日本のEV市場は輸入車とサクラが支えている
2024年に国内で売られた乗用電気自動車のうち、輸入車が40%を占めた。輸入車全体(国産メーカーの輸入車を除く)の販売比率は、小型/普通乗用車に限っても10%だから、電気自動車市場における輸入車のシェアは圧倒的に高い。
このような販売状況になった理由は、国産メーカーの電気自動車が少ないからだ。トヨタは日本の小型/普通乗用車市場に占めるシェアが約50%のメーカーだが、トヨタブランドの電気自動車は、乗用車についてはbZ4Xだけだ。スズキやマツダのように、電気自動車を用意していないメーカーもある。
日本における電気自動車の普及を妨げている理由として、軽乗用車規格に収まる電気自動車が少ないことが挙げられる。その理由は、軽自動車かつ電気自動車となる日産サクラの売れ行きを見ればわかるだろう。サクラは2024年の1カ月平均届け出台数が1911台で、乗用電気自動車全体の38%を占めた。つまり、2024年の電気自動車市場は、40%の輸入車と、38%のサクラが支えている。
サクラが高い人気を得た理由は、電気自動車と軽自動車規格の親和性が高いからだ。電気自動車で長距離を移動するには、駆動用電池の容量を拡大する必要があり、ボディも大型化されて価格も高まる。逆に短距離移動に割り切れば、駆動用電池が小さくても不都合はない。ボディも小さくできて価格も安く抑えられる。
日本では軽自動車のニーズが高く、新車として売られるクルマの40%近くを占めるため、前述のメリットを突き詰めたサクラが成功した。日本で電気自動車を大量に売るなら、サクラのような軽自動車の規格で開発する方法がもっとも効果的だ。
ところが、軽自動車規格の電気自動車は選択肢が少ない。2025年3月時点で販売されている軽乗用車の電気自動車は、日産サクラ、サクラと基本部分を共通化した三菱eKクロスEVだけだ。軽商用車にはホンダN-VAN e:、三菱ミニキャブEV、後者の姉妹車になる日産クリッパーEVがあるが、それでも車種は少ない。