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TEXT:TET 編集部
東京都、集合住宅でのEV充電器の購入・設置費用を助成。「令和5年度集合住宅等への充電設備普及促進事業」が開始

東京都は6月1日、令和5年度の集合住宅(マンション)等への充電設備導入に対する助成事業を発表。今年度は集合住宅の機械式駐車場に関する工事費補助等が強化され、マンション居住者にも電気自動車(EV)がグッと身近になりそうだ。 自己負担なしで設置できるケースも EV購入にあたって一番心配なのが充電環境。最新の高級EVでは500kmを超える航続距離があたり前になってきているものの、公共用充電設備がまだまだ整備途上の日本では、やはり毎日自宅で充電できることが重要。ただ、一戸建てなら簡単な工事でコンセントを新設できるが、マンションだと個人が勝手に充電器を設置することはできない。また、最近では都内マンションに多い立体駐車場にも設置できる充電器が登場しているものの、工事費が高く、管理組合では中々新設に踏み切れないという状況にある。 そんな苦境に朗報となりそうなのが今回の助成拡充。今年度から機械式駐車場に充電器を設置する場合の補助金が、1基目は上限171万円/基、2基目以降は上限86万円/基に引き上げられたのだ。助成率については10/10とされ、上限の範囲内なら自己負担は発生しない。 では、この補助金はどの程度負担を低減してくれるのだろう。この点、正確な金額はメーカーから見積もりを取るしかないが、ネット情報だと最新の機械式駐車場対応普通充電器なら、設置費は1基当たり数十万円程度まで抑えられる場合もある模様。ということは、補助金を受給できれば、実質的に管理組合の負担なしで充電器を新設できる可能性がある。もちろん、充電器の新設には工事費以外に充電設備本体の購入費用もかかるが、こちらについても普通充電設備の場合2分の1の助成があるので、自己負担は低額に抑えられる。 >>>次ページ 維持管理費をサポートする補助金も

TAG: #充電 #東京都 #補助金
TEXT:栁 蒼太
フォードのEVがテスラの充電インフラ「スーパーチャージャー」の利用を可能に

5月25日、フォード・モーターは、テスラと提携を結び、米国とカナダのフォードEVユーザーがテスラの急速充電システム「スーパーチャージャー」を2024年から利用できるようにすると発表した。 テスラ独自の充電規格、業界を活性化 既存のフォードのEVには、CCS(Combined Charging System)ポートが装着されているが、テスラが開発した変換アダプターを利用することで、テスラV3スーパーチャージャー(※)にアクセスできるようになる。(対象車種:フォードF-150ライトニング、マスタング・マッハE、Eトランジット) さらに、2025年から発売されるフォードのEVには、NACS充電ポートを搭載し、アダプター不要でテスラのスーパーチャージャーに直接アクセスすることが可能になる。ユーザーは、最寄りの充電器への自動ルーティングやFordPassによるシームレスな課金が利用できるため、既存のフォードが展開する充電ステーションと同様の要領で利用可能で、利便性も確保されている。 (※)ピーク時に1台当たり最大出力250kWを発揮する。充電速度は、最大効率で動作しているModel 3 ロングレンジなら5分で最大75マイル相当の充電が行え、1時間あたり最大1,000マイルの速度で充電することが可能。 最強の充電ネットワークをより強固に フォードは独自の充電ネットワーク「BlueOval Charge Network」を展開している。その規模は膨大で、10,000台以上の公共のDC急速充電器へのアクセスを含む84,000台以上の充電器を備えた、北米最大の公共充電ネットワークだ。これに12,000台以上のテスラ・スーパーチャージャーが利用可能になることで、米国およびカナダ全域で最大の急速充電ネットワークへと進化する。 日本国内では、フォードのEV進出はされていないが、テスラの台数が比較的多いことには共通点がある。今後日本でもテスラの充電器を解放していく潮流が生まれるかもしれない。

TAG: #アメリカ #フォード #充電
TEXT:曽宮 岳大
神奈川県、法人向けに令和5年度「事業用EV導入費補助金」を開始。EVのバス・トラック・軽トラック・タクシーが対象

神奈川県は、県内でバス事業、トラック事業、タクシー事業を行なっている法人・個人事業主を対象に、事業用EV導入のための経費の一部を補助する補助金制度を開始した。 最大で導入経費の1/3まで補助 神奈川県は、人流や物流のゼロカーボン化を促進するため、CO2削減効果が大きい事業用EV(EVバス、EVトラック、EV軽トラック、EVタクシー)の導入を促す「神奈川県事業用EV導入費補助金」を展開中だ。 この制度は、神奈川県内でバス事業、トラック事業、タクシー事業を行なっている法人・個人事業主を対象に、EV導入のための経費の一部を、車両により1/3を上限に補助するもの。申請には条件が設定されているので、内容を詳しくみていこう。 まず補助率は、車両により異なり、EVバスとEVタクシーは1/3、EVトラックは1/4、EV軽トラックは定額となっており、いずれも上限額が設定されている。詳しくは下記の一覧表を参照されたい。 また申請可能な台数の上限は、EVトラックは1申請あたり原則5台まで、EV軽トラックは10台までと定められている。 対象は、事業用バス事業、トラック事業、タクシー事業のいずれかを営む事業者が導入するEV(新車)で、いわゆる緑ナンバー、黒ナンバーのみ。個人が購入する自家用EVは対象とはならない。車検証上、自家用・事業用の項目が「事業用」、燃料の種類は「電気」と記載される4輪以上の車両となる。 ローンやリースによる導入も対象に含まれる。なおリースで導入する場合は、補助金の申請はリース事業者が行う。 >>>次ページ EVバス、EVタクシーはEVとわかるラッピングが必要

TAG: #EVバス #神奈川県 #補助金
TEXT:栁 蒼太
メルセデス・ベンツ、他社同セグメントよりも高価格で「EQT」を販売

メルセデス・ベンツは、5月初旬に発表した電気自動車バンの「EQT」と「eCitan」の販売開始を発表した。eCtianは、最初は4,498mmのコンパクトモデルのみの販売で、4,922mmのロングホイールベースモデルは後日発売される予定だ。 都市部の配達・移動をサポート EQT、eCitanともに、都市部のラストワンマイル配達や移動に適したモデルとして設計されており、航続距離は282km(WLTP)、急速充電ステーションにて38分以内に10→80%まで充電することができる(80kWのDCチャージャーを備えた45kWhのバッテリーを充電する)。 また、バッテリー積載などの関係で荷室が狭くなることもなく、従来から販売されているガソリンモデルと同様のコンパクトな外形寸法と広いスペースを兼ね備えている。積載量は、コンパクトモデルの場合、2.9立方メートル、最大積載544kg、ロングホイールベースの場合、3.62立方メートル、最大積載722kgが可能だ。ガソリンモデルのユーザーにとっても魅力的な一台といえるだろう。なお、EQTのサイズは全長4,498mm、全幅1,859mm、全高1,819mm。ロングホイールベースのバリエーションも追加される予定だ。 新車納期を短縮 納期を短縮するために、パッケージオプションが設定されている。EQTの標準装備には、「Advanced Plus」装備パッケージが含まれており、オプションとして「Premium」または「Premium Plus」装備パッケージを注文することもできる。さまざまなコネクティビティサービスを選択することも可能だ。また、前述の装備パッケージに加え、ウィンターパッケージやナビゲーションパッケージも順次追加される予定だ。 「安心」と「気になるライバルとの価格差」 EQT、eCitanともに、4年間のメインテナンスパッケージが付属しており、メーカーの仕様に従ったメインテナンス作業の費用と、16万kmまたは8年までのメルセデス・ベンツのバッテリー証明書が適用される。 なお、価格は、EQTは49,444ユーロから、eCitanのコンパクトモデルは36,220ユーロから、ロングバージョンのスタート価格は37,740ユーロから、eCitan Tourerは39,750ユーロから展開する。ただ、EQTと双璧をなすルノー・カングー E-Techは39,300ユーロからで、技術的に類似している2台の価格差に1万ユーロもの差があるのは気になるところだ。

TAG: #EQT #メルセデスベンツ
TEXT:田中 誠司
EV市場はブルーオーシャン! フォロフライ×丸紅×太陽インキ製造が合同セミナー[前編]

商用EVを日本で開発し中国で生産して輸入するファブレス・メーカー、日本屈指の大手総合商社、そして電子部品基盤用絶縁材料を供給する化学メーカー。それぞれの関係性がつかみにくい3つの企業が合同で報道セミナーを東京・大手町で実施するという。 テーマは「急拡大するEV市場と、需要高まる注目セクション」ということで、一般的なB to Bのマーケティング・イベントならよくあるミックスかもしれないが、自動車分野では珍しい取り組みと言っていいであろうこのセミナーについて本誌編集者がリポートする。 毎年、およそ5兆円の半導体が自動車に消える 冒頭では現在のEVをめぐるスケール感と電子部品について、フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ代表の柏尾南壮氏がゲストスピーカーとして登壇した。 現在、世界の半導体は全体で50兆円市場だという。そのうちスマートフォン用が35%を占め、次にPC用が15〜20%、自動車用は10%でそれらに続くという。 現在、年間に市場に送り出される普通乗用車の数は約1億台。平均的にそれらは1万5000点、ノートパソコンにして5台分の半導体を消費する。 柏尾氏が率いる会社は、電気自動車を購入して細かく分解して研究する事業を手掛けており、講演ではテスラ・モデル3、フォルクスワーゲンID.3、トヨタ・ミライのメイン・コンピューターの比較が示された。 テスラは自動運転機能などに用いるAIに関連するチップが多いのが特徴。VWは多くのメーカーがベンチマークとするだけあり、構成部品を可能な限り少なくした伝統的な考え方の配置だった。メインのチップには日本のルネサスが利用されていた。いっぽう、FCEVのトヨタ・ミライは信頼性を何よりも重視しており、島のような構造部であるメインコンピューターを2系統配置し、片方が故障してももう一方が機能を果たせる回路を採用している。 今後は自動運転がレベル3へ進化するにあたり、ソフトウェアの書き換えに対応する高速な無線機能が必須になり、半導体に求められる能力はさらに高まることが予想される。

TAG: #商用EV #国内ビジネス
TEXT:TET 編集部
欧州で大型トラックのEV化が進む。ダイムラートラックが新型「eアクトロス300 トラクター」を今秋より量産化

ドイツのトラックメーカー「ダイムラートラック」は5月30日(現地時間)、電動トラクターヘッド「eアクトロス300 トラクター」がドイツのヴェルト工場からトルコのアクサライまで約3,000kmにおよぶテスト走行に成功したと発表。今後欧州では、重量物を運ぶトレーラーも電動化が進みそうだ。 最大400kmの航続距離を達成 「アクトロス」はダイムラートラックが、メルセデス・ベンツ・ブランドで販売している大型トラックシリーズだ。日本でも以前販売され、スリーポインテッド・スターをグリルに付けた大型トラックを見掛けたことがある人もいるはず。 eアクトロスはその名の通り、アクトロスの電動版。既に2021年には通常のトラックバージョン「eアクトロス300」(112kWhバッテリー3個搭載)および「eアクトロス400」(同4個搭載)が登場しており、後者の航続距離は最大400kmと長距離輸送もこなす実力を誇る。 パワートレインは2基の電気モーターと2速トランスミッションの組み合わせで、水冷モーターの連続出力は330kW(約443hp)、一時的なピークパワーは400kW(約536hp)と強力そのもの。モーター駆動にもかかわらずトランスミッションを備えるのは、重量物積載時に必要な発進時のパワーを引き上げるためだろう。 今回、テスト走行の成功が発表されたトラクターヘッドは、通常のトラックに次ぐeアクトロスの新たなバージョンとして、現在開発が進行中のもの。ダイムラートラックでは本年秋からの量産開始を目指しているとのことで、既に海抜1,800m超を含む高地テストはクリア済みという。今後は同社がトルコに持つテストサイトで耐久試験に挑む予定だが、その前段階としてプロトタイプのドイツからの移動を、公道テストの機会として活用したというわけだ。 ルートはオーストリア、スロベニア、クロアチア、セルビア、ブルガリアを経由するもので、途中の充電は一般の充電ステーションでのみ行ったとのこと。トラックで国際長距離輸送を行えるのは欧州ならではの環境だ。 >>>次ページ 日本のEVトラック市場の状況

TAG: #ダイムラートラック #商用EV
TEXT:TET編集部
トヨタが米国でのバッテリーEV生産工場を決定、バッテリー工場に追加投資

トヨタ自動車は、需要が拡大する米国市場でのバッテリーEV(BEV)の供給に向けて、米国におけるBEVの生産工場の決定と、バッテリー工場への追加投資を発表した。 2025年からToyota Motor Manufacturing Kentucky, Inc.(TMMK)において、BEVの3列シート新型SUVを生産開始する。トヨタが米国でBEVを生産するのは初めてであり、同車両には、Toyota Battery Manufacturing, North Carolina(TBMNC:写真)で生産するバッテリーを搭載する予定。 トヨタの北米統括会社であるToyota Motor North America, Inc.(TMNA)と豊田通商は、今後のバッテリーの需要増を見据え、将来の拡張に備えた土台づくりとして、現在建設中のTBMNCに、21億ドルを追加投資し、インフラ整備を進めることを決定した。今回の発表で、TBMNCへの総投資額は59億ドルに達した。TBMNCは、拡大する電動車の需要に必要なリチウムイオン・バッテリーを生産・供給する。 TMNAの小川哲男CEOはこう述べている。「カーボンニュートラルの実現に向け、できる限り早く、できる限り多くのCO2排出量を削減することを目指してまいります。この目標を達成するためには、お客様のニーズを満たす電動車のラインナップを提供する必要があります。米国初のトヨタ単独の車両生産拠点であるTMMKと、最新の工場であるTBMNCが、電動車のラインナップを拡げるため、BEVとバッテリー生産を開始し、未来に向け走り出すことを楽しみにしております」 トヨタは米国において、トヨタとレクサスの両ブランドで22種類の電動車を提供しており、過去2年間で米国での事業に対して80億ドル以上を投資してきた。 グローバルでは、フルラインナップメーカーとして、これまで累計2,300万台以上の電動車を販売してきた。2025年頃までには、グローバルで販売する全車種を、電動専用車もしくは電動グレード設定車とする予定。2026年までに、年間150万台のBEV生産を基準としてペースを定め、10モデルの投入を計画する。さらに2030年までに約5兆円を投資することを公表している。 トヨタは、できる限り早く、できる限り多くのCO2排出量を削減していくために、あらゆる国と地域における様々なニーズにマルチパワートレインで柔軟に対応し、できる限り多くの選択肢を提供していくとしている。

TAG: #アメリカ #バッテリー #工場
TEXT:岩尾信哉
シトロエンのシティコミューターEV「AMI(アミ)」 バギー風限定車「My Ami Buggy」が再発売

現在はステランティス・グループ傘下にあるシトロエンが、2019年にコンセプトカーとして登場させた、電気自動車(EV)のシティコミューター「AMI」。2020年にオンライン発売された際には、デザインなど独創的なコンセプトを変えることなく量産モデルとして表れたことに驚かされたものだ、 シトロエンは2022年に「My Ami Buggy Ultra-Limited Series」と呼ばれるスペシャルモデルを、欧州を中心にインターネットで50台限定で販売。人気を博したことを受けて、去る5月23日に「My Ami Buggy」の第2弾の販売を発表した。 コンセプトカーから生まれた「Ami」 前後対称の個性的な外観を特徴とする超小型EV「AMI」をベースに、冒険心あるいはレジャーを楽しむ遊び心をくすぐるような限定車である「My Ami Buggy」。そんな個性的なモデルを生み出すシトロエンの感性には脱帽するしかない。 成り立ちからして充分個性的といえる「AMI」の内容をおさらいしておくと、「AMI」の標準仕様のボディサイズは全長2,410mm、全幅1,390mm、全高1,525mm、ホイールベース1,728mmと、コンパクトさと四角いキュートなスタイリングが際立っている。 軽自動車の規格(全長3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2.0m以下)と比べても、全長で約1m短く、全幅では約10cm下回ることになる(AMIの乗車定員は2名)。車両重量は485kgに抑えられ、最小回転半径は3.6mと取り回しにも優れている。 個性を主張するのは外観だけではなく、標準仕様の大きな特徴はドアの装備方法にある。運転席側のドアは後ろヒンジの前開き、助手席側は前ヒンジの通常の開き方となる。左右のドアを共通化することでコスト削減を図っているのだから、かなり大胆な設計といえる。 シティコミューターとしての位置づけ 「AMI」のパワートレインは、最高出力6kW(8.2ps)のモーターによって前輪を駆動する。容量5.5kWhのリチウムイオン・バッテリーはフロア下にレイアウトされる。バッテリーの総容量は5.5kWh。車両重量が450kg、バッテリーを含む場合は480kgとされ、一充電航続距離は約75km走行可能。充電は交流の普通充電のみ。フランスでは欧州規格の220Vのコンセントを用いて、ほぼ空の状態から約4時間で満充電となる。 インテリアでもスマートフォンをモニターとして使用しつつ情報を入手するなど、使い勝手の手軽さを突き詰めた仕様といえる。 超小型EVである「AMI」はフランスなら14歳以上、ヨーロッパの多くの国では16歳以上、上限77歳以下なら免許なしで運転可能な「クワドリシクル」と呼ばれるカテゴリーに当てはまる。 「AMI」が属するEUの車両規格である「L6e」では、モーターの出力が上記のように6kW(定格主力4kW)以下、最高速度は45km/h以下に制限されている(高速道路の走行は不可)。車重は425kg以下(バッテリーの質量を含まず)とされる。 「AMI」は、欧州の11ヵ国で販売され、2020年4月の発売以来、5月末時点で3万5000台以上を販売しているという。

TAG: #コンパクトカー #シトロエン
TEXT:TET 編集部
トヨタ、定置用蓄電池システムを開発。東京電力ホールディングスなどとコラボし、秋田県で実証実験を開始

トヨタ自動車と東京電力ホールディングスは5月29日、両社の蓄電池技術を融合した定置用蓄電池システムを開発したと発表。本年秋頃より、トヨタ系商社の豊田通商および豊田通商の子会社で風力・太陽光発電事業を行うユーラスエナジーホールディングスとも連携し、秋田県鹿角市に立地する大規模風力発電所「ユーラス田代平ウインドファーム」において実証実験を開始するとのことだ。 拡大が見込まれる蓄電池市場 今回両社が実証実験に取り組むのは、蓄電池を直流電源として接続し電力系統や各種電気機器に交流電力を供給する「PCS」と呼ばれる設備と、複数台の電気自動車用バッテリーを組み合わせたシステム。カーボンニュートラル達成のためには利用拡大が必須の再生可能エネルギーだが、天候等に左右される風力発電や太陽光発電はどうしても発電量が不安定になりがちだ。 ただし、一旦発電した電力の一定量を蓄電池に蓄え、電力需要に応じて随時取り出すことが可能になれば、課題の多くが解決する。そのため、東京電力を始めとする電力会社にとって、大容量でコストが安く、効率に優れた蓄電池システムの開発は達成したいテーマのひとつなのだ。 一方、トヨタなど大手自動車メーカーは、既に電気自動車用バッテリーで様々なノウハウを蓄積しており、蓄電池技術については一日の長がある。さらに、自動車メーカー自身にとっても、電気自動車を廃車にする際などに発生する使用済み車載用バッテリーの処理は大きな課題。特に、今後電気自動車が広く普及していけば、大量の使用済みバッテリーが自動車メーカーの手元に残ることとなるから、蓄電池システムでのリユースを含め、その有効活用については今から見通しを付けておきたいところだろう。 こうした両社のニーズが一致して実現したと見られる今回の実証実験では、トヨタの電気自動車に採用されている車載用バッテリーや制御部品と、東京電力の系統接続に関する知見とを融合して、定置用蓄電池システム(1MW/3MWh)を共同開発。このシステムを設備容量7,650kWを誇るユーラス田代平ウインドファームに設置し、蓄電池の充放電に関する最適運用や電力系統の安定化に資する制御などを数年程度かけて確認していく。 >>>次ページ 車載用バッテリーのリユースも視野に

TAG: #SDGs #バッテリー #リユース
TEXT:栁 蒼太
BMW新型電気自動車「i5」詳細&「5シリーズ」大幅アップデートに迫る

5月24日、BMWは8代目となる新型「5シリーズ」を発表した。すでにTHE EV TIMESでもニュースにて基本的な情報を投稿したが、本記事では本国の発表を元に、新型5シリーズの車両をさらに詳細に見ていきたい。 ボディの大型化+力強いフロント まずは、エクステリアに注目をしたい。先代モデルと比較すると、全長が97mm拡大して5,060mm、全幅が32mm拡大して1,900mm、全高が36mm拡大して1,515mmとなった。また、ホイールベースは20mm延長されて2,995mmとなり、全体的に大型化が進んだ。 フロント部は、ツイン・ヘッドライトとキドニー・グリルが特徴的だ。ほぼ垂直に配置されたライトは、ターン・インジケーターとデイタイム・ドライビング・ライトとしても機能し、前方に大きく張り出したキドニー・グリルは、フレーム部が光る 「Iconic Glow」(オプション装備)が採用されている。 シンプルな内装へ 続いて、コクピットに目を向ける。全体的に、入力をデジタル化したため、先代モデルと比較してボタンや操作部の数が大幅に削減されている。コクピット正面の「BMWカーブドディスプレイ」は、12.3インチのインフォメーションディスプレイと、フレームレスガラス仕上げの14.9インチのコントロールディスプレイによって、フルデジタルスクリーンを構成する。 ステアリングホイールの下部はフラット化されたり、コントロールパネルやセンターコンソールのセレクターレバーに触覚フィードバックが搭載されたりするなど、ドライバーが操る部分のパーツが一新されている。また、新型7シリーズにも採用された「BMWインタラクション・バー」をオプション装備で用意している。これは、ダッシュボードの横一杯に広がるバー部分が、シチュエーションに合わせてライティングを変化させる装備だ。 初のフル・ヴィーガン・インテリア 新型5シリーズの内外装の刷新はこれにとどまらない。ブランド初となるフル・ヴィーガン・インテリアを標準装備する。これは、シート、ダッシュボード、ドアパネル、そしてステアリングホイールにレザー調の素材である「Veganza」を採用したものだ。オプション装備として、複数のバイカラー・バリエーションのBMW Individual メリノ・レザー張りが用意されている。 トップモデルは i5 M60 xDriveを設定 モデル展開では、48Vのマイルドハイブリッドを備えるガソリンおよびディーゼル仕様やPHEV仕様も用意されるが、新型5シリーズ・セダンの最上位グレードは7シリーズ同様に第5世代のBMW eDriveテクノロジーを搭載したBEVで、「i5 M60 xDrive」が用意されている。 トップモデルのBMW i5 M60 xDriveは全輪駆動モデルで、最大442 kW/601hpの出力を誇る。Mスポーツ・ブーストまたはMローンチ・コントロール機能を作動させると、発生するシステム・トルクは最大820Nm(605lb-ft)になる。これにより、BMW i5 M60は0-100km/h加速3.8秒を記録する。最高速度はバッテリーシステムの都合上230 km/hに制限される。WLTP値は、455~516 km(282~320マイル)。 もうひとつのBEVラインナップである「BMW i5 eDrive40」はシングルモーターのFR(後輪駆動)で、最高出力250kW/340ps、最大トルク430Nm(317lb-ft)、0-100km/h加速は6.0秒、最高速は193km/hとなる。WLTP値は、497~582 km(309~361マイル)。 なお、両モデルともバッテリー容量は、81.2kWhだ。 効率的な電気モーターのシステムに加えて、最新版のアダプティブ・リキュペレーション(回生機能)、ヒートポンプ技術の組み合わせが、長い航続に貢献する。また、「MAX RANGE」機能によって、パワーと速度を制限し、快適機能を停止することで、航続距離を最大25%伸ばすことができる。 BMW i5のコンバインド・チャージング・ユニット(CCU)は、標準で最大11kW、オプションで最大22kWの出力でAC充電が可能だ。高電圧バッテリーは、最大205kWの出力で直流充電が可能で、約30分で10%から80%まで充電することができる。

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連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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