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EVオーナー114人の本音と実態。「フリーコメント集(前編)」アンケート 結果発表(第6回)


TEXT:加納亨介
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THE EV TIMESで行ったEVオーナーアンケート。選択式項目の集計結果は別ページにまとめられているが、ここでは記述式項目のコメントを集めてみた。前編のテーマは「充電事情」。予想通り、オーナーの不満は小さくなかった。

【アンケート概要】
調査対象:EVオーナー
調査方法:インターネット
調査実施期間:2023年1月12日〜2023年2月28日
アンケート回収状況:114件

EV普及への最大のネックは、言わずもがなの充電事情である。質問16「充電環境にご意見があれば教えてください」に何らかの記述をくださった91名のうち、はっきりと「不満なし」を表明しているのは3名のみだった。

公共的な充電設備がガソリンスタンドに比べて著しく少ない現状では、自宅に充電設備がないとICE(内燃機関、ガソリン車やディーゼル車)のようには使えないと思われ、実際、約8割の方がその設備を備えていた。自宅充電の出来ない2割の方のうち約8割は集合住宅にお住まいで、つまり自らの意思で充電設備を設置できないと想像できる方々であった。「充電環境にご意見があれば教えてください」「EV購入を検討している人にアドバイス」といった記述式項目からコメントを拾っていく。

商業施設や集合住宅に普通充電器を普及させるのが急務だと思う。自宅充電可能で1日の走行距離が100km以下だと迷わず購入して問題無いと思います」(大阪府:テスラ・モデル3)

いまのところZESP3(編集部注:日産の充電サービス)でまかなっていますが、やはり自宅充電環境がほしい。集合住宅でも導入できるようなソリューションが広がることを期待しています」(静岡県:ヒョンデ・アイオニック5)

現状は自宅充電が必須です」(北海道:テスラ・モデルX)

自宅で充電環境を整えられる人は買って問題ないです。逆に無理なら積極的にお勧めしません。でも急速充電器だけでも運用は可能です」(福岡県:ヒョンデ・アイオニック5)

既設マンションへの6kW充電器普及を法律・条例で推めてほしい」(愛知県:テスラ・モデル3)

など、充電拠点増加への期待が窺われる。むろん国や自治体のバックアップも必要になるだろう。

充電設備そのものへの意見としては、

現状のチャデモの低性能さやUX(ユーザー・エクスペリエンス)の低さをなんとかして欲しい」(神奈川県:テスラ・モデル3)

チャデモ充電器が使い辛い。20kWは実用的ではない、50kWは必要」(兵庫県:テスラ・モデル3)

UI/UXはテスラが最も優れていると思うので真似して欲しい」(神奈川県:フォルクスワーゲン・ID4)

など、急速充電への意見が目立つ一方で

日常の行動範囲に普通充電器が普及すれば急速充電はそれほど必要なくなる」(神奈川県:テスラ・モデルY)

と、普通充電への期待もあった。急速充電はバッテリー保護のため“満タン”には事実上できないため、ショッピングや宿泊など出先での時間を使って普通充電できれば、その方がむしろ便利とも言える。

充電器の使用順を決めるシステムが必要。整理券を出して欲しい。終わっても帰ってこない場合テスラのような罰金を」(不明:日産・リーフ)

充電量に応じた金額にして欲しい。2口の急速充電は課題の解決にはならない」(福岡県:プジョー・e-2008)

24H使用できる普通充電がほぼない」(神奈川県:日産・サクラ)

支払い方式の互換性の完全確立」(大阪府:プジョー・e-2008)

あたりは、EVの周辺環境がまだまだ過渡期の混乱の中にあることを示している。

ちなみに、自宅充電設備を持たない方の中で、その必要性を感じないという意見は「集合住宅でも都内は十分に運用可能です」(東京都:テスラ・モデルY)の1名のみであった。都内も23区内に限れば使用範囲も広くなく、走行距離も伸びないはずだから、ICEと同レベルの運用をしやすいかもしれない。

わずかだが充電設備の故障についての言及もあった。確かに「ガソリンスタンドが故障して給油できなかった」という話は聞かない。たとえ故障していたとしても、ある程度人口のまとまった地域ならさほど走らずとも別のガソリンスタンドがあるだろう。

急速充電器の故障が事前に分かる仕組みが必要」(兵庫県:テスラ・モデル3)

充電器故障情報は、今のところWEB上の口コミに頼るしかないようだ。機器に内包された故障検知システムが必要と思われる。また、新規で設置時は補助金が出るが、修理には補助金がでないことも充電器の故障を修理しづらい原因となっているようなので、修理やメインテナンスにも補助金が出るといいのかもしれない。

充電環境に関するまとめとして、フォルクスワーゲン・ID4オーナーのコメントを紹介させていただく。

経路充電(急速充電器)の充実と目的地充電(普通充電器)の充実を希望」(神奈川県:フォルクスワーゲン・ID4)

この方は自宅に3kWの普通充電設備をお持ちだ。自宅で満充電して出発、目的地での滞在時間中に普通充電、足りなければルート上で急速充電、というのが理想であろう。というよりこれがEV社会の当たり前の姿だと思われる。果たしていつ頃実現されるだろうか。今のところ、日本は他の先進国から大きく後れを取りそうな気配だ。

フリーコメント集(前編)は以上です。後編では「EVの良いところ/悪いところ」についてお伝えします。

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