2025年3月
TEXT:すぎもと たかよし
「セダンであり、5ドアクーペであり、SUV的でもある」という謎の表現! でも確かにカッコイイ「ボルボES90」をデザインのプロはどう見る?

3つの顔をもつユニークなスタイル 2025年3月5日、ボルボカーズは新型ES90を欧州で発表しました。同ブランドで6台目となるBEVとして、800Vテクノロジーなど最新のテクノロジーだけでなく、スタイリングにも新しい提案があるようです。今回は、公開された写真からエクステリアデザインの魅力に迫ってみたいと思います。 まずボディ全体を見渡すと、全長はS90より30mm長い5mとされますが、ホイールベースはなんと70mmも拡大されて3.1mに達しており、ここはじつにEVらしいディメンション。 前後を走る、長く明快なショルダーラインにキャビンが載るイメージはそのS90と共通ですが、同ブランドが「セダンであり、5ドアクーペであり、SUV的でもある」と謳うとおり、リヤまで延ばしたルーフとテールゲートの存在が新型独自の特徴です。 最初に写真を見たときは「なぜ5ドア?」と思いましたが、荷室部分を広げることで高い居住性を示し、結果、市場の大きいSUV的なシルエットも獲得する狙いが感じられます。 で、あらためて前からチェックすると、外形までトールハンマー形状としたヘッドライトやパネルで覆ったグリルなどはEX30と同じ表現。もうひとつ、縦型のフォグランプからヘッドライトを経由しショルダーにつながる大きなラインの流れが新しい提案で、これはボディラインを整理する手段でもあるようです。

TAG: #ES90 #デザイン
TEXT:TET 編集部
BEV用の新開発プラットフォーム「PPE」初採用! アウディQ6 e-tron/SQ6 e-tronがついに日本デビュー

新型電動SUV「Q6 e-tron」「SQ6 e-tron」を発表 アウディ ジャパンは、プレミアムミッドサイズ電動SUV「Q6 e-tron」およびスポーツグレード「SQ6 e-tron」を発表した。2024年4月15日から全国の正規ディーラーにて発売を開始する。 Q6 e-tronシリーズは、アウディがポルシェと共同開発した新しいBEVプラットフォーム「PPE(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)」を採用した初の市販モデルで、アウディのSUVシリーズ「Qモデル」らしいスタイルと、BEVシリーズ「e-tron」のデザイン言語を融合させ、高い走行性能と充電速度、さらに最長672km(SQ6 e-tron)という優れた一充電航続性能を高次元にバランスさせた次世代電動SUVだ。 テクノロジーを可視化したエクステリアとインテリア Q6 e-tronは、全長4770mm×全幅1940mm×全高1695mm、ホイールベース2895mmの堂々としたプロポーションを備える。全体的にはソフトな印象を与える流れるようなフォルムを持ちつつも、シャープなラインやエッジがコントラストを生み出し、静止しているときでもダイナミックな存在感を放つデザイン処理が施されている。とくにDピラー下部のquattro(クワトロ)ブリスターと呼ばれる部分は、アウディのデザインDNAである「テクノロジーの可視化」を表現しており、「e-tron GT」の流れを汲んだ力強さと安定感を視覚的に訴えかける。 インテリアは、立体的でハイコントラストな3Dデザインを採用し、奥行と洗練された美しさを実現したという。また、新開発された未来志向の電子アーキテクチャー「E³ 1.2」により、車両のデジタル化をこれまで以上に直接体験できるようにしている。これにより生み出されたコネクテッド機能を備えたデジタルインテリアが、特徴的な空間の演出に深く貢献している。 11.9インチのバーチャルコックピットプラスと14.5インチのMMIパノラマディスプレイで構成されたコクピットは、明るく広々としたスペース感覚を与える。また、助手席側にも10.9インチのMMIパッセンジャーディスプレイが装備され、デジタルコンテンツを楽しんだり、充電ステーションの検索をサポートしたりといった機能を有し、新たな移動体験を提供する。 室内空間はソフトラップと呼ばれるトリムが、ドアからコクピット全体、そしてセンターコンソールにまでシームレスに広がる。これにより、乗員を包み込むような調和の取れたスペースを生み出している。また、eモビリティにシフトするアウディの新しいラグジュアリーの在り方を、リサイクル素材を活用するなどして表現。レザーフリーマテリアルのオプションも提供され、サスティナビリティへの配慮も忘れない。 トランクは526リットルの容量を備え、3分割式のリヤシートを倒すことで最大1529リットルまで拡大する。さらに、64リットルのフロントトランク(フランク)を設け、高い実用性を誇る。 むろん新開発のPPEプラットフォームにより、広々とした室内空間と快適な居住性を手に入れていることはいうまでもない。 Audiならではのライティング技術がさらに進化 Q6 e-tronには、世界初の「アクティブデジタルライトシグネチャー」が装備されている。このフロントフェイスを引き立てるデジタルライトは、12のLEDセグメントとアルゴリズムの相互作用により、8パターンのライトシグネチャーの選択が可能だ。 リヤのデジタルOLEDライトは、従来の10倍にあたる合計360のセグメントを備えた6枚のOLEDパネルを装備している。これにより、リヤエンドのデザイン性を高めるだけでなく、周囲の状況に応じた警報シグナルを発する「コミュニケーションライト」機能を搭載し、安全性の向上に寄与する。

TAG: #Q6 e-tron #SQ6e-tron #アウディ #新型車情報
TEXT:桃田健史
そういや「スマートグリッド」ってドコいった? EVを蓄電池として利用する流れのいま

EVを住宅に組み込もうという流れは途絶えていない マンションや一戸建て住宅で、オール電化はかなり普及してきた。そうしたなかに、EVを組み込むという発想もあるが、将来的に世のなかはそうした方向にさらに進んでいくのだろうか。 時計の針を少し戻すと、日産リーフや三菱i-MiEVが登場した2010年代初頭、「スマートグリッド」という言葉が流行った。 次世代電力網のことで、既存の電力や再生可能エネルギーと住宅や企業との電力の送受信を、自宅に設置したシステム「スマートメーター」で確認したり、各種の設定を変更できる仕組みが普及した。 こうしたスマートグリッドのなかで、EVを大きな蓄電池という位置付けで見るようになった。いわゆるV2H(ビークル・トゥ・ホーム)という発想だ。 とくに日産はV2Hに積極的で、2010年代初頭から中頃にかけて、電気関連の大規模見本市「CEATEC」で日産ブース内に住居に見立てた大きな展示を行い、そこにリーフをつなぐというプロモーションを行っていた。 ところが近年、大手電力関連企業関係者らと意見交換していると、「死語」とまではいわないが、スマートグリッドという名称が日頃の事業活動のなかで出てくる機会はほとんどないと指摘する。 一方で、「卒FIT」に関連して、EVを住宅に組み込もうという流れは、いまも途絶えていないようだ。卒FITは、FIT(再生可能エネルギー由来電力の固定価格買取制度)の買取期間が終了すること、2019年から卒FITの事例が増えてきたことを受けて、EVを自宅の定置型電源として採用することを見直そうという動きだ。 見方を変えると、定置型電源の価格が高く、電気容量でkWh換算で見ると、中古のEVを買ったほうが安く済むという。ただし、最近は定置型電源の普及が進んできており、価格も徐々に下がってきている状況だ。 最近は、EVが搭載する電気容量が大型化しており、スマートグリッドとしての使い勝手も変わってきている。 また今後は、自動車産業界のバリューチェーンと称する、新車を販売したあとの各種サービス事業のなかで、エネルギーマネージメントに関する新しいビジネスモデルについて、自動車メーカーなどが模索しているところだ。そこには、スマートフォンを含めた通信事業も絡んでくるだろう。 近い将来、単なる「オール電化住宅+EV」という発想を超えた、社会体系の変化が起こるなかで、ユーザーにとって有意義なサービスが登場することを大いに期待したい。

TAG: #V2H #オール電化 #スマートグリッド
TEXT:琴條孝詩
白ばっかりだったテスラだが今度はグレーだらけになるハズ! アメリカのEVテスラのボディカラーが偏るワケ

テスラは標準色にパールホワイトマルチコートを採用 街なかでテスラを見かけると、その多くが白色であることに気づく。これは偶然ではなく、テスラが標準色としてパールホワイトマルチコートと呼ばれる白を採用していることが大きな要因であろう。ちなみに、標準色は追加費用がない。 なので、機能に差がなく、色にこだわりがない人は標準色を選ぶ理由もよくわかる。とくにテスラのホワイトは高級感のある美しい色味で、追加料金を支払ってほかの色を選ぶ必要性を感じない購入者が多いことは確かだ。 <世界的に見ても白い自動車が好まれる> クルマの色は、ホワイトが世界的にも人気を集めている。ガラス・塗料メーカーの米PPG社の調査によると、2022年に販売された新車の34%がホワイト系の塗装を施されており、2位のブラック(18%)を大きく引き離している。 その理由はいくつかある。 まず、ホワイトは汚れや傷、塗装の劣化が比較的目立ちにくい。また、夏場の暑さ対策としても有効で、ほかの濃色と比べて車内温度の上昇を抑える効果がある。これはとくに電気自動車において重要で、エアコンの使用を抑えることでバッテリーの消費を節約できる。 さらに、ホワイトは中古車市場での売却時に高値がつきやすいという利点もある。人気色であるホワイトは、中古になってもなお人気が持続し、平均的な色と比べて高いリセールバリューをもつ。そういった理由からここ数十年間ずっと日本の自動車市場でもホワイトがもつ清潔感や高級感が重要視されていた。

TAG: #ボディカラー #白
TEXT:御堀直嗣
なんで急速充電のタイプがこんなにある? 世界で統一していない理由は各国のくだらない意地の張り合いでしかない

日本の急速充電器規格はCHAdeMO 電気自動車(EV)の充電口は、地域や国によって種類が異なる。 充電にはふた通りある。ひとつは200Vによる普通充電で、おもに自宅や仕事先、あるいは宿泊先などで、時間をかけて充電する方法だ。もうひとつが急速充電と呼ばれるもので、高電圧の大電流を使い、短時間に充電を行う。このため、移動途中での経路充電で利用される。 よく話題にのぼるのは、その急速充電についてだ。充電の規格は、普通充電にも急速充電にも存在するが、多くの人が気にするのは、急速充電だろう。 日本で使う急速充電は、CHAdeMO(チャデモ)と名付けられた方式だ。これが世界初の急速充電規格である。なぜなら、EVを量産市販したのは日本のメーカーが最初であるからだ。しかも、世界へ販売することを目指し、世界各地にこの急速充電規格を広め、実際、欧米やアジアにその実績がある。CHAdeMOは、今日も継続的に世界で活動を行っている。 当初は、EVの量産市販に積極的でなかった欧米自動車メーカーだが、フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル排気偽装が2015年に米国で表面化したことにより、ディーゼルエンジンの行く末に疑念が生まれ、EV化が一気に加速した。 そもそも、米国カリフォルニア州で1990年にZEV(ゼロ・エミッション車)法が施行されたとき、一番の目的は大気汚染防止にあった。そのうえで、排気がなければ二酸化炭素(CO2)の排出もなく、温室効果ガス(じつはCO2よりメタンの方が影響は大きい)に対応できることから、ディーゼルエンジンを止めてEVへの転換が起こった。 2000年前後、欧州は、ハイブリッド車を含め電動化しなくても、燃費のよいディーゼルエンジンで温室効果ガスを削減できるとした。しかし、そこに大気汚染防止の視点が欠けていた。結果として排気に含まれる有害物質について偽装が行われたのである。じつは、当時すでに欧州では大気汚染が目に見えるかたちで進み始めていたにもかかわらずである。 話を元へ戻すと、そうした背景から、欧米は日本に遅れて充電規格の課題に直面した。それに際し、日本の規格をそのまま導入するのは不本意との思惑から、あえて別規格を打ち立てたのである。それが、コンバインド方式、一般にCCS(コンバインド・チャージング・システム)と呼ばれる、CHAdeMOと別の充電規格だ。 世界統一の機会を阻んだのは、後発の欧米である。そしていまなお、潜在性能や安全性の点でCHAdeMOが上まわっている。その理由は後述する。

TAG: #充電 #規格
TEXT:大内明彦
ブレーキダストを封じ込めて環境対策! メルセデス・ベンツが開発したEVならではの技術「インドライブ・ブレーキ」ってどんなもの?

インドライブ・ブレーキの開発で環境保全に貢献 いまや環境保全は、地球規模での大きな社会問題となっている。こうした意味では、走行によって二酸化炭素を排出する内燃機関使用の自動車は、ほかにも環境汚染に関していくつかの問題を抱えている。ブレーキパッドをローターに圧着して制動力を得るブレーキシステムもそのひとつだ。 強い力で回転するブレーキローターにパッドを圧着し、その摩擦力で制動効果を得るブレーキシステム(ディスクブレーキ)は、ローターに圧着するパッドが削られ細かな粒子となって大気中に放散されている。これが環境汚染の要因となるわけだが、ブレーキダストを放散しない、逆にいえばブレーキパッドの長寿化、交換頻度の極めて低いブレーキシステムを実現すれば、やはり環境保全に貢献することになる。こうした発想で、いわゆるメンテナンスフリーのブレーキシステムをメルセデス・ベンツが発表した。 とりあえず、メカニズムに詳しい方に対して簡潔な説明をしておこう。このシステムは、ブレーキをインボード化しローターとパッド(キャリパー)を完全に覆ってしまう構造だ。ブレーキシステムを完全に密閉し、ブレーキダストが大気中に放散されないようにしたもので、EVが制動に関してメカニカルブレーキに対する依存度が低いことに着目した方式となっている。 では、メカニズムはそれほど詳しくない、という方に対して詳しく説明しよう。通常、自動車のブレーキは、ホイール/タイヤの裏側に設けられ、現在はほとんどの車両がディスクブレーキ(廉価モデルの非駆動輪では一部ドラムブレーキあり)を採用しているが、このディスクブレーキ、ホイール/タイヤと一体に装着された円盤(ブレーキローター)にブレーキパッド(摩擦材)を圧着して制動力を得る仕組みとなっている。しかし、この圧着圧力によってパッドが細かく削られ、それがゴミ(ブレーキダスト)として大気中に放散され、いわゆる環境汚染となっている。 これを防ぐ有効な手立てはないものか、という視点から開発されたEVのブレーキシステムが、メルセデス・ベンツの「インドライブ」機構だ。基本的な考え方はいたってシンプル。ブレーキダストを大気中に放散しなければよいというもので、やむなく発生したブレーキダストは大気中に放散しないで1カ所に溜め置き、長期間の溜め置きに耐えられるよう、ブレーキダストの発生量は極力少ないものにする、という考え方だ。 ポイントは、ホイール/タイヤと一体で装着される通常のブレーキ構造(アウトボード・マウント)では、ブレーキダストが放散しない密封構造とするのはむずかしく、インボードマウントのブレーキ方式に着目した。もちろん、アウトボードマウントのドラムブレーキという選択肢もあり、実際にVWやアウディで採用するモデルもあるが、インボードブレーキにはほかにもメリットがあるということで、メルセデス・ベンツは「インドライブ・ブレーキ」システムを開発した。

TAG: #インドライブ・ブレーキ #ブレーキ
TEXT:高橋 優
日産がもの凄いEVを中国で展開し反転攻勢! ライバルを凌駕するN7の中身

N7に新規プラットフォームを採用 日産が中国市場においてEVテクノロジーに関する発表会を開催しました。EV性能、自動運転、スマートコクピット分野における最新テクノロジーを結集することによって、中国市場で反転攻勢を仕掛けます。 まず、日産の中国市場における現状を紹介しましょう。このグラフは日産を含めた日本メーカー勢と中国BYDの年間販売台数の変遷を示したものです。日産の2024年シーズンの小売販売台数は約60万台となり、前年比で1.4%ものマイナス成長となりました。日産は2019年シーズン以降、一貫して販売台数が低下しており、2019年シーズンと比較すると半分ほどの販売規模にまで低下しています。 とくに日産は、中国国内で大衆セダンであるシルフィの一本足打法となってしまっており、競合車種となるBYDのQin PlusやQin LというPHEVが、そのシルフィを上まわる燃費と快適性、先進さを兼ね備えることによって、現在シルフィの販売台数が減少。それによって値引き対応を強いられている状況です。 そして日産は、2026年までに5車種もの新エネルギー車を中国国内に展開していく計画を発表しています。そして第一弾として、ミッドサイズセダンのN7の発表を行い、2025年5月中にも発売をスタートする見込みです。そのN7以降の新型EVに投入される最新テクノロジーの発表会の内容を解説していきましょう。 まず初めに、新規プラットフォームを採用する方針を表明しました。ホイールベースは2700mmから3150 mmというBからDセグメントに対応。BEVとともに、PHEV、そしてEREVにも対応可能です。 また、フロントにはダブルウイッシュボーン、リヤには5リンクを採用しながら、CDC電子制御サスペンション、およびデュアルチャンバーエアサスペンションを採用。さらに、高効率のヒートポンプシステムはマイナス30度から50度にまで対応。4つもの排熱回収モードを備えることによって、エネルギー消費量を5%節約可能です。 さらに、ファミリーセダンとしての快適性の追求を目的として乗りもの酔い対策を実施。電子制御ダンパーを活用することによって加減速におけるピッチングをコントロール。自動運転の際の加減速、停止と再発進時における車体の揺れを低減します。 そして、安全性と操縦性を向上させるために、高張力鋼とアルミニウム合金の配合割合を83%にまで高めながら、最大1700MPaもの超高張力鋼を採用することによって車両のねじれ剛性は5万Nm/degを突破。これはポルシェタイカンの4万Nm/degをはるかに上まわっており、さらにシャオミSU7の5万1000Nm/degにすら匹敵するレベルです。よって、高速走行時における安定性だけではなく、車両の振動や静粛性の向上にも期待できます。

TAG: #N1 #新型車
TEXT:御堀直嗣
じつは回生ブレーキを全開で使うとタイヤがロックするほどの減速も可能! 将来的にEVからブレーキペダルが消える可能性はある?

多くのEVはワンペダルドライブが可能 電気自動車(EV)で、エンジン車とまったく異なる最大の機能は、減速時の回生だろう。回生とは、モーターと発電機が同じ機構であることから成り立つ機能だ。 モーターに電気を供給すると、駆動力を生み出す。そしてクルマが走る。鉄道では、これを力行と呼んでいる。 一方、走っているEVのモーターへ、電気の供給を止めると、速度という運動エネルギーがモーターに与えられることになり、モーターは発電機に切り替わり、回生をはじめる。 回生とは、生き返るという意味で、英語ではregeneration(リジェネレイション)といい、EVでは発電の意味になる。EVを走らせるため、モーターとして電気を消費したけれど、減速するときは回生によって電気が生み出されるので、生き返る……ということになる。 ただし、使った電気のすべてが生き返る=発電できる(戻せる)わけではない。 回生が働くとき、減速させる抵抗が生じる。それは、モーターを構成する回転子(ローター)と固定子(ステーター)が、それぞれ磁石として磁力をもち、互いに影響しあって回転を止めようと働くからだ。この抵抗による減速を、速度を下げるために使うのが、回生ブレーキと呼ばれる効果だ。そこから、アクセルだけのワンペダルによる運転操作が可能になる。 運転者が、停止線までの目測をあやまらず、適切にアクセルペダルを戻していけば、ブレーキペダルを踏むことなく停止できる。ただし、国産EVでは、停止できないよう行政指導が行われている様子で、回生の機能を活かしきれていない。 では、機能としてブレーキペダルを使わずに停止まで減速していけるなら、ブレーキは不要になるのか。 じつは、上手な回生の利用により、ペダル踏み替えを90%近く減らせるといわれる。EVではないが、EV技術を基にした日産のハイブリッドシステムであるe-POWERは、モーター駆動であるため、ワンペダル的な操作を可能にするe-POWERドライブを設けている。これを利用すると、ペダル踏み替えを70%減らすことができ、操作に熟練すれば90%近くに減らすことも可能だと日産は説明する。 そのうえで、回生+ブレーキホールドにより、停止まで可能な制御にすれば、運転中にブレーキペダルを踏んで減速や停止する場面は、限りなく減らすことができるだろう。 しかし、それは通常の運転をしている場合の話で、さらに、ワンペダル操作を身に着けた運転者の場合であって、ワンペダル操作に不慣れであったり、緊急の危険回避が必要であったりする際は、やはりブレーキの存在が不可欠だ。 電車が普及した鉄道でさえ、回生だけで運行されているわけではなく、車両には必ずブレーキ装置が備わる。

TAG: #ワンペダル #回生ブレーキ
TEXT:TET 編集部
交換式バッテリーの実用化は商用・フリートから! 米Ample社と三菱ふそうが提携し都内で実証実験開始

EVの交換式バッテリーが現実に Ample社は、アメリカを拠点とする電気自動車(EV)のバッテリー交換技術を開発・提供する企業である。独自のモジュール式バッテリーを採用し、専用ステーションで数分以内にバッテリー交換を完了できる仕組みを構築。従来の充電方式に比べて時間を大幅に短縮し、ライドシェア車両やフリート(商用車)向けの効率的なエネルギー補給手段として注目されている。 今回Ample社は、三菱ふそうトラック・バスおよび三菱自動車工業と提携し、東京にバッテリー交換ステーションを設置することを発表した。この取り組みは、東京都が掲げる2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減する目標を支援するものとなる。 Ample社のバッテリー交換ステーションでは、5分で電気自動車のバッテリー交換が可能であり、交換費用は32kWhバッテリーで約2000円からとなっている。プロジェクトの第一段階では、商用・配送フリート向けに展開し、最終的には一般消費者にも利用可能なネットワークを構築する計画だ。 日本は自動車産業において世界をリードする立場にあるが、電気自動車(EV)の普及は他国に比べて遅れている。その要因には、充電時間の長さや電力供給の制約、都市部の限られたスペースといった課題がある。Ample社のバッテリー交換技術はこれらの障壁を克服し、EV利用をガソリン車並みに便利にすることを目的としている。 Ample社のモジュール式バッテリーは、ほぼすべてのEVモデルに対応可能であり、既存のバッテリーの代替として機能する。さらに、同社のバッテリー交換ステーションはコンパクトかつ短期間で設置が可能であり、高密度都市に適したソリューションとなっている。 2024年初頭、Ample社は三菱ふそうトラック・バス株式会社およびENEOSホールディングスとのパートナーシップを通じて、京都でバッテリー交換ステーションの運用を開始した。京都での実証実験では、既存のフリート運用への影響を最小限に抑えながら、迅速なエネルギー供給による運用効率の向上や電力網への負荷軽減といった成果を導きだしている。 この成功を受け、東京への展開が決定。各ステーションは100台以上の車両をサポートし、物流・商用車両向けの追加充電ソリューションとしての役割を果たす。これにより、都内の商用EV導入を促進し、持続可能な都市環境の実現に寄与するという。 Ample社のCEOであるカーレド・ハスーナ氏は、「東京は持続可能な都市開発において世界をリードしており、商業配送の主要市場でもある。私たちは、東京都が人口密集都市の電動化モデルを示すのを支援できることを光栄に思う」とコメントした。 EVインフラの拡充と環境負荷の軽減を目的とし、持続可能な都市モビリティの未来に向けた重要な一歩となる本プロジェクトの進捗に、今後も注目してゆきたい。

TAG: #交換式バッテリー #充電インフラ
TEXT:山本晋也
「軽量化は最大のチューニング」なんて言うけど電気自動車には当てはまらない? 重さが有利に働くこともある!

ハイパフォーマンスEVはトラクションに優れる EV(電気自動車)において、高いパフォーマンスを誇るモデルが増えている。むしろ高価格帯になればエンジン車を圧倒するハイパワーであることは珍しくない。 そして、たとえばエンジン車で1000馬力ともなれば路面に伝えるだけでも大仕事となりがちだが、EVにおいては、容易にハイパワーを受け止めることができるという認識をもっている人も多いことだろう。 はたして、駆動力を路面に伝えるトラクションという点において、EVはエンジン車よりも有利なのだろうか。 その疑問に対しては「イエス」と回答できる。 理由のひとつは、ハイパフォーマンス系EVは必然的に重くなり、それがトラクションに有利に働くということだ。 これまでの常識的な認識において、運動性能を重視したスポーツカーにおいては「軽ければ軽いほどいい」といわれる。加速、減速、旋回といった要素において、軽いほうが有利なのは間違いない。ただし、トラクションという一点に絞ると、軽すぎることはタイヤの接地圧を稼ぐのには不利で、大トルクを与えたときにスリップしやすいのも事実だ。 EVのハイパフォーマンス化をハイパワー化と捉えた場合、大出力を実現するにはそれなりに大容量のバッテリーが必要となる。そうすると、どうしてもバッテリーが大きく、かさんでしまうため、車体は重くなりがちだ。それはトラクションにおいては有利な条件だ。 つまり、重量級となりやすいハイパフォーマンスEVは、トラクションにおいて優れた傾向にあるといえる。 物理的な重さというのは、とくに発進時のトラクションに有利に働く。ご存じのようにモーターというのは発進時に大トルクを発揮しやすい特性があるわけで、電気駆動のメリットを引き出すにも、重量増によるトラクション確保というのはポジティブな要素と考えることもできる。

TAG: #トラクション #車重

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