EVを住宅に組み込もうという流れは途絶えていない
マンションや一戸建て住宅で、オール電化はかなり普及してきた。そうしたなかに、EVを組み込むという発想もあるが、将来的に世のなかはそうした方向にさらに進んでいくのだろうか。
時計の針を少し戻すと、日産リーフや三菱i-MiEVが登場した2010年代初頭、「スマートグリッド」という言葉が流行った。
次世代電力網のことで、既存の電力や再生可能エネルギーと住宅や企業との電力の送受信を、自宅に設置したシステム「スマートメーター」で確認したり、各種の設定を変更できる仕組みが普及した。
こうしたスマートグリッドのなかで、EVを大きな蓄電池という位置付けで見るようになった。いわゆるV2H(ビークル・トゥ・ホーム)という発想だ。
とくに日産はV2Hに積極的で、2010年代初頭から中頃にかけて、電気関連の大規模見本市「CEATEC」で日産ブース内に住居に見立てた大きな展示を行い、そこにリーフをつなぐというプロモーションを行っていた。
ところが近年、大手電力関連企業関係者らと意見交換していると、「死語」とまではいわないが、スマートグリッドという名称が日頃の事業活動のなかで出てくる機会はほとんどないと指摘する。
一方で、「卒FIT」に関連して、EVを住宅に組み込もうという流れは、いまも途絶えていないようだ。卒FITは、FIT(再生可能エネルギー由来電力の固定価格買取制度)の買取期間が終了すること、2019年から卒FITの事例が増えてきたことを受けて、EVを自宅の定置型電源として採用することを見直そうという動きだ。
見方を変えると、定置型電源の価格が高く、電気容量でkWh換算で見ると、中古のEVを買ったほうが安く済むという。ただし、最近は定置型電源の普及が進んできており、価格も徐々に下がってきている状況だ。
最近は、EVが搭載する電気容量が大型化しており、スマートグリッドとしての使い勝手も変わってきている。
また今後は、自動車産業界のバリューチェーンと称する、新車を販売したあとの各種サービス事業のなかで、エネルギーマネージメントに関する新しいビジネスモデルについて、自動車メーカーなどが模索しているところだ。そこには、スマートフォンを含めた通信事業も絡んでくるだろう。
近い将来、単なる「オール電化住宅+EV」という発想を超えた、社会体系の変化が起こるなかで、ユーザーにとって有意義なサービスが登場することを大いに期待したい。