#BMW
TEXT:小川フミオ
「i5」の造形を、BMWエクステリア・デザイン責任者がディテールから語る

ラインナップの中核である5シリーズ。そのエクステリアデザインには、スポーティかつエレガントさを併せ待つ、新しいプロポーションが見られる。小川フミオは、そのディテールを、インタビューをとおして訊き出す。 スポーティエレガンスの新しいプロポーション BMW肝煎りの8代目5シリーズ。セダンはいまもプロダクトの中核とする同社にあって、いかなる思いをこめて、デザインを完成させていったのか。 リスボンでBEV「i5」のジャーナリスト向け試乗会が開催されたのと同じタイミングで、クリストファー・ワイル氏にインタビューする機会を得た。 ワイル氏は、ヘッド・オブ・エクステリアデザインの肩書きを持ち、外観デザインを統括。ミニのデザインスタジオから移ってきて最初に手がけたモデルは、「5シリーズGT」(2009年発売)だったという。 以下は、i5を中心に、BMWの新世代のデザインをめぐっての、ワイル氏との一問一答である。 −−i5の実物は、東京で見たのが最初で、次にリスボンでじっくり観察することが出来ました。先代とはかなり変わりましたね。 「デザインコンセプトは、エレガントと軽快さ、これを強調しようということでした。なにしろ、スポーティエレガンスというのが、5シリーズのデザインにおけるキーワードでしたから。そこで私たちは、まずピラーを出来るだけ細く見せようとしました」 −−たしかに、自動車デザインの一般的なルールでは、Cピラーの付け根はリアタイヤの上あたり、とされていると思いますが、i5では、それより後ろに移されています。 「セダンのデザインにおいて、あたらしいプロポーションを作り出したい、と私たちは考えたんです。重要なことは、フロントからリアにかけて、流れるようなシルエットを形成し、クーペのような雰囲気を作るのに成功したと思います」 Aピラーを後退させて、ボンネットを長くみせる −−Aピラーの位置も、従来より後方に移されているように感じられます。 「多少そういうところはあるかもしれません。しかし基本的には、そのまま線を延ばしていくと、フロントのホイールアーチにぶつかるという、クラシカルなプロポーションのままだと思います。フロントのホイールアーチと前席ドアのシャットライン(切り欠き線)とのあいだには、けっこう大きなスペースがあって、長めのボンネットを目立たせるというBMWデザインの約束事に忠実です」 −−なるほどよくわかります。 「運転席に座ると、ボンネットの稜線が見えると思います。この意図は、ボンネットが見えていると、ドライバーは感覚的に嬉しくなるという調査結果によるものです」 −−BEVだと、ボンネットを、衝突安全基準をクリアするぎりぎりの長さまで短くして、同時に、Aピラーの付け根位置をかなり前に出すというデザインを採用するケースもありますが。 「そうはしなかったわけです。背景には、今回の8世代目の5シリーズは、エンジンもあればプラグインハイブリッドも、そしてBEVのi5と、ボンネットの下に収めるドライブトレインが多様というのもあります。なにより、BMW車の特徴である長めのボンネットを持つプロポーションを大事にしようというコンセプトを採用したんです」 べつの見方をすると、よくぞまあ、ここまで多様なドライブトレインに対応するシャシーを設計できたものだと思う。 デザインの過程では、ひょっとしたら、かつてワイル氏が手がけたという5シリーズGTのように、大胆なコンセプトのアイディアも上がったんではないだろうか。 でもはたして最終的には、多くのひとが無条件に、美しいと感じられる伝統的なプロポーションが採用された。それゆえに、BEVだろうと安心した気持ちでi5を選ぶBMWファンも少なくないかもしれない。 クリストファー・ワイル(Christopher Weil)氏について BMWエクステリア・デザイン責任者 「BMWのクルマにはいつも魅了されてきました。スポーティでありながら、同時にエレガントなフロントからリアへの移行など、ユニークなソリューションがあり、子供ながらにインスピレーションを受けました」と、子供の頃からBMWのデザインDNAに強い関心を持っていた。 コモ湖で開催された2011年のモーターショー、コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステのために製作されたBMW 328オマージュは、その代表作のひとつである。 <Vol.2へ続く>

TAG: #BMW #EV #i5
TEXT:小川 フミオ
BMWのEV「i7 M70 xDrive」だけに施されたデザインと引き継がれた伝統

前回、「i7 M70 xDrive」をドライブした小川フミオ氏は、改めてこのクルマのデザインを観察する。BMWの最高峰モデルにはどんな工夫が加えられているのだろうか。 特別なクルマに与えられる、特別な仕立て 新しい7シリーズは、大きくいって2つに分かれる。ひとつはガソリンとディーゼルのICE(内燃機関)、もうひとつはピュアEVの「i7」シリーズだ。 ここで紹介している「i7 M70 xDrive」は、2023年にi7のラインナップに加わった、現時点でもっともパワフルなMパフォーマンスモデル。 といっても、基本デザインは同じだ。全長5,390ミリ、全幅1,950ミリ、全高1,545ミリのディメンションをもち、ルーフの前後長は長く見える。 とりわけ個性的なのはフロントマスクの造型。上下幅が薄くて左右に広いヘッドランプと、その下に大きなエアダム。 キドニーグリルは大きいが、クロームを使っているのは輪郭線だけで、これまで縦バーも目立っていたが、今回はブラックアウトされている。その周囲もブラックの部分が多い。 フロントマスクの比較:M70と60ではブラックアウトした面積の違いでイメージもだいぶ異なる ポルトガルのリスボンで試乗車に対面したとき、押出しの強さに圧倒された。従来の「eDrive50」と「xDrive60」は、グリル周囲が車体同色の処理で、かつグリル内の縦バーもしっかり見えるデザインだったのと、かなり差異化されている。 「このクルマは、特別な存在感をもって、周囲の車両とは明らかにちがうと目だたせたいと考えていました」 BMWの乗用車のエクステリアデザインを統括するクリストファー・ワイル氏は、試乗会のときに、そう説明してくれた。 「なので、フロントマスクのデザインはとても重要です。BMWのトップクラスに属する車両には、それにふさわしいフロントマスクが必要と、ダブルレイヤーのヘッドランプまわりのデザインなどを与えました」

TAG: #BMW #i7 #M70
TEXT:小川 フミオ
BMWは電気自動車「i7 M70 xDrive」でライバルに挑戦状を叩きつける

ポルトガルで行われたi5の国際試乗会では、「i7 M70 xDrive」もジャーナリストに委ねられていた。この「i7」のトップグレードに乗った小川フミオ氏のレポートをお届けする。 i7はBEVに新しい世界を拓いた BMWは最高峰セダン「7シリーズ」にBEV(バッテリー電気自動車)の「i7」を設定し、2022年7月から日本でも販売している。ICE(内燃機関)のバージョンもすごいけれど、i7のナチュラルな操縦感覚はBEVに新しい世界を拓いた印象すらある。 さらに、2023年には、従来の「i7 eDrive50」と「i7 xDrive60」に加えて、よりスポーティな「i7 M70 xDrive」を追加。ビー・エム・ダブリュー株式会社の手によって、日本でも5月29日から発売された。 「BMW 7シリーズ初の M ハイ・パフォーマンス・モデル電気自動車」と日本法人がプレスリリースで紹介するi7 M70 xDrive(以下M70)は、現在、i7のラインナップで最高性能を誇る。 性能をみても、「50」が650キロの走行距離と335kWの最高出力(それでもすごい)、「60」が走行距離は同じだが400kWであるのに対して、M70の走行距離は570kmとやや短くなるものの、マックスパワーは485kWにまで上がる。 「もっとも速く、もっともパワフルな、BMWのBEV」と、BMWではプレスリリースに記している。 Mの名を冠しているM70は、後輪用モーターの電圧を2倍に上げ、電力密度も過去最高の値にまで引き上げたという。これを、5世代目になるBMWのeDriveシステムに組み合わせたのが特長。

TAG: #BMW #i7 #M70
TEXT:小川フミオ
BMW「i5」には、ユーザーインタラクションシステムにも、次世代へと移行する本気度がある

BMW「i5」のユーザーインタラクションシステム開発責任者に、小川フミオは、人とクルマのインターフェースについてを問う。そこには、ドイツ伝統のデザイン思想があることを語りはじめた。 インターフェースも、次世代へ BMWがいよいよ本格的に電気自動車の時代に突入したと感じさせられた、新型5シリーズの「i5」。なにしろ、BMWのラインナップにおける中核というセダンに設定されたのだ。 BEV(バッテリー電気自動車)のi5は、BMWがいかに車両の電動化に本気で取り組んでいるかの、またとない証明ともいえる。 ドライブトレインに加えて、室内のコミュニケーションシステム、いわゆるコネクティビティやインフォテイメントシステムも、いま、次世代へと移行しつつある。これも大きな注目点。 リスボンで開催された試乗会で、私は、このモデルにかかわった、多くのキーパースンと会うことが出来た。 プロダクトマネージャーのオリバー・ムンダー氏に加え、ユーザーインタラクションシステムの開発責任者のラインハルト・ザイデル氏は、デジタライゼーションに力を入れる新世代のBMW車において重要な存在だ。 「透明性」を重要視 以下は、ザイデル氏との一問一答。 −−担当している仕事の範囲を教えてください。 「車内のコントロールシステム全般で、そのなかには、カーブドディスプレイと操作類をどう結びつけるか、ソフトウェアのエンジニアを指揮してのインターフェイスの構築も含まれています」 −−i7とそれに続く今回のi5では、インターフェイスも新しくなっていますね。 「ひとつは、i7から採用した”インタラクション・バー Interaction Bar”ですね。ダッシュボード全域にわたって設置した帯状のコントローラーで、タッチコントロールでグラブボックスを開けたり、エアコンのベンチレーションの開閉が行えます。それに、カラーも変わります。ドライバーとの接点としては、ヘッドアップディスプレイが、速度だけでなく、状況を伝えるために重要な装備です」 −−ドライバーと車両とのインターフェイスで、もっとも重要視している点はどこですか? 「透明性です。走行中に周囲の状況が明確にわかるようにすること。運転支援装置がどのように働いていているかにはじまり、自車の前後左右の交通状況も把握できれば、ドライバーは車両を信頼できます。それを重要視しています」 −−システムが出来ることがより増えれば、操作もより複雑になっていくのは世の常ですが。 「そのとおりです。そこで、私たちはいま“クイックセレクト Quick Select”という機能をインフォテイメントシステムに搭載しています。ナビゲーション、電話、音楽再生など、ひんぱんに使う機能はトップ画面に出せて、深く”掘って”いかなくても、簡単な操作ができるのです」 −−BMWは、会話型ボイスコントロールシステムに、まっさきに着手したし(発表はちょっと遅れましたが)、さかのぼれば、2001年のBMW iDrive(アイドライブ)にはじまり、ユーザーエクスペリエンスの面で、世界に先んじてきました。その熱心な取り組みには、いかなる背景があるのでしょうか。 「たしかに私たちは、ダイヤルの回転とプッシュによって操作できるBMW   iDriveを開発しました。長いあいだ、ナビゲーションや音楽再生といったハードウェアの操作が主目的でした。ただし、ユーザーが何を求めているか、市場調査を欠かしたことはなく、その結果を、できれば先回りしてシステムに反映しているつもりです。そのため、2025年発売予定の新世代セダン“ノイエクラッセ”では、さらに進化したiDriveを搭載します。これを組み込んだダッシュボードは、目立った操作類はほぼなく、かなり斬新です。もちろん、操作性が最重要課題で開発しています」 いまもっとも先進的な(印象の)インテリアは?と考えると、BMWのiシリーズがまっさきに頭に浮かぶのは事実。 ただし、デザインのためのデザインでなく、グッドデザインは機能を表現したもの(Form Follows Function)というドイツの伝統的なデザイン思想の具現化がそのコアにある。そのことが、ザイデル氏へのインタビューからうかがい知れた。 現在「ビジョン・ノイエクラッセ」というコンセプトモデルで見るユーザーインターフェイスのコンセプトはかなり斬新。でも、リスボンで体験したi5もまた、機能性や操作性で、先んじている印象だった。 <了>

TAG: #BMW #EV #i5
TEXT:小川フミオ
BMW「i5」はビジネスアスリート!プロダクトマネージャーが語る5シリーズ初BEVの背景

スポーティであり、快適であり、惹きつけるデザインであり、初代から50数年経つ5シリーズにみる才色兼備なセダンへのこだわりを小川フミオが聞き出す。 ビジネスアスリートであるために 2023年9月おわりに国際試乗会が開催された「BMW i5」。5シリーズとして初のBEV(バッテリー電気自動車)を開発した狙いはどこにあるのか。 製品開発を担当するプロダクトマネージャーを務めたBMWのオリバー・ムンダー氏と、ユーザーインタラクションシステムの開発責任者(Head of Development User Interaction System)であるラインハルト・ザイデル氏にインタビュー。背景を語ってもらった。 まずは、ムンダー氏との一問一答から紹介する。 −−今回の8代目5シリーズ、そしてi5を開発するにあたって、当初のコンセプトはいかなるものでしたか。 「私たちは、製品発表前に一般顧客対象に調査(クリニック)を実施しました。その結果、あらためてわかったのは、多くのユーザーが、5シリーズを仕事で使っているということでした。たしかに先代5シリーズを私たちは”ビジネスアスリート”と定義しました」 −−ビジネスアスリートであるための要件とはなんでしょうか。 「スポーティな運動性能と同時に、長距離ドライブが出来る快適性をそなえていることです。じっさい、5シリーズのユーザーはかなり長い距離を走るというケースが多いようです。この2つの特徴を兼ねそなえているのは、1972年の初代5シリーズ以来の伝統で、当時は競合なんてありませんでした」 −−今回の8代目の5シリーズは歴代のなかでもかなり大胆なスタイリングをもっているように思えます。ビジネスアスリートとしても、ある種の進化が必要だったということですか。 「デザインは、5シリーズの購買層にとって、かなり重要な要素です。購買を左右するものです。新型5シリーズは、欧州はもちろん、北米、中国、アジアと広い地域で販売します。広い市場で受け入れられるデザインが必要で、この調整はけっこう大変でした。たとえば、北米市場の志向はちょっと保守的で、アジアは反対にもうすこし先進的で、一目を惹くようなデザインが好まれるようです」 −−SUV、BMW的にいうとSAVが市場ではトレンドですが、セダンをあきらめなかったのですね。 「やっぱり、セダンは私たちの核にあるものですから。市場調査をしても、5シリーズの潜在的購買層が誰しも、SAVを求めているわけではないとわかりましたし。i5はプリズムバッテリーを床下に搭載していますが、それでもSAV的なプロポーションはとらず、あくまでセダンとして市場に送り出すことにしたのです」 新たな業種が加わって、新世代BMWとなっていく −−i5の国際試乗会では、インフォテイメントシステムの、とりわけエンターテイメントコンテンツの充実を、さかんに喧伝しましたね。これから、OSのアップデートとともに、豊富な車内での娯楽を提供していくというのは、興味ぶかかったです。 「デジタルコンテンツも、アジアの市場ではたいへん重要視されます。そこで、新しい5シリーズでは、その面でもしっかり力を入れているつもりです。ポルトガルに作ったソフトウェア開発会社クリティカルテックワークス Critical TechWorksも、欧州向けのコンテンツを開発してくれています」 これまでなかったような業種も加わり出来上がるのが、新世代のBMWなのだという。 <Vol.2へ続く>

TAG: #BMW #EV #i5
TEXT:小川 フミオ
EV版「M5」も開発中!「i5 M60 xDrive」のロケット級の速さにも驚き!

5シリーズの電気自動車「i5」の試乗記。前回までは後輪駆動の「i5 eDrive 40」をお届けした。今回はいよいよ全輪駆動で601psの出力を誇る「i5 M60 xDrive」に乗る。 ジェット機とロケットほどの違い 「i5」には、「i5 eDrive 40」と並行して、全輪駆動で、かつパワフルなモーターを搭載した「i5 M60 xDrive」が発売された。 i5 eDrive 40が最高出力250kW、最大トルク430Nmをもつのに対して、「i5 M60 xDrive」はモーターを1基ずつ前後に搭載。フロントは192 kW、リアは250kW。システムトータルの出力は442kW、最大トルクは820Nmにもなる。 静止から時速100キロまでを3.8秒で加速する駿足ぶりを示すとともに、”電費”は100km走るのに20.6kWhから18.2kWh。満充電だと、455kmから516kmのあいだという走行距離を誇る。 フロントグリルは縦バーをもたず、BMW伝統のキドニーグリルの輪郭だけが残された個性的なデザイン。周辺がグロスブラックというアグレッシブな仕様が試乗車だった。 そのアグレッシブな印象をまったく裏切らない、驚くようなトルク感の加速と、クイックなステアリングフィールが、このクルマの身上なのだろう。 高速道路では、i5 eDrive 40も速かったが、あちらがジェット機なら、こちらはロケットだ。軽くアクセルペダルを踏み込んだだけで、周囲のクルマがあっというまに後景にしりぞくほど。 ステアリングの安定感はすばらしく、路面が多少荒れていようと、直進性がしっかり保たれるので、いっさい不安感がない。よく出来たスポーツセダンと感心させられた。 しかも、BMWとスポーツモデル開発を担当するM社は、この先「M5」に相当するモデルを準備中というのだから、どんなクルマになるのだろう。トルクたっぷりの加速感が大好きなドライバーにはたまらないだろう。 i5 M60 xDriveには、アダプティブサスペンションがおごられている。かつ、Mモデルなのでステアリングホイールコラムに「スポーツブースト」という瞬間的な加速をもたらすレバーまでついている。これは路上では使えません(笑)。

TAG: #BMW #i5 #セダン
TEXT:小川 フミオ
さすがはBMW!5シリーズの電気自動車「i5」もまごうかたなきスポーティセダン!

前回までは、BMW5シリーズに加わった電気自動車「i5」のデザインについて小川フミオ氏に語ってもらった。いよいよリスボンの街を走り出す。走りでも5シリーズの良さを失っていないのだろうか。 エンジン車と電気自動車のいいとこどり BMWの新型5シリーズのラインナップに加わった「i5」はBEV(バッテリー電気自動車)のセダンだ。5,060mmの全長に2,995mmのロングホイールベース。余裕あるサイズだが、操縦性は、スポーティセダンで鳴らしたBMWならでは!と言いたくなる。 リスボンで乗った1台は、i5 eDrive 40 Mスポーツ。81.2kWhのリチウムイオンバッテリーを床下に搭載し、最高出力は250kW、最大トルクは430Nmだ。 ひとことで言って、BMWならではの味がある。同社のスポーティセダンの延長線上に違和感なく位置づけられる。 電気モーターだからという特別性はほとんどなく、ナチュラルな運動性能と感じられるのだ。 現代のBEVとしても違和感なく、かつ、ステアリングフィールなどに、やはりBMWっぽい味つけがちゃんと感じられる。よく出来ていると思った。 高速道路では、どこまで速度が上がっていくの?というリミットが感じられない加速感に驚かされた。でも、アクセルペダルの味つけなのか、すこし抵抗感があって、そこで右足にすこし力をこめると、ぐんっと前に出る。そんなエンジン車のような印象も受けた。 BMWっぽいのは、ハンドルを切ったときの車体の反応だ。内側のノーズがすーっと内側に入っていく(車体のロールは少ないのだけれど)。 バッテリーを床下に積んでいるので、重心高が低いのも、気持ちよく車体が動くハンドリングという、いいバランスになっている。 車重は2.1トンあるのだけれど、モーターの大きなトルクによって、重さはほとんど感じない。 足まわりの設定は、とくにリアがやや硬め。そもそも4つのドライブトレイン前提で開発されたシャシーなので、サスペンションのアーム長とか、理想的な設計はちょっとむずかしかったのだろうか。 後席の床には小さめとはいえ、BEVとしては意外なセンタートンネルがある。ガソリン、ディーゼル、プラグインハイブリッド各モデルでは、排気管やドライブシャフトが通るはず。これもしようがない部分だ。 もちろん、ドライバーは、かなり楽しい思いが出来る。太めのグリップのステアリングホイールを通して、路面からの情報が手のひらにしっかり伝わってくるし、クルマの動きは繊細。 運転している自分との一体感がしっかりあるのが、i5の魅力だ。車内はかなり静かで、エンジン音はもちろん聞こえない。そこがBMWのセダンとして、妙な気分だ。

TAG: #BMW #i5 #セダン
TEXT:小川 フミオ
BMW「5シリーズ」の電気自動車は、新時代に入った「セダンデザイン」を体現している

ポルトガルで5シリーズの初のBEV(バッテリー電気自動車)に乗った小川フミオ氏は、その内外装デザインを歴代5シリーズと重ね合わせる。共通点や時代とともに進化したポイントはあるのだろうか。Vol.1の記事はこちら。 「スポーティ・エレガンス」なプロポーション 2023年に登場した新型BMW5シリーズは、1972年の初代から数えて8世代目になる。 ドイツをはじめ、欧州で5シリーズのセールスはずっと好調に推移してきた。ひとつの理由は、カンパニーカーといって、要職にある社員に貸与される一種の社有車としてのニーズが高いこと。 もうひとつは、バランスのよさだろう。初代いらい、私はずっと5シリーズのファンだった。 これは私の個人的な感想だけれど、初代から4代目まではとくに、プロポーションがよく、絵に描いたような4ドアセダンというかんじだった。 同時に、4灯式ヘッドランプと、キドニーグリルが、個性になっていた。控えめといえば控えめだけれど、じつはドライブが好き、というドライバーのキャラクターをうまく表現していたと思う。 今回の5シリーズは、全長が5メートルを超え、5,060mmに。先代より97mm延びた。初代7シリーズですら軽く超えている。どうして、こんなにサイズアップしたんだろう。 「その理由は……」と、語ってくれたのは、8代目5シリーズのプロダクトマネージャーを務めたオリバー・ムンダー氏。 「ひとつは、クラッシュセイフティの要件で、フロント部分を伸ばす必要があったためです。そして、もうひとつ、理由があります」 ムンダー氏は付け加える。 「i5は床下にリチウムイオンのバッテリーパックを収めるため、車高が高めになりました。そこで、バランスをとるため、全長を伸ばして、美しいプロポーションを保つことを選びました」 全高は1,515mmで、先代より36mm高い。しかし、たしかにシルエットを見ても、ぼてっとしたかんじはいっさいない。 新型5シリーズのデザインをして「クリア」「削ぎ落とされた」「運動性能を感じさせるプロポーション」「スポーティ・エレガンス」「存在感」と、BMWでは言葉にしている。

TAG: #BMW #i5 #セダン
TEXT:小川 フミオ
“EVセダン”の決定版か!? 新型BMW「5シリーズ」セダンの電気自動車「i5」に試乗した

同じドイツのライバルであるメルセデスは、電気自動車の開発と生産において、専用ブランドとプラットフォームも用意している。それに対して、BMWはエンジンモデルと一緒のプラットフォームでEVを開発し、「i5」をデビューさせた。そんなi5はどんなクルマに仕上がっているのだろうか。ポルトガルでいち早く試乗した小川フミオ氏のレポートをお届けする。 BEVセダンのひとつの究極 BMWが2023年7月13日に発売した、新型5シリーズ。8代目には、最初から、ガソリン、ディーゼル、プラグインハイブリッド、そしてBEV(バッテリー電気自動車)の「i5」がラインナップされている。 日本には、まずi5が導入され、追って、ガソリンとディーゼルが入ってくる予定。プラグインハイブリッドの設定がないのは、「電動車はi5がメインになるため」(BMWジャパン広報部)と説明される。 そのi5に、23年9月下旬に、ポルトガル・リスボンで試乗することができた。期待いじょうによく走り、ナチュラルで、BEVセダンのひとつの究極と感心した。 i5には、大きくいって、後輪駆動の「i5 eDrive 40」と、全輪駆動の「i5 M60 xDrive」が用意されている。 前者には、「i5 eDrive 40 エクセレンス」と「i5 eDrive 40 Mスポーツ」の設定がある。乗ったのは後者。サブネームのとおり、スポーティな仕上げを特徴とする仕様だ。 まずリスボンを抜けて郊外へと足を延ばしたときドライブしたのは「i5 eDrive40 Mスポーツ」。後輪を駆動するモーターは、250kWの最高出力と430Nmの最大トルクを発生。 リチウムイオン電池の総エネルギー量は 81.2kWhだそうで、一充電での走行可能距離は装備によって、477キロから582キロの幅と発表されている。 i5 eDrive 40の”電費”は100キロ走るのに18.9kWhから15.9kWh(数字が少ないほうが長い距離走る)。充電速度は最大で205kW。10分で156km充電可能という。 もうひとつの装備は、「マックス・レンジ」と呼ぶもので、電費重視のセッティングが可能になる。これを使うと、パワーを25パーセント抑制し、より長距離の走行が目指せる。

TAG: #BMW #i5 #セダン
TEXT:烏山 大輔
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

TAG: #BMW #iX #電費計測

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