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EVが注目され始めたころに出てきた「レンジエクステンダー」! その後全然登場しないけどどうなった?


TEXT:御堀直嗣 PHOTO:本田技研工業/TET編集部
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レンジエクステンダーが再評価される可能性

とはいえ消費者としては、毎日のように遠出はしないまでも、たとえば週末にはゴルフへ行くとか、休暇でキャンプへ行くなどのほか、多人数乗車での移動も時にはあるなど、日々の決まった移動だけでなくそれ以外のクルマの利用も可能性があると思えば、必要最低限というより余裕をもたせたバッテリー容量をあらかじめ備えておきたい心理が働くのではないか。

クルマによるレジャーのイメージ

そうなると、一充電走行距離が600kmというような途方もない性能は不要でも、300~400kmは安心して往復できるEVを望むだろう。となると、レンジエクステンダーの価値が薄れていく。このため、現状ではレンジエクステンダーに関心をもつ消費者が限られ、自動車メーカーも開発意欲がわきにくいのではないか。

もうひとつ、先のi3の例にもあるように、発電だけを考えたエンジン排気量は、これまで自動車メーカーがエンジン車に搭載してきたものより小さくなる。日本には軽自動車があるので、660ccという3気筒エンジンが存在するとはいえ、それが発電用としてそのまま利用できるかどうかはわからない。

軽自動車に搭載される660ccエンジンのイメージ

発電に際してある程度の回転数の変動はあるとしても、発電用エンジンの回転はほぼ一定で、そこで最高効率を求められる。レンジエクステンダーのためだけに発電用エンジンを開発したり、ほかから仕入れたりする手間や原価を考えると、既存のエンジンの活用で車種を増やせるPHEVに企業として目が行ってしまうこともあるだろう。

また、バッテリーに余裕をもちながら、リン酸鉄を電極とするような安価なリチウムイオンバッテリーが登場し、小型車であっても価格を抑えつつそれなりの走行距離を得られるようになってきた。

しかしながら、バッテリーは重い部品なので、価格の高低だけでなく電費という点で、容量を増やすほど同じ走り方をしても消費電力は増え、電費とバッテリー容量のイタチごっこになりかねない。

リン酸鉄リチウムイオンバッテリーのイメージ

将来的に目的地充電がより充実すれば、多少の遠出をする際も、片道分の移動距離さえ確保されれば、行き先で用事を済ます間に充電することで、そもそものバッテリー容量を減らすことが認識されるだろう。それに加えての「安心料」としてレンジエクステンダーの価値が見直されるかもしれない。

EVの性能や価値は、いまの物差しで良し悪しを判断するのではなく、基礎充電、目的地充電、そして経路充電という充電基盤が正しく整備されたとき、新たな価値の発見がなされる可能性がある。

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