ所に増やすとしているが、もう少し早まらないだろうか。FCの開発スピードに負けず、水素インフラの整備も急いでほしいものである。
(福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)

★★プラゴ、EV用充電器「プラゴ・ボックス」の提供を開始……最高出力4/5/50kWの3種類の機器を用意、専用のスマートフォン向けアプリにて出力を遠隔制御可能

★★BYD、フランスにEVモデルを5機種投入……「アット3」「ハン」「タン」「ドルフィン」「シール」の5モデル

★ステランティス、商用バンの新型EV「ラム・プロマスターEV」を2023年後半に発表……アメリカの配送企業「Merchants Fleet」と1万2,000台の納入を契約

★リマック、EVスーパースポーツ「ネヴェーラ」をアメリカで納入……アメリカで初めての顧客向けに

★新電元、EV充電インフラ製品群を「人とくるまのテクノロジー展 2023 ONLINE STAGE 2」<6月28日(水)〜7月19日(水)>に出展……パワー半導体の製品群も

★パワーエックス、物流不動産企業のプロロジスより定置型バッテリーを受注……20フィートのコンテナサイズ型を1基、マルチテナント型物流施設「プロロジスパーク草加」(埼玉県草加市)に設置

デイリーEVヘッドライン[2023.06.15]

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
日本は3年連続「日産サクラ」がトップ! じゃあ中国・欧州・アメリカで一番売れてるEVってなにか調べてみた
電気自動車って「お金的に」得? エンジン車と諸々の費用を比べてみた
リーフのバッテリーパックをバラして積むって意外に大変! 初代フィアット・パンダのEV化に挑戦してみた【その5】
more
ニュース
トヨタの新型モビリティでお台場周辺が一気に便利になる! 「eパレット」と「C+walk」が街全体の活性化にも貢献
ホンダがカーボンニュートラル実現に向け二輪の電動化を加速中! 欧州でネイキッドモデル「WN7」を発表
新車価格約3000万円も補助金を使えば半額で買える! トヨタのカワイイ新世代モビリティ「eパレット」の販売がスタート
more
コラム
【試乗】速さはスーパースポーツ並! AWD技術も完成の域! アウディS6スポーツバックe-tronに望むのは「感性に訴えかける走り」のみ
中古EVの「バッテリーだけ」がヤフオクに出てる! 一体何に使う?
EVシフトは踊り場どころか再加速! いま欧州ではかなりの勢いでBEV化が進んでいる
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】いい意味で「EVを強調しない」乗り味! 本格4WDモデルも用意される期待のニューモデル「スズキeビターラ」に最速試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
more
イベント
マンションでもEVが身近になる! 官⺠連携で既存マンション全274駐⾞区画にEV充電コンセントを導⼊した事例リポート
公道レース「フォーミュラE東京」が帰って来る! チケットを持っていなくとも無料で1日遊び尽くせる2日間
災害に備えて未来を楽しむ! 「AWAJI EV MEET 2025」の参加はまだまだ受付中
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択