2023年4月
TEXT:嶋田 智之
自動車ライター嶋田智之さんのイベントリポート、EV:LIFE FUTAKOTAMAGAWA 2023、その1

3月18日〜19日に開催されたBEVとPHEVのみの展示イベントを訪れた、自動車ジャーナリストの嶋田智之さんが抱いた実感とは。 徐々に浸透してきたBEVの存在 日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会のデータを基に日本自動車会議所が取りまとめた数値によると、2022年に新車として販売された乗用車の中でマイルドハイブリッドやFCEVを含めた電動化モデルが占めた割合は、45.4%だった。ところがモーター駆動もしくはモーター駆動がメインとなるBEVやPHEVは合わせても、その中の2.8%を担っているに過ぎない。販売面ではまだまだ少数派なのだ。 けれど、あくまでも感覚的なものではあるものの、近頃では電気自動車という乗り物が普通に受け入れられるようになってきている。まだ購入には至っていないし、ためらいもあれば迷いもあるのかもしれないが、展示されているクルマたちを眺める人々の視線がうがった感じではなく、何だかとっても自然だったのだ。3月18日〜19日に開催された『EV:LIFE FUTAKOTAMAGAWA 2023』の会場で、僕はそんなふうに感じていた。 このイベントは自動車雑誌『LE VOLANT』が2021年から開催している、BEVにPHEVというモーター駆動もしくはモーター駆動をメインとして走行するクルマのみを集めて展示する催しだ。東京・世田谷区の二子玉川ライズショッピングセンターの真ん中を貫く通路や広場に国内外の17ブランドのクルマがズラリと並べられて、買い物に来たり映画を見に来たりした人たちも、間近でクルマを見たり実車に触れたりすることができるのが、まず素晴らしい。 発売前のプロトタイプや導入が期待されている国内未導入のクルマなどもいくつか並べられ、事情通のクルマ好きたちの期待にも応えていた。 また古いフィアット500やフォルクスワーゲン・ビートルなどの歴史的名車をBEVにコンバートしたクルマが並ぶコーナーが用意されていたり、給電機能のあるBEVのバッテリーを利用して電子ピアノのライヴが行われたり、会場に面した蔦屋家電の協力で家電製品を使ったキャンプを提案するコーナーが作られていたりと見どころも多かった。 ただ環境意識に訴えかけるのではなく、EVがある暮らしはこんなふうに明るく楽しいという提案がそこここにあって、EVという古くて新しい乗り物に対する精神的な距離感を上手に縮めてくれていた。一般の人にとってはショールームにEVを見に行く、試乗しに行くというのは、ちょっとばかり特別なこと。その敷居を上手に下げていた印象だ。 特に人気のあったステランティスの3台 会場のどのブランドのブースでもお客さんが楽しそうな笑顔でクルマのそばにいるのを見ることができた中で、最も印象的だったひとつがステランティスのブースだった。 なかなか手に入れることがむずかしいノベルティがもらえるキャンペーンを展開していたこともあるのだけど、やっぱり大きいのは展示されていたクルマたちだろう。 キャラクターがはっきりとしていて人目を引くモデルが3台、それらを前にクルマの説明を受けている人や室内に乗り込んで細かなところをチェックしたりする人が後を絶たなかったのだ。 女性やお子さん、それに意外や40〜50代の男性などに人気が高かったのが、「フィアット500e」。ブランド初の量産BEVモデルで、1957年に誕生した歴史的な名車、ヌォーヴァ500が持つ独特の世界観を、電動化時代を前に新たに解釈しなおしてゼロから設計・開発したモデルだ。 古くから知られた500ならではの明るさと楽しさ、それにEVならではのメリットや味わいが無理なく融合したクルマである。ちなみに展示されていたのは目下のところBEVでは世界で唯一のオープントップモデルだ。 20代から50代と幅広い年齢層の男性が取り囲んでいたのは、「ジープ・ラングラー・ルビコン4×e」。こちらはBEVではなくPHEVの4WDモデルだが、モーターだけで42kmの距離を走行することができる。 ルビコンのネーミングが与えられていることからも想像できるとおり、緻密な電子制御と相性が抜群なモーター駆動を武器に、シリーズ最強=ジープ・ブランド最強の悪路走破性を誇っている。大自然が生み出す美しい音と静寂を耳で楽しみながら道なき道を走ることもできる、というわけだ。 お洒落なカップルやファッショニスタたちに注目されていたのは、「プジョーe-208」。パリジャン&パリジェンヌそのものといった小粋な雰囲気を醸し出すルックスは、ディテールを除くと内燃エンジン搭載モデルとほぼ一緒。その埋もれることはないけれど決して悪目立ちもしないさりげなさこそが、大きな魅力といえる小粋な5ドアハッチバックだ。とはいえ乗り味は非凡で、スポーティなハンドリングも上質な乗り心地も、もちろん力強さも、BEVモデルの方が一枚上手と評価する人も少なくない。

TAG: #EVイベント
TEXT:TET 編集部
エアサスを超える次世代シャシー技術が登場か。BYDが「DiSusシステム」を発表

中国の自動車メーカーBYDは、深圳の本社で行われたテクノロジーイベントで、新開発のボディコントロールシステム「DiSusシステム」を発表した。この新しいシャシー制御システムにより、クルマの安全性や快適性、運動性能が大幅に進化する可能性がありそうだ。 横/縦/垂直方向の動きを協調制御 中国のEVマーケットで最大のシェアを持つBYDは、今やグローバルなバッテリーEV販売でテスラに次ぐ位置に付けており、近々首位に立つことも見込まれている。日本国内でも電動SUV「ATTO3」(アット3)が440万円という超戦略的価格で発売し、いま乗りに乗っている新興自動車メーカーだ。 そんなBYDが今回発表したDiSusシステムは、これまでのエアサスペンションを超えた動きを可能にする車体制御技術で、既存の部品メーカーなどに頼らず、BYDが完全自社開発したというもの。 DiSusシステムは、ダンピングボディコントロール(DiSus-C)、エアボディコントロール(DiSus-A)、油圧ボディコントロール(DiSus-P)の3つから成り、横方向、縦方向、垂直方向の動きを協調制御することでドライバビリティを大幅に向上させられるのが自慢のポイント。 また、オートパイロットなどの先進運転支援システム(ADAS)とも相性が良く、車両の開発段階からADASと共通の基盤を用いることで、より精緻な自動運転が可能になるというメリットも持つ。 つまり、DiSusシステムとは空気圧や油圧を使った高度なアクティブサスペンションといえるが、その動きたるやこれまでの自動車の概念を覆すもので、同時に公開された動画には、DiSusシステムを搭載したBYDの電動スーパーカー「U9」が、ボディを前後左右に揺らして「踊る」様子が収められている。 上海ショーでお披露目されたU9は市販化前のモデルであり、搭載するのはDiSus-Xというさらに先進的なシステムだ。それゆえDiSusシステムを採用する量産車がすべてこのような動きをするわけではないと思うが、驚かされるのは4輪すべてを地面から離してのジャンプや、前片輪を外しての3輪走行も可能なこと。 >>>次ページ  横転リスクの低減や車体の安定化に寄与

TAG: #サスペンション #テクノロジー
TEXT:栁 蒼太
モバイルサービスカー「ヒョンデQちゃん」を導入

ヒョンデモビリティジャパンは4月18日、整備専用車両「モバイルサービスカー(通称:ヒョンデ Qちゃん)」の稼働を開始した。 快適なカーライフを モバイルサービスカーは、ヒョンデが販売している「アイオニック5」をアフターサービス用に改造したものだ。軽整備作業に関わる整備工具一式を含め、ホスピタリティを届ける様々な装備を備えたモバイルサービスカーとなっている。 ヒョンデ車オーナーからの問い合わせを受けた場合、想定される整備内容や距離、近隣の協力整備工場へのアクセスを考慮しながら速やかに指定場所へ直行する。なお、本サービスは、専門テクニシャンが出張費無料で整備を行う。オーナーは、整備に関するタイムロスを軽減しながらも、快適なカーライフを得ることができる。 EVの本領発揮 特殊工具を含む整備用具や事務手続きのためのプリンター電源、さらにホスピタリティとして修理中に提供する淹れたてのコーヒーなども、アイオニック5のV2L(Vehicle to Load)機能を活用する。 今後は車両から車両への給電を可能にするV2V(Vehicle to Vehicle)機能を実装し、走行中の急な不具合やバッテリー切れ(電欠)に対応する「ロードサイドアシスタンス(RSA)」の展開も予定している。 ヒョンデ Qちゃんは、まずはヒョンデカスタマーエクスペリエンスセンター横浜(CXC横浜)に導入し、今後全国へ徐々に展開される予定だ。

TAG: #アイオニック5 #ヒョンデ #メンテナンス
TEXT:烏山 大輔
EV充電インフラ「Terra Charge」が、ホテルとゴルフ場に採用。EVユーザーの利便性向上へ

EVをより身近にすることを目指してEV充電インフラ「Terra Charge(テラチャージ)」を提供するTerra Motors(テラモーターズ)は、全国144棟の宿泊施設を管理・運営する「マイステイズ・ホテル・マネジメント」が運営する90ホテルにおいて、EV充電インフラ「テラチャージ」の採用が決定したことを発表した。 さらに国内最多のゴルフ場運営施設数を誇る「アコーディア・ゴルフ」のゴルフ場およびゴルフ練習場において、「テラチャージ」の導入が決定したことも明らかにした。 国内でもEV(電気自動車)化の機運が高まっている。EVを利用するには、充電インフラが身近にあることが必要不可欠だ。テラモーターズは、特にマンション(基礎充電)やお出かけ先(目的地充電)といった、導入が困難な場所におけるEV充電インフラ網の拡充に取り組んでいる。 EVユーザーに選ばれるホテルへ 宿泊施設は長距離移動先となることが多く、滞在時間が長いという特徴がある。EV化が注目される中、EVユーザーにとっても利用しやすい施設であることが重要になる。EVは自宅のような場所で日常的に充電することを基本としているが、旅行など長距離移動が必要な場合は、充電ができる環境が必要不可欠だ。 ホテルなどの宿泊施設は、宿泊中の駐車時間をEV充電に充てることができるため、EVユーザーにとって大切な補給ポイントとなる。将来的には「EV充電設備があるかどうか」が、ホテルを選ぶ基準のひとつになることが予想され、宿泊施設でもEV充電設備の導入検討が活発になっている。 マイステイズ・ホテル・マネジメントは、全国で144棟20,885室(2023年4月1日時点)とトップクラスの客室数を誇るホテルチェーンである。EV充電設備の導入検討も進めており、今回テラモーターズのEV充電インフラ「テラチャージ」を90ホテル、156基に導入することを決定した。順次全国のホテルに導入を進め、ホテル利用者の利便性向上と環境保護に取り組んでいく。   環境保護に取り組むゴルフ場 ゴルフ場も都市部から離れた場所にあることが多い。ゴルフクラブなどの道具を持ち運ぶ必要があり、車で長距離移動することが多く、滞在時間も長くなるという特徴がある。またゴルフ場を利用する人たちは、高級車や輸入車、EVなどを所有している傾向があり、充電設備があるかどうかを重視するようになっている。アコーディア・ゴルフはESG経営(企業が環境(Environment)、社会(Social)、およびガバナンス(Governance)の観点から責任ある経営を行うこと)の観点からも環境保護に力を入れており、EV充電インフラの導入を積極的に検討している。 同社は、日本国内で最も多くのゴルフコースを運営している企業であり、環境保護のために幅広い取り組みを行っており、その一環として、LED化の促進やオール電化など、環境保護に関する施策を進めてきた。EVにも配慮することは、環境保護に力を入れるアコーディア・ゴルフにとって重要な要素のひとつである。 アコーディア・ゴルフは、テラモーターズのEV充電インフラ「テラチャージ」を151ヵ所(ゴルフ場144ヵ所、ゴルフ練習場7ヵ所)で導入することを計画している。日本製の「テラチャージ」は、部品供給やアフターメインテナンスにおける懸念が少なく、長期間の稼働が前提となるインフラとして最適であると評価された。順次導入を進め、2023年中にEV充電インフラの整備を目指していく予定だ。  

TAG: #テラモーターズ #充電
TEXT:山本 亨
タイの未来の電動車戦略について、タイ電気自動車協会クリサダ会長インタビュー その2

その1では、タイ電気自動車協会のウタモテ・クリサダ会長に、これまでのタイのEVに関する話を聞いた。その2ではタイ政府の電動車割合の目標、充電ステーションの充実化、電力インフラにいたるまで将来の展望を語ってもらった。 2035年に電動車100%を目指す 山本局長:タイ政府は2021年から2035年に向けて3つのフェーズのEV計画を発表しています。この3つのフェーズを分かりやすく教えてください。 クリサダ会長:まず、その3つのフェーズはマイルストーンと言った方がいいかもしれません、2025年、2030年、2035年までの3段階となります。それぞれの年に登録台数・生産台数の2つの目標値を設定しています。 まず登録目標値ですが2025年に全く二酸化炭素を出さないバッテリーEVとPHEVを乗用車・ピックアップトラックで登録台数の30%、目標数値は約221,000台。バイクは20%、35,000台。バスは20%、18,000台。トゥウクトゥクは85%、500台。船は12%、130隻。列車は70%、620台です。 2030年の登録台数は2025年より高い数値をあげています。乗用車・ピックアップトラックは30~50%。バイクは20~40%。バスは20~40%。トゥウクトゥクは85~100%。船は12~35%。列車は70~80%。最後の2035年ですべての項目で100%です。 次は生産台数です。生産台数は登録台数が100%に対して2035年は約50%。国内で生産する乗用車とピックアップトラックは50%だと135万台です。タイ国内で生産する車は国内用・輸出用の2種類あります。輸出にはICE(内燃機関)の需要があることを見込みこの数値をあげています。あとはいろいろなサプライヤーがいるので、まだこの先もICEがあることを示して、サプライヤーなどの皆さんがパニックにならないようにと配慮しています。 急速充電は欧州式のCCS2が主流化 山本局長:2035年までにEV・PHEVの登録台数を100%にするにあたり、重要になるのが国内の充電インフラだと思いますが、国内の充電インフラの現状と今後の計画を教えてください。 クリサダ会長: 例えば充電ステーションの1つのユニットには2つのコネクターがありますが、そのチャージするコネクターの数を申し上げます。2022年までの数値は3,739で、充電ステーションは1,239箇所です。充電方式の種類は普通充電と急速充電の2種類です。普通充電は時間がかかるのでショッピングモールや料理店などに設置しています。急速充電の方は料金が高くなります。この急速充電のコネクターには2種類あり、日本式のチャデモとヨーロッパ式のCCS2です。数値はCCS2が1079。日本式は263です。これからはヨーロッパ式のCCS2の普及が急速に広まっていくのではないかと推測します。 山本局長:充電施設にも、先ほどのマイルストーンのような将来的な目標数値はありますか。 クリサダ会長:ステーションの目標数値は個数ではなく割合だと考えています。どういう割合で計算するかというと、EV車の割合とコネクターの割合ですが、タイでは今までの合計台数はPHEVでは42,415台。EVは13,805台。この数値を合わせて、さきほどのコネクターの数で割ると、1つのコネクターあたり15台ほどとなります。私たちが考える理想的な数値は、1つのコネクターに10台です。現在のタイの数値は1つあたり車約15台ですから、あまり理想的ではありません。これからの目標としては、充電インフラの増加をキープしていこうということです。 山本局長:2022年12月にトヨタがCP(チャロン・ポカタン)財閥の配送トラックで、メタンガスを含めた取り組みの発表をしましたが、その提携したCPグループとトヨタの取り組み、それに対するタイ政府の取り組みはありますか。 クリサダ会長:聞いたところでは国のサポートはありません。2022年12月に豊田章男社長がタイに来て、CPグループの社長と会い、バイオ水素を作るというトヨタとCPグループ、民間企業の協同のプロジェクトを公表しました。CPグループは家畜の飼育に強みがあり食品工場もたくさんあるので、家畜の糞尿や食品廃棄物を資源にしてバイオガスを作ることに繋がっています。 山本局長:先ほどのチャデモの話ではないですが、充電インフラはヨーロッパに向いているようなのですが、この先はタイ政府と日本メーカーの関わりはどのようになると思いますか。 クリサダ会長:まずタイ政府は日本の自動車メーカーがタイでEV車両を生産する投資をものすごく歓迎しています。なぜなら、EV車は40%の関税を半分の20%にしていますが、日本とタイとの貿易協定があり20%が0%になるからです。日本製の車両はタイで税金なして販売できますが、将来的にはタイで生産してもらえるよう待っています。例えばトヨタに関してはこれからEVに参入していく姿勢が感じられます。フルEVの車を出すとも聞いています。 山本局長:bZ4Xはタイ生産になりますか。 クリサダ会長:おそらくbZ4Xはタイ国内で生産されます。ただタイ政府にひとつのスキームがあり、200万バーツ(約780万円)以下の車ならどんな車を作ってもいい。ただし200万バーツ以上なら申請したスキーム通りの車両を生産しないといけません。 山本局長:bZ4Xは200万バーツ以上のスキームに沿ってということですか。 クリサダ会長:おそらくbZ4Xは200万バーツ以下のスキームでいこうとしています。 山本局長:今後タイで生産するEVを日本に輸出する計画はありますか。 クリサダ会長:現在タイで生産する車の輸出先はオーストラリア・中東が中心です。日本に輸出していると聞いているのは、ピックアップトラックくらいです。EVに関しては、タイ政府の目標は国内で生産して国内で消費するという考えです。

TAG: #充電器 #電気自動車
TEXT:田中 誠司
空飛ぶ絨毯のような加速フィールに驚く[ソルテラ試乗記:その1]

「スバル・ソルテラ」は「トヨタbZ4X」の兄弟モデルである。後者と違いサブスクリプションモデルを利用せず普通に購入できたり、リアシートヒーターがなぜかこちらだけ標準装備だったりはするものの、基本的にはbZ4Xと同一のモデルである。すでに生方 聡さんのbZ4Xの記事が掲載されているので、普段はまだICE(内燃機関)モデルを愛用している筆者なりの見解についてここでは書き記していきたい。 上品なインテリア、無骨なエクステリア 広報車両を受け取ったのは恵比寿のスバル本社ビル地下でのことだった。地下深くから螺旋状の細いスロープを登るにあたり、幅が結構広くて大きな車だという印象を受けた。Aピラーが前方に配置されていてかなり視界から遠いために、距離感が測りにくいのだと思う。コンパクトカーに乗り慣れた人だと戸惑うかもしれない。 インテリアにはダッシュボードの一部にファブリックをあしらっていたり、ダッシュボード中央の大ぶりなモニターがオーソドックスにスクエアな形状だったりする。それ自体は問題ないのだが、特別に高級感を感じさせるわけではないことから、約700万円のクルマとしては平凡すぎるという評価を受けるケースもある。 表面的なデザインの印象や、前述した取り回しの問題はさておき、横幅方向には非常にゆとりがある。運転席と助手席が完全に隔てられているので、パートナーとの関係がうまく保てるのだろうか、と要らぬ心配もしてしまうけれども。 そのようにどちらかというと上品さを強調したインテリアと異なり、エクステリア・デザインはがっしりした印象だ。フェンダーに使った樹脂パネルが多少傷ついても構いやしないといった、ラギッドな印象を与える。Aピラーの下やリアドアのあたりに深いキャラクターラインがあって、その仕上げも高品質だ。素直にカッコいいと言われるデザインであるだろう。 静かで十分に速いパワートレイン 電動パワーユニットから発せられるサウンドは、どんな速度から踏んでいったとしても、昨今の電気自動車の中でもとりわけ穏やかであるように思う。トヨタとスバルの共同開発であるソルテラにおいて、パワートレインはハイブリッド車の分野で実績のあるトヨタが主に担ったと聞いているが、「モーターはとにかく静かであることこそが、ICEと差別化できるセリングポイントなのだ」と、両社は現時点における経験上信じているのではないだろうか。 そのように静かなパワーユニットによって、滑り出しの加速は空飛ぶ絨毯のように軽い。車重とパワーユニットの最高出力から期待されるよりずっと逞しく加速する。ちょっと信号で出遅れたかなと思って深く右足を踏み込めば、優に隣のクルマを追い越してしまい、市街地における制限速度をうっかり超えそうになってしまうほどだ。この常用域におけるスピード感の希薄さはこれでいいのかな、と少し疑問にさえ思う。 加速に伴うノイズがきわめて少ない車内には、大径のタイヤ&ホイールが跳ねる音がたまに聞こえてくることもあるが、日本車ならではの組付け品質の高さもあり基本的にはとても静かで、ハーマンカードンの秀逸なオーディオ・システムに集中して耳を傾けることができる。 市街地における乗り心地については、硬めに作ったほうがいろいろな意味で安全と捉えたのか、基本的にボディの剛性感は高いものの、4輪に入力があるたびにボディがそっくり正直に揺すられる感覚はある。約700万円のクルマであれば、もう少し鷹揚に動いてくれたほうが高級車らしい雰囲気を感じやすい。フードが備わらないメーターは、不思議だけれど昼間でも夜でも一切見にくいとは思わせなかった。 スバル・ソルテラ ET-HS 全長:4,690mm 全幅:1,860mm 全高:1,650mm ホイールベース:2,850mm 車両重量:1,930kg 前後重量配分:前1,110kg、後940kg 乗車定員:5名 交流電力量消費率:148Wh/km(WLTCモード) 一充電走行距離:487km 最高出力:160kW(218ps) 最大トルク:338Nm(34.5kgm) バッテリー総電力量:71.40kWh モーター数:前1基、後1基 トランスミッション:1速固定 駆動方式:AWD フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット式 リアサスペンション:ダブルウィッシュボーン式 フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク リアブレーキ:ベンチレーテッドディスク タイヤサイズ:235/50R20 最小回転半径:5.6m 荷室容量:441L 車体本体価格:6,820,000円    

TAG: #ソルテラ #パワートレイン
TEXT:岡崎 宏司
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第10回:e-208GTは、身のこなしがいい!

プジョーe-208GTの立ち振る舞いに、岡崎さんは日々感心しているそう。ルックスも、身のこなしも良いから、毎日連れ出したくなっています。 馴染みのお店に行くのには、ぴったりのサイズ感 プジョー e-208GTのルックスが気に入っていることは繰り返し書いた。だが、同時に、Bセグメントの5ドア HBという「サイズ感と使い勝手のよさ」も気に入っている。 わが家は昔からコンパクト系が好きで、数多い車歴の9割以上をコンパクト系が占める。 かつては2ドア/3ドアを好んだのだが、高齢になると、家内と共に4ドア/5ドアを好むようになった。理由は簡単。その方が、ドア幅は小さく重量も軽いので、乗り降りが楽だからだ。 男の僕は、それなりに筋力はあるが、家内の筋力はかなり落ちている。日常的なあれこれをみていても、ときに「えーっ!?」と思うくらい落ちている。 若い時はなにも感じなかったことが、年齢を重ねると重荷になってくる……、残念ながら、最近、そう感じることが多い。 もちろん駐車も楽。老舗のホテルや百貨店等には、昔ながらの幅の狭い駐車場も少なくない。旧いタワーパーキングも同様だ。そんなところに、昔から通っている馴染みの店がけっこうある。 ステアリングとメーターのレイアウト、そして身のこなしは具合がいい e-208GTのステアリングは異形小径で、少し低めに位置する。ステアリングの上からメーターを見る独特のレイアウトに、初めは違和感を覚えた。でも、慣れるととても具合がいい。 また、ステアリングは軽くて、応答が良くて、正確。e-208GTの身のこなしはキビキビしている。それでいて、滑らかだし、軽々しいところはない。というか、腰が座っている。 重いバッテリーを適正にフロアに配置したことで、低い重心と優れた前後重量配分を獲得しているからだろう。 楽しくて気持ちがよくて……、それでいて安心感もある。走り込むほどに好きになる身のこなし……といっていい。 四つ角を曲がった時などの、ステアリングが手の中を滑る感触を含めた戻り感……スルスル感?の気持ちよさもお気に入りだ。 不満なのは、ロードノイズが高めなことと、強めの不整でのリアのリアクションがイマイチなことだが、「まぁ、我慢できるレベルだろ?」と自らに言い聞かせている。

TAG: #e-208 #岡﨑 宏司
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
ランドローバー、EVの「レンジローバー」が2023年後半に予約開始……デイリーEVヘッドライン[2023.04.21]

ラグジュアリーSUVにも電動化の波 グループのジャガーもEVを投入へ 【THE 視点】ジャガーランドローバー(JLR)は4月19日、ラグジュアリーSUV「レンジローバー」に初のEVモデルを設定し、今年後半に予約受注を開始すると発表した。 「次世代のミッドサイズ・モダンラグジュアリーSUV」をうたうブランド初のEVモデルとなり、2025年に発売予定だという。マージーサイドのヘイルウッド工場で生産。「エレクトリファイド・モジュラー・アーキテクチャー(EMA)」を初採用する。 またJLRは、モダンラグジュアリーEVモデルの展開を推進するために、今後5年間で150億ポンド(約2兆4,900億円)を投資する。その一環として、英国マージーサイドのヘイルウッド工場を、EV専用工場に改装し、JLRが掲げる目標(2039年までに排出ガス量実質ゼロ)の達成を目指す。 ランドローバーと合わせて、グループのジャガーもラインナップを見直し、モダンラグジュアリー系のEVを3車種投入する。その初のモデルは4ドアのGTで、航続距離は最大700km。価格は10万ポンドを超える見込みだという。 高級SUVの代名詞でもある「レンジローバー」もこうしてEV化された。先日もメルセデス・ベンツが「メルセデス・マイバッハ EQS SUV」を発表しており[詳細はこちら]、高級SUV市場にもEVの波が押し寄せている。「レンジローバーEV」の性能もさることながら、価格の面でも驚かされそうだ。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ジャガー、EVの4ドアGTモデルを2023年後半に発表……専用アーキテクチャー「JEA」を使用、2024年に販売開始[詳細はこちら<click>] ★★出光、種子島空港でEVの充電実証実験を開始……太陽光発電で空港への電力供給とEVへの充電を実施、充電器は6kWの普通充電器3基[詳細はこちら<click>] ★出光、廃棄物由来のクリーン水素製造の事業化を検討……一般ごみなどから製造、燃料電池車などさまざまな需要を想定 ★日産、八王子市とEVを活用した地域づくりで連携……EV推進施策「ブルー・スイッチ」の一環、災害時にEVを電源として活用するなど ★ブレイズ、グルメ・フードフェス「アッシュフェス」(ナゴヤ セントラルガーデン ポケットパーク:名古屋市千種区/4月23日(日))に出展……「ブレイズ スマートEV」など5車種を展示 ★フォーミュラE第7・8戦ベルリン、今週末の4月22日(土)〜23日(日)に連戦で開催……現在のランキングトップはパスカル・ウェーレイン選手(タグホイヤー・ポルシェ)

TAG: #THE視点 #ニューモデル #レンジローバー
TEXT:加納亨介
「EV整備ネットワーク」の構築へ。ナルネットコミュニケーションズと日本自動車車体補修協会が新興EVメーカーをフォロー、EV特化型のメインテナンスパックも開発

自動車整備受託のリーディングカンパニーと、行政公官庁とのパイプを持つ社団法人とのタッグ ナルネットコミュニケーションズは、日本自動車車体補修協会(JARWA)と共同でEVメインテナンスに対応できる整備工場のネットワーク構築に乗り出す。 同社はオートリース会社などから自動車の整備・管理を受託する企業で、この分野のリーディングカンパニー。国内で約10,500ヶ所の整備工場ネットワークを持ち、部品交換時期などの整備情報をデータベース化して一元的に管理している。 一方の日本自動車車体補修協会は「自動車車体補修における信頼性の確保」を目的とする一般社団法人で、国内自動車メーカー8社や溶接機メーカーなどのほか、内外の新興EVメーカーも多く加盟している。近年はスキャンツールを使用した自動運転関連整備(エーミング)や、新興メーカーのアフターサービス網構築支援で存在感を増すなど、変革期の自動車整備に独自のノウハウを持つ。 この両者が手を取り合うことで、EVのメインテナンスに長けた整備工場ネットワークを作り上げる。具体的には、専用工具を使ったEV整備ノウハウや高電圧の扱いなどの技術情報、車種ごとの固有情報などを提供し、整備工場のEV対応を促進させる。構築されたネットワークは、新興EVメーカー相乗りの整備ネットワークとして利用されることを想定している。 同時に、EVに特化したメインテナンスパックの開発も進める。行政公官庁と連携し、ICE車とは視点の異なる点検・整備項目を設定する。新興EVメーカーとも協調し、多様な駆動システムを持つさまざまなEVに対して普遍的なメインテナンスパックを全国一律で提供する。 EV整備ネットワークとEV特化型メインテナンスパック。どちらも来るべきEV時代に欠かせない社会資本的存在といえ、EVユーザーの利便性向上に貢献するはずだ。 EV普及の足枷は充電環境だけじゃない 承知の通り、日本は先進諸国と比較してEVの普及が遅れている。原因としてよく挙げられるのは充電拠点数の少なさだが、ユーザーにとっては購入後のメインテナンス体制も同じくらい気になるところなのである。   EVが当たり前になる時代ももうすぐと思われ、それにともないHWエレクトロ、フォロフライ、EVモーターズジャパンなど、これまでクルマを作ったことのないEV専門新興メーカーの参入も増えてきた。正規ディーラーネットワークを構築済みの既存自動車メーカーと異なり、これら新興EVメーカーの多くは自前の整備ネットワークを持たない場合が多いことから、アフターサービス網作りへのフォローが待たれていた。   ナルネットコミュニケーションズと日本自動車車体補修協会が行う「EV整備ネットワーク」構築への取り組みは、この問題の解消に向けた大きな一歩といえる。

TAG: #自動車整備
TEXT:TET 編集部
680馬力のファーストクラスEV。メルセデス・マイバッハが「EQS SUV」を発表

独メルセデス・ベンツは4月17日(現地時間)、最高級ブランド「メルセデス・マイバッハ」初の完全電動モデル「メルセデス・マイバッハEQS SUV」を発表した。マイバッハ・ブランドに相応しく超豪華に仕上げられたe-SUVの内容を紹介したい。 最大トルク950Nm 、最高速は210km/h達成 メルセデスのEVサブブランド「EQ」が、フラッグシップSUV「EQS SUV」を発表したのが昨年4月。それからちょうど1年で、専用の内外装を奢り、パワートレインをさらに強化したマイバッハ・バージョンが登場した。 メルセデスのEQS SUVが「EQS 450+ SUV」、「EQS 450 4MATIC SUV」、「EQS 580 4MATIC SUV」という3グレード構成なのに対し、マイバッハ版は「EQS 680 SUV」のモノグレード。数字が示すように、ツインモーターパワートレインはEQS 580 4MATIC SUVよりおよそ114ps/90Nm増となる658ps(484kW)/950Nmにまで強化され、0ー100km/h加速は4.4秒、最高速度は210km/hに達する。 バッテリーに関しては最大200kWの急速充電に対応し、15分で220km(WLTPモード)分の充電が可能。ただし、航続距離は最大600kmと発表されており、豪華装備の代償としてメルセデス版より若干短くなっているようだ。 足回りは、連続減衰力調整機能付きAIRMATICエアサスペンションが標準装備され、最低地上高を最大35mm引き上げることができる。EQS 680 SUVで悪路に踏み込むオーナーがいるのかわからないが、走破性は相当高い水準が期待できそうだ。そして、最大10度のステアリング角を持つリアアクスルステアリングも標準装備され、全長5125mm×全幅2034mm×全高1721mmという巨体にも関わらず、最大回転直径はコンパクトカー並みの11mを達成している。 エクステリアでは、EQSシリーズの特徴であるブラックグリルに、クロームメッキを施した縦長のストリップを追加。クロームはエアインテーク、ロワーバンパー、さらにはサイドピラーなどにも加えられ、ボディ全体からリッチな雰囲気を放つマイバッハらしいデザインに変更されている。 また、足元にも21インチまたは22インチの専用鍛造アロイホイールが奢られ、ホイールキャップには「MAYBACH」のレタリングが施される。リアコンビネーションライトは2つの部分からなる螺旋状の連続した形状とされ、ラグジュアリーなキャラクターを強調。さらに、このライトは全幅に渡ってアニメーション化されている。ボディカラーにマイバッハだけの2トーンカラーが5つ設定されているのも大きな魅力だ。 >>> 次ページ セレブリティをもてなす超豪華な後席

TAG: #EQS #SUV #メルセデスマイバッハ

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価格・航続距離・パフォーマンスでテスラを圧倒!? 中国の巨大スマホメーカー「シャオミ」が作ったEV「YU7」がついにデビュー
2025年はBYD Auto Japanの設立3周年記念! お買い得な限定車「ATTO 3 Black Style」を 全国50台限定で発売
EVミニバンは誰が買うのか? VWが明かした意外な「ID.Buzz」の購入者像
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コラム
EVってどうなのよ? と思ったらオフ会にいくのはアリ! エンジン車とはまた違うハードル低めなEVオフ会の中身
世界のBEV覇権争いの主役はテスラからBYDに! テスラはロボタクシーで巻き返しなるか?
東京都がEVの普及に本気! マンション等への充電設備の設置を義務化!!
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インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
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試乗
【試乗】いい意味で「EVを強調しない」乗り味! 本格4WDモデルも用意される期待のニューモデル「スズキeビターラ」に最速試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
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イベント
公道レース「フォーミュラE東京」が帰って来る! チケットを持っていなくとも無料で1日遊び尽くせる2日間
災害に備えて未来を楽しむ! 「AWAJI EV MEET 2025」の参加はまだまだ受付中
災害時にも活躍できるEVの可能性を淡路島で体験! 「AWAJI EV MEET 2025 from OUTDOOR FEELS」開催決定
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