スポーティであり、快適であり、惹きつけるデザインであり、初代から50数年経つ5シリーズにみる才色兼備なセダンへのこだわりを小川フミオが聞き出す。
ビジネスアスリートであるために
2023年9月おわりに国際試乗会が開催された「BMW i5」。5シリーズとして初のBEV(バッテリー電気自動車)を開発した狙いはどこにあるのか。
製品開発を担当するプロダクトマネージャーを務めたBMWのオリバー・ムンダー氏と、ユーザーインタラクションシステムの開発責任者(Head of Development User Interaction System)であるラインハルト・ザイデル氏にインタビュー。背景を語ってもらった。
まずは、ムンダー氏との一問一答から紹介する。
−−今回の8代目5シリーズ、そしてi5を開発するにあたって、当初のコンセプトはいかなるものでしたか。
「私たちは、製品発表前に一般顧客対象に調査(クリニック)を実施しました。その結果、あらためてわかったのは、多くのユーザーが、5シリーズを仕事で使っているということでした。たしかに先代5シリーズを私たちは”ビジネスアスリート”と定義しました」
−−ビジネスアスリートであるための要件とはなんでしょうか。
「スポーティな運動性能と同時に、長距離ドライブが出来る快適性をそなえていることです。じっさい、5シリーズのユーザーはかなり長い距離を走るというケースが多いようです。この2つの特徴を兼ねそなえているのは、1972年の初代5シリーズ以来の伝統で、当時は競合なんてありませんでした」
−−今回の8代目の5シリーズは歴代のなかでもかなり大胆なスタイリングをもっているように思えます。ビジネスアスリートとしても、ある種の進化が必要だったということですか。
「デザインは、5シリーズの購買層にとって、かなり重要な要素です。購買を左右するものです。新型5シリーズは、欧州はもちろん、北米、中国、アジアと広い地域で販売します。広い市場で受け入れられるデザインが必要で、この調整はけっこう大変でした。たとえば、北米市場の志向はちょっと保守的で、アジアは反対にもうすこし先進的で、一目を惹くようなデザインが好まれるようです」
−−SUV、BMW的にいうとSAVが市場ではトレンドですが、セダンをあきらめなかったのですね。
「やっぱり、セダンは私たちの核にあるものですから。市場調査をしても、5シリーズの潜在的購買層が誰しも、SAVを求めているわけではないとわかりましたし。i5はプリズムバッテリーを床下に搭載していますが、それでもSAV的なプロポーションはとらず、あくまでセダンとして市場に送り出すことにしたのです」
新たな業種が加わって、新世代BMWとなっていく
−−i5の国際試乗会では、インフォテイメントシステムの、とりわけエンターテイメントコンテンツの充実を、さかんに喧伝しましたね。これから、OSのアップデートとともに、豊富な車内での娯楽を提供していくというのは、興味ぶかかったです。
「デジタルコンテンツも、アジアの市場ではたいへん重要視されます。そこで、新しい5シリーズでは、その面でもしっかり力を入れているつもりです。ポルトガルに作ったソフトウェア開発会社クリティカルテックワークス Critical TechWorksも、欧州向けのコンテンツを開発してくれています」
これまでなかったような業種も加わり出来上がるのが、新世代のBMWなのだという。
<Vol.2へ続く>