#BMW
TEXT:生方 聡
BMW本社会長も来日!「X2/iX2」がジャパンモビリティショーで世界初公開

BMWは、10月28日に一般公開が始まる「ジャパンモビリティショー」でプレミアムコンパクトSUVの「X2/iX2」を世界初公開するとともに、次世代のモビリティを示す「ビジョン・ノイエ・クラッセ」をアジア初公開する。 BMWブースに世界初があった! かつて「東京モーターショー」が世界中から注目されている頃には、輸入ブランドがこぞって“世界初公開”を用意していたが、近年は輸入ブランドの出展が減り、世界初公開もほとんど期待できない状況になってしまった。それだけに、輸入乗用車ブランドで、独自のブースを構えているのは「BMW」「BYD」「メルセデス・ベンツ」だけという今回のジャパンモビリティショーでは、せいぜい“アジアプレミア”や“ジャパンプレミア”がいいところと半ば諦めていた。 ところが、直前の情報でBMWがプレミアムコンパクトSUVの新型「X2」を世界初公開すると知り、「これは見逃すわけにはいかない!」と、プレスデイ1日目の10月25日に、東京ビッグサイトに足を運ぶことにした。 東展示棟 4・5・6ホールにあるBMWブースに辿り着くと、まだプレスコンファレンス前だというのに新型「X2」とそのEV版である「iX2」がベールなしで飾られている。実は新型X2/iX2はすでにネット上では写真が公開されているため、「いまさらアンベールでもないだろう」ということのようだ。 プレミアム・コンパクトSUVの「X1/iX1」をベースに、クーペスタイルのエクステリアを与えたという位置づけのX2/iX2だが、X1よりも全長が54mm長く、全高が45mm低いこともあって、伸びやかなサイドビューが実にスタイリッシュだ。

TAG: #BMW #iX2
TEXT:小川 フミオ
「エアコンソール」ってなに? BMWが急速なデジタル化に対応するためにとった戦略とは?

昨今、クルマにとって電動化とともに重要なのはデジタル化だ。「CASE」がその象徴だろう。BMWはこの自動車界における大変革期を、あるポルトガルの企業と乗り越えようとしていた。 ソフトウェアに特化した企業と手を組む 電気化を推進するとともに、いわゆるデジタライゼーションに力を入れているBMW。おもしろい取材を、i5の試乗会が開催されたポルトガル・リスボンで出来た。 私が訪れたのは、リスボンのちょっと郊外にある再開発地区。経済危機を経たポルトガルが、新たな振興策としてテック産業に力を入れると宣言したのが2018年。一帯は誘致地区だと思う。 ITの知識と技術を豊富に持った人材がどんどん育ってきているのを背景に、BMWでは、「クリティカルソフトウェア Critical Software」とのジョイントベンチャーで、「クリティカルテックワークス Critical TechWorks」なる企業を立ち上げている。 「私たちは、車両のデジタライゼーションが急ピッチで進むことを以前から予想しており、さまざまな形で、しかも速いペースで、それに対処する必要性をずっと感じていました」 背景について、BMWから出向して、クリティカルテックワークスを統括するヨッヘン・キルシュバウム氏はそう説明する。 「もちろん、私たちが本社を置くミュンヘンを中心に、ドイツでも人材を探しました。でも限界があるのです。そこで国境をまたいで、この業務にぴったりの企業を探したのです」 キルシュバウム氏は、BMW本社に20年以上在籍し、主業務は、ソフトウェア開発。なかにはコネクテッドカー、インフォテイメント、自動運転が含まれているそうだ。 「BMWは言うまでもなく100パーセントのソフトウェア企業ではありません。でも私たちが探したのは、最初からソフトウェアに100パーセント特化した企業でした。そして出合ったのが、ポルトガルのクリティカルソフトウェア。ジョイントベンチャーをスタートさせたのが2018年でした」

TAG: #BMW #エアコンソール
TEXT:小川 フミオ
きっとロールス・ロイス「スペクター」を4ドアにしたら「i7 M70 xDrive」になる

小川フミオ氏によるBMW「i7 M70 xDrive」の試乗記は最終回を迎えた。今夏、ロールス・ロイス初の電気自動車である「スペクター」にも乗っている同氏は、この両車に共通点を見出したようだ。Vol.2はこちら あなたもハン・ソロになれる じっさいに私は、「i5」と並行して、「i7 M70 xDrive」(以下・M70)をリスボンでドライブするチャンスに恵まれた。とてつもない加速力だ。 まっさきに連想したのは、映画「スターウォーズ」。ミレニアムファルコン号がワープ航法に移ったとき、周囲の星が一瞬で背景に退いてしまう描写があった。まさにあれ。 どこまで速度が上がるのか、といういきおいで制限速度まで加速していく。 かつて、1980年代から90年代にかけて、BMWをはじめ、ポルシェやメルセデスが、アウトバーンにおけるハイスピードドライビングを可能にする高性能マシンで競っていた時代を連想した。 結局、排ガスによる地球温暖化が社会問題化するにあたり、社会や環境に敏感なドイツのメーカー各社は、最高速度を250km/hに抑える協定を結んだ。 もちろん、「i7」の最高速も250km/hだけれど、再生可能エネルギーによる電気を使えば、化石燃料よりも環境負荷は低くなる、というのが、あちらの高性能車乗りのエクスキューズでもある。 もうひとつの見方をすると、世のBEV(バッテリー電気自動車)の多くは、電費をおもんばかって、最高速をもっと低く抑えるリミッターをかけている。M70はすごい自信ぶりではないか。 フランクフルトの五叉路のような、ドイツ・アウトバーンの速度無制限区間だったら、さらにすごかっただろう。250km/hで巡航できそうだ。リスボンでの試乗において、高性能ぶりの片鱗は充分に感じられた。 しかもたんに直線で速いだけでない。カーブだって、大小問わず、小気味よく、すいすいとこなしていく。 電子制御のアクティブサスペンションシステムと、後輪操舵システムも、小さなカーブでは車体の安定性に大きく寄与してくれているはずだ。 さらに、前方の路面状況に応じてダンピングを調節する「エグゼクティブドライブプロ」と、「アクティブロールコンフォート」と、そして強力な「Mスポーツブレーキブレーキシステム」までそなえる。

TAG: #BMW #i7 #M70
TEXT:小川フミオ
「BMWの核はセダン」。「i5」での表現は、BEV世代のセダンの在り方を示している。

SUV(BMWいわくSAV)を多くの人が選ばれる中で、セダンへの思いを込めるBMW。i5にあるデザイン手法の奥深さに、小川フミオはセダンの可能性を知るのだった。 セダンほど、エレガントな車型はない −−昨今は多くのひとが、セダンやステーションワゴンでなく、SUV……BMWの言うところではSAVを選ぶ傾向があります。そんな時代にセダンをあえてデザインするのは、けっこう苦労がありましたか。 「いやいや、そんなことはまったくなかったです。たいへん楽しい仕事でした。セダンほどエレガントな車型はないし。そもそも、BMWの核といえばセダンです。3シリーズも7シリーズも、BMWにとってたいへん重要なモデルであり続けています」 −−そのうえで、時代に合わせてコンセプトをいじっていくわけですね。 「ですね。たとえば、今回のi5だと、ルーフの表面を見てください。Cピラーへと続くところの面の作り込みは、かなりよく出来たと自負しています。ここが強く目立ちます。それで、キャビンの安定感をぐっと出すことに成功しています。ここはかなり自信ある造型です。それと細く見えるCピラー。これでエレガンスも表現しています」 −−他のメーカーだと、反対のことを言ったりもしています。Cピラーこそ力強さや安定感を表現するための重要な部分で、太くしたり、造型的な処理で、ある種のテンション、つまり緊張感というか力強さを盛り込むことが大事だとしていますね。 「意見としては分かりますが、私たちはその道(デザイン手法)を選びませんでした。ルーフラインは流麗に、キャビンは軽くふわっとボディに載っているように見せ、いっぽうで、車体側面にキャラクターラインと面取りを同時に入れて、ここでテンションを生み出しています。たった2本のキャラクターラインですが、力強さはかなり強く感じていただけるのではないでしょうか」 新世代を強調したキドニーグリル −−変わったといえば、フロントマスクのコンセプトも、従来とは一線を画していますね。i5と、エンジン搭載の他の5シリーズとは差別化をはかりましたか。 「いや、5シリーズは、i5を含めて基本的に共通のフロントマスクです。違うのはスポーツパックを採用したモデルです。5シリーズは、たしかに上下幅の狭いヘッドランプですが、初代から伝統的な4灯式のモチーフは継承していますし、キドニーグリルもむしろ大きく見せています。ただし、i5 M60 xDriveのようなパフォーマンスモデルだと、キドニーグリル内には縦バーは入れず、いっぽうでグリル周辺のブラックの部分を大きくして、私たちが考える新世代のスポーツ性を強調したフロントマスクとしています」 −−i5はセダンだけれどBEVです。ここがBMWデザインにとって、ある種のターニングポイントでしょうか。 「そうですねえ。言えることは、未来は明るいと私は思っています。BMWには、過去の名車というヘリティッジがあります。それを活かすことも出来るし、逆にへたをすると、それが足かせになることだってありえます。でも、スタジオには、新しいものを創造するための自由がたっぷりあります。それはもう圧倒的だと思います。なので、BEVの時代を間近に迎えながら、私はデザイナーという仕事を楽しんでいるんです」 <了>

TAG: #BMW #i5 #セダン
TEXT:小川フミオ
「i5」の造形を、BMWエクステリア・デザイン責任者がディテールから語る

ラインナップの中核である5シリーズ。そのエクステリアデザインには、スポーティかつエレガントさを併せ待つ、新しいプロポーションが見られる。小川フミオは、そのディテールを、インタビューをとおして訊き出す。 スポーティエレガンスの新しいプロポーション BMW肝煎りの8代目5シリーズ。セダンはいまもプロダクトの中核とする同社にあって、いかなる思いをこめて、デザインを完成させていったのか。 リスボンでBEV「i5」のジャーナリスト向け試乗会が開催されたのと同じタイミングで、クリストファー・ワイル氏にインタビューする機会を得た。 ワイル氏は、ヘッド・オブ・エクステリアデザインの肩書きを持ち、外観デザインを統括。ミニのデザインスタジオから移ってきて最初に手がけたモデルは、「5シリーズGT」(2009年発売)だったという。 以下は、i5を中心に、BMWの新世代のデザインをめぐっての、ワイル氏との一問一答である。 −−i5の実物は、東京で見たのが最初で、次にリスボンでじっくり観察することが出来ました。先代とはかなり変わりましたね。 「デザインコンセプトは、エレガントと軽快さ、これを強調しようということでした。なにしろ、スポーティエレガンスというのが、5シリーズのデザインにおけるキーワードでしたから。そこで私たちは、まずピラーを出来るだけ細く見せようとしました」 −−たしかに、自動車デザインの一般的なルールでは、Cピラーの付け根はリアタイヤの上あたり、とされていると思いますが、i5では、それより後ろに移されています。 「セダンのデザインにおいて、あたらしいプロポーションを作り出したい、と私たちは考えたんです。重要なことは、フロントからリアにかけて、流れるようなシルエットを形成し、クーペのような雰囲気を作るのに成功したと思います」 Aピラーを後退させて、ボンネットを長くみせる −−Aピラーの位置も、従来より後方に移されているように感じられます。 「多少そういうところはあるかもしれません。しかし基本的には、そのまま線を延ばしていくと、フロントのホイールアーチにぶつかるという、クラシカルなプロポーションのままだと思います。フロントのホイールアーチと前席ドアのシャットライン(切り欠き線)とのあいだには、けっこう大きなスペースがあって、長めのボンネットを目立たせるというBMWデザインの約束事に忠実です」 −−なるほどよくわかります。 「運転席に座ると、ボンネットの稜線が見えると思います。この意図は、ボンネットが見えていると、ドライバーは感覚的に嬉しくなるという調査結果によるものです」 −−BEVだと、ボンネットを、衝突安全基準をクリアするぎりぎりの長さまで短くして、同時に、Aピラーの付け根位置をかなり前に出すというデザインを採用するケースもありますが。 「そうはしなかったわけです。背景には、今回の8世代目の5シリーズは、エンジンもあればプラグインハイブリッドも、そしてBEVのi5と、ボンネットの下に収めるドライブトレインが多様というのもあります。なにより、BMW車の特徴である長めのボンネットを持つプロポーションを大事にしようというコンセプトを採用したんです」 べつの見方をすると、よくぞまあ、ここまで多様なドライブトレインに対応するシャシーを設計できたものだと思う。 デザインの過程では、ひょっとしたら、かつてワイル氏が手がけたという5シリーズGTのように、大胆なコンセプトのアイディアも上がったんではないだろうか。 でもはたして最終的には、多くのひとが無条件に、美しいと感じられる伝統的なプロポーションが採用された。それゆえに、BEVだろうと安心した気持ちでi5を選ぶBMWファンも少なくないかもしれない。 クリストファー・ワイル(Christopher Weil)氏について BMWエクステリア・デザイン責任者 「BMWのクルマにはいつも魅了されてきました。スポーティでありながら、同時にエレガントなフロントからリアへの移行など、ユニークなソリューションがあり、子供ながらにインスピレーションを受けました」と、子供の頃からBMWのデザインDNAに強い関心を持っていた。 コモ湖で開催された2011年のモーターショー、コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステのために製作されたBMW 328オマージュは、その代表作のひとつである。 <Vol.2へ続く>

TAG: #BMW #EV #i5
TEXT:小川 フミオ
BMWのEV「i7 M70 xDrive」だけに施されたデザインと引き継がれた伝統

前回、「i7 M70 xDrive」をドライブした小川フミオ氏は、改めてこのクルマのデザインを観察する。BMWの最高峰モデルにはどんな工夫が加えられているのだろうか。 特別なクルマに与えられる、特別な仕立て 新しい7シリーズは、大きくいって2つに分かれる。ひとつはガソリンとディーゼルのICE(内燃機関)、もうひとつはピュアEVの「i7」シリーズだ。 ここで紹介している「i7 M70 xDrive」は、2023年にi7のラインナップに加わった、現時点でもっともパワフルなMパフォーマンスモデル。 といっても、基本デザインは同じだ。全長5,390ミリ、全幅1,950ミリ、全高1,545ミリのディメンションをもち、ルーフの前後長は長く見える。 とりわけ個性的なのはフロントマスクの造型。上下幅が薄くて左右に広いヘッドランプと、その下に大きなエアダム。 キドニーグリルは大きいが、クロームを使っているのは輪郭線だけで、これまで縦バーも目立っていたが、今回はブラックアウトされている。その周囲もブラックの部分が多い。 フロントマスクの比較:M70と60ではブラックアウトした面積の違いでイメージもだいぶ異なる ポルトガルのリスボンで試乗車に対面したとき、押出しの強さに圧倒された。従来の「eDrive50」と「xDrive60」は、グリル周囲が車体同色の処理で、かつグリル内の縦バーもしっかり見えるデザインだったのと、かなり差異化されている。 「このクルマは、特別な存在感をもって、周囲の車両とは明らかにちがうと目だたせたいと考えていました」 BMWの乗用車のエクステリアデザインを統括するクリストファー・ワイル氏は、試乗会のときに、そう説明してくれた。 「なので、フロントマスクのデザインはとても重要です。BMWのトップクラスに属する車両には、それにふさわしいフロントマスクが必要と、ダブルレイヤーのヘッドランプまわりのデザインなどを与えました」

TAG: #BMW #i7 #M70
TEXT:小川 フミオ
BMWは電気自動車「i7 M70 xDrive」でライバルに挑戦状を叩きつける

ポルトガルで行われたi5の国際試乗会では、「i7 M70 xDrive」もジャーナリストに委ねられていた。この「i7」のトップグレードに乗った小川フミオ氏のレポートをお届けする。 i7はBEVに新しい世界を拓いた BMWは最高峰セダン「7シリーズ」にBEV(バッテリー電気自動車)の「i7」を設定し、2022年7月から日本でも販売している。ICE(内燃機関)のバージョンもすごいけれど、i7のナチュラルな操縦感覚はBEVに新しい世界を拓いた印象すらある。 さらに、2023年には、従来の「i7 eDrive50」と「i7 xDrive60」に加えて、よりスポーティな「i7 M70 xDrive」を追加。ビー・エム・ダブリュー株式会社の手によって、日本でも5月29日から発売された。 「BMW 7シリーズ初の M ハイ・パフォーマンス・モデル電気自動車」と日本法人がプレスリリースで紹介するi7 M70 xDrive(以下M70)は、現在、i7のラインナップで最高性能を誇る。 性能をみても、「50」が650キロの走行距離と335kWの最高出力(それでもすごい)、「60」が走行距離は同じだが400kWであるのに対して、M70の走行距離は570kmとやや短くなるものの、マックスパワーは485kWにまで上がる。 「もっとも速く、もっともパワフルな、BMWのBEV」と、BMWではプレスリリースに記している。 Mの名を冠しているM70は、後輪用モーターの電圧を2倍に上げ、電力密度も過去最高の値にまで引き上げたという。これを、5世代目になるBMWのeDriveシステムに組み合わせたのが特長。

TAG: #BMW #i7 #M70
TEXT:小川フミオ
BMW「i5」には、ユーザーインタラクションシステムにも、次世代へと移行する本気度がある

BMW「i5」のユーザーインタラクションシステム開発責任者に、小川フミオは、人とクルマのインターフェースについてを問う。そこには、ドイツ伝統のデザイン思想があることを語りはじめた。 インターフェースも、次世代へ BMWがいよいよ本格的に電気自動車の時代に突入したと感じさせられた、新型5シリーズの「i5」。なにしろ、BMWのラインナップにおける中核というセダンに設定されたのだ。 BEV(バッテリー電気自動車)のi5は、BMWがいかに車両の電動化に本気で取り組んでいるかの、またとない証明ともいえる。 ドライブトレインに加えて、室内のコミュニケーションシステム、いわゆるコネクティビティやインフォテイメントシステムも、いま、次世代へと移行しつつある。これも大きな注目点。 リスボンで開催された試乗会で、私は、このモデルにかかわった、多くのキーパースンと会うことが出来た。 プロダクトマネージャーのオリバー・ムンダー氏に加え、ユーザーインタラクションシステムの開発責任者のラインハルト・ザイデル氏は、デジタライゼーションに力を入れる新世代のBMW車において重要な存在だ。 「透明性」を重要視 以下は、ザイデル氏との一問一答。 −−担当している仕事の範囲を教えてください。 「車内のコントロールシステム全般で、そのなかには、カーブドディスプレイと操作類をどう結びつけるか、ソフトウェアのエンジニアを指揮してのインターフェイスの構築も含まれています」 −−i7とそれに続く今回のi5では、インターフェイスも新しくなっていますね。 「ひとつは、i7から採用した”インタラクション・バー Interaction Bar”ですね。ダッシュボード全域にわたって設置した帯状のコントローラーで、タッチコントロールでグラブボックスを開けたり、エアコンのベンチレーションの開閉が行えます。それに、カラーも変わります。ドライバーとの接点としては、ヘッドアップディスプレイが、速度だけでなく、状況を伝えるために重要な装備です」 −−ドライバーと車両とのインターフェイスで、もっとも重要視している点はどこですか? 「透明性です。走行中に周囲の状況が明確にわかるようにすること。運転支援装置がどのように働いていているかにはじまり、自車の前後左右の交通状況も把握できれば、ドライバーは車両を信頼できます。それを重要視しています」 −−システムが出来ることがより増えれば、操作もより複雑になっていくのは世の常ですが。 「そのとおりです。そこで、私たちはいま“クイックセレクト Quick Select”という機能をインフォテイメントシステムに搭載しています。ナビゲーション、電話、音楽再生など、ひんぱんに使う機能はトップ画面に出せて、深く”掘って”いかなくても、簡単な操作ができるのです」 −−BMWは、会話型ボイスコントロールシステムに、まっさきに着手したし(発表はちょっと遅れましたが)、さかのぼれば、2001年のBMW iDrive(アイドライブ)にはじまり、ユーザーエクスペリエンスの面で、世界に先んじてきました。その熱心な取り組みには、いかなる背景があるのでしょうか。 「たしかに私たちは、ダイヤルの回転とプッシュによって操作できるBMW   iDriveを開発しました。長いあいだ、ナビゲーションや音楽再生といったハードウェアの操作が主目的でした。ただし、ユーザーが何を求めているか、市場調査を欠かしたことはなく、その結果を、できれば先回りしてシステムに反映しているつもりです。そのため、2025年発売予定の新世代セダン“ノイエクラッセ”では、さらに進化したiDriveを搭載します。これを組み込んだダッシュボードは、目立った操作類はほぼなく、かなり斬新です。もちろん、操作性が最重要課題で開発しています」 いまもっとも先進的な(印象の)インテリアは?と考えると、BMWのiシリーズがまっさきに頭に浮かぶのは事実。 ただし、デザインのためのデザインでなく、グッドデザインは機能を表現したもの(Form Follows Function)というドイツの伝統的なデザイン思想の具現化がそのコアにある。そのことが、ザイデル氏へのインタビューからうかがい知れた。 現在「ビジョン・ノイエクラッセ」というコンセプトモデルで見るユーザーインターフェイスのコンセプトはかなり斬新。でも、リスボンで体験したi5もまた、機能性や操作性で、先んじている印象だった。 <了>

TAG: #BMW #EV #i5
TEXT:小川フミオ
BMW「i5」はビジネスアスリート!プロダクトマネージャーが語る5シリーズ初BEVの背景

スポーティであり、快適であり、惹きつけるデザインであり、初代から50数年経つ5シリーズにみる才色兼備なセダンへのこだわりを小川フミオが聞き出す。 ビジネスアスリートであるために 2023年9月おわりに国際試乗会が開催された「BMW i5」。5シリーズとして初のBEV(バッテリー電気自動車)を開発した狙いはどこにあるのか。 製品開発を担当するプロダクトマネージャーを務めたBMWのオリバー・ムンダー氏と、ユーザーインタラクションシステムの開発責任者(Head of Development User Interaction System)であるラインハルト・ザイデル氏にインタビュー。背景を語ってもらった。 まずは、ムンダー氏との一問一答から紹介する。 −−今回の8代目5シリーズ、そしてi5を開発するにあたって、当初のコンセプトはいかなるものでしたか。 「私たちは、製品発表前に一般顧客対象に調査(クリニック)を実施しました。その結果、あらためてわかったのは、多くのユーザーが、5シリーズを仕事で使っているということでした。たしかに先代5シリーズを私たちは”ビジネスアスリート”と定義しました」 −−ビジネスアスリートであるための要件とはなんでしょうか。 「スポーティな運動性能と同時に、長距離ドライブが出来る快適性をそなえていることです。じっさい、5シリーズのユーザーはかなり長い距離を走るというケースが多いようです。この2つの特徴を兼ねそなえているのは、1972年の初代5シリーズ以来の伝統で、当時は競合なんてありませんでした」 −−今回の8代目の5シリーズは歴代のなかでもかなり大胆なスタイリングをもっているように思えます。ビジネスアスリートとしても、ある種の進化が必要だったということですか。 「デザインは、5シリーズの購買層にとって、かなり重要な要素です。購買を左右するものです。新型5シリーズは、欧州はもちろん、北米、中国、アジアと広い地域で販売します。広い市場で受け入れられるデザインが必要で、この調整はけっこう大変でした。たとえば、北米市場の志向はちょっと保守的で、アジアは反対にもうすこし先進的で、一目を惹くようなデザインが好まれるようです」 −−SUV、BMW的にいうとSAVが市場ではトレンドですが、セダンをあきらめなかったのですね。 「やっぱり、セダンは私たちの核にあるものですから。市場調査をしても、5シリーズの潜在的購買層が誰しも、SAVを求めているわけではないとわかりましたし。i5はプリズムバッテリーを床下に搭載していますが、それでもSAV的なプロポーションはとらず、あくまでセダンとして市場に送り出すことにしたのです」 新たな業種が加わって、新世代BMWとなっていく −−i5の国際試乗会では、インフォテイメントシステムの、とりわけエンターテイメントコンテンツの充実を、さかんに喧伝しましたね。これから、OSのアップデートとともに、豊富な車内での娯楽を提供していくというのは、興味ぶかかったです。 「デジタルコンテンツも、アジアの市場ではたいへん重要視されます。そこで、新しい5シリーズでは、その面でもしっかり力を入れているつもりです。ポルトガルに作ったソフトウェア開発会社クリティカルテックワークス Critical TechWorksも、欧州向けのコンテンツを開発してくれています」 これまでなかったような業種も加わり出来上がるのが、新世代のBMWなのだという。 <Vol.2へ続く>

TAG: #BMW #EV #i5
TEXT:小川 フミオ
EV版「M5」も開発中!「i5 M60 xDrive」のロケット級の速さにも驚き!

5シリーズの電気自動車「i5」の試乗記。前回までは後輪駆動の「i5 eDrive 40」をお届けした。今回はいよいよ全輪駆動で601psの出力を誇る「i5 M60 xDrive」に乗る。 ジェット機とロケットほどの違い 「i5」には、「i5 eDrive 40」と並行して、全輪駆動で、かつパワフルなモーターを搭載した「i5 M60 xDrive」が発売された。 i5 eDrive 40が最高出力250kW、最大トルク430Nmをもつのに対して、「i5 M60 xDrive」はモーターを1基ずつ前後に搭載。フロントは192 kW、リアは250kW。システムトータルの出力は442kW、最大トルクは820Nmにもなる。 静止から時速100キロまでを3.8秒で加速する駿足ぶりを示すとともに、”電費”は100km走るのに20.6kWhから18.2kWh。満充電だと、455kmから516kmのあいだという走行距離を誇る。 フロントグリルは縦バーをもたず、BMW伝統のキドニーグリルの輪郭だけが残された個性的なデザイン。周辺がグロスブラックというアグレッシブな仕様が試乗車だった。 そのアグレッシブな印象をまったく裏切らない、驚くようなトルク感の加速と、クイックなステアリングフィールが、このクルマの身上なのだろう。 高速道路では、i5 eDrive 40も速かったが、あちらがジェット機なら、こちらはロケットだ。軽くアクセルペダルを踏み込んだだけで、周囲のクルマがあっというまに後景にしりぞくほど。 ステアリングの安定感はすばらしく、路面が多少荒れていようと、直進性がしっかり保たれるので、いっさい不安感がない。よく出来たスポーツセダンと感心させられた。 しかも、BMWとスポーツモデル開発を担当するM社は、この先「M5」に相当するモデルを準備中というのだから、どんなクルマになるのだろう。トルクたっぷりの加速感が大好きなドライバーにはたまらないだろう。 i5 M60 xDriveには、アダプティブサスペンションがおごられている。かつ、Mモデルなのでステアリングホイールコラムに「スポーツブースト」という瞬間的な加速をもたらすレバーまでついている。これは路上では使えません(笑)。

TAG: #BMW #i5 #セダン

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