新型モーターはポルシェにも提供される
2023年11月7日、アウディはハンガリー北西部を拠点とするジェール工場において、PPE(プレミアム プラットフォーム エレクトリック)用電気モーターの生産を開始すると発表した。
PPEとは、アウディが主導となってポルシェと共同開発したEV用の車台(プラットフォーム)のこと。このPPEを採用する最初のモデルが、新型Q6 e-tronだ。SUVとSportbackが設定される新型Q6 e-tronは、アウディの電動化とデジタル化における次の大きなステップを体現するとされ、800Vの主電源システム、パワフルで効率的な電気モーター、革新的なバッテリと充電管理システム、新開発の電子アーキテクチャーを備える。
なお、新型Q6 e-tronの車両本体は、ドイツのインゴルシュタット工場で生産されるが、搭載される新開発の電気モーターが、アウディ ハンガリーのジェール工場で生産される。このジェール工場では、新設された1万5000平方メートルの生産エリアで、ステーターおよびトランスミッションコンポーネントとともに、PPE用のアクスルもこの場所で組み立て、製品テストも行われる。
AUDI AG最高経営責任者(CEO)のゲルノート デルナーは、次のように述べている。
「ジェールは、PPE用の非常にコンパクトで効率的な電気モーターを生産するにあたり最適な場所です。高度な資格を持つ現場のチームは、2018年からすでに40万基以上の電動システムを生産してきました。これは非常に貴重な経験となっています」
「さらに、ジェール工場では、Audi Q6 e-tronシリーズが搭載するPPE用電気モーターとともに、Audi Q8 e-tronの駆動システムも生産しています。そして、フォルクスワーゲングループのMEBeco(モジュラーエレクトリックドライブツールキット)ベースの車両に使用する、電気モーターの生産エリアも現在増設中です」
この工場で生産された製品は、アウディだけでなくポルシェ ブランドにも供給される。そのため、アウディは、PPE用の電気モーターを生産するために、3つのラインを新設した。ステーターの生産ラインには28の作業工程があり、トランスミッションコンポーネントの生産ラインには15の工程がある。
ひとつのアクスルを組み立てるには190の個別の工程が必要だが、ジェール工場では、約700名の従業員が生産に携わり、これらのコンポーネントを量産するため、従業員は3交代で、1日あたり最大2000基のPPE用電気モーターが生産可能だという。
2012年から2016年までアウディ ハンガリーで車両生産担当マネージングディレクターを務め、現在はAUDI AG生産およびロジスティクス担当取締役のガード・ウォーカーは、次のように話した。
「ジェール工場における生産開始は、Audi Q6 e-tronの生産増強における重要な節目となる。私は個人的な経験から、アウディ ハンガリーのチームがいかに熱心に仕事に取り組んでいるか、そして世界最大のエンジン工場が、さらに体系的に電動化を進めていることを知っている。駆動システムおよびネットカーボンニュートラルな生産に関する膨大なノウハウにより、ジェール拠点はアウディの世界的な生産ネットワークにおいて不可欠な存在となっている」
アウディは既存の工場の近代化、デジタル化の変革を進めており、ジェール工場での生産は、2020年以降すでにネットカーボンニュートラルなものになっている。この拠点の屋根にはヨーロッパ最大規模の太陽光発電システムが設置されているほか、産業用地熱エネルギーを使用しているハンガリー最大の工場でもある。
また、アウディは輸送および物流会社のDB Cargoと協力して、ハンガリーのジェール工場で生産されたPPE用の電気モーターを、ドイツのインゴルシュタットまでネットカーボンニュートラルな方法で輸送している。