EVヘッドライン
share:

「充電規格戦争」終了の“切り札”か……エネチェンジ、ワイヤレス充電導入の検討を開始[2023.08.30]


TEXT:福田 雅敏、ABT werke
TAG:
ワイヤレス充電システム(photo=ワイトリシティ)

EV用充電インフラ大手がワイヤレス充電の普及に取り組む覚悟
「ユーザーがいつでもどこでも手軽に充電」の根幹を見失うな

【THE 視点】エネチェンジは8月23日、日本国内でのEV用ワイヤレス充電の導入を検討すると発表した。2022年7月に出資をした米ワイトリシティのシステムを使用する。

エネチェンジのEV充電サービス「EV充電エネチェンジ」は、現在、日本最大の普通充電(6kW)ネットワークを有している。2027年までに最大300億円を投じ、国内で3万台のEV用普通充電器の設置を目標に掲げている。

ワイヤレス充電は、EVユーザーの作業負担をほぼない状態にすることができる。EVユーザーの利便性を重視するエネチェンジは、ワイトリシティへの出資を通じて、既存および新規設備での実証実験を支援していくという。

ワイトリシティの充電システムは、地上に設置した充電パッド上にEVを止め、EVの車体下部に取り付けられた受電コイルを介して充電するというもの。磁気共鳴により作動するので、特別なケーブル類の接続がないのはもちろん、機器同士が触れることなく高効率な電力転送を行なえる。

充電パッドは、住宅や車道のほか立体駐車場用などの地上設置型と、駐車場や縁石の舗装に埋め込む地中設置型が用意されている。位置の許容範囲が広く、車両をパッドの真上などに完全に合わせる必要はない。トラックやバスにも対応できるという。

ワイヤレス充電については、先日のデイリー(6月29日)でもお伝えしているが、EV普及のうえでは欠かせない存在である[詳細はこちら<click>]。

ワイヤレス充電も、急速充電と同様に相互互換性(規格)の問題があったが、今やワイトリシティが世界標準になりつつあるようだ。多数の特許も取得済みでSAE、ISO、GB規格もクリア済み。ドイツの電子機器メーカーのシーメンスもワイトリシティに出資している。

日本最大の普通充電のEV普通充電器ネットワークを持つエネチェンジが、ワイトリシティへの出資並びに業務提携した意味は大きい。このワイヤレス方式が日本の標準的なシステムとなれば、EV用の普及をより促せるのではないだろうか。

急速充電器のプラグは、日本の「CHAdeMO」やテスラの「NACS」といった規格が乱立し、ユーザーにとっては不要な覇権争いが繰り広げられているように見える。ワイヤレス充電が普及すれば、そのような混乱も防げるのではないだろうか。ユーザーから見れば、「簡単に充電できること」が最重要だということを忘れてはならない。

ワイヤレス充電の普及にあたっては、車両側への機器取り付けの問題もある。しかしワイトリシティの機器は、OEM供給に対応できるという。多くの自動車メーカーが開発と普及に協力することを期待する。
(福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)

★★メルセデス・ベンツ、最高出力400kWの充電ステーションを今年秋に開設……独マンハイム/米アトランタ/中国成都にて10月から稼働、2024年末までに世界2,000ヵ所以上に充電ネットワークを展開へ

★★ポールスター、「ポールスター2」を改良(本国発表)……航続距離が最大22%向上、充電速度も34%スピードアップ

★★三菱自動車、「ミニキャブ・ミーブ」が最大97万2,000円の補助……「脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金」の対象、事業用に限る

★日置電気、本社工場(長野県上田市)と周辺公道にて自動運転EVバスの実証運行を開始……マクニカと協力し「ナビヤ・アルマ」を運行、9月8日(金)〜9日(土)は一般市民も乗車可能

★ステランティス、米国内2,600ヵ所のディーラーにEV用充電器を導入へ……チャージ・エンタープライズ社が充電網を整備

★二輪用品メーカーのデイトナ、電動キックボードの取り扱いを開始……オリジナルモデル「デイトナ・モビリティDK01」を開発、クラシカルな自転車風のデザイン

デイリーEVヘッドライン[2023.08.30]

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
いすゞがピックアップトラック「D-MAX」にBEVを用意! バンコク国際モーターショーでワールドプレミア予定
BEV大国の中国で販売が失速! ここ数年でPHEVのシェアが伸びていた
中国市場でファーウェイのEVが爆発的人気! ライバルを凌ぐ激安っぷりと超豪華内装のAITO M9とは
more
ニュース
マセラティのBEVシリーズ第3弾はカテゴリー最速のオープンモデル! 「稲妻」の名が与えられたグランカブリオ・フォルゴレ誕生
BEV販売台数が100万台に到達! MINIは新型予告! BMWグループ「2024年第1四半期の販売台数」を発表
ミラーとタイヤとホイールをとことん突き詰めたら600kmオーバー! アウディEV史上最長の航続距離を実現するパッケージが登場
more
コラム
爆速充電と超豪華な内装を引っ提げたミニバン「MEGA」が爆誕! 驚きの中身とひしめくライバルとの比較
テスラが日本で全車30万円一律値下げ! 補助金が制限されるもお買い得度ではモデルYが圧倒!!
イケイケだったテスラに何があった? イーロンマスクが1.5万人規模のリストラを発表!
more
インタビュー
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
災害に強いクルマは「PHEV+SUV+4WD」! 特務機関NERVがアウトランダーPHEVを選ぶ当然の理由
more
試乗
EV専業の「テスラ」とEVに力を入れる従来の自動車メーカー「ヒョンデ」! モデルYとコナを乗り比べるとまったく違う「乗りもの」だった
誰もが感じる「ポルシェに乗っている」という感覚! ポルシェはBEVでもやっぱりスポーツカーだった
佐川急便とASFが共同開発した軽商用EV「ASF2.0」に乗った! 走りは要改善も将来性を感じる中身
more
イベント
中国市場のニーズに合わせて開発! 日産が北京モーターショー2024で新エネルギー車のコンセプトカーを出展
レース前に特別に潜入! フォーミュラEに参戦する日産チームのテント内は驚きと発見が詰まっていた
日産がフォーミュラE「Tokyo E-Prix」開催前スペシャルイベントを開催! 六本木ヒルズアリーナに1夜限りのサーキットが出現
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択