インタビュー
share:

「BMWの核はセダン」。「i5」での表現は、BEV世代のセダンの在り方を示している。


TEXT:小川フミオ PHOTO:BMW
TAG:

SUV(BMWいわくSAV)を多くの人が選ばれる中で、セダンへの思いを込めるBMW。i5にあるデザイン手法の奥深さに、小川フミオはセダンの可能性を知るのだった。

セダンほど、エレガントな車型はない

−−昨今は多くのひとが、セダンやステーションワゴンでなく、SUV……BMWの言うところではSAVを選ぶ傾向があります。そんな時代にセダンをあえてデザインするのは、けっこう苦労がありましたか。

「いやいや、そんなことはまったくなかったです。たいへん楽しい仕事でした。セダンほどエレガントな車型はないし。そもそも、BMWの核といえばセダンです。3シリーズも7シリーズも、BMWにとってたいへん重要なモデルであり続けています」

−−そのうえで、時代に合わせてコンセプトをいじっていくわけですね。

「ですね。たとえば、今回のi5だと、ルーフの表面を見てください。Cピラーへと続くところの面の作り込みは、かなりよく出来たと自負しています。ここが強く目立ちます。それで、キャビンの安定感をぐっと出すことに成功しています。ここはかなり自信ある造型です。それと細く見えるCピラー。これでエレガンスも表現しています」

−−他のメーカーだと、反対のことを言ったりもしています。Cピラーこそ力強さや安定感を表現するための重要な部分で、太くしたり、造型的な処理で、ある種のテンション、つまり緊張感というか力強さを盛り込むことが大事だとしていますね。

「意見としては分かりますが、私たちはその道(デザイン手法)を選びませんでした。ルーフラインは流麗に、キャビンは軽くふわっとボディに載っているように見せ、いっぽうで、車体側面にキャラクターラインと面取りを同時に入れて、ここでテンションを生み出しています。たった2本のキャラクターラインですが、力強さはかなり強く感じていただけるのではないでしょうか」

新世代を強調したキドニーグリル

−−変わったといえば、フロントマスクのコンセプトも、従来とは一線を画していますね。i5と、エンジン搭載の他の5シリーズとは差別化をはかりましたか。

「いや、5シリーズは、i5を含めて基本的に共通のフロントマスクです。違うのはスポーツパックを採用したモデルです。5シリーズは、たしかに上下幅の狭いヘッドランプですが、初代から伝統的な4灯式のモチーフは継承していますし、キドニーグリルもむしろ大きく見せています。ただし、i5 M60 xDriveのようなパフォーマンスモデルだと、キドニーグリル内には縦バーは入れず、いっぽうでグリル周辺のブラックの部分を大きくして、私たちが考える新世代のスポーツ性を強調したフロントマスクとしています」

−−i5はセダンだけれどBEVです。ここがBMWデザインにとって、ある種のターニングポイントでしょうか。

「そうですねえ。言えることは、未来は明るいと私は思っています。BMWには、過去の名車というヘリティッジがあります。それを活かすことも出来るし、逆にへたをすると、それが足かせになることだってありえます。でも、スタジオには、新しいものを創造するための自由がたっぷりあります。それはもう圧倒的だと思います。なので、BEVの時代を間近に迎えながら、私はデザイナーという仕事を楽しんでいるんです」

<了>

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
中国から地球上最強コスパの新星EV現る! IMモーターL6の驚くべきスペックとは
BYDの売り上げ鈍化に注目しても意味なし! むしろ心配すべきはテスラか? BYDは利益率も投資額も驚くべき水準だった
いすゞがピックアップトラック「D-MAX」にBEVを用意! バンコク国際モーターショーでワールドプレミア予定
more
ニュース
ホンダの電動ロボット芝刈機/草刈機「ミーモ」シリーズが大幅改良! 国内で年間500台のセールスを目指す
ホンダCR-Vが帰ってきた! 新型燃料電池車「CR-V e:FCEV」が登場
「ノート オーラ NISMO」がマイナーチェンジ! 初の4WDモデル「NISMO tuned e-POWER 4WD」が登場
more
コラム
電動化の失速どころかEV&PHEVがバカ売れ! テスラもドイツ御三家も押し出す中国メーカーの勢い
日本での走行テストを確認! 中国BYDの新たな刺客「Sea Lion 07」の驚異の性能
日本のEVシフトは2024年に入り低迷気味! 軽のサクラ&eKを除けば海外勢の健闘が目立つ
more
インタビュー
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
災害に強いクルマは「PHEV+SUV+4WD」! 特務機関NERVがアウトランダーPHEVを選ぶ当然の理由
more
試乗
EV専業の「テスラ」とEVに力を入れる従来の自動車メーカー「ヒョンデ」! モデルYとコナを乗り比べるとまったく違う「乗りもの」だった
誰もが感じる「ポルシェに乗っている」という感覚! ポルシェはBEVでもやっぱりスポーツカーだった
佐川急便とASFが共同開発した軽商用EV「ASF2.0」に乗った! 走りは要改善も将来性を感じる中身
more
イベント
中国市場のニーズに合わせて開発! 日産が北京モーターショー2024で新エネルギー車のコンセプトカーを出展
レース前に特別に潜入! フォーミュラEに参戦する日産チームのテント内は驚きと発見が詰まっていた
日産がフォーミュラE「Tokyo E-Prix」開催前スペシャルイベントを開催! 六本木ヒルズアリーナに1夜限りのサーキットが出現
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択