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BMW「i5」のユーザーインタラクションシステム開発責任者に、小川フミオは、人とクルマのインターフェースについてを問う。そこには、ドイツ伝統のデザイン思想があることを語りはじめた。
インターフェースも、次世代へ
BMWがいよいよ本格的に電気自動車の時代に突入したと感じさせられた、新型5シリーズの「i5」。なにしろ、BMWのラインナップにおける中核というセダンに設定されたのだ。
BEV(バッテリー電気自動車)のi5は、BMWがいかに車両の電動化に本気で取り組んでいるかの、またとない証明ともいえる。
ドライブトレインに加えて、室内のコミュニケーションシステム、いわゆるコネクティビティやインフォテイメントシステムも、いま、次世代へと移行しつつある。これも大きな注目点。
リスボンで開催された試乗会で、私は、このモデルにかかわった、多くのキーパースンと会うことが出来た。
プロダクトマネージャーのオリバー・ムンダー氏に加え、ユーザーインタラクションシステムの開発責任者のラインハルト・ザイデル氏は、デジタライゼーションに力を入れる新世代のBMW車において重要な存在だ。
「透明性」を重要視
以下は、ザイデル氏との一問一答。
−−担当している仕事の範囲を教えてください。
「車内のコントロールシステム全般で、そのなかには、カーブドディスプレイと操作類をどう結びつけるか、ソフトウェアのエンジニアを指揮してのインターフェイスの構築も含まれています」
−−i7とそれに続く今回のi5では、インターフェイスも新しくなっていますね。
「ひとつは、i7から採用した”インタラクション・バー Interaction Bar”ですね。ダッシュボード全域にわたって設置した帯状のコントローラーで、タッチコントロールでグラブボックスを開けたり、エアコンのベンチレーションの開閉が行えます。それに、カラーも変わります。ドライバーとの接点としては、ヘッドアップディスプレイが、速度だけでなく、状況を伝えるために重要な装備です」
−−ドライバーと車両とのインターフェイスで、もっとも重要視している点はどこですか?
「透明性です。走行中に周囲の状況が明確にわかるようにすること。運転支援装置がどのように働いていているかにはじまり、自車の前後左右の交通状況も把握できれば、ドライバーは車両を信頼できます。それを重要視しています」
−−システムが出来ることがより増えれば、操作もより複雑になっていくのは世の常ですが。
「そのとおりです。そこで、私たちはいま“クイックセレクト Quick Select”という機能をインフォテイメントシステムに搭載しています。ナビゲーション、電話、音楽再生など、ひんぱんに使う機能はトップ画面に出せて、深く”掘って”いかなくても、簡単な操作ができるのです」
−−BMWは、会話型ボイスコントロールシステムに、まっさきに着手したし(発表はちょっと遅れましたが)、さかのぼれば、2001年のBMW iDrive(アイドライブ)にはじまり、ユーザーエクスペリエンスの面で、世界に先んじてきました。その熱心な取り組みには、いかなる背景があるのでしょうか。
「たしかに私たちは、ダイヤルの回転とプッシュによって操作できるBMW iDriveを開発しました。長いあいだ、ナビゲーションや音楽再生といったハードウェアの操作が主目的でした。ただし、ユーザーが何を求めているか、市場調査を欠かしたことはなく、その結果を、できれば先回りしてシステムに反映しているつもりです。そのため、2025年発売予定の新世代セダン“ノイエクラッセ”では、さらに進化したiDriveを搭載します。これを組み込んだダッシュボードは、目立った操作類はほぼなく、かなり斬新です。もちろん、操作性が最重要課題で開発しています」
いまもっとも先進的な(印象の)インテリアは?と考えると、BMWのiシリーズがまっさきに頭に浮かぶのは事実。
ただし、デザインのためのデザインでなく、グッドデザインは機能を表現したもの(Form Follows Function)というドイツの伝統的なデザイン思想の具現化がそのコアにある。そのことが、ザイデル氏へのインタビューからうかがい知れた。
現在「ビジョン・ノイエクラッセ」というコンセプトモデルで見るユーザーインターフェイスのコンセプトはかなり斬新。でも、リスボンで体験したi5もまた、機能性や操作性で、先んじている印象だった。
<了>