Contents
価格は8万9900ドルからのスタート
いずれにしてもアフィーラ1は、2022年にソニーホンダが立ち上がって4年で納車をスタートしなければならないという突貫プロジェクトだったことから、EV性能に関連するハード部分は、既存のテクノロジーを流用せざるを得なかったのではないでしょうか。よって電費性能で競合車種とまるで勝負になっていない結果になってしまったのではないかと推測できるのです。
ちなみに動力性能でも、テスラ・モデルSは最高出力504kW/0-100km/h加速3.2秒を実現し、またLucid Air Touringは462kW/0-100km/h加速3.6秒を実現しており、360kWという最高出力のアフィーラ1を凌駕しています。
また、車内空間の広さについて、2列目の足もと空間をよく見てみるとセンタートンネルが存在していることがわかります。これは、エグゼクティブセダンとしてはかなりマイナスな部分でしょう。ちなみに後席足もと部分には120Vコンセントが搭載されていますが、上級グレードのSignatureグレードのみの装備内容であるという点も注意するべきでしょう。
また、アフィーラ1にはエアサスペンションシステムが標準搭載され、なんといっても自動車メーカーであるホンダのエンジニアが足まわりのエンジニアリングを担当していることから、その乗り心地とハンドリング性能の両立にも一定の期待が集まります。とはいうものの、Lucid Air TouringとモデルSは北米の自動車ジャーナリストからそのEV性能以上にハンドリング性能に対して非常に評価が高いことから、実車の評価にも注目です。
そして今回もっとも注目すべきは値段設定です。アフィーラ1 Originは8万9900ドル、日本円で1419万円からのスタートです。対するモデルSは現在7万9900ドルからのスタートであり、しかも現在モデルSを購入するとスーパーチャージャーの永久無料特典が付与されます。また、Lucid Air Touringも7万8900ドルからのスタート。つまり、今回のアフィーラ1というのは、EV性能で明確に劣っていながら遥かに高い値段設定ということになるのです。
このアフィーラ1について、いくつか示されたEV性能以外のスペックについてもみていきましょう。
まずは自動ドア。ユーザーがドアに近づくと自動で開閉します。ユーザーが乗り込むと、顔認証なのか、もしくはスマホとの連携によるものなのか、あらかじめ設定されているプロフィール情報と連携して、シートまわりやサウンドシステムが自動調整される模様です。
音響システムもロードノイズキャンセリング機能を搭載しながら、ソニーの開発する独自の音響システムを搭載。ドルビーアトモスなどの空間音響システムにも対応し、SpotifyやAmazonミュージックなどのアプリにも対応します。
そして個人的にもっとも重要と考えているのが、自動運転システムです。アフィーラ1には合計40ものカメラやLiDAR、センサーやレーダーが搭載され、いわゆる市街地における自動運転支援レベル2+以上のハイエンドADASに対応可能です。さらに、アイズオフが可能となるレベル3自動運転にも対応する冗長性を備えていることも発表されました。
とはいうものの、とくに北米市場ではテスラが自動運転開発をリード。すでに市街地における自動運転支援であるFSD Supervisedをリリース済みです。その上で2025年末までにアイズオフが可能となるFSD Unsupervisedをリリース予定であり、2026年中にはそれをロボタクシー事業として商業的な運用がスタート予定です。つまり、アフィーラ1の納車が始まるころには、テスラはFSD Unsupervisedのリリースをすでにスタートしているはずであり、アフィーラ1のADAS性能はテスラのFSD Unsupervisedと比較されることになるわけです。
EV性能で劣りながら自動運転でもテスラ以下となった場合、一体どれほどのユーザー、とくにテスラのお膝元であるカリフォルニアの住人が、テスラではなくアフィーラ1をチョイスすることになるのか、正直いって北米における販売台数はかなり厳しいと感じざるを得ません。
まずは予定通りの納車のタイムラインを実現できるのか、ソニーホンダの挑戦には今後も注目です。