栁 蒼太 記事一覧

TEXT:栁 蒼太
スズキ、2030年度に向けた成長戦略を発表

スズキ株式会社は、2030年度に向けた成長戦略を発表した。 「価値ある製品」づくりをモットーに、モノづくりの根幹である「小・少・軽・短・美」、柔軟さ・素早さ・チャレンジ精神を忘れない「中小企業型経営」、机上の空論を排した「現場・現物・現実」の三現主義で行動し、「スズキらしい2030年度に向けた成長戦略」の表明となった。 スズキは2030年度に向け、主要事業地域である日本・インド・欧州を核にして、カーボンニュートラル社会の実現とインド、ASEAN、アフリカなどの新興国の経済成長に貢献を望んでいる。 2030年度に向けた主な取り組み 各国政府が掲げる達成目標時期に基づき、日本・欧州で2050年、インドでは2070年のカーボンニュートラルの達成を視野に入れ、グローバルでの対応を進める。 日本では、2023年度の軽商用BEVの投入を皮切りに、小型SUV・軽乗用などの投入を予定しており、2030年度までに6モデルを用意。また、軽自動車や小型車向けに新型ハイブリッド・システムを開発し、BEVと併せることで幅広い顧客層に対応する。 欧州では、2024年度よりBEVを投入し、SUV・Bセグメントなどに広げていき、2030年度までに5モデルを展開。欧州各国の環境規制やお客様ニーズに適したシリーズの拡大を進める。 さらにインドでは、「Auto Expo 2023」で発表したBEVを2024年度に投入し、2030年度までに6モデルを展開。BEVだけではなく、ハイブリッド車・CNG※・バイオガス・エタノール配合の燃料などを使用したカーボンニュートラルな内燃機関モデルも継続的に投入する。 ※CNG(Compressed Natural Gas):圧縮天然ガス 未完全、だからこそ面白い BEVの導入を中心にしたパワートレインの刷新にあたっては、先進国から新興国までの幅広いユーザーを踏まえ、各国の環境や規制事情に対応して展開する必要があるため、一様の手段では乗り切れないようだ。中には、THE EV TIMESが注目をしているEVだけではなく、内燃機関での対応も必要になるケースがある。ある意味、EVの技術革新の傍らで内燃機関の進化からも目を離せないと言えるだろう。 EVの魅力は確かに多い。ただ、視野を広げるとまだまだ対応出来ない「未完全」な部分がある。それを補うかのように内燃機関の技術も存在し、発展を続けている。両者の長所短所をうまく擦り合わせた技術にも期待が膨らむ。今後の技術革新が面白そうだ。

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TEXT:栁 蒼太
京都でヒョンデのZEVを体験―Hyundai Mobility Lounge 京都四条―

ヒョンデはオートバックス・グループのフラッグシップ店舗「A PIT AUTOBACS KYOTO SHIJO」において、同社のZEVを体験できるスペース「Hyundai Mobility Lounge 京都四条」を2023年2月4日(土)よりオープンする。  PIT INだけではないトータルサポートを提供 同施設では、ヒョンデが展開するZEV※、電気自動車(EV)「IONIQ 5(アイオニック ファイブ)」と燃料電池自動車(FCEV)「NEXO(ネッソ)」が体験できる。展示、試乗はもちろん、購入相談を実施し、専用の納車空間も設置している。 さらにヒョンデは、「A PITオートバックス京都四条」とZEV整備の技術提携しており、ヒョンデ車両の点検整備・保証整備・他メインテナンスを実施することで、購入から納車、アフターサービスの顧客ケアも用意している。 ※ZEV(Zero Emission Vehicle):走行時に⼆酸化炭素等の排出ガスを出さない電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCEV)の総称

TAG: #オートバックス #ヒョンデ
TEXT:栁 蒼太
メタバース上でサステナブルな暮らしを体験?日産自動車が「NISSAN EV & Clean Energy World」を公開

日産自動車は、メタバース上でEVを活用し、サステナブルな暮らしを楽しむゲーム型コンテンツ「NISSAN EV & Clean Energy World」を公開した。 日産が提供する「EV」とは いち早く量産型のEVを発売した日産は、「EVを作る」ことだけではなく、「『EVのある暮らし』への追求」にも余念がない。 昨今、持続可能な未来のために、太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーの活用が注目されているが、これらのエネルギーは季節や天候、時刻などに影響されやすいため、電気を貯めて効率的に活用することも求められている。 日産は、大容量バッテリーを搭載するEVを電力系統に接続するなど、再生可能エネルギーを有効活用するための様々な研究にも取り組んでいる。また、EVに貯めた電気を家庭の電源として使用するためのV2H(Vehicle to Home)や、電気機器に給電するV2L(Vehicle to Load)などをあわせた、EVのある暮らしを提供してきた。

TAG: #日産
TEXT:栁 蒼太
[集合住宅にもEVを]日産自動車と積水ハウスがタッグ 「+e PROJECT」発足

集合住宅に暮らす、あるいは自宅は持ち家ではなく賃貸派の人々にとって、「自宅(集合住宅)で充電ができない」ケースが多いことは、EVの購入をためらわせる最も大きな要因だ。実際、日産が2022年12月に実施した調査によると、EV検討層の半数は住環境を理由にEV購入を断念しているという。そのような背景のなか、集合住宅でEVを普及させる環境を整えるべく、日産自動車と積水ハウスは共同で「+e PROJECT」を発足させた。  プロジェクト始動、まずはサイトのチェックから プロジェクトのスタートにあたって日産自動車は、神奈川県横浜市に積水ハウスが建築したゼロエネルギーの賃貸住宅「シャーメゾンZEH」において、集合住宅でEVと過ごす暮らしを体験するイベント「+e試住」を3月4日より実施する。「+e試住」では「食体験」「防災シミュレーション」「ペットとの暮らし」の3つのテーマを設定し、集合住宅にてEVのある暮らしを1泊2日で体験できる。 現在集合住宅で暮らしていて、集合住宅へのEV充電設備導入を検討している人に、具体的な方法をまとめた特設サイト(https://ev2.nissan.co.jp/PLUSEPROJECT/)も公開された。ここでは、プロジェクトに関する内容だけではなく、EVと暮らしにかかわるニュースや体験者の声などを定期的に配信するほか、「興味はあるけど、何から始めたらいいの?」という人のための『First Step診断』も設けられている。診断結果の中には充電サービス業者を紹介するページも用意され、設問に答えていくとEV導入に向けて、「初めの一歩」に何をしたら良いかが具体的に分かる仕様となっている。  *ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス):省エネと創エネを組み合わせ、快適な室内環境を実現しながら、年間の一次エネルギー消費収支をゼロにすることを目指す住宅のこと。

TAG: #日産 #積水ハウス
TEXT:栁 蒼太
[東京オートサロン2023]大学自動車部員が熱視線! トムスのEVレーシングカート

世界最大級のカスタムカー・イベント「東京オートサロン2023」(以下、オートサロン)が1月13日から15日まで幕張メッセで開催された。本稿では、自動車に高い関心のあるインターン生(現役大学生)がEV関連で気になった車をレポートする。   モータースポーツの新境地へ 乗用車のEV化に注目が集まりがちだが、モータースポーツ業界でもEV化が着々と進んでいる。国内屈指のレーシングチームTOM’Sを運営する株式会社トムスは、オートサロンにて自社開発のEVカートを出品していた。 トムスでは、EVカートシリーズとして「大人用のレンタルカート」「子供用のジュニアカート」「2人乗り用タンデムカート」の計3種類を販売、リースしている。カーボンニュートラルを基軸とした自動車業界の大きな変革の中、モータースポーツの新たな時代を開拓し、EVカートは全日本カート選手権 EV部門の公式車両としてモータースポーツの新たな可能性を追求するとしている。 初めまして、モータースポーツ レーシングカートは、モータースポーツの入門として大人だけでなく子供にも親しまれてきた。しかし騒音や排気の問題、莫大な費用がかかるという障壁によって、興味関心があっても実際にハンドルを握るのを諦めた人も多かった。 これらの問題を解決するのが、EVカートであるという。電動のため排気ガスを出さず、静粛性も高いため、都心や屋内でも堪能できるレーシングカーとなっている。また、リースやレンタルにも対応することによって、より多くの人に親しみやすくなっている。 静か、パワフル、ジョイフル。 抜群の疾走感に加えて、静粛性を兼ね備えるEVカート。それは、モータースポーツ業界自体を盛り上げる可能性も秘めている。2022年11月には、お台場にて国内最大級のEVカートイベント「にゃんこ大戦争 Presented シティ・サーキット ODAIBA2022」が行われた。そこでは、選手レベルの一流ドライバーの走行だけではなく、車に触れたことがない子供にも走行の機会が設けられ、数多くの人の運転の楽しさを引き出した。また、静粛性を生かしたナイトレースも行われた。都心近郊にいながら、そのようなイベントを開催できるのもモータースポーツに関心を向ける人の獲得につながるだろう。

TAG: #TOM'S #カート
TEXT:栁 蒼太
「EVごはん」が、駐車場検索アプリ「VEEMO(ビーモ)」のユーザー向けコンテンツを提供開始

情報コミュニティメディア『EVごはん』が、VEEMO株式会社の駐車場さがしアプリ『VEEMO(ビーモ)』と連携するようになった。これにより、EVユーザーは、充電スポット周辺のグルメ情報を容易に取得することができる。なお、VEEMOは、充電時間を活用してEV充電スタンドに対するレビューを投稿することでポイントが貯まるサービスを通して、EVユーザー同士のつながりを促進し、EV利用の利便性を向上させている。 「VEEMO」について VEEMOは現在地や目的地周辺の駐車場を、希望の条件に合わせてカンタン、便利に見つけられる駐車場さがしアプリである。駐車場が見つからない際に、VEEMOを使ってカンタン、お得に駐車場を見つけられる体験を提供している。なお、同サービス内にて、ユーザーがEV充電スタンドに対するレビューを投稿することでポイントが貯まり、EV普及の後押しとなるドライバー同士の情報コミュニティの活性化を目標としている。 「EVごはん」について EV充電スポットとその周辺のグルメ情報をピックアップし共有する情報コミュニティメディア『EVごはん』は、2021年10⽉にスタートした。 SNSメディア(Facebookグループ及びTwitter)とWEBサイト〈ev-gohan.com〉にて合計2,000名以上のEVユーザーによる情報コミュニティとして展開してきた。2022年12⽉現在、国内300件を超えるEV充電スポットとその周辺のグルメ情報を集積している。 EVユーザー向けサービス開始の背景 EV〈BEV、PHEV〉は、⼀般的なガソリン⾞の給油が数分で完了するのに対し、充電時間が多くかかることがデメリッ トとされている。しかしながら、充電プラグを指してしまえばその場に居続ける必要はなく、休憩や軽⾷など「他⽬的利⽤時のついで補給」が可能である。最近では、公共施設や⾃動⾞ディーラーに加え、⾼速道路のサービスエリア、ショッピングセンターや様々な商業施設 にも充電スポットが敷設され、買い物やドライブ途中の休憩などの「他⽬的利⽤時のついで補給」の利便性が向上しつつある。 EVの⼤きな魅⼒の⼀つである「他⽬的利⽤時のついで補給」を、EVユーザーを中⼼とした多くの皆様にさらに広く共有したいという思いから、EV充電スポット周辺のグルメ情報をピックアップし共有する「EVごはん」を企画運営してきたという。 ◆アプリ名:VEEMO(ビーモ) ◆価格:無料 ◆公式サイト:https://veemo.jp/ ▼Google Play: https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.pango ▼App Store: https://apps.apple.com/us/app/pango/id1496076912?l=ja&ls=1 ———————————————————————————- ■株式会社141マーケティング 会社概要 会社名:株式会社141マーケティング 所在地:東京都大田区東雪谷2-25-13 代表者:代表取締役 石井 啓介 設立:2017年 URL:http://141marketing.jp/ <公式WEBサイト> https://ev-gohan.com/ <公式SNSアカウント> ■Facebook:https://www.facebook.com/groups/938582420024725 ■Twitter:(アカウント名:@ev_gohan) https://twitter.com/ev_gohan ———————————————————————————- ■VEEMO株式会社 会社概要 会社名:VEEMO株式会社 所在地:東京都江東区豊洲5-6-52 代表者:代表取締役 大久保 亮 設立:2017年 URL:https://corp.veemo.jp/ 事業内容:駐車場検索アプリ「VEEMO」の開発・運営

連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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