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フォルクスワーゲン ID.2all コンセプトのフロントビュー
TEXT:小川フミオ
フォルクスワーゲンID.2allは「大衆のためのBEV」に。300万円台のプライスタグを実現か【前編】

フォルクスワーゲンが発表した最新のコンセプトカー、ID.2all(アイディーツーオール)は、ポロのBEV版とも評される電動コンパクトハッチバック。450kmという充分な走行距離を確保する一方で、邦貨にすると300万円台半ばという挑戦的な価格設定を標榜する“大衆BEV”は、果たしてどのようなクルマなのか。自動車ジャーナリスト・小川フミオが同社経営陣に直撃した。前後編に分けてお届けする。 全長4mの電動FFコンパクトハッチ 右から、T.シェーファーCEO、セールス/マーケティング/アフターセールス担当のI.ラベー取締役、デザインのA.ミント、技術開発担当K.グリューニッツ取締役   フォルクスワーゲン本社が、ID.2all(アイディーツーオール)なる、コンパクトBEVのコンセプトカーを発表した。 2023年3月15日に独ハンブルクで開催された発表会でお披露目されたのは、全長4050mmと比較的コンパクトなID.2all。 スタイリングは、従来のポロやゴルフに連なるイメージで、エンジンを載せたハッチバックといっても不思議でない。 注目すべきふたつめのポイントは、バッテリーを床に敷き詰めたMEBというBEV用プラットフォームを使いつつ、これをフロントモーターの前輪駆動へと転換したこと。 従来のID.シリーズのMEBプラットフォームは、リアモーターの後輪駆動。文字通り180度の転換だ。 モーターの出力は166kW(225ps)で、満充電での走行距離は450kmとされている。 これらはすべて、フォルクスワーゲンのこれからの製品戦略と関連している。 VW乗用車部門のトーマス・シェーファー最高経営責任者(CEO)は、発表会において下記のように語った。 「フォルクスワーゲンは、2025年にヨーロッパ市場向けのID.2allの量産モデルを発表する予定です。その目標は、2万5000ユーロ以下(邦貨約353万円※2023年3月28日時点の為替レートで換算)のベース価格を実現することです」 ID.シリーズのボトムラインを形成しているID.3(2022年モデル)が約4万4000ユーロだから、大きな差がある。欧州メディアでたちどころに話題になったのも簡単に理解できる。 eモビリティを“民主化”する ロワーボディにはモジュラーバッテリーが敷き詰められ、そのうえにアッパーボディが載るが、車高は1530mmに抑えられている   クリーンな造型と、直感的な操作系を特徴としたダッシュボード   「私たちは、フォルクスワーゲンを真の“Love Brand”(愛されるブランド)にするという明確な目標を持って、会社を迅速かつ根本的に変革しています」 愛されるとは、べつの言い方をすると、多くのひとが乗るかつてのフォルクスワーゲンのような求心力を取り戻すこと。 ID.2allの発表会場には「FOR THE PEOPLE」なるスローガンがいたるところに掲げられていた。 シェーファーCEOが壇上に上がるときには、初代ビートルや、タイプ2などとも呼ばれるマイクロバス、初代ゴルフ、カルマンギアタイプ1カブリオレ、といった歴代モデルがステージに登場。 フォルクスワーゲンが社名のとおり「ピープルズカー」として、いかにユーザーの生活を豊かにしてきたか。さらに最新のゴルフRにいたるまで、実車が出てきて、それを実感させてくれた。 ID.2allという車名にこめられた意味も、「all」イコール「すべてのひと」なのだ。シェーファーCEOは言う。 「ID.2allは、私たちのブランドが目指すべき姿を示しています。つまり、私たちはお客様に近い存在となり、最高のテクノロジーと素晴らしいデザインを備えたブランドになります。私たちは、eモビリティを民主化するために、変革を迅速に実行しています」 民主化とはあまり耳慣れない言葉だけれど、要するに、親しみやすい、あるいは、買いやすい、という意味なのだ。

TAG: #ID.2all #コンパクトカー
MOIAプラス6の外観
TEXT:小川フミオ
フォルクスワーゲンの「謎の電動バス」の正体とは?eモビリティサービスの最前線に迫る

フォルクスワーゲンは、BEVを活用したモビリティサービス分野にも積極的に参画する姿勢を示している。2016年にはライドシェアサービス「MOIA(モイア)」をスタート。ハンブルクやハノーファーでは、VW製電動マイクロバスがひとびとの移動を助ける姿が日常になりつつある。彼らは何故モビリティサービスに注力するのか。現地でサービスを体験した自動車ジャーナリスト・小川フミオが、その背景をリポートする。 ハンブルク市内で見かけた謎の車両の正体は MOIAプラス6(左)と、試験走行が始まる自動運転のID.Buzz AD   クルマ椅子での移動のために開発されたVW商用車「Eクラフター」ベースのMOIAの車両   いわゆる「eモビリティ」を活用したサービスには、いろいろなジャンルがあるが、いま、フォルクスワーゲン本社が進めているのは、BEVのマイクロバスを使ったオンデマンド型ライドシェア。 2023年3月に、VWの新型コンパクトBEV、ID.2allの発表会のためハンブルクを訪れた際、「MOIA」と名づけられたこのライドシェアサービスを体験するチャンスをもらえた。 MOIA(モイア)は、2016年にスタートしたVWの事業で、BEVとさまざまなデジタライゼーションを組み合わせたe(電気)モビリティサービスの尖兵といえる。 注目点は、VWがMaaS(Mobility as a Service)もしくはTaaS(Transport as a Service)のプロバイダーになることだ。 eモビリティサービスは、自動車メーカー各社が可能性をさぐっている分野。あたらしい収益源であり、バッテリーを含めて開発や製造におけるBEVのコストシェアのためにも重要なのだ。 VWを例にとれば、「ハンブルクやハノーファーで運用しているMOIAのサービスを、欧州の諸都市や、北米でも展開する計画です」と、MOIAを担当するVW商用車部門のクリスチャン・ゼンガー取締役は説明する。 そもそも、ハンブルク市内のホテルの部屋の窓から道路を見下ろしていたとき、ブロンズ色の車体にブラックルーフのマイクロバスが走行しているのを、ちょくちょく見かけた。 あれはなんだろう、と思っていたところ、それがライドシェアのためにVWVC(VWの商用車部門)が開発した、バッテリー駆動のマイクロバスだった。 企画から開発までたった10ヵ月で完成 ヘッドレストレイントで頭部を覆うようにするだけで個室にいるような気分が高まる   ドライバーの橫には大型スーツケースも楽におけるスペースが   「MOIAプラス6」と名づけられた専用車両。全長は6mで、約30分で80%まで充電可能という。でも、バッテリー容量やモーターなどの詳細は伏せられている。 スライドドアから車内に入ると、ドライバー以外に6名分のシートがそなわっている。シートのヘッドレストレイントは乗員の頭を隠すようなデザインで、けっこう落ち着く。 天井高が高くて、中央が広めの通路。ステップを使って乗り込めるし、ほぼ背をのばしたままのウォークスルーが可能だ。 「企画から開発まで10ヵ月で仕上げました。たいへんな作業でしたが、スピードこそ、このようなビジネスでは大切だと理解しています」(広報担当者) 現在ハンブルクでは、市内にいくつものルートが設定されていて、スマートフォンを使って車両を呼び、かつそのスマホが切符がわりとなる。ドアのところのセンサーが機器を認識すればドアが開く。 料金は、「いまは1キロ1ユーロが基本で、時間帯や利用者数によってある程度変動します。将来はもっと料金を下げたいと考えています」とゼンガー取締役。

TAG: #VWグループ #ドイツ #ライドシェア
TEXT:福田 雅敏
マリン・レジャーにも電動化の波、ホンダ・ヤマハも独自技術で出航……現役EV開発エンジニアによる「ジャパンインターナショナルボートショー2023」レポート[THE視点]

「ジャパンインターナショナルボートショー2023」(一般社団法人 日本マリン事業協会)が3月23日(木)~26日(日)にパシフィコ横浜(横浜市西区)を中心に開催された。今回は自動車ではないが、船舶にも電動化の波が押し寄せていると聞いた。実際に会場でユニークな電動船舶を見つけたのでレポートする。 電動船の販売企業が出展、メーカーにより違いも まずは、電動船を唯一展示していたのが友池産業のブースだ。33.87kWhのリチウムイオン・バッテリーを2個(4モジュール構成×2個)船内前後に搭載し、電動船外機を2基搭載している。 船外機のカバーに115と書かれた数値がそのまま馬力値で、その船外機が2基がけなので230psということになる。モーターの冷却は海水を吸い上げて実施しているという。バッテリーの充電は三相交流(AC)の200Vの普通充電のみだ。 次に見たのはEV船販売(株)。社名そのものの事業を展開する企業だ。実機の展示はなくパネルでの紹介だったが、紹介されていたのは総重量19トン(免許の関係)の2艇。顧客の要望に合わせて製作するという。 紹介されている船のうち1艇でユニークに感じたのは、大阪で既に実働している長さ21mクラスのもの。「トルキード」社製の50kWのモーター2基、「BMW i3」のバッテリー(40kWh)を2基、そして補助電源として発電機を搭載しているとのこと。ちなみに充電は、EVの急速充電規格「CHAdeMO(チャデモ)」にも対応するという。 大手ホンダ・ヤマハも出展、「ホンダ・モバイル・パワー・パック :e」は船舶にも 会場で一番大きなブースを構えていたのがヤマハ発動機である。ボートや船外機がずらり並ぶ中、次世代電動操船システム「HARMO(ハルモ)」が展示されていた。 「ハルモ」は電動推進ユニットとステアリングユニットを統合したシステムとなる。ステアリングユニットは、スクリューが左右に動き向きを変えるもの。48Vのバッテリーを船内に搭載し、約6psのモーターで小型船を動かすという。2020年8月から北海道小樽市の小樽運河クルーズにて実証運航を行っている。 次に大きなブースを構えていたホンダでは「小型電動推進機コンセプト」を「ジャイロ・キャノピー :e」とともに展示していた。 「小型電動推進機コンセプト」は、「スマートエネルギーWeek 春」などでもレポートした脱着式可搬バッテリー「ホンダ・モバイル・パワーパック :e(MPP)」で駆動するというもの。 船内に「MPP」を2個搭載し「小型電動推進機コンセプト」に電力を供給する。電動なだけに非常にコンパクトかつスリムで、最高出力3.7kWのモーターで小型ボートを動かせる。 今回も感じたが、ホンダが「MPP」にかける意気込みは相当なもので、陸から海にまで及ぶ。ヤマハの「ハルモ」も電圧が一致することから、ヤマハの推進機にもパックを使用できるのではと思った。是非、コラボレーションして欲しい。

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TEXT:岡崎 宏司
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第8回:e-208GTは楽しい!生活で魅力が増していくEV。

プジョーe-208GTのある生活は満ち足りたものと岡崎さんは言います。造形、面構成を際立たせるブルーに、十分な航続距離に、充電も自宅できる使い勝手の良さに、その魅力は増すばかりです。 プジョーのブルーにゾッコン わが家のEVは「プジョーe-208 GT Line」に決まった。で、最後に残ったのはボディカラーだが、これもすぐ「プジョーブルー」に決まった。 昼でも夜でも、いい光が当たっていたりすると、思わず「いい色だなぁ!」と見惚れて立ち止まってしまう。 買ってから26ヵ月経った今でも、こうしたリアクションは続いている。 鮮やかで艶やか、華やかで嫌味なく、誰もが「いい色だな!」と思ってくれるはず……。手前味噌かも知れないが、プジョーブルーはそんな色だと僕は思っている。 フロントはライオンのかぎ爪、リアはかぎ爪が引っ掻いた跡…特徴的なランプのデザインは、そんなイメージから生まれたものと思うが、これも気に入っている。 整ったプロポーションと優しい面構成に、ライオンの爪が強烈な個性を組み込んでいる。 「日常的な使い勝手が良く、気軽に付き合えて…でも、そこそこ気の利いた洒落っ気もほしい」……そんな、わがままな要求を叶えてくれている。 EVモデルは、グリルもライオンのエンブレムも、透明感ある美しい水色で塗られている……これもお気に入りだ。 お気に入りといえば、もうひとつ付け加えておきたいのは「ガラスコーティング」。ディーラーの担当者から勧められてやったのだが、これはよかった。すごくよかった! 美しいプジョーブルーに、さらに深みと艶やかさが加わり、同じ色の208と並んでも存在感はまるで違う。それでいて嫌味はない。 わが家のe-208GTは、街でもけっこうな視線を受けるが、その大きな理由のひとつが、ガラスコーティングにあるのは間違いなさそうだ。 魅惑の色を纏うプジョーがEVとわかると…… そう……買った当初、ご近所の方々からも、「いい色ですねー!」とまず言われた。そして、その後で、「エンジンの音が聞こえませんけど、電気自動車ですか!?」と聞かれることが多かった。 ご近所は高齢世帯が多く、コンパクトやミディアム系のメルセデスやBMW、アウディを所有される方が多いのだが、僕のプジョーがEVだとわかると、いろいろな質問をしてきた。 いちばん多かったのは「充電は面倒じゃないですか?」という質問。それに対して僕は間髪入れずに「楽ですよ!」と答えた。 事実、僕の充電作業は「まったく楽!」だ。わが家のガレージの充電器は200V/3kW。充電ケーブルと一体になった簡易な壁掛け式で、23年前(2000年)に設置した。 日産が二人乗りのスタイリッシュなコンパクトEV、ハイパーミニを世に送り出した時、長期テストのために設置したものだ。 200V/6kWの設置も考えはした……が、わが家の走行環境を考えたら、3kWでも十分間に合うと思い、交換しなかった。 日常生活で満ち足りるe-208GT つまり、日常的な走行距離が極めて短いということ。日々通うショッピングセンターまでは往復3kmほどだし、時々行く老舗百貨店までは往復15kmほど。 たまに、気が向いたらランチしに行く横浜のホテルにしても往復30km、銀座のレストランまで行っても往復55kmほどでしかない。 仕事も「好きなものだけ」は続けているが、長距離を移動しての取材などなくなった(なくした)。オンラインで済む仕事も多い。 そんなことで、50kWhの電池を積むe-208GTが可能とする走行距離で、足りないことはまずない。 ちなみに、 e-208GTの満充電からの実用走行可能距離は……そうとう電費の悪い冬場(ヒーターは20~30%も電費を悪化させる)でも、150~200km程度はカバーできる。 充電には、基本的に深夜電力(23時~07時)を使っている。3kWで8時間充電すれば、単純計算で24kWhになる。これに冬場の最悪の電費を当てはめても100km程度は走れる。安いし、世のためにもなる使い方だ。 ……つまり、怠惰な生活をしているわが家の場合は、3kW充電でも、1週間に1度程度、夜間電力で充電すれば事足りる。 帰宅した時充電ケーブルを繋ぎ、23時に充電が開始するようスマホのアプリを設定。そして翌日、家を出る時に充電ケーブルを抜く。これですべて……。実に楽だ。 そんな話をすると、みなさん「羨ましそうな」表情になる。そして「次はEVも候補に入ってくるでしょうね」といった言葉が続く。 ご近所に、EVを買った人はまだいない。でも、数年内にはきっと出てくるだろう。そしてEV話で盛り上がることになりそうだ。 第9回はこちら

TAG: #e-208 #岡﨑 宏司
TEXT:生方 聡
お得な充電カードを探せ [ID.4をチャージせよ!:その10]

自宅に充電設備のない私にとって、急速充電ネットワークはID.4を走らせるために不可欠。それだけに、できるだけ利用料は安くしたい……。ということで、ID.4で利用できるおもな充電カードのコストを比べてみました。 無料特典は1年だけ ID.4 プロ・ローンチエディションを購入してすぐに、「フォルクスワーゲン充電カード 普通・急速充電器併用プラン」(以下、VW充電カード)と「プレミアムチャージングアライアンス(PCA)」に加入したことは[ID.4をチャージせよ!:その3]さっそく補助金を申請! 充電の準備もOKでお話ししました。VW充電カードは、急速充電器だけでも全国に約7,800口ある「e-Mobility Power」(以下e-MP)ネットワークの充電ステーションがカードをかざすだけで利用できるというもの。一方、PCAはフォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェのEVであれば、各ディーラーにある90kW超の急速充電器が利用できます。 ID.4を新車で購入した場合、VW充電カードの月会費7,810円が1年間無料になります。利用料金は、急速充電が1分あたり16.5円、普通充電が同2.75円。なお、月会費には急速充電90分の料金が含まれています。また、PCAはフォルクスワーゲンに設置された90kW超急速充電器にかぎり、毎月60分まで無料で利用が可能。さらに、私が購入した導入記念モデルのローンチエディションは、月額会員プランの入会金と1年分の基本料金が無料になるため、アウディやポルシェでも利用できます。 こうした特典のおかげで、12月から2月までの充電料金は次のようになりました。   VW充電カード PCA 計   充電時間[分] 料金[円] 充電時間[分] 料金[円] 充電時間[分] 料金[円] 12月 302 3,630 200 6,300 502 9,930 1月 272 2,730 98 1,710 370 4,440 2月 329 4,080 104 1,950 433 6,030

TAG: #ID.4 #充電 #節約
TEXT:福田 雅敏
企業同士の協力が新エネルギーを普及させる……現役EV開発エンジニアによる「スマートエネルギーWeek」探訪後編[THE視点]

「スマートエネルギーWeek 春」は、新エネルギーの総合展である。「FC EXPO 水素・燃料電池展」「PV EXPO 太陽光発電展」「二次電池展」「スマートグリッドEXPO」「WIND EXPO 風力発電展」「バイオマス展」「ゼロエミッション火力発電 EXPO」の7つの展示会で構成されている複合イベントだ。今回はその中からEV/FCEVに関連するブースの内容を紹介する。 全固体電池の実用化間近も量産化は先 「スマートグリッドEXPO」では、前編[詳細はこちら]で紹介したホンダのブース以外にもトピックが盛りだくさんであった。 ソリッドバッテリー(全固体電池)ブースでは、最新の全固体リチウム電池が展示されていた(残念ながら撮影は厳禁)。エネルギー密度は、今のリチウムイオン・バッテリーと同程度の200~300wh/kgだが、寿命がリチウムイオン・バッテリーの数十倍あるという。しかし現状は少量での生産体制になるので、量産EVへ搭載されるのはまだ先であろう。 ただ全固体電池の量産が実現できれば、充電時間も早くなるうえEVの電池寿命の心配がなくなり、EVの価値の向上にも大きく貢献する。全固体電池で量産EVを発売すると伝えられているのは日産で、2028年がその元年になる予定である。5年先だが、開発体制などを鑑みても、実際問題としてそれぐらいかかるだろう。 各社が模索する充電への課題 「パワーエックス」は、電気で動き電気を運ぶ電気運搬船「Power Ark 100」の模型を展示した。この性能は航行可能距離100~300km(電力推進のみの場合)で、速度は巡航:10ノット(約18km/h)/最大:約14ノット(約25km/h)。搭載電気容量は222MWh。なんと、100kWhのEVに換算して、2,220台分の容量である! 船はスケールが違う。 シャープエネルギーソリューションのブースでは、「トヨタ・プリウスPHV」に高効率太陽光パネルを張り付けた実証試験車を展示。この太陽光パネルの効率は何と34%以上で、発電能力は860W。1日充電すると、走行距離換算で56.3km相当分を充電できるという。この距離を太陽光で充電できるならば、通勤程度の使用は日中駐車場に置いておくだけで、太陽光の発電のみで賄えてしまうことになる。 パナソニックエレクトリックワークス社のブースでは、太陽光パネルを車庫の屋根に置き、その電気でEVを充電できるものが提案されていた。災害時等で停電になった場合には、住宅への給電能力も備えている。 ベルエナジーのブースでは、EVの電欠時のお助け隊「電気の宅急便」を紹介していた。充電サービスカーの「日産サクラ」にバッテリーを積んで展示。これがあれば電欠時にレッカー移動せずその場で回復できるので安心である。 サンエイ工業では「レイモ」という電池交換式のラジコン式芝刈り機が展示されていた。これなら土手など人が作業しずらい場所でも手軽に作業が行えるうえ静かでクリーンである。 そのほか、エネチェンジが「テスラ・モデル3」とともに6kWの普通充電器を展示していた。 「二次電池展」には、テンフィールズファクトリーが急速充電機を「テスラ・モデルⅩ」とともに展示していた。2月24日の「デイリーEVヘッドライン」でも取り上げた、従量課金型のものである[詳細はこちら]。 ジェイテクトのブースでは、水素燃料電池(FC)を使用したドローンが展示されていた。FCを補助電源装置として活用しているという。今の電動ドローンと比較して60~80分の長時間飛行が可能となるのが特徴だ。 大豊産業のブースでは、EVカーシェアリング「eemo」で使われるEV「FOMM ONE 」が展示されていた。 各社の協力関係で水素エネルギーを普及 「FC EXPO 水素・燃料電池展」では、まずトヨタグループのブースが目立っていた。 トヨタ製の燃料電池(FC)モジュールが展示され、その横には、その燃料電池のセルを使ったBMWのFCモジュールが展示されていた。これは2月に発表されたBMWのSUV「X5」をベースにした燃料電池車「iX5ハイドロジェン」用のもので、今後約100台生産し、実証テストを世界規模で行うと発表されたもの。ブースのスクリーンには、その走行試験のムービーも流れていて、雪の中でドリフト走行も披露した。 BMWの関係者はいなったが、トヨタの関係者に話を伺うと、展示されているトヨタのFCモジュールは現行のFCEV「ミライ」のものだが、BMWのFCモジュールは、そのセルをさらに多く使い出力をあげ、高出力の二次バッテリーと併せ、非常にハイパワーになっているという。FCEVとはいえ、寒さを苦手とするFCEVでドリフト走行を可能とするとは、BMWらしさが前面に出ているのではないだろうか。 そしてトヨタの隣のブースはホンダで、次世代FCモジュールが展示されていた。出力は80kWとされ、GMと共同開発したもの。2024年に市場投入が予定されている「CR-V」ベースのFCEVに搭載されるものと同じユニットだという。価格を従来のFCモジュールの1/3まで抑え込んだというもので、今後外販もしていくとのことだ。 さらにトヨタの前には川崎重工業のブースがあり、オーストラリアから水素を輸入するための水素運搬船の模型と、ブースの壁には「トヨタ・ガズー・レーシング」の「スーパー耐久シリーズ(S耐)」参戦車両である水素エンジン仕様の「カローラ」のポスターが大きく張られていた。トヨタと川崎は水素を通じて協力関係にあり、S耐車両に使用する水素を、川崎の水素運搬船が運んでいる。 少し離れたところだが、東京アールアンドデーもブースを構えていた。そこにもトヨタのFCモジュールが展示されており、小型燃料電池バスのプレゼンテーションが行われていた。トヨタのモジュールを使うことで、これまでより室内空間が広くなるという。 また、水素エンジンのトラックもiLABOのブースに展示されていた。ディーゼルエンジン車を改造したもので、70MPaの水素タンクを運転席キャビンと荷台の間に積んでいた。 このFC-EXPOで感じたのは、企業同士のアライアンスが前面に出ていたこと。水素を普及させるためには、欠かせないものなのかもしれない。 今回のスマートエネルギーWeek 春、7つのテーマからなるイベントだけに、EVだけでなく、それに関連する多くの企業が出展していた。企業同士の協力関係など、普段はなかなか知ることができない取り組みも多く見られ、とてもユニークで学びにもなるイベントである。秋にも開催予定なので【幕張メッセ(千葉市美浜区)/9月13日(水)〜15日(金)】、是非会場に足を運んでいただきたい。

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TEXT:福田 雅敏
ホンダの電動戦略のカギは脱着式可搬バッテリーにあり……現役EV開発エンジニアによる「スマートエネルギーWeek 春」探訪前編[THE視点]

モバイルバッテリーからEVまで対応可能な「ホンダ・モバイル・パワー・パック e:」 「スマートエネルギーWeek 春」内「第13回 国際スマートグリッドEXPO春」が3月15~17日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された。出展社の中には本田技研工業(ホンダ)もあった。その展示内容がユニークだったのでレポートする。 今回の一番の特徴は、ホンダブース内の展示物全てが現在拡販を狙っている脱着式可搬バッテリー「ホンダ・モバイル・パワー・パック e:」(MPP)を電源とした製品を展示していること。その活用事例が今回の展示のコンセプトだ。 まずはその核となる「MPP」のスペックは、バッテリーパック1個あたり50.26Vを発生するリチウムイオン式で、容量1.314kWh/重量10.3kgとなっている。今回は価格も発表されており、8万8,000円(税込)/個となっている。ただしカタログには法人限定販売と書かれていた。理由はバッテリーリサイクルの社会的責任からだという。 そして今回の展示物の中でひときわ目立っていたのが、初公開となった「N-VAN」をベースとしたEVだ。ホンダは昨年12月、「2024年春に「N-VAN」ベースのEVを発売する」と発表していた。しかし今回展示されていた車両は正式版ではなくあくまでもコンセプトカーで「MEV VAN Concept」と名付けていた。 このコンセプトカーの特徴は、MPPを8個搭載しており、総容量は10.4kWhでEVとしては少ない。しかし交換できるのが特徴で、それに要する時間はわずか数分。そのため、交換用バッテリーの用意があればすぐに走り出せるので充電時間が省けるとし、「固定式バッテリーとは異なる魅力と価値の提供を検証する」としている。 クルマの仕様としては、出力14kWのモーターを前後に配置した4WDで、最高速度が70km/h以上、航続距離は75kmと発表されている。2024年春に発売が予定されている量産EVは、床下固定式とのことでバッテリー容量が多い実用的なものになるだろう。 そのほか、ホンダブース内に展示されていたものとしては以下のとおり。 ・MPPを24個同時充電できる充電設備「モバイル・パワー・パック・エクスチェンジャー e:」 ・MPP1個を充電できる専用充電器「パワー・パック・チャージャー e:」。 ・ポータブル電源「パワー・エクスポーター e:6000」とその小型版「パワー・ポッド e:」 ・三輪のEVスクーター「ジャイロ キャノピー e:」 ・電動パワーユニット「eGX」搭載の「レーシングカート」 ・「耕うん機」 ・「小型船舶向け電動推進機」 etc… ホンダのラインナップだけでもこれだけ多彩に展示されていた。 他社へも惜しみなく供給、犬猿の仲とも言われたヤマハ発動機にも 次に目を引くのが、ヤマハ発動機と協業して開発されたパーソナル低速モビリティの汎用プラットフォーム・コンセプト「ヤマハ・モーター・プラットフォーム・コンセプト」だ。なんとホンダのブースにヤマハ車の展示である。 そして建機の展示へと続く。3月14日のEVヘッドラインでも紹介したコマツの電動マイクロショベル「PC05E-1」[詳細はこちら]。これには「MPP」と同時に、ホンダの電動パワーユニット「eGX」も採用されている。 このほか「MPP」を活用した各社のさまざまなコラボレーションモデルが展示されていた。 ・電動バイブレーションローラーのコンセプトモデル(三笠産業) ・電動ハンドガイドローラーのコンセプトモデル(酒井重工業) ・スプリットライトLED投光機 PL-241SLB(デンヨー) ・秋田版スマート農業モデル創出事業「大玉トマト収穫ロボットコンセプト」(デンソー) ・DX-CELLコンセプト(デンソー) etc… あたかもホンダのブースだけで、電動モデルの見本市のようであった。 このMPPにより、建機などが大型の電動工具のようになることで、排ガス・騒音の問題をクリアでき屋内でも使用可能というケースも増えるかもしれない。振動も少ないことから身体への負担も軽減でき働き方改善にもつながる。 電動化により、これまで競合していた企業やホンダとも関わりのなかったであろう企業との間にイノベーションが生まれている。これからもより多くのモデルが、ホンダのMPPを活用して生まれることを願うばかりである。MPPに対する意気込みを非常に強く感じたホンダのブースであった。

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TEXT:陶木 友治
「こうなる! 2023年の自動車業界!」伝説の自動車アナリスト、中西孝樹教授に訊く:第8回

EVの登場と普及は、国内外の政治・経済にどのような影響をもたらすのでしょうか。伝説の自動車アナリストとして知られる中西孝樹さんに、様々な疑問をぶつけます。短期連載の最終回は2023年の展望について語ります。 Q.これまでの議論を踏まえて、2023年の自動車業界の展望をお願いします。 注目すべきポイントは3つあります。一つずつ説明していきましょう。 2023年は、先進国を中心に世界的な景気後退に突入することが予想されます。不況時、新車の売れ行きは鈍ることが普通ですが、逆転現象が起こって新車販売台数は伸張するでしょう。理由は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う2021年以降の減産です。 減産によって供給力が落ちたため、自動車の価格はむしろ上がり、減産すればするほど利益が上昇するという不思議な現象が発生しました。2023年はコロナ禍の影響の揺り戻しにより、新車需要が低下する以上のスピードで供給回復が見込まれるため、不況下でも新車販売が伸びることが予想されます。自動車業界には「数量回復」という追い風が吹くはずです。 販売台数が伸びるからといって、楽観は禁物です。二つめの注目ポイントについて、「人件費」の高騰を挙げたいと思います。 現在、世界を凄まじいインフレが襲っていますよね。自動車メーカーも「コストインフレ」の圧力を受けています。コストインフレとは、原材料や資源価格の上昇による資源インフレ、エネルギーインフレ、賃金の高騰による賃金インフレなどが代表的です。クルマの場合、原材料の高騰等により1台あたり実質20万円近くもコストアップしています。欧米ではこの影響の大部分を新車価格の引上げへ転嫁できていますが、日本では車両の販売価格そのものは上がっていません。20万円のコストアップ分の大部分を、メーカーが一旦受け留める形で影響を吸収しています。円安が進展したことで、円安メリットでその負担を吸収できる余力があったことも事実です。 このコストインフレが緩和されるのか、それともさらに強まるのか注視していく必要がありますが、私はコストインフレがさらに進むと思っています。理由は原材料等の高騰ではなく、日米市場ともに賃金のさらなる高騰が起きると予想されるからです。 アメリカは賃金上昇ペースが速く、自動車メーカーの工場で働くよりもマクドナルドで働いたほうが賃金が高いという、一昔前なら考えられない状況が出現しています。マクドナルドのようなサービス業に人材の流出に歯止めが掛からない状況です。 工場に人材を呼び戻すためには、賃金を上げざるを得ませんが、賃金を上げてまで新しく人を雇ったとしても、その人材が熟練するまでには一定の期間が必要ですから、当然、高い生産性は見込めません。つまり生産性の低い人材を高い賃金で雇わなければならないという状況が予想され、これは業績悪化の要因となります。販売数量が伸びたメーカーは利益増によりコストインフレを吸収できますが、それができなかったメーカーは業績悪化を免れないと思います。 Q.話をEVに限れば、2023年はどのようなことが予想されるでしょうか。 それが3つ目の注目ポイントです。アメリカやヨーロッパを中心にEVの新型車がたくさん発売されますから、世界的な景気後退の中でも、EV自体は快調に販売を伸ばしていくと思います。 EVは世界的な関心を集めているワードで、毎日のようにEVの動向がメディアで報道されているため、すさまじい勢いでEVシフトが進んでいるかのような錯覚に陥りそうになります。 しかし現状では、EVが一般ユーザーにまで浸透しているとはとても言えない状況です。アメリカでも日本でも、EVを購入しているのはごく一部の富裕層や高所得者に限られるため、本格的なEVシフトはまだ到来していません。富裕層や高所得者の所有車の一部がEVにシフトしているに過ぎなかったのです。 ところが、昨年9月を転換点として、テスラはEVの価格引下げに戦略を転換し、2023年1月には米国で9%~20%も小売り価格を引き下げる安売り攻勢に転じています。2023年はEVの低価格化の始まりとなるでしょう。一部の富裕層でない消費者がこの価格変動にどの様に反応するか、非常に強く注目しています。 伝統的な自動車メーカーはEV商品投入を積極化させていくのですが、低価格シフトがその出鼻をくじく格好となっており、EV収益性は際どく悪化し事業性そのものが崩壊するかもしれません。 日本メーカーはある意味この戦いの構図にはまだ参戦している状態ではありません。出遅れている日本メーカーが安全なところに立っていると考えるべきか、それとも戦う前から敗北していると考えるべきか、大きな論点となっていくでしょう。 (インタビュー:TET編集長 田中 誠司)

TAG: #EV経済学 #中西孝樹
TEXT:御堀 直嗣
知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第6回:充電あっての電気自動車

普通充電と急速充電の違い 電気自動車(EV)について最大の懸念が、充電だろう。そこから一充電走行距離が多い少ないといった議論が盛んになる。 しかし、充電の本質を理解すれば、たいした懸念材料ではない。そもそも、充電に対する理解不足が世界的な混乱をもたらしている。 EVの充電には、普通充電と急速充電がある。 普通充電とは、100ボルトまたは200ボルト(V)の電圧で、時間をかけて駆動用バッテリー(現状ではリチウムイオン・バッテリーが主流)に充電する方法だ。コンセントなどから交流の電気を流し、車載の充電器で直流に変換してリチウムイオン・バッテリー(以下、LIB)に充電する。普通充電ではバッテリーの劣化も抑えられる。 急速充電は500~800Vの高電圧で一気に電気を流し、短時間にLIBに充電する方法である。急速充電器で交流から直流へあらかじめ変換しておき、EVのLIBへ直流電気で充電する。リチウムイオンに限らずバッテリーの電気は直流なので、一気に充電することができる。ただし、大電流を流すために安全の上で満充電にはしにくく、またLIBを劣化させやすくもある。 基礎充電あっての電気自動車 充電方式に普通充電と急速充電の2通りがある以外に、充電という行為そのものにも種類がある。ひとつが基礎充電だ。ほかには目的地充電と経路充電がある。 基礎充電では、自宅や事務所などで寝ていたり仕事をしていたりする間に、普通充電で時間をかけてじっくり充電して、満充電にする。これこそがEVの充電の基本だ。これなくして、EVを使いこなすことはできない。 また、基礎充電を行うことで、EVへの充電によって電力が逼迫するという問題を起こさずに済む。自宅で夜間に基礎充電すれば、そもそも電力使用量が減る時間帯なので、系統電力の逼迫など起こるはずもない。電力使用量が増える日中に急速充電で間に合わせようとするから電力逼迫が懸念され、世の中すべてがEVになったら原子力発電所を10基増設しなければならないといった勘違いが生じる。夜間に基礎充電すれば、電力会社に喜ばれこそすれ、困らせることはない。 ところが、国内ではマンションなど集合住宅の駐車場に、基礎充電用の200Vコンセントを設置できない状況が、初代リーフの発売により量産EVが実現してから13年も解決されずにきた。人々のEVへの理解不足によるかもしれないが、そのために、やむを得ず急速充電を増やさなければならない事態に陥ったのである。 自宅での基礎充電と外出先での目的地充電 基礎充電の次に普及しなければならないのが、普通充電による目的地充電だ。 目的地充電とは、宿泊施設や仕事場、食事処、買い物をする店など、出掛けた先の駐車場で充電することをいう。宿泊施設であれば、家と同じように寝ている間に普通充電で満充電にできる。仕事先であれば、仕事をしている間に満充電にできる。ただしこの場合は日中になってしまうが、日中の電力消費が最大になる時間帯を避けて充電管理することも不可能ではない。 食事処や買い物の店などでは、急速充電が適切ではないかと思うかもしれない。しかし、食事や買い物などでの滞在時間は1~2時間はあり、急速充電は30分で一度仕切り直しになるので、後続のEVがいれば待たせることになる。そこで食事や買い物を中断して充電の様子を確認しなければならない。スマートフォンで情報を得ることはできるが、それでも食事や会話に夢中になったり、買い物選びに集中したりしにくくなる。 目的地充電の普通充電では、もちろん満充電に足りないだろう。だが、そこから次の目的地まで移動する電力が確保できればよいのであって、次の訪問地でも目的地充電できれば、少しずつの充電を繰り返しながら帰宅できる。 基礎充電と目的地充電こそが、EVを最大に有効活用する充電方法だ。

TAG: #充電 #御堀 直嗣
TEXT:福田 雅敏
EVバスの現在地、現役EV開発エンジニアが参加した勉強会で浮き彫りになったEVバス普及への課題[THE視点]

2023年3月14日、東京都内で業界関係者・識者向けの勉強会「交通ビジネス塾 第135回『社会と事業者に恵みをもたらすEVバスの普及に向けて』」が開催された。 この催しは2015年に筆者も講演をしたことがあるが、今回は受講側として参加した。EVバスの普及についてがテーマだが、EVバスを導入する利点と難点を、実際に導入した企業から話を聞くこともできた。ぜひ世の中に知らせたい内容なのでレポートをしたい。 商用・公共交通用EV普及に向けて補助金を用意する政府だが導入は進まず 最初の講演は「EVバスの普及に向けた国交省の取組み」だ。国土交通省・自動車局・技術環境政策課・環境基準室長・小岩慎之氏が登壇した。 電動車の構造から始まり、電動車が必要な理由、CO2の削減について説明があり、2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップが示された。商用車(バスを含む)の小型GVW(車両総重量)8トンクラスでは、2030年に新車の電動化率を20~30%に増やし、2040年には100%を目標としているという。 今後10年を見据えたロードマップでは、官民合わせ10年間で150兆円の投資となるとのこと。この金額は車両開発費のみならず、インフラまで含んだ数字となっている。 輸送事業者におけるEV等の導入目標については、2030年度の保有台数に占める割合として、トラックの8トン以下で5%。8トン超については示されなかったが、バスは全体(小型から大型まで)5%とし、タクシーについては8%と示された。 海外では、ノルウェーが乗用車で2025年までにHEV/ガソリン/ディーゼル車の販売を禁止。商用車では、都市内バス/小型トラックもEV・FCEVの販売比率を100%と他に先行している。これに米国が続く。 日本でのEVバスの導入状況であるが、24万台程度のバス保有台数のうちEVバスはわずか150台程度に留まる。僅か0.1%の割合だ。このうちほとんどが中国製というのが現状である。 今後の日本における次世代商用車(EV・FCEV)の普及・導入に向けた取組として、「産学官連携による高効率次世代大型車両開発促進事業」「グリーンイノベーション基金事業・スマートモビリティ社会の構築」「次世代商用車導入支援」などが示された。 このうち、「グリーンイノベーション基金事業・スマートモビリティ社会の構築」には、2050年カーボンニュートラル実現に向け国庫負担額として1,130億円を計上しているという。「次世代商用車導入支援」では、令和4年度二次補正と令和5年度当初予算合わせ約250億円が計上されている。 このほか、一般乗合旅客自動車運送事業者に係る特例措置の創設により、EVバス等に係わるものの固定資産税・都市計画税の軽減、水素活用による運輸部門等の脱炭素化支援事業(環境省)、商用車の電動化促進事業(経済産業省・国土交通省連携事業)など、2050年カーボンニュートラルの達成を目指しているという。 ※資料出典:国土交通省 EVバス導入事業者が悩む車両トラブル対応 2番目の講演は「EVバスの導入経験と国への政策への希望」だ。登壇者はイーグルバス株式会社・代表取締役社長の谷島 賢氏(下記写真の右が谷島 賢氏、左は小岩慎之氏)。同社は埼玉県川越市を拠点に貸切・路線バスを運営する。 イーグルバス社がEVバスを導入した理由として、社内事情と対外的事情があったという。その事情とは、小江戸川越巡回バスの老朽化によるものだ。 これまでマイクロバスをわざわざボンネット付きのバスに改造して走らせて来たというが、乗車定員が少ないこと、そのため採算が合わないこと、そして導入後20年を超えメインテナンス・部品調達の問題が露出。これに対外的事情としてSDGsの世界的な広まりもあってEVバスの導入に踏み切ったという。 イーグルバスが保有するEVバスは合計2車種7台で、ボンネット付き中型2台に路線型小型(全長7m)バス5台である。 導入した中国製EVバスについて赤裸々な意見が伺えた。中国製バスは、工場では日本向けのステッカーが貼られ特別扱いされているというが、それでも部品の品質がチープで壊れやすいという。「逆に日本人は過剰品質を求め過ぎるのか?」とも話されていた。 それでも購入する理由は、国の補助金を入れると小型バスが1,300万円程度で購入できるからだ。同じサイズの国産ディーゼルバス(日野・ポンチョ)よりも安く、さらに環境性能・騒音・走行性能が優れているのがEVバスのメリットとのこと。 実際にハンドルを握るドライバーからは、良い点として「力があり運転が楽」「エアコンが効く」「始業点検が楽で運転している優越感もある」との声が上がっているという。逆に悪い点として「ブレーキ(回生)に慣れるまで時間がかかる」「ウィンカーとワイパーのレバーが逆」「スイッチ等中国語なので分からない」とのことだが、肯定的な意見が多いようだ。 メカニックからは、「分からないことだらけで細かなトラブルも多く自ら直すことが出来ない」「トラブルの多くが原因不明のためその究明が大変」だという声が上がった。さらに日本製の料金箱や、行先表示板などを取り付けたら、電力が足りなくなり止まることもあったという。 また、充電方式も日本の急速充電規格の「CHAdeMO(チャデモ)」の充電器は高いとのことで、中国規格の「GB/T」のまま充電器も持ち込んで運行しているという。 その充電も、50kWを超える急速充電をすると充電量による電気代は少し安くなるが、基本料金が高くなるのが問題と話していた。これに電力使用時のピークが上がると、向こう1年間の基本料金が高くなるのも問題とのこと。 そのため、充電時にはピークを越えない気遣いも必要で、経済性(ランニングコスト)は、2年程度では判断できないとのことだった。冬場の暖房や真夏日のエアコンフル稼働により電費は悪化するとのこと。数年後にバッテリーが劣化した場合の交換費用も掛かるので、導入2年程度で経済性はわからないというのは理解できる。 最後に国への要望として「補助金の申請をいつでも出来るようにして欲しい」「補助金はしっかり予算化して減額はしないで欲しい」「EVバスへの電気料金体系を何とかして欲しい」など話していた。 中国製は壊れやすくメインテナンスも大変と言われていたが、EVバスを2台から7台へと増車している前向きな姿勢には、採算だけでなく、SDGsにも真剣に取り組んでいる証と感じた。 この2件の講演を聴いて抱いた感想は、国としても大掛かりかつかなり野心的な目標を掲げているということだ。24万台あるとされるバス。その5%が2030年にEVバスとなると、今後7年で1万2,000台となる。これから普及が加速はされると思うが、かなり補助金とラインナップが増えないと達成は難しいだろう。 資料出典:イーグルバス株式会社

TAG: #EVバス #THE視点 #交通インフラ
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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ホンダの新世代EV「e:NP2」と「イエ」シリーズはここから生まれる! 中国合弁会社「広汽ホンダ」の新工場が広州市に誕生
2025年末までに100店舗展開を目標に開店ラッシュが止まらない! 全国37番目となる佐賀県初のBYD正規ディーラー「BYD AUTO 佐賀」がオープン
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コラム
リーフやi-MiEV以前にも量産EVはあった! じつは長〜い国産EVの歴代モデルを振り返る!!
スマホならまだイケるのにEVのバッテリーは容量が70%を切ったら交換ってなぜ? 容量以外に求められるEV独特の性能とは
EVとV2H機器があれば停電時でも普通に家で生活できる? 使用電力について計算してみた!
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インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
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試乗
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
ボルボEX30で11時間超えの1000km走行チャレンジ! 課題は90kWまでしか受け入れない充電性能
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イベント
外からもまる見えな全面ガラスドアも高齢化が進む地域のモビリティとして最適!? タジマの超低床グリーンスローモビリティ「NAO2」が斬新すぎた
EVはレアメタルが詰まった都市鉱山! CEATEC2024でBASC展示が提唱するサーキュラーエコノミーというバッテリーとは
畳めるバイク! 階段を上り下りできるカート! 自由な発想のEV小型モビリティが作る明るい未来を見た!!
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