N7のロングレンジグレードは約380万円からになるだろう
他方で、大衆EVセダンセグメントは競争が激化しています。N7にとって最大のライバルとなるのが、XpengのP7+とMONA M03、そしてBYD Hanの存在でしょう。とくに11月から納車がスタートしているXpengの中大型セダンであるP7+は、60.7kWhのLFPバッテリーを搭載することで600km以上の航続距離を確保しながら、800Vシステムを採用することで超急速充電にも対応。トランク容量も725リットルと大容量を確保しながら、20スピーカーシステムの採用やアンビエントライト、シートマッサージやレッグレスト付きのナッパレザーシート、後席シートでも電動調整やシートマッサージ機能などを完備。何といってもXpengの強みである市街地NOAを含めたハイエンドADASをすべて標準装備しており、その上でP7+は399万円から発売中です。
N7のロングレンジグレードはeπ007の値段設定から推測するに、概ね380万円程度から発売されることになると推測できます。よってP7+は直接の競合となるでしょう。
さらにXpengは大衆セダンとしてM03もラインアップしています。620kmの航続距離を確保するグレードが日本円で276万円で発売中であり、日産N7はXpengの大人気EVセダン2車種に挟み撃ちにされてしまうのです。しかもBYD HanやSealのPHEVバージョンも存在する非常に競争が厳しい大衆EVセダンセグメントにおいて、どれだけの販売台数を実現することができるのか懸念が残ります。
eπ007は月間3000台級という販売台数を達成することができているものの、やはりN7に対する最大の懸念事項は日産ブランド本体で発売するという点でしょう。Dongfengは新たなEV専用ブランドとしてeπブランドを立ち上げることによって、旧来のDongfengユーザーではなく新たな若い層にリーチすることができており、これが一定の販売台数を実現できている要因であると感じます。
日本人にはあまり想像できないと思いますが、すでに日産というブランドは、中国国内においては「田舎の高齢者が買うガソリン車ブランド」というイメージです。これではEVを購入する若いユーザー層を取り込むことは不可能であり、販売ディーラーもわざわざEVを売るメリットがありません。
その一方で、個人的にN7以上に期待しているのが、eπブランドが2車種目のEVとしてラインアップしているeπ008が日産ブランドでも兄弟車として発売されるのではないかという点です。eπ008は全長5m級、3列目シートを搭載する中大型SUVセグメントのEVであり、同じくBEVとEREVをラインアップしています。
その洗練されたエクステリアデザインとともに、インテリアには2列目用の21.4インチの巨大なスクリーン、冷蔵庫、220Vコンセント、助手席の完全リクライニング、2列目キャプテンシートの高性能さなどをはじめとして、現在の中国のファミリー層のニーズを網羅しています。
いずれにしても、日産が初公開したEVセダンのN7というのは、日産の開発した独自EVではなく、あくまで中国メーカーが開発した車両のリバッジモデルである可能性が極めて濃厚です。中国市場では日産が主導して開発するEVが売れないということをアリアの販売台数からも日産自身わかっているはずでしょう。
果たして中国製EVのリバッジモデルが通用するのか。最大の懸念事項である販売マーケティング手法を始めとして、日産が車両開発以外に中国市場のEV販売をテコ入れするために何ができるのか。日産の中国市場における生き残りをかけた最後の反転攻勢ともいえるN7の最新動向は定期的に情報を更新する予定です。