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EVのスペシャリストが選出! 後世に語り継ぐべきEV遺産!!


TEXT:御堀直嗣 PHOTO:日産/TET 編集部
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日産の超小型EV「ハイパーミニ」が誕生

第二は、リチウムイオンバッテリーを使った日産ハイパーミニという超小型EVも、EV遺産として忘れたくない1台だ。

ハイパーミニは、2000年から2002年まで販売された。初お目見えは1997年の東京モーターショーで、コンセプトカーとして登場し、1999年に量産市販車が発表された。

価格は400万円だった。軽自動車扱いのふたり乗りEVとしては、三菱i-MiEVに次ぐ高価な値段ではあるが、その内容は先進的かつ、濃厚であった。

日産ハイパーミニ

200Vの充電器を車載し、充電は非接触式コネクターを使用した。これによって取り扱う上で感電の心配はない。この非接触式は、米国ゼネラル・モーターズ(GM)のEV1でも採用された方式だ。

車体は、アルミニウム合金の押し出し材を使ったスペースフレームで、外装に廃車から回収した樹脂の再利用によるフェンダー、ボンネット、バンパーが使われた。こうした軽量化技術により、車両重量は850kgでしかない。重いバッテリーを車載するとはいえ、1トンを切る車両重量は、まさに軽自動車ならではの軽さだ。ちなみに、日産サクラの車両重量は1トンを超えている。

ふたり乗りの短いホイールベースではあるが、前後重量配分は50:50でまとめている。

日産ハイパーミニ

空調にはヒートポンプを採用し、車外からタイマー制御や充電状況の確認ができた。現在のEVそのままの機能だ。

そのうえで、ハイパーミニの活用で忘れてはならないのは、カーシェアリングでの実証実験だ。

2000年当時、カーシェアリングはまだ今日のように一般化されておらず、直前に誰が使ったかわからないクルマに乗ることがためらわれた時代である。たとえばレンタカーであるなら、返却後に必ず清掃したうえで、次の人へ貸し出されるからだ。

ハイパーミニは、横浜みなとみらい地区のほか、海老名市や京都市でカーシェアリングの実証に使われ、さらには米国カリフォルニア大学のデービス校などでも実施された。

当時の10・15モードでの一充電走行距離は100kmとされたが、ふたり乗りの超小型モビリティ的な利用であれば、暮らしに役立つ街のEVとなったはずだ。

日産ハイパーミニの内装

ハイパーミニの外観は、デザイナーの和田 智の手による。日産自動車からアウディへ移籍し、その後、個人でデザイン活動をはじめた和田による造形は、今日なお古さを覚えさせない個性的かつ存在感のある姿だ。いま、ハイパーミニが買えたり使えたりしたら、乗ってみたいと思う人は多いのではないか。

ハイパーミニでの多彩な活動は、カルロス・ゴーン社長の下でリバイバルプランが実行されるなかで日産自動車は取り組んだ。そうした下地によって、2010年の初代リーフが誕生し、2022年の日産サクラへとつながったといえる。

EVの日産という価値は、ハイパーミニの時代から積み上げられてきた。

これを遺産として強く記憶に残しておきたい。

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