栁 蒼太 記事一覧

TEXT:栁 蒼太
IONIQ 5(ヒョンデ)、モデル3(テスラ)、リーフ(日産)の利用傾向は?EVオーナーアンケート 結果発表(第5回)

THE EV TIMESのオープンに合わせ2月末まで実施していたEVオーナーアンケートに114もの回答を頂いた。本稿は、前編と後編を分けて紹介する、上位3車種比較記事の後編にあたる。前編では車両自体の比較、本後編では、車両を所有するにあたっての利用形態や所有にまつわる調査をまとめている。 モデル3はアーバンモデル? 続いて、オーナーの利用の本拠を見ていきたい。どの車種も一戸建てユーザーが多い。一方で、モデル3は、集合住宅のユーザーも一定数みられる。これに関連して、自宅設置の充電器の有無を見てみると、本拠の形態に相応していることがわかる。 これらの傾向の一因には、都心中心に設置されているテスラのスーパーチャージャーが影響している。テスラオーナーは、スーパーチャージャーや都心部に充実している充電環境を利用することを念頭に充電設備を持たない本拠を構える場合が多いのかもしれない。 動力性能・静粛性に満足、税金関連の期待も どの車種のオーナーも動力性能や静粛性能に満足を示している。一方で、「環境に優しいイメージ」の強いEVでありながら、意外にも、環境性能への思い入れは少ない。デビュー年が早いリーフと発売されて間もないアイオニックユーザーで差異があるので、所有をしていくうちに、それらの意識に変化が生まれるのかもしれない。ただ、これらの要素を踏まえても、実用的に優れており、走行性能に気に入っているからこそ、EVを選んでいる場合が多いことがわかる。 加えて、「税金などの維持費が安いところ」を気に入っているオーナーが多い。EVは「グリーン化特例」「エコカー減税」などの優遇を受けられる故、所有してからのケアの負担が軽くなっている。ところで、モデル3オーナーが、この項目を特に気に入っているとしているのは、実に興味深い。 気になる補助金 前項でコスト関連の話題が上がった。それに関連して、補助金に目を向けたい。 EVの購入に際して、補助金の有無は大きな要素となっているようだ。アイオニック5は、補助金が決め手というオーナーが多いが、それは次に示す、受け取った補助金額をみると一目瞭然だ。 国や自治体からの補助金として、50万円から100万円の補助金を受け取る場合が多い。特にアイオニック5オーナーは、75万円以上100万未満の大きなサポートを受けとったようで、購入検討の大きな判断材料になったのだろう。 まとめ 上位3車種を比べて 今回取り上げたIONIQ 5(ヒョンデ)、モデル3(テスラ)、リーフ(日産)は、多くのオーナーに愛されているが、それぞれのお気に入りポイント、走行シーンや利用形態には差異が見られた。車両単体としてEVを選ぶのも非常に重要であるが、様々な観点で車を選んでいく上で、これらのデータは参考になるかもしれない。 なお、後編では、車両を所有するにあたり、気になるポイントに注目をした。購入した時期によって補助金の額が異なるなど、同じ車であっても、多様な結果が得られたのは、見どころなのではないだろうか。 今回のような調査は、今後も行われる予定であるため、今後の動向の変化にも注目だ。

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TEXT:栁 蒼太
IONIQ 5(ヒョンデ)、モデル3(テスラ)、リーフ(日産)の利用傾向は?EVオーナーアンケート 結果発表(第4回)

THE EV TIMESのオープンに合わせ2月末まで実施していたEVオーナーアンケートに114もの回答を頂いた。 今回は、そのアンケート結果にて、所有している車種の上位の3車種である、IONIQ 5(ヒョンデ)、モデル3(テスラ)、リーフ(日産)の利用傾向を分析してみたい。前編と後編に分けて紹介をする。前編では、アンケートの概要、3車種の用途などに触れている。後編では、3車種のオーナーの特性や補助金について述べている。 EVオーナーは首都圏、主要都市に在住 【アンケート概要】 調査対象:EVオーナー 調査方法:インターネット 調査実施期間:2023年1月12日〜2023年2月28日 アンケート回収状況:114件 EVオーナーに限定した今回のアンケートの回答者の職業別にみてみると、回答者の57.8%が会社員、17.4%が経営者・役員、12.8%が自営業・自由業という結果となった。また、住んでいる都道府県をたずねたところ東京都は17.3%、神奈川県は11.8%、埼玉県9.1%、千葉県8.2%と、首都圏の1都3県で全体の半分を占める結果となった。 なお、大阪府、愛知県においても8.2%、6.4%の結果が出ており、主要都市でもEVオーナーが多いことがわかる。特筆すべきなのは、東北地方北部の寒冷な場所では、EVオーナーが少ない傾向がみられることだ。これは、EVのバッテリーの特性上、気温が低い条件下ではエネルギー効率が低下してしまうことが課題となるからだろう。 また、世帯人数についても尋ねたところ、9割以上が一般世帯で利用されていることがわかる。2020年の国勢調査によれば、日本の総世帯に占める単身世帯の割合は38%と、多くの単身者がいるにも関わらず、EVユーザーの多くが一般世帯であるというのは、特徴的な傾向かもしれない。 上位3車種の様子 アンケートの有効回答件数は114件。一つ目の質問では、どのEVに乗っているのかを調査した。圧倒的な割合を占めた上位3車種の結果は、 リーフ(日産)23件 モデル3(テスラ)33件 IONIQ 5(ヒョンデ)19件 であった。 アンケート結果分析の第1回では以下、これらの3車種で利用方法の傾向に共通点・相違点があるかを見出していきたい。 なお、本アンケート結果には、回答者層の偏りがあることが考えられる。これから示す結果が全てのEVにおける傾向を必ずしも完全に示すわけではないことを断っておく。 メインは「通勤」、モデル3は「レジャー・旅行」にも大活躍 どの車種にも共通して、利用シーンが多いのは「通勤」だ。また、リーフ、IONIQ5に見られるように、「買い物」でも活発に利用されているようだ。これらは、習慣的な利用のため、EVの充電サイクルが一定であることが一因であると考えられる。一方で、モデル3は、「レジャー・旅行」にも大活躍のようだ。モデル3はロングレンジモデルの場合、689km(WLTCモード)を誇り、安心して遠出できることが結果として表れている。 リーフ 450km(60kWhバッテリー搭載車) 322km(40kWhバッテリー搭載車) モデル3 605km(パフォーマンス) 689km(ロングレンジ) 565km(RWD) IONIQ 5 577km(IONIQ 5 Lounge AWD) 618km(IONIQ 5 Lounge) 618km(IONIQ 5 Voyage) 498km(IONIQ 5) 走行可能距離に関わらず走行距離に大差出ず どの車種もおおよそ、月間に1000km以下の走行をしている。ただ、長距離にも対応した車種の場合、1000km以上の走行ケースも多く見られる。車の年間平均走行距離の目安は1万km(月間、900km弱)と言われているため、EVのユーザーもその傾向にフィットしているようだ。 使い方も、用途も、お好みに合わせて カタログ上で見る、航続可能距離や基本的なスペックを超えて、実際のオーナーからの声は、実に興味深い。前編では、車両自体の特性にフォーカスを当てているが、後編では、車両を保有することに注目した記事となっている。後編にも注目だ。

TAG: #アイオニック5 #モデル3 #リーフ #読者アンケート
TEXT:栁 蒼太
出光、種子島空港でEVの充電実証実験を開始

出光興産、種子島石油、種子島空港の3社は4月10日、種子島空港内の小規模オンサイトPPA(※)による空港ターミナルビルへの電力供給と、EV充電の共同実証を開始した。 ※オンサイトPPA:Power Purchase Agreement(電力販売契約)の一種で、PPA事業者所有の太陽光発電設備を使用者の敷地や事務所・工場などの屋根に設置し、電力を供給するもの。   3社のコラボで達成 3社は、空港におけるカーボンニュートラル実現のための施策として、空港敷地内に太陽光発電パネルを設置し、ターミナルビルにて太陽光由来の電力を活用することによるCO2の排出削減を実証するとともに、再エネ電力のさらなる普及を促進する。 実証にあたっては、2023年3月29日に出光興産が発表した再エネ電力分別供給システム「IDEPASS」を活用し、空港敷地内で発電した再エネ電力を空港ターミナルビルのテナントへ選択的に供給する。あわせて、種子島石油が空港敷地内で管理・運用するEV用普通充電器で、再エネ電力および系統から送電された再エネ以外の電力を公用EVなどに充電する。 なお、出光興産と種子島石油はこれまで、西之表市の公共交通車両のEV化・充電を含めたEV関連事業実証や、南種子町役場庁舎への再エネ電力の供給・EV充電等の実証等を通じ、各市町と協働して種子島における低炭素エネルギーの地産地消の推進に取り組んできた。 充電に多様な選択肢を 今回設置した普通充電器は、従量課金制(充電量に比例して課金)を採用する。さらに、出光興産が開発したEV充電システム「再エネチョイス」を活用しており、EVユーザーが自ら再エネでの充電を選択することが可能だ。 従量課金制による普通充電、そしてユーザーが再エネを選択できる充電は、本年4月3日に南種子町役場で開始した実証とともに、国内における先行事例となる。充電する電力種別や、必要充電量・金額をユーザーが選択することが可能であり、ユーザーニーズに合致した充電が可能となる。なお、当該充電器は一般の人も利用することができる。 どうなる、コラボの行く末 種子島空港は、島外との往来の空の玄関口であり、ビジネスや観光などの活動の起点となる場所だ。実証は4年間の予定で行い、小規模オンサイトPPAの事業性、再エネ電力活用によるCO2の排出削減、従量課金制充電の顧客満足・事業性等について検証する。これらの検証を通じ、出光興産、種子島石油、種子島空港は、空港における低炭素エネルギーの地産地消推進と、EVユーザーと地域の充電事業運営者にとって最適なサービスの構築を目指す。 なお、政府の第6次エネルギー基本計画(2021年10月)では、空港施設・空港車両のCO2排出削減を含む航空分野の脱炭素化の推進と同時に、「空港を再エネ拠点化する方策を検討・始動し、官民連携の取り組みを推進する」ことが盛り込まれている。この実証実験が全国展開への足がかりとなるか、期待したいものだ。  

TAG: #充電 #出光
TEXT:栁 蒼太
フォード、プロトタイプEVの「マスタング・スーパー・コブラジェット1800」を開発

フォードモーターの高性能車とモータースポーツ車両を手がける「フォード・パフォーマンス」はNHRA(National Hot Rod Association:全米ホットロッド・アソシエーション)世界記録を持つ「マスタング・コブラジェット1400」を改良した「マスタング・スーパー・コブラジェット1800」のプロトタイプを発表した。 伝説の名を背負い、世界記録を塗り替えよ 同車は、「マスタング・コブラジェット1400」が持つEVの世界記録であるクォーターマイル(1/4マイル:402m)加速タイム記録8.128秒の更新を狙う。 この目標に対して、フォード・パフォーマンスが率いるチームは、シャシー、パワートレイン、制御システムの修正とアップグレードに全力を注いだ。 また、1969年モデル以来となる伝説のネーミング「スーパーコブラジェット」の名を復活させた。 最強の組み合わせで最速を目指す スーパーコブラジェット1800は、大幅な軽量化を実施。先代と同様に4基のPN-250-DZRインバーターと2基のダブルスタックDS-250-115モーターを搭載している。これらをベースにフォード・パフォーマンスとMLe Racecarsにより設計された、軽量のバッテリーシステムが組み合わせられている。 なお、走行は、AEM社(※)のハードウェア上で動作する、フォード・パフォーマンス独自の制御ソフトウェアによって管理されている。また、新しいデータ収集システム、ダッシュボード、電力分配システムはすべて独自の設計がされている。 ※AEM社:自動車用のエンジンマネジメントシステム、電子制御製品、パフォーマンス部品、吸気システム、排気システム、ゲージ、ディスプレイなどを設計、製造、販売する米国の企業。 集まる注目と期待 スーパーコブラジェット1800は、フルボディ電気自動車の新記録を目指すだけでなく、2023年後半のNHRAイベントで、電気自動車0-60mph最速記録と電気自動車2輪駆動0-60mph最速記録の達成にも挑戦する予定だ。ドライバーはMLe Racecarの共同設立者であり、公式プログラムのテストドライバーでもあるパット・マキューを予定している。 自動車の技術や英知を結集した大変見応えがありそうなこのイベント。今年も新しい記録が生まれることを期待したい。

TAG: #フォード #マスタング
TEXT:栁 蒼太
モバイルサービスカー「ヒョンデQちゃん」を導入

ヒョンデモビリティジャパンは4月18日、整備専用車両「モバイルサービスカー(通称:ヒョンデ Qちゃん)」の稼働を開始した。 快適なカーライフを モバイルサービスカーは、ヒョンデが販売している「アイオニック5」をアフターサービス用に改造したものだ。軽整備作業に関わる整備工具一式を含め、ホスピタリティを届ける様々な装備を備えたモバイルサービスカーとなっている。 ヒョンデ車オーナーからの問い合わせを受けた場合、想定される整備内容や距離、近隣の協力整備工場へのアクセスを考慮しながら速やかに指定場所へ直行する。なお、本サービスは、専門テクニシャンが出張費無料で整備を行う。オーナーは、整備に関するタイムロスを軽減しながらも、快適なカーライフを得ることができる。 EVの本領発揮 特殊工具を含む整備用具や事務手続きのためのプリンター電源、さらにホスピタリティとして修理中に提供する淹れたてのコーヒーなども、アイオニック5のV2L(Vehicle to Load)機能を活用する。 今後は車両から車両への給電を可能にするV2V(Vehicle to Vehicle)機能を実装し、走行中の急な不具合やバッテリー切れ(電欠)に対応する「ロードサイドアシスタンス(RSA)」の展開も予定している。 ヒョンデ Qちゃんは、まずはヒョンデカスタマーエクスペリエンスセンター横浜(CXC横浜)に導入し、今後全国へ徐々に展開される予定だ。

TAG: #アイオニック5 #ヒョンデ #メンテナンス
TEXT:栁 蒼太
VWグループのElli、欧州での充電ポイントが50万カ所に

欧州の大手充電ネットワークプロバイダーであるElliは、その管轄下にある充電ステーションが50万基に到達したことを発表した。Elliは、自動車ブランドに関係なく、欧州28ヵ国の約950のプロバイダーでEVの充電が可能だ。 魅力あふれる急拡大 充電ステーション数が50万基を達成したのは、2022年12月に発表した40万ポイントの達成からわずか約4ヵ月後のことだ。現に「ヨーロッパ最大かつ最も急速に成長している充電ネットワーク」を提供するとフォルクスワーゲン(以下、VW)は声明の中で述べている。 なお、50万台の充電ポイントのうち、大半は普通充電ステーションだが、正確な数はプレスリリースに明記されていない。一方、Elliは、33,000のHPC(high power charging stationと呼ばれる急速充電ステーション)へのアクセスが、独自の充電ネットワークを通じて可能になったとしている。また、約5,000の充電ポイントでは、充電カードやアプリ、RFIDチップ(情報の読み取りや書き換えをするシステムのためのチップ)を使わずに充電プロセスを自動的に開始・決済するPlug&Chargeをすでに導入している。 充電ネットワークの拡大にあたって、Elliは、エネル(Enel)やイベルドローラ(Iberdrola)などのエネルギー事業者、鉱物油会社のBP、イオニティ(Ionity)など、数多くの協力関係やパートナーシップを活用している。 ただ、12月以降急速的に10万台を拡大したものの、VWはどのパートナーとどの地域に10万台の充電ポイントが追加統合されたかは明らかにしていない。 巨大グループならではの盤石なネットワーク Elliの充電ネットワークは、主に多数のVWブランドの充電サービスの基盤となっている。VWの「We Charge」、スペインのセアト(Seat)とクプラ(Cupra)の「Easy Charging」、チェコのシュコダ(Skoda)の「Powerpass」、そして「Audi Charging」も、1月からElli充電ネットワークを使用している。この50万基の充電ポイントは、現在、これらすべてのサービスで利用することができる。 今回は、ドイツ内での取り組みを取り上げたが、日本国内でもアウディ、ポルシェ、VWがプレミアム チャージング アライアンス(PCA)を拡大している。これによって、オーナーは各ブランドの展開する急速充電器を利用できるようになる。ブランド独自の充電ステーションの拡大は、該当するブランドにとっては非常に有効になるだろう。一方、社会インフラとしての、どの車でも歓迎という姿勢ではないため、どのようにネットワークが広がり、ユーザーに受け入れられるのか、今後の展開が気になる。

TEXT:栁 蒼太
ボッシュ、欧州初のバッテリー放電処理装置を開発

ボッシュは4月5日、蓄電池リサイクル施設向けに、使用済み蓄電池の放電・破砕処理およびそれらを制御するソフトウェアを納品すると発表した。 今こそチャンスだ、リサイクルシステム 電気自動車の増加、リサイクルに対する法的規制の増加などの背景から、直に寿命を迎えるバッテリーのリサイクルシステムが必要となっている。なお、フラウンホーファーシステム・イノベーション研究所によると、リサイクルに必要な技術システムは、ヨーロッパだけでも2040年までに60億ユーロ以上の投資が必要とされている。 その中で、ボッシュは、2030年までに欧州で新規登録される乗用車の約70パーセントが電気自動車になり、バッテリーに含まれるリチウム、コバルト、ニッケルなどの原材料のリサイクルに対する需要が高まると予測し、放電処理装置を開発した。 ボッシュに全ておまかせ ボッシュが開発した設備・システムを初めて導入するのは、バッテリー・ライフサイクル・カンパニー(Battery Lifecycle Company)が、新設する蓄電池リサイクル工場だ。その工場にボッシュ子会社のボッシュ・レックスロス(Bosch Rexroth)が設備とソフトウエアを納める予定だ。 また、同工場では、フレキシブルなモジュール式搬送システムやctrlX AUTOMATIONコントロールプラットフォームなど、実績のあるボッシュの産業技術を使用して、現地でバッテリー生産も行う予定だ。工場の稼動は2023年夏を見込んでおり、最大で年間15,000トンのバッテリー材料をリサイクルする見込み。 ※バッテリー・ライフサイクル・カンパニーは、水道・環境サービス大手レモンディス(REMONDIS)傘下のTSRリサイクリング(TSR Recycling)と物流大手レイノス(Rhenus)の自動車物流部門レイノス・オートモーティブ(Rhenus Automotive)が4月に設立した合弁会社だ。 効率も安全も譲らない リサイクルによって、電池の化学元素を最大95%回収し、電池の製造工程に再利用することができる。なお、ボッシュが開発したシステムは、EVに搭載するリチウムイオン蓄電池8個を全自動で15分以内に同時に放電処理できる。通常の放電処理は最大24時間を要するとされ、リサイクルのスピードが大幅に向上することができる。さらに、蓄電池の種類によって異なる構造を認識できるため、電気ショートや発火を抑えられる。 作るだけでは、作れない、エレクトロモビリティ エレクトロモビリティは、電池の生産に必要な原料が十分に確保されてこそ、長期的に確立されるものだ。そのためにも、リサイクルが必要であり、使用したものを再利用、原材料を回収することが求められている。蓄電池の二次的なマーケットが成熟することが見込まれるだろう。 なお、ボッシュは世界最大級の産業見本市であるハノーバー・メッセ(2023年4月17日~21日開催)にて、バッテリーリサイクルの産業技術を出展する。  

TAG: #ボッシュ #リサイクル
TEXT:栁 蒼太
日本IBM、自動車業界のエグゼクティブに対するEV意識調査を発表

日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は、EVに関する最新の調査レポートの日本語版、「持続可能なモビリティー社会の実現を目指して:EVシフトが加速する」を発表した。本調査は、IBMのシンクタンクであるIBM Institute for Business Value (IBV)が、世界9カ国1,501人の自動車業界のエグゼクティブへの調査と7カ国12,663人を対象とした消費者調査とを並行して実施された。 エグゼクティブの厳しい予想 本調査によると、調査対象の消費者の50%が今後3年以内にEVの購入を検討していることが明らかになった。一方で、消費者のEVの需要は高まっているものの、2030年までに自国のEV充電インフラが整うと予想したエグゼクティブはわずか13%で、EVへの移行にはまだ障壁があることも明らかになった。充電設備の利用可能性、信頼性、EVとエネルギーのコストといった主要な要因が、EV導入に影響を与えている。消費者の需要の高まりとインフラの必要性に応えるため、企業や政府は早急な対応が求められているようだ。 エグゼクティブ視点でのEV業界の展望 調査の主な要点は以下の通りだ。 【EVとICE車の逆転】 エグゼクティブは、2030年までにEVへの支出は61%増加し、販売シェアは40%になると予測している。また、2030年までに内燃機関(ICE: Internal Combustion Engine)車への支出は半減し、2041年までにその販売が終了するだろうと予測している。 【開発者と利用者の意識のギャップ】 EV購入の意思決定に関わる要因について、エグゼクティブと消費者の間では見解に相違がある。エグゼクティブは、顧客のEV購入の動機として、充電設備への容易なアクセス(67%)、環境に対する配慮(66%)、自宅で充電が可能(63%)などを想定している一方、消費者は自宅で充電が可能(63%)、維持費が少なくて済む(62%)、燃料費が少なくて済む(60%)を挙げた。 【充電設備不足が最大の懸念】 関心と需要が高まる一方で、消費者の57%が、公共の充電設備の不足を最大の懸念事項として挙げている。家庭での充電が主な充電手段になると予測する消費者は約半数(53%)に過ぎないため、EVの普及に伴い、職場や買い物先、旅行先などの目的地の充電スポット、自宅近くの共有型充電設備、走行途中に急速充電できる設備などバランスよく整備される必要がある。消費者の意欲と、政府や企業がより持続可能な交通手段を整備する力との間には、大きなギャップがある。 【止まる開発者のEVに対する意識】 EVプラットフォームなどの車両ITシステムが、EV事業で新たなコア領域だと考える従来の自動車メーカーのエグゼクティブの割合は30%に満たない。バッテリーをコア事業と捉える回答者も約40%にとどまったが、自動車バリュー・チェーン全体にわたる事業モデルの刷新は進行中。 結果から導く、これからの道筋 調査結果から、EVシフトに向けた自動車メーカーの短期プランニングに向けた具体的なステップを以下のように提示している。 EVに対する顧客のニーズを把握し、現在と今後のニーズとをどうすれば満たせるかを検討する。例えば、ターゲットとする市場のインサイトを検証し、ヒアリングなどを行い、顧客を理解する。 EV化へスムーズに移行できるよう、ターゲット経営モデルを精緻化し、ロードマップを詳細に描く。ロードマップに応じてリソースの配分を計画し、コストを管理しながらパートナーのリソースも活用する。 エコシステムのプレーヤーと協力して電動化に取り組む。例えば、消費者や業界の利害関係者に対し革新的な価値提案を行い、各関係者が充電ネットワークで果たすべき役割を明確にする。 やや抽象度の高いネクストアクションがまとめられているが、エグゼクティブの視点は、自動車業界を支える人のみならず、公共の充電スポットを設営する自治体や各種団体などの数多くのステイクホルダーにも重要な道標を示していると言えるだろう。

TAG: #IBM #調査
TEXT:栁 蒼太
アバルト、「500e」の擬似エンジン音の開発に6,000時間以上を投入と公表

電気自動車をいくつか試していくと、加速にともなうサウンドが微妙に異なることがわかる。モーター自体の音は変わらないので、これはメーカーが加えた演出によるものだ。 スポーツカー・ブランドであるアバルトが、新型の電気自動車「アバルト500e」に擬似エンジン音を採用するために、専門のサウンドデザインチームと共に約2年間のプロジェクトを進め、その過程で6,000時間以上を費やしたことを公表した。このプロジェクトでは、NVH(Noise Vibration and Harshness)部門でサウンドデザインの開発、統合が行われ、アバルトの歴史的なエキゾーストシステム、レコルトモンザのサウンドを検証した。 また、ドライビング体験のあらゆる場面でアバルトのガソリンエンジンが発するサウンドを録音し、高度化された仮想マトリックスに新しい音色を作り出した。さらに、マトリックスに追加のサウンドを取り入れることで、アバルトの歴史的なサウンドと新型アバルト500eの未来感をブレンドし、ドライバーに最高の没入感をもたらすことを実現した。 開発にあたり、オリジナルに限りなく近いサウンドを目指すべく、加速、減速、ブレーキング、高速コーナリング時におけるアバルトのガソリンエンジンの音を録音した。さらには、サウンドキャリブレーション(補正)も実施。録音された音は、専用の技術ツールとプロセスによって慎重に分析され、アバルトのDNAともいえる特徴的な周波数をすべて抽出し、追加音によって新しい音色が作られた。 また、ソフトウェアによって、録音されたサウンドをさまざまなコンポーネントに適応させ、ドライバーが車を操る楽しさをより感じられるようになっている。アバルトの歴史的なサウンドとNew Abarth 500eの未来感をブレンドしたサウンドとなっている。 なお、これらのサウンドシステムは、停車中にドライバーが設定のオンとオフを選ぶことができる。アバルト・モデルはいつも、小さな車体から勇ましいサウンドが聞こえて驚かされるが、その驚きがEVになってもなくならないのは実に嬉しいものだ。

TAG: #500e #アバルト
TEXT:栁 蒼太
ポールスター、「ポールスター4」を「上海モーターショー2023」で発表

ポールスターは4月11日、2023年4月18日から開催される上海オートショーで、新型電動SUVクーペ「ポールスター4」を初公開すると発表した。 ポールスターとは ポールスターは、ボルボカー傘下のスウェーデンの電気パフォーマンスカーブランドだ。北米、欧州、アジア太平洋の世界27市場でオンライン販売を実施する。同社は、2030年に向けて気候変動に影響を与えない生産車を作ることを計画している。 2023年4月中旬現在、ポールスターは2車種を展開している。ひとつは2019年に発売された、北欧デザインが特徴的な350kWの電動パフォーマンス・ファストバックの「ポールスター2」だ。もうひとつは、広々としたインテリアでスポーツカーのダイナミクスを実現する大型高性能SUVである、2022年発売の「ポールスター3」。なお、ポールスターは、2026年までさらに3台の電動パフォーマンス車を発売するとしている。 期待の4番目の星 「ポールスター4」は、電動車ブランドであるポールスターが手がける4番目のモデル。クーペのエアロダイナミクスとSUVならではの広い車内空間を融合させ、最新技術で強化したパッケージをターゲットとしてポールスター最速の量産車になるという。また、ポールスターの次世代クーペEVコンセプトの『プリセプト』のデザイン言語を、最初に採用する市販モデルになる。 ポールスターCEOのトーマス・インゲンラートは、「ポールスター4は、SUVの単なる改良版ではなく、デザイン全体を再考して、新しいタイプのSUVクーペを作り上げた」と語っている。 ボルボの高性能モデルを提供するサブブランド的なポジションのイメージが強いポールスターだが、今後どのような展開を広げていき、浸透するのかをポールスター4は具現する存在となるだろう。  

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VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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