コラム 記事一覧

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TEXT:渡辺陽一郎
バカデカい電池を積んだEVで大して走らないんじゃむしろ環境に悪い! いま考えるべきEVの姿とは

製造段階で排出されるCO2の量はEVのほうが多い EV(電気自動車)は、地球温暖化を促進する二酸化炭素の排出抑制に効果的とされる。 その理由は、燃料を燃焼させるエンジンと異なり、走行する段階で二酸化炭素を排出しないからだ。風力や太陽光などの再生可能エネルギーによって発電された電気でEVを走らせれば、二酸化炭素の発生を効果的に防げる。 しかしEVを走らせる電気を火力発電によって生み出すと、その時点で二酸化炭素を排出する。さらにいえば、車両の製造/流通/廃棄など、走行以外の行程でも二酸化炭素が発生する。 EVでは駆動用リチウムイオン電池の製造段階で二酸化炭素が多く発生することも指摘されている。 この影響もあり、車両の製造段階で排出される二酸化炭素は、ガソリン/ディーゼルエンジン車よりもEVが上まわるとされる。その後の走行段階では、EVはエンジン車よりも二酸化炭素の排出量が少ないから、走行距離が増えるに従ってEVのメリットも際立ってくるわけだ。 ちなみに車両の製造段階を含めて、EVの二酸化炭素排出量がガソリン/ディーゼルエンジン車を下まわるのは、北米では購入後1年から1年半といわれる。ただし、比較する車両の燃費性能や電力消費量、1年あたりの走行距離によっても異なるから一概にはいえない。 マツダでは、MX-30 EVモデルが搭載する駆動用リチウムイオン電池の総電力量を35.5kWhに抑えた。その理由として「製造段階における二酸化炭素の排出抑制」を挙げている。 仮に95kWhの大型リチウムイオン電池を搭載した場合、製造時に発生する二酸化炭素が走行段階で取り戻せないほど多くなるという。そこでMX-30 EVモデルは、ライフサイクル全体で二酸化炭素を減らせるように総電力量を35.5kWhとした。 その上でマツダは「リチウムイオン電池の製造段階における二酸化炭素の排出量は、今後の技術進歩によって下がってくる。それに伴って総電力量を拡大して、1回の充電で走行可能な距離も拡大できる」としている。 以上のように60kWhを超える大容量のリチウムイオン電池を搭載したEVを購入して、1年間の走行距離が5000kmを下まわるような使い方では、二酸化炭素の排出抑制に結び付かない可能性もある。火力発電による電気で充電すれば、この傾向はさらに強まる。 結局のところ、EVの二酸化炭素排出量をライフサイクル全体で減らすには、ボディをコンパクトに軽く作ることが大切だ。そうなれば駆動用リチウムイオン電池も小さくなり、製造時の二酸化炭素排出量も減らせる。走行時の電力消費量も抑えられるから、ライフサイクル全体で二酸化炭素の発生を抑えられるわけだ。

TAG: #バッテリー #二酸化炭素 #排出量
TEXT:高橋 優
日本勢のEVの売れ行きをチェック! トヨタ・ホンダに比べて日産は先行きに不安アリ

トヨタ・ホンダ・日産の状況を比較! トヨタ、ホンダ、日産の2024年10月最新のEV販売動向が判明しました。それぞれどれほどEVシフトを進めることができているのか。気になる販売車種の内訳なども含めて、EVシフトが遅れているといわれている日本勢の最新EVシフト動向を分析します。 まず、トヨタのEVシフト動向を確認しましょう。トヨタは世界戦略車としてbZシリーズ第一弾のbZ4Xを2022年5月に発売しながら、さらに2023年の3月から中国市場限定のbZ3の発売をスタートしており、ここからBEV販売台数が伸びています。一方で、直近の2024年10月度のBEV販売台数は1万505台と、前年同月比で12.2%の増加であるものの、販売の伸びは鈍化しているように見えます。 この成長の鈍化傾向は、トヨタの予想外の動きであるといえそうです。というのも、トヨタはその年度の初めにBEVやPHEVの販売台数予測を発表していますが、たとえば2023年度のBEV販売台数目標を年度初めは20.2万台と予測していました。しかし、年度途中に12.3万台に販売目標が下方修正されています。そして実際の販売台数実績は11.66万台と、大幅下方修正の目標値にすら届いていなかったのです。 しかも、2024年度のBEV販売台数目標を年度当初は17.1万台と発表していたものの、最新の決算発表内で16万台へと下方修正を行っています。いずれにしても一連の流れを見るに、当初にトヨタが想定していたようなBEV販売台数を達成しているとは到底いえないというのが現状なのです。 また、トヨタは2025年シーズンにEVのラインアップを大幅に拡充する方針です。とくに中国市場ではbZ3XとbZ3Cを2025年初頭に発売します。 これら2車種には中国の自動運転スタートアップとしてトヨタも出資を行うMomentaの最新テクノロジーを搭載し、End to Endにおける自動運転システムを実現。しかも、BYDのバッテリーとモーターを搭載するbZ3Cは、2025年中に欧州市場においても出荷される見通しです。 次に、EVのパイオニアである日産のEVシフト動向を分析しましょう。2024年10月単体のBEVシェア率は2.9%と、この数年間で最低水準のシェア率に留まっています。2022年10月は5%、2023年10月は3.74%だったことから、日産のEVシフトは後退局面を迎えてしまっているわけです。 EVシフト後退に大きな要因であると考えられるのがアリアの販売不調という観点です。10月のアリアのグローバル販売台数は3152台と前年同月比19.5%ものマイナス成長。アリアの販売台数は生産体制の増強に制約があることが理由であると一部報道でいわれていたこともあり、2024年以降は販売台数がさらに増加すると思われていたわけです。 ところがアリアの販売台数は2023年9月以降ほとんど伸びておらず、つまり生産体制に問題があるのではなく、単にグローバル全体で需要が低いことが要因であると推測できるのです。とくにアリアは、欧・米・中国市場で値下げが行われています。なかでも日本円で120万円級の大幅値下げが行われている中国市場では、10月単体でたったの19台しか売れていません。

TAG: #EVシフト #新車販売 #日本車
TEXT:まるも亜希子
EVって固いイメージあったけどこんなアソビ心あったんか! 楽しさ爽快感マシマシなEVオープンカー9選

EVのオープンカーを一挙紹介! 空と一体になって走れるような気もちよさは、オープンカーの最大の魅力。道路沿いのカフェから香ばしいコーヒーの香りが漂ってきたり、小鳥のさえずりが聴こえてきたりと、周囲のさまざまなものがドライブのスパイスとなるのもオープンカーで得られる贅沢です。 そんな贅沢は、EVになっても手に入れることができます。今回は、現在販売されているEVのオープンカーから、今後に発売予定のモデル、将来に登場するかもしれないコンセプトモデルまで、一挙にご紹介します。 まず、世界で初めて量産オープンEVとして登場したのが、フィアット500eオープン。1957年に誕生したNUOVA 500を元祖として愛されたイタリアの国民車が、イメージはそのままに約96%がまったく別の部品となって完成したのが500eです。 オシャレさはそのままに、ボタン式のシフトなどちょっと未来的になったインテリアで、4人乗り。クーペモデルとちがうのは、ガソリンモデル同様に電動のソフトトップがついているところ。2段階でオープンにでき、42kWhのバッテリーで最大355km(WLTCモード)の走行が可能です。 続いて、伝説のチューナーであるカルロ・アバルトが率いてきた、サソリのエンブレムが目印のアバルト500eカブリオレ。 EVになっても痛快な走りが魅力で、アバルト独自の「サウンドジェネレーター」によって、レコードモンツァのエキゾーストノートを忠実に再現したモードがあり、オンにすると高揚感をあおる爆音が響くのも楽しいところ。42kWhのバッテリーで最大294km(WLTCモード)の航続可能距離となっています。 次に、登場が秒読み状態といわれているのが、MINIコンバーチブルのEV。2023年2月に限定999台での発売がアナウンスされたクーパーSEコンバーチブルの後継モデルとして登場予定です。現在、クーペモデルのMINIクーパーにはバッテリー容量が36.6kWhのEと49.2kWhのSEがラインアップされていますが、コンバーチブルにもおそらくこのシステムが搭載されるのではないでしょうか。 オープンモデルとなれば多少は航続距離が減る傾向にはなりますが、300〜400km程度になると予想されます。MINIらしいセンスのよいインテリアと、元気な走りが期待できそうです。 続いて、すでにプロトタイプの存在がスクープされている、ポルシェ718ボクスターのEV。タイカンの流れをくむようなフロントマスクに電動ソフトトップのマッチョなボディで、リヤにシングルモーターを搭載するRWDと、パワフルなデュアルモーターとなるAWDが設定される見通しだといいます。 現時点で航続可能距離などは不明ですが、まもなくの発表が期待されています。

TAG: #オープンカー #コンセプトモデル #新車
TEXT:桃田健史
スマホの置くだけ充電みたいなEVの駐車するだけ充電! 存在するのに普及する気配がない理由とは?

最大のハードルはコスト 最近は日産サクラやテスラ・モデル3など、日本でも人気のEVが登場するようになった。充電インフラについても、国の補助金制度が拡充していることもあり、徐々に設置数が増えているところだ。 だが、それらは普通充電にしろ、急速充電にしろ、有線ケーブルを使った充電方式である。 では、EVの普及に向けてグローバルで議論が盛んになった、2000年代後半から2010年代初めに話題となったワイヤレス充電はいま、どうなったのか? 今後、普及する可能性はあるのだろうか? 直近で、EVワイヤレス充電について「当面の間、普及は難しい」と話す自動車業界関係者が少なくない。 最大の理由はコストだ。ワイヤレス充電は、道路や駐車場、そしてEVそれぞれに大型コイルを装着する必要がある。国際的な規格についてはすでに定まっているものの、現状では普及に積極的な自動車メーカーはいないため、量産効果によるコスト削減が見込めないというのだ。

TAG: #ワイヤレス充電 #充電
TEXT:琴條孝詩
CHAdeMO規格なのにコレじゃメリットないじゃん! 同じCHAdeMOでも外部給電できないEVがある理由

CHAdeMO規格は双方向給電に対応 EVへの急速充電は、CHAdeMO(チャデモ)という規格が一般的だ。テスラやフィアットなど、一部の輸入車ではCHAdeMO以外の仕様をもつEVもあるが、それらもアダプターを使用すればCHAdeMO規格の急速充電器で充電することができる。つまり、日本での急速充電といえばCHAdeMO規格がデファクトスタンダードということになる。 CHAdeMOは2010年に日本発の規格として誕生した。名称の由来は「CHArge de MOve」(動く=充電する)という意味のフランス語からきており、また「お茶でも飲みながら充電しましょう」という意味も込められている。規格の開発には、東京電力(現・東京電力ホールディングス)を中心に、日産自動車、三菱自動車、富士重工業(現・SUBARU)、トヨタ自動車が参画した。 当初は最大出力50kWだったが、現在では最大400kWまでの出力に対応する規格へと進化している。また、車両からの放電(V2H/V2L)にも対応している点が大きな特徴である。 CHAdeMO規格の最大の特徴は、直流による急速充電方式を採用している点だ。交流(AC)による普通充電と異なり、直流(DC)による急速充電では、充電器側で交流から直流への変換を行う。これにより、車両側の機器が簡素化され、低コストで製造できるうえに充電時間も大幅に短縮できる。 また、CHAdeMO規格では充電時の安全性を重視している。充電コネクタには専用の通信線が組み込まれており、車両と充電器の間で常時通信を行いながら充電を制御する。これにより、充電中の異常を即座に検知し、安全に充電を停止することができる。 さらに、この通信機能を活用することで、双方向の電力のやり取りが可能となっている。つまり、車両から外部への給電(V2H/V2L)も技術的には可能な規格となっているのだ。V2Hとは「Vehicle To Home」家庭で別途V2H機器を介して電力を供給できる。また、V2Lは「Vehicle to Load」のことで、可搬型の機器を利用して災害地などで給電できる。 ここで疑問となるのが、CHAdeMO規格を採用しているにもかかわらず、外部給電機能をもたない車両が存在する理由である。これにはおもに以下の要因が関係している。 第一に、車両側のインバーター設計の違いがある。双方向の電力変換に対応するためには、それに適した設計のインバーターが必要となる。しかし、多くのEVはコスト削減や車両の軽量化を優先して、あえて充電専用の単方向インバーターを採用しているのだ。 第二に、バッテリーマネジメントシステム(BMS)の仕様の違いがある。外部給電時にはバッテリーの状態をより厳密に管理する必要があり、それに対応したBMSを搭載していない車両では外部給電機能を提供できない。 第三に、メーカーの製品戦略が関係している。外部給電機能は、災害時の非常用電源としても注目されているが、すべてのユーザーが必要とする機能ではない。そのため、グレードによって機能の有無により価格をわけているケースもある。 このように、CHAdeMO規格自体は双方向給電に対応しているものの、実際に外部給電機能を提供するかどうかは、車両側の設計思想や製品戦略により決定されているのである。急速充電インフラの整備が進むなか、今後は外部給電機能を標準装備とする車両が増えていく可能性もあるだろう。

TAG: #CHAdeMO #外部給電
TEXT:高橋 優
日産がけん引するも日本のEV販売台数全体は失速! 2025年に各メーカーから登場が予想される新モデルに期待しかない

2年前のEVシェア率と同等に 日本国内における2024年10月のEV販売動向が判明しました。販売台数・シェア率ともに前年比マイナス成長というEVシフト停滞模様を解説します。 まずこのグラフは、2018年以降のBEVとPHEVの合計販売台数を月間ベースで示したものです。直近の2024年10月の販売台数は7321台と、前年同月比で−32%とEV減速の兆候が見てとれます。とくに2023年12月以降、11カ月連続で前年同月比マイナス成長という状況です。 次に新車販売全体に占めるBEVとPHEVの合計販売台数の比率を示したグラフを見てみると、直近の10月は2.17%と、前年同月に記録した3.22%と比較してもシェア率が低下しています。さらに、2年前である2022年10月が2.11%であったことから、2年前のEVシェア率と同等水準まで落ちてしまっているわけです。 次にBEVの販売動向を詳細に確認していきましょう。このグラフは普通車と軽自動車それぞれのBEV販売台数の変遷を示したものです。直近の10月はBEV全体で4317台と、前年同月比で−34.6%と低調です。 さらにこのグラフは、普通車セグメントを日本メーカーと輸入車メーカーそれぞれにわけて示したものです。白の輸入EVは前年同月比−4%に留まったものの、ピンクの日本製EVは785台と、前年同月比−44%と失速しています。よって、現在の日本国内のEVシフト後退のもっとも大きな要因は、日本メーカーの、とくにリーフやアリア、bZ4Xのような普通車セグメントの需要が大きく低下しているからだといえます。 また、累計販売台数を年別に比較すると、2024年10カ月間で5万台弱ものBEVを発売したものの、2023年の10カ月間では7.5万台を発売しており、2024年末にかけてどれだけ盛り返しを図ることができるのかに注目です。 さらに、現在の日本のBEVシェア率が世界の主要国と比較してどれほどの立ち位置であるのかを確認すると、日本は10月に1.28%というシェア率で最低水準です。まだ10月の各国の最新販売データが更新されていないものの、9月の世界全体のシェア率は16%に到達。さらに中国市場は10月で30%程度と、日本とさらに差をつけてEVシフトを進めています。

TAG: #シェア #販売
TEXT:斎藤 聡
EVにはこれまでのタイヤじゃ厳しい事情がある! 最近増えている「EV専用タイヤ」は何が違うのか?

EVのタイヤには多くの性能が求められる 欧州から始まった急激なEV化の波は、世界中の自動車メーカーを混乱に巻き込み、一部にほころびを見せながらも、徐々に浸透してきています。私見ですが、この先すべてのクルマがEVになるなんてことはないと思いますが、それなりに真剣に自動車メーカーがEV開発に取り組んだ結果、EVならではの優位点というのも見えてきて、この先も一定数のEV需要が見込めるのではないかと思っています。 やや強引に我々の生活のなかに入り込んできた感のあるEVですが、先にも述べたように内燃機関に比べ明らかな優位点があります。たとえば静粛性。音源はモーターの駆動音だけですから静粛性は抜群です。また、極低速トルクが太いのも特長に挙げていいと思います。車重は内燃機関の乗用車に比べ200~300kg程度は重くなりますが、低速トルクがぶ厚いので、案外スルスルと走り出すことができます。 その一方、デメリットももちろんあります。とくにタイヤという視点から見ると、車重増加によるタイヤの負荷増大は見逃せません。静粛性のよさも、タイヤノイズを隠せないので、克服すべき問題となります。 電費をよくするための転がり抵抗の低減もタイヤに求められる性能です。転がり抵抗が少なくなると、ウエットグリップとの両立が難しい問題となります。 低速トルクの厚いモーターは、発進時のタイヤの負担が大きくなります。重い車重と合わせて、タイヤの摩耗も克服しなくてはならない問題となります。 こうやってあげつらってみただけでも、従来の乗用車用タイヤに加えて、さまざまな性能が求められていることがわかります。 整理すると、問題点として挙がるのは、ケース剛性(耐荷重性)、耐摩耗性、転がり抵抗、静粛性、といったところでしょうか。 当然ながらタイヤメーカーでも対応は順次進められています。そんななか、規格として素早く形になったのが欧州のタイヤ規格でEV用に作られたHLとかHLCと表記される「ハイロードキャパシティ」規格です。

TAG: #HL #HLC #タイヤ
TEXT:桃田健史
買い替えずとも乗ってるクルマの「自動運転レベル」が進化する! テスラが火を付けた「OTA」ってなに?

自動運転技術に対して積極的にOTAを導入 テスラに関して、自動運転技術のアップグレードについてのさまざまな情報をネット上で見かける。モデルによって、また販売時期や購入時期によって、テスラユーザーの想いは異なるようだ。また、いわゆる認定中古車ではない状態で中古車市場に出まわるテスラ車についても、状況は異なることが考えられる。 そのため、本稿では対象をテスラに限定するのではなく、テスラが自動車産業界に大きなインパクトを与えたOTA(オーバー・ジ・エアー)の観点で話を進めていきたい。 まずは、話の前提として、自動運転レベルについて触れておきたい。グローバルでの共通認識として、自動運転技術を示すレベルにはレベル1からレベル5の5段階があり、レベル1とレベル2では運転の主体はドライバーだ。そのため、この領域は先進運転者支援システム(ADAS)となる。レベル3、レベル4、そしてレベル5になると、運転の主体はクルマのシステムが担う。 このうち、レベル3では気象状況などにより、クルマのシステムが自動運転の継続が難しいと判断した場合、ドライバーに運転をリクエストする。それが、レベル4になると、ハンドル、アクセル、ブレーキなど車内操作類がなくなり、いわゆる自動運転という感じのクルマとなる。 さらに、レベル5になると、そのような走行環境でも完全な自動運転を行うとしているが、これはあくまでも理想論であり、実質的にはレベル4が最上位の自動運転という考え方が、自動車産業界での常識になってきている。 こうした自動運転レベルやそれに伴うODDと呼ばれる走行環境・条件を、通信によって車載システムのデータを書き換えることを、OTAと呼んでいる。 自動車メーカー各社は2010年代前半頃から、OTAを含むコネクテッド技術の研究開発を加速させてきた。2010年代半ばにはアメリカのハッカーが車載システムを遠隔操作する模様をネット上に広めるなどしたことがきっかけとなり、自動車産業界全体でサイバーセキュリティ強化の動きが強まった。 OTAについても慎重な姿勢を示す自動車メーカーが多かったなかで、テスラは自動運転技術に対して積極的にOTAを導入した。 その当時、アメリカのテスラ本社を取材したが、担当者はまずは先行して高性能なハードウェアを製造時に組み込み、その後にOTAによってアップグレードする計画を示した。 こうしたハードウェアの先行導入時期とその基本性能、OTAのソフトウェアのアップデートのタイミングについてのバランスをどう取るのかは、コネクテッド技術が急速に発達するなかで、コストと利便性の観点でとても難しいと思う。 こうしたコネクテッド技術の進化の過程で、OTA導入により先行したテスラが今後、どのような対応をするのか興味深いところだ。 テスラは10月、レベル4によるロボタクシーの社会実装計画に加えて、モデルYやモデル3などの乗用モデルについても自動運転レベル3相当の標準装備化を進めると発表している。

TAG: #OTA #オン・ザ・エアー #テスラ
TEXT:石橋 寛
寒中EV航続距離レースでぶっちぎりの優勝! テスラを破った中国の高級EV「HiPhi Z」ってなにもの?

中国の新興EVメーカーから登場した「HiPhi Z」 寒くなるとEVはバッテリーの性能が低下して、航続距離や充電時間などが通常時よりも悪化する。 EVユーザーならば先刻ご承知かと思いますが、これをきちんとテストしている「極寒のEV航続距離レース」があるのはご存じでしょうか。1月とか2月、もっとも気温が下がり、積雪まであるというノルウェーの地で行われるテストで、各国メーカーのEVが競い合っているのです。 ご想像のとおりというべきか、2020年から3年はテスラが圧勝。ですが、2024年の冬はテスラ・モデル3が23台中22位という惨敗に終わっただけでなく、中国の高級EV「HiPhi Z」がトップに躍り出るという予想外の結果となったのです。 HiPhi Zは、中国の新興EVメーカーHuman Horizons(華人運通)が2022年に発売した4ドアセダン。GT-Rにどことなく似た顔つきや、4066個のLEDで構成される世界初のラップアラウンド・スターリングISDライトカーテン、120kWhという数値を誇る高性能かつ大容量なバッテリーパックを搭載し、航続距離705km、0-100km/h加速は3.8秒というスペックを引っさげての登場でした。 これが、ノルウェー自動車協会が主催する「El Prix」すなわち、毎年夏と冬に行われるEV航続距離レースに参戦。今回は気温がマイナス10°以下の環境で航続距離を競い合ったということです。ちなみに、El Prixは実際に走り切った航続距離のほか、WLTP基準の航続距離と、氷点下で実際に走行できる航続距離との差も明らかにしています。

TAG: #HiPhi #中国
TEXT:高橋 優
アリアよりも130万円安くて230kmも長く走れる! ヒョンデ新型IONIQ 5のスペックが驚異的な内容だった

新型IONIQ 5の航続距離は700km超え! 韓国ヒョンデがIONIQ 5のモデルチェンジバージョンが発売されました。バッテリー容量を大幅増量したことによって、航続距離は700km超えを実現。800V充電にも対応させるなど、競合の電動SUVと比較したコスト競争力を分析します。 韓国ヒョンデは2022年に日本市場に再参入を果たし、EVとしてはIONIQ 5、Kona、およびIONIQ 5のハイパフォーマンスグレードであるIONIQ 5 Nを発売中です。 日本国内の販売台数は直近の10月で32台と低迷しており、大きくふたつの問題が存在すると考えられます。まずはディーラーを介さない直販方式を採用するという点です。これにより、ヒョンデというブランドの存在が知られる機会が少なく、仮に知ったとしても車両に触れることができないのです。 また、同じく2022年に参入を表明した中国BYDが、安価でありながら販売ディーラーを構築するという、いってみればヒョンデの上位互換のような販売手法を展開してきたことによって、ヒョンデ自体の存在感が薄まってしまったことも大きいと感じます。 そしてヒョンデは、IONIQ 5のモデルチェンジを行って商品力を強化してきました。とくにインテリアについて、IONIQ 5の売りのひとつであるスライド可動式のセンターコンソールのデザインを刷新しながら、EV性能を飛躍的に改善してきています。 もともとヒョンデは2種類のバッテリー容量をラインアップしていましたが、今回のマイナーチェンジで1種類に統一することでラインアップをシンプル化。バッテリー容量は84kWhと、IONIQ 5 Nに搭載された新型バッテリーを流用してきた格好です。最長航続距離はついに大台の700kmを突破し、極めてゆとりある航続距離を確保しました。しかも、AWDグレードでも648kmを達成しており、これであれば豪雪地帯に居住しているユーザーもEVを購入する選択肢が出てきたのではないかと感じます。 さらに、充電性能も最大240kW級に対応させることに成功しました。IONIQ 5は800Vシステムを採用しているため、日本初の800V充電対応EVということになります。とはいうものの、国内には800V級の急速充電器はほとんど設置されていないため、今後の充電インフラにおいて800V級に対応する充電器が普及するかどうかがポイントになります。 ちなみに新型IONIQ 5には、韓国SK On製の第四世代の三元系バッテリーセルが採用され、パックレベルのエネルギー密度も173Wh/kgと高密度です。これまでの72.6kWhバッテリーのエネルギー密度も160.2Wh/kgと、日産アリアよりも高密度であったものの、84kWhバッテリーは173Wh/kgと、さらに高密度化を実現しています。エネルギー密度を高める正極材のニッケルの配合割合が9割という「NMC9.5.5」を採用することで、これほどまでの高密度化を実現しています。 そして、旧モデルの値段設定からほとんど値上げせずに発売されているという点も驚きです。エントリーグレードはもともと519万円から発売されていましたが、新型は523.6万円からと値上げ幅は最小限です。さらにIONIQ 5には45万円の補助金を適用することができるので、実質478.6万円から購入することが可能となります。

TAG: #モデルチェンジ #新型
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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