#販売
TEXT:高橋 優
EVは踊り場を迎えている? それ、間違ってます! 2024年の全世界EVの「本当の」販売状況

世界で売れたクルマの5台に1台以上がBEVまたはPHEV 2024年シーズン、世界全体でEVシフト減速といわれていたなかにおいて、果たしてどれほどEVシフトが減速してしまっていたのか。そして2025年はEVシフト減速の流れがさらに強まるのか。世界全体のEVシフト動向を解説します。 まず初めに、最新のデータが判明している2024年12月の世界全体でのBEVとPHEVの販売台数の合計は193万台超で前年同月比で24%アップしました。 さらに、新車販売全体に占めるBEVとPHEVの販売台数のシェア率も、12月単体では史上最高の30%に到達。とくに2021年シーズンから15%、21%、20%、そして2024年最新の30%と、明らかにEVシフトが加速している様子が見て取れます。 また、世界の主要マーケットと比較したBEVに絞った販売シェア率の変遷を比較すると、まず世界全体のシェア率は12月単体で史上最高の19%に到達。つまり、12月単体で世界全体で売れた自動車のうち5台に1台がBEVだったことを意味します。 なかでも中国市場は30%に到達。アメリカ市場も9%に到達しながら、さらに東南アジアのタイ市場も15%に到達するなど、世界各国でBEVシェア率が想定以上に上昇している様子が見て取れます。その一方で、日本市場は2.16%と、世界平均の19%と比較しても低迷している点は注目するべき動向でしょう。 また、年間ベースでのEVシフト動向について、このグラフは世界全体におけるBEVとPHEVそれぞれの年間販売台数の変遷、およびNEV(BEV+PHEV)とBEV単体の販売シェア率の変遷を示したものです。2024年シーズン通しでの世界全体のNEVシェア率は22%に到達。つまり、2024年通しで世界全体で売れた自動車の5台に1台以上がBEVかPHEVだったということになります。 また、BEVシェア率も14%に到達。つまり、2024年通しで世界全体で売れた自動車の7台に1台がBEVだったことになります。BEV販売は2023年シーズンは踊り場を迎えていたという背景が存在します。ところが、2024年シーズンというのは力強い成長を実現しており、このことからもEV減速という表現は誤りなのです。むしろ2023年シーズンの踊り場を乗り越えて、再び成長軌道に乗っていた1年だったという表現が正しいわけです。 さらに注目するべきは、欧州・米国・中国という主要マーケット3つを除いた、その他のマーケット全体では、NEV販売台数は前年比27%も増加しているというデータでしょう。つまり、この世界全体のEVシフト動向を考察する際にどうしても最大マーケットの中国市場や欧米市場の動向に左右されてしまい、本当に世界全体のEV動向を細かく分析することが難しいものの、じつは欧米中以外のマーケットでは、2024年シーズン、欧米以上にEVシフトが進んでいたということなのです。 いずれにしても、2024年シーズンにEVシフトが減速したという言説は、PHEVを含めないBEVのみという観点、また欧米中という主要マーケットを含めないその他のマーケットという観点でも明確に誤りであるといえるのです。

TAG: #2024年 #普及 #販売
TEXT:桃田健史
同じ車格のハイブリッドやエンジン車に比べてEVは高い! そもそもEVが高額になるのはナゼ?

同じ車格でもガソリン車の2倍! ウチでもそろそろEVに買い替えようか。そう思って各モデルをネットでチェックすると、「やっぱりEVは、けっこう(価格が)するな」と思う人がいるだろう。 これは、同じ車格のガソリン車やハイブリッド車と比べてのことだ。 メーカーやグレードにもよるが、軽自動車や小型車で比較すると、100万円とか200万円とかいうより、ざっくり2倍といったケースも珍しくない。 そうした価格差を、国や地方自治体からの購入補助金を使って抑制している。補助金がなければ、明らかに高いと感じるだろう。 では、そもそもなぜEVの価格は高いのか。 一般論としては、いわゆる量産効果によるもの。開発や製造にかかるメーカー側のコストが高いので、その分を生産・販売量を増やすことで下げることを指す。 ただし、たとえばハイブリッド車の場合、先行導入されたトヨタ・プリウスがガソリン車と比べてかなり高い買い物というイメージはなかった。トヨタとしては、新しい領域のクルマをユーザーに少しでも早く馴染んでもらうため、いわば赤字覚悟で価格を設定したということになる。 そうならば、EVについても導入当初はメーカー側の利益を大きく抑えた価格設定をすればいい、と考える人もいるだろう。

TAG: #普及 #販売
TEXT:高橋 優
中国市場は「中国国産」BEV強し! テスラが奮闘するも日本もドイツも苦戦

新車に占めるNEVの販売比率は52.33% 中国市場における最直近11月のEV販売動向の詳細が判明しました。新車販売の2台に1台以上がすでに新エネルギー車に置き換わるなか、日本メーカーの苦しい販売動向と見通しを中心に考察します。 まず、中国市場におけるBEVとPHEVの合計を示した新エネルギー車の販売台数は126.8万台と、前年同月比で50.8%もの増加を記録しました。新車販売全体に占める新エネルギー車の販売比率も52.33%と、歴史上最高水準の電動化率を達成しています。 ただし、販売シェア率は3カ月連続でわずかに低下を続けている状況です。この理由は、現在中国市場における経済対策の一環として、いまある車両を下取りに出して新車を購入すると、排気量2リッター以下のガソリン車の場合は1.5万元(日本円で約32万円)、新エネルギー車の場合は2万元(約42万円)が補助されるという政策を実施中だからです。 よって、NEVとともにガソリン車の需要も同じく増加しているのです。ちなみにこの補助金制度は2024年末まで実施され、自動車だけではなく、冷蔵庫や洗濯機、テレビ、エアコン、コンピュータなどの家電などにも買い替え支援策を展開しています。 他方で注目するべきは、新エネルギー車のなかでもBEVとPHEVの販売割合という観点です。2021年11月時点での新エネルギー車全体に占めるBEVのシェア率は79.63%と圧倒的なシェア率を示していたものの、直近の2024年11月単体では59.78%と、PHEVのシェア率が急速に増加しています。 ちなみに9月からPHEVとEREVをわけて統計情報が発表されており、11月単体のシェア率は、BEV:PHEV:EREV=60%:32%:8%という販売割合です。 そして、もっとも注目するべきはBEVに絞った販売シェア率の変遷です。11月単体のシェア率は31.28%と史上最高を達成しました。PHEVの販売増加以上にBEV販売も伸びていることを示しているのです。 世界の主要マーケットにおけるBEVの販売シェア率の変遷を比較すると、水色で示されている中国市場が欧米などを大きくリードしている状況です。果たしてBEVシェア率が最大化する年末までにどれほどシェア率が伸びるのかに注目が集まります。 それでは11月にどのようなEVが人気であったのか、そして2025年以降、どのEVに注目するべきなのかを分析します。 まず初めに、11月の内燃機関車も含めたすべての販売車種ランキングトップ30を確認しましょう。ピンクが新エネルギー車、そして緑が内燃機関車を示しています。 トップに君臨したのがBYDシーガルです。その次にテスラ・モデルY、BYD Song Plus、BYD Qin Plus、Hong Guang Mini EVと続きますが、トップ10のうち内燃機関車は第7位の日産シルフィと第8位のフォルクスワーゲンLavidaしかランクインすることができていません。トップ20に広げてみてもたったの6車種です。つまり、人気車種のマジョリティが、BEVかPHEVという新エネルギー車で占められてしまっているのです。 次に、このグラフは新エネルギー車に絞った販売ランキングトップ30を示したものです。黄色がBEV、水色がPHEVを示します。BYDが13車種を席巻しながら、トップ10に限ると7車種とBYDの強さが見て取れます。 そして、注目するべきは、このトップ30のうち海外メーカー勢はテスラ・モデルYとモデル3の2車種しかランクインできずに、残りはすべて中国勢が席巻しているという点です。

TAG: #EVシフト #中国 #販売
TEXT:高橋 優
2024年の日本国内のEV販売は完全に失速! 2025年に明るい材料はあるのか?

EVシェア率は2年前と同等に 日本国内の最直近11月のEV販売動向が判明しました。販売台数、EVシェア率ともに前年比マイナス成長というEVシフト停滞模様を解説します(商用軽EVである日産クリッパーEVとホンダN-VAN e:の販売台数は執筆時点では判明していないため、販売台数とシェア率は微増の見込み)。 まず、このグラフは2018年以降のBEVとPHEVの合計販売台数を月間ベースで示したものです。2024年11月の販売台数は1万504台と前年同月比でマイナス7.6%。とくに2023年12月以降12カ月連続で前年同月比マイナス成長という、EVシフト減速の流れが一過性のものではなくなっている様子が見て取れます。 次に、新車販売全体に占めるBEVとPHEVの販売台数の合計の比率を示したグラフを見てみると、直近の11月は2.9%と、前年同月に記録した2.99%と比較してもシェア率が停滞しています。 そのうえ2年前である2022年11月のEVシェア率が2.74%であったことから、じつは2年前のEVシェア率と同等水準と、EVシフトが後退状況にある様子が見て取れます。 次に、普通車セグメントの日本メーカーと輸入車メーカー、さらに軽自動車セグメントにわけて示したグラフを見てみると、白で示されている輸入EVは前年同月並みの販売台数に留まったものの、ピンクで示されている日本メーカーの普通車セグメントのBEV販売台数は889台と、前年同月比-22.7%という落ち込み具合です。 つまり、現在の日本国内のEVシフト後退のもっとも大きな要因は、日産リーフやアリア、トヨタbZ4Xのような国産の普通車セグメントの需要低下が要因であると結論づけることができます。 また、BEVの累計販売台数を年別に比較すると、2024年11カ月間において6万台弱ものBEVを発売したものの、2023年の11カ月間では8.4万台強を発売していたことから、2024年シーズンはEVシフト後退の一年となることがほぼ確定的となりました。 さらに、日本のBEV販売シェア率が世界の主要国と比較してどれほどの立ち位置であるのかを確認してみましょう。日本はデータが確定した直近の10月において1.56%という販売シェア率だったものの、最新データが判明している10月の世界全体のシェア率は16%に到達。さらに、10月の中国市場は30%に到達しています。 つまり、中国国内で売れている新車のうち10台に3台がBEVという状況です。いまだにBEVが64台に1台という日本とは別次元である様子が見て取れます。

TAG: #EVシフト #販売
TEXT:琴條孝詩
結局正解は日本のアプローチ! 新車販売のBEV割合がたった1.3%でも焦る必要なし!!

日本の新車販売に占めるBEVの割合は約1.3% 2024年の一般社団法人日本自動車販売協会連合会(自販連)の最新データ(1〜10月)によると、日本の新車販売に占めるバッテリー電気自動車(BEV)の割合は約1.3%。この数値は、2023年のノルウェー(83%)、アイスランド(54%)、スウェーデン(33%)、中国(22%)、アメリカ合衆国(7%)と世界各国と比較しても非常に低い水準にある。一見すると暗たんたる状況に思えるが、本当にそうなのだろうか。 <EVの普及は待ったなしではない> BEVが普及したからといって、私たちの生活に支障が出るわけではない。確かに、街を走るクルマの8割がBEVに変われば、空気の質は劇的に改善されるだろう。しかし、その道のりは段階的であり、焦る必要はまったくない。 日本の自動車メーカーは、長年にわたりハイブリッド車(HEV)の開発と普及に注力してきた。トヨタを筆頭に、日産、ホンダといった大手メーカーは、すでに電動化技術において世界トップレベルの技術を蓄積している。2030年までに、多くの自動車メーカーがBEVとハイブリッド車の販売比率を50%以上に引き上げる計画を発表しており、技術的な準備は着々と進んでいる。 充電インフラの課題も徐々に解決されつつある。経済産業省の支援のもと、全国各地に急速充電器の設置が進められ、2024年時点では約3万基の充電設備が整備されている。都市部だけでなく、地方においても充電ステーションの整備が加速しており、EVの実用性は確実に高まっている。

TAG: #普及 #販売
TEXT:高橋 優
日産がけん引するも日本のEV販売台数全体は失速! 2025年に各メーカーから登場が予想される新モデルに期待しかない

2年前のEVシェア率と同等に 日本国内における2024年10月のEV販売動向が判明しました。販売台数・シェア率ともに前年比マイナス成長というEVシフト停滞模様を解説します。 まずこのグラフは、2018年以降のBEVとPHEVの合計販売台数を月間ベースで示したものです。直近の2024年10月の販売台数は7321台と、前年同月比で−32%とEV減速の兆候が見てとれます。とくに2023年12月以降、11カ月連続で前年同月比マイナス成長という状況です。 次に新車販売全体に占めるBEVとPHEVの合計販売台数の比率を示したグラフを見てみると、直近の10月は2.17%と、前年同月に記録した3.22%と比較してもシェア率が低下しています。さらに、2年前である2022年10月が2.11%であったことから、2年前のEVシェア率と同等水準まで落ちてしまっているわけです。 次にBEVの販売動向を詳細に確認していきましょう。このグラフは普通車と軽自動車それぞれのBEV販売台数の変遷を示したものです。直近の10月はBEV全体で4317台と、前年同月比で−34.6%と低調です。 さらにこのグラフは、普通車セグメントを日本メーカーと輸入車メーカーそれぞれにわけて示したものです。白の輸入EVは前年同月比−4%に留まったものの、ピンクの日本製EVは785台と、前年同月比−44%と失速しています。よって、現在の日本国内のEVシフト後退のもっとも大きな要因は、日本メーカーの、とくにリーフやアリア、bZ4Xのような普通車セグメントの需要が大きく低下しているからだといえます。 また、累計販売台数を年別に比較すると、2024年10カ月間で5万台弱ものBEVを発売したものの、2023年の10カ月間では7.5万台を発売しており、2024年末にかけてどれだけ盛り返しを図ることができるのかに注目です。 さらに、現在の日本のBEVシェア率が世界の主要国と比較してどれほどの立ち位置であるのかを確認すると、日本は10月に1.28%というシェア率で最低水準です。まだ10月の各国の最新販売データが更新されていないものの、9月の世界全体のシェア率は16%に到達。さらに中国市場は10月で30%程度と、日本とさらに差をつけてEVシフトを進めています。

TAG: #シェア #販売
TEXT:御堀直嗣
じつは一充電200kmも走れば十分な人が多数! 日産サクラ&三菱eKクロスEVが売れている現状に世界は目を向けるべき

サクラとeKクロスEVの生産台数が10万台に到達 日本の電気自動車(EV)販売を牽引するのが、日産サクラと三菱eKクロスEVだ。両車をあわせた生産台数が、2022年5月の発売から2年5カ月で累計10万台に達した。 日産の初代リーフは、2010年12月に日米で発売が開始され、2014年1月に世界累計販売台数が10万台に達した。 生産と販売では、作ったというのと売れたという点で同列で比較するのは不都合だ。とはいえ、軽EVが国内での販売を目的に2年5カ月で10万台生産されたことは、日米欧を含め世界(グローバル)で販売を行ってきたリーフが3年2カ月で10万台を売ったのに比べ、どれほど短期間に人気を得たかを知ることに役立つ。そして、いかにサクラとeKクロスEVが、人々に喜ばれているかがわかる。 世間、あるいはいくつかの報道などでは、「軽EVはたった180kmしか走れない」という。だが、それは一充電での走行距離であって、経路充電で急速充電すれば、もっと遠くへ行ける。180kmしか走れないのではなく、満充電すれば最低でも180km走れると解釈すべきだ。 世界的に、1日のクルマでの移動距離は多くが50km前後とされている。だから、プラグインハイブリッド車(PHEV)のEV走行距離は、余裕を見て100km前後なのだ。たとえば、2代目アウトランダーで追加されたPHEV初代のEV走行距離は60.2kmであった。まさしく、1日のクルマでの移動距離の多数を占める50kmを視野に入れた性能といえる。 EVにおいても100km前後が日常的な利用の中心であり、ただEVでは充電したバッテリーの電力を使い切れば止まってしまうので、その分のゆとりを見て150kmほど走れれば一般に事足りることになる。 そのうえで、四季を通じ空調を使うことを考慮するなら、200km前後の基本性能をもっていれば、不安なくEVを使えることになる。サクラとeKクロスEVの一充電走行距離が180kmであるのは、日々の利用に適切な性能である。 さらに遠出をするのなら、経路充電すればいい。経路充電しなくても、目的地に基礎充電(200V)の設備があり、一泊するならそこで寝ている間に充電すれば、経路充電の必要さえなくなる。 これが、EVの基本だ。 諸元で、一充電走行距離が300~400kmないと遠出ができないといういい方や考えは、急速充電に30分かかるという数字しか考えず、利用の実態を見過ごした解釈の誤りだ。

TAG: #販売 #軽EV
TEXT:高橋 優
メルセデス・ベンツは中国市場の「高級EV」で苦戦! EクラスやSクラスの顧客がファーウェイに奪われている

高級車セグメントの販売が減少 メルセデス・ベンツの最新の決算内容とEVシフトの進捗動向が判明し、販売台数、収益性、EVシフトという観点で減速が目立つ厳しい動向が判明しました。 まずメルセデス・ベンツは、2024年初めに、当初掲げていた2030年までの完全バッテリーEVシフトの目標を取り下げており、今後どのようなEV戦略を採用するのかに注目が集まっていました。そして、そのような背景のなかで、2024年第三四半期の決算内容が発表されました。まず、メルセデス・ベンツの乗用車セグメントとバンセグメントを合計した、グループ全体のグローバル販売台数は59万4673台を達成。ところが前年同期比で3.4%のマイナス成長と、やはり2024年の後半に突入しても販売ボリュームの減少トレンドが続いています。 さらに問題であるのが、グループ全体の売り上げが第三四半期単体で345億2800万ユーロと、前年同期比で7.2%のマイナス成長に留まっている点です。つまり、販売台数以上に売り上げが減少しており、販売単価の減少が推測可能です。 実際に、Q3でもっとも販売に苦労したのがSクラスやGクラス、AMG、そしてマイバッハが該当する高級車セグメントです。販売台数も6.2万台弱と、前年同期比で12%のマイナスです。さらに、2024年通しの9カ月間で見ると、前年同期比で19%のマイナス成長。2024年に突入してから、メルセデスの収益性を支える高級車の販売状況が芳しくない様子が見て取れます。 次に、メルセデス・ベンツの収益性を詳細に見ていきましょう。まず直近のQ3の粗利益率は17.99%と、2021年以降で最低の四半期となりました。2022年Q3は23.28%、2023年Q3は21.6%、そして今回の18%弱と断続的に粗利が低下しています。おそらく粗利を稼ぎやすい高級車の販売台数が減少していることが影響していると推測できます。 また、販売管理費や研究開発費を除いた営業利益という観点も、Q3は7.29%と、2022年Q3は13.78%、2023年Q3が13.02%であり、急速に収益性が悪化しています。 この営業利益に影響する研究開発費について、売り上げに占める研究開発比率がQ3は4.87%と、この数年間で最高水準を計上しています。他方で、9カ月間通しの研究開発費と比率は、前年と比べて横ばいであり、研究開発費が大幅に増加したことが営業利益を圧迫したとはいえません。 また、販管費はこの9カ月間でわずかに低下しており、これは人件費の削減が理由であると説明されています。つまり、何がいえるのかといえば、今回、なぜ収益性で大きく落ち込んでしまっているのかというと、研究開発費や販管費が大きく増加したことが要因ではなく、やはり販売台数の減少、とくに高級車という利幅の大きいモデルの販売が落ち込んでしまったことが原因なのです。

TAG: #決算 #販売
TEXT:渡辺陽一郎
BYDが着実に日本に浸透! 第3弾として導入された「シール」は圧倒的にお買い得だった

シールはいまが買いどき! 中国の電気自動車、BYDシールの販売が好調だ。発売後1カ月の受注台数は300台で、台数自体は多くないが、歴史の浅いEV(電気自動車)としては堅調に推移している。 まず、BYD全体の国内販売実績だが、2024年度上半期(4〜9月)には1071台を登録した。1カ月平均は179台だ。シトロエンを少し下まわる程度だが、EV専門の新興メーカーとしては注目される。前年度の上半期に比べると1.6倍に増えた。 そもそもBYDは、車種のラインアップが少ない。アット3とコンパクトなドルフィン、そして先に挙げたシールのみだ。そこを考えても、2024年度上半期(4〜9月)の登録台数が1071台であれば堅調だろう。 このうち、BYDシールは、全長が4800mm、全幅は1875mmの4ドアセダンだ。日本車に当てはめると、スカイラインと同程度のサイズになる。駆動方式は後輪駆動の2WDと4WDを用意した。停車状態から時速100kmに達するまでの加速タイムは、2WDが5.9秒、4WDは3.8秒だから、後者についてはスポーツカー並みに速い。リチウムイオン電池の総電力量は82.56kWhで、1回の充電により2WDは640km、4WDは575kmを走行できる。 BYDシールの価格は、2WDが528万円だ。国から交付される2WDの補助金は45万円だから、2WDの車両価格から差し引くと483万円になる。ちなみにコンパクトなアット3の価格は450万円で、35万円の補助金額を差し引くと415万円だ。この点だけを見ると、シールはアット3に比べて68万円高い。 そこでBYDの販売店に、シールが高い人気を得ている理由を尋ねた。 「シールでは、いまは先着1000台限定の導入記念キャンペーンとして、特別価格を設定しているから33万円安くなる。さらに早期購入特典として、ドライブレコーダー、ETC車載器、メンテナンスパッケージのサービス装着も行っており、これが25万円に相当する。つまり、総額で58万円だから、いまならシールは実質的にアット3に近い金額で購入できる」。 シールの価格はアット3に比べて実質的に68万円高いが、このうちの58万円は、シールの特別価格や早期購入特典によって取り戻せるわけだ。つまり差額は10万円だから、ボディサイズ、内外装のデザイン、動力性能の違いを考えると、いまはシールが魅力的に思える。その結果、冒頭で述べたとおり売れ行きも増えた。

TAG: #シール #販売
TEXT:高橋 優
ドイツ御三家もポルシェも中国では厳しい戦い! もはやプレミアムセグメントでさえ中国のEVメーカーが席巻

ドイツ御三家にプレッシャーをかけるファーウェイ 中国市場におけるEVシフトの急加速によって、じつは日本メーカー以上に打撃を被ってしまっているドイツ御三家について、その苦しい販売動向を詳細に分析します。 今回注目するのが高級車セグメントです。とくに、その高級車セグメントでこれまで圧倒的なシェアを築いていたのが、アウディ、BMW、そしてメルセデス・ベンツというドイツ御三家です。中国人の間では、このドイツブランドという価値は絶対的であり、よってこれまで中国メーカーは、安いガソリン車を作り続けることで販売シェアを伸ばそうとしていたわけです。 ところが、ドイツ御三家が支配していたプレミアムセグメントに地殻変動が起こっています。まず、中国EVメーカーとしてNIOとLi Autoが2014年に設立。NIOは、バッテリー交換というコンセプトを打ち上げて、2024年5月から9月まで、5カ月間連続で月間2万台超を発売することに成功。 Li Autoは、当初はレンジエクステンダーEVのパイオニア的な存在として、とくにプレミアムセグメントを購入検討する富裕層の場合、EVが欲しいが急速充電に対する不安を抱える層が多かったこともあって需要とマッチ。 さらに、富裕層のファミリー層に特化した、高性能シートやエンタメ機能という快適性を追求することによって、これまで中国車が立ち入ることができなかったプレミアムセグメントで急速にシェアを拡大中です。直近の9月は5万台超という史上最高の販売台数を更新しました。 さらにその上、中国の既存メーカーも独自のプレミアムEV専門ブランドを次々と立ち上げています。BYDはDenza。GeelyはZeekr。SAICはIMモーター。BAICはArcfox。ChanganはAvatr。DongfengもVoyahなどを立ち上げています。 さらに、第三勢力として注目を集めているのが、シャオミとファーウェイというテック企業の存在です。 まずシャオミは2024年4月からSU7の納車をスタート。このSU7はプレミアムEVセダンの王者「テスラ・モデル3」を凌ぐEV性能を実現することによって、現在急速に販売シェアを拡大中です。 その上、現在ドイツ御三家に対してもっともプレッシャーをかけてきているのがファーウェイです。ファーウェイはマーケティング戦略をはじめ、ファーウェイストアで車両を販売するまでを包括的に担当するHarmony Intelligent Mobility Alliance、通称HIMAを設立。すでにSeresと立ち上げたAITO、Cheryと立ち上げたLuxeed、BAICと立ち上げたStelato、そしてJACと立ち上げるMaextroという独自ブランドをそれぞれ設立し、販売規模を拡大中です。 現在、月間4万台級の販売規模を実現しており、Li Autoとともに、中国のプレミアムEVセグメントで2強体制を構築しています。 そして、これらの存在によって、ドイツ御三家の販売台数に大きな影響が出始めています。とくに直近の2024年Q3でトップの販売台数を達成したのがテスラの存在であり、前年同期比で30.3%ものプラス成長を実現しています。また、NIOも前年同期比で10.1%ものプラス成長を実現。さらにファーウェイも11.3万台以上を売り上げて、前年同期比で8倍もの急成長を実現しています。そして、Li Autoも前年同期比で45.4%もの急成長を達成し、ドイツ御三家を上まわる販売規模すら実現しています。 その一方で、Li Autoに販売台数で抜かれたドイツ御三家の販売台数は減少傾向です。アウディは前年同期比で18.1%ものマイナス成長。メルセデス・ベンツも前年同期比で12.2%ものマイナス成長。そしてBMWはQ3単体で12.7万台と、ドイツ御三家としてはもっとも販売台数が少なく、ファーウェイの販売台数とも接近。しかも前年同期比30%ものマイナス成長です。

TAG: #ドイツ #中国 #販売

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