#中国
TEXT:高橋 優
1500馬力オーバーのEVスーパースポーツが開始2時間で1万台の予約ってどうなってんだ? これが中国の魔法か「シャオミSU7 Ultra」があまりに速すぎて安すぎる!!

シャオミから1548馬力のハイパーEVが登場 中国シャオミがSU7のハイパフォーマンスグレードUltraの正式発売をついにスタートさせました。当初の値段設定を遥かに下まわる値段で発売されたことによって、発売開始3日以内に年内の販売目標である1万台以上の確定注文を獲得するという驚きの成果を挙げています。そんな同モデルの最新動向を解説します。 まず、シャオミは2021年にEV事業への参入を正式に表明して、ようやく2024年3月29日に初の量産EVとなるSU7の正式発売をスタートしました。そしてすでに月間2.5万台級の納車体制にまで成長しています。 シャオミは2024年末までの確定注文台数が24.8万台だったことを公表。2024年末までにシャオミは13.5万台のSU7を納車していたことから、2024年末の段階で、まだ11.3万台の納車待ちが存在していたことになります。 絶好調のシャオミは、SU7 Ultraのワールドプレミアを開催しました。この発表会ではSU7 Ultraだけでなく、フラグシップスマートフォンのシャオミ15 Ultraの発表も同時に行っており、この「デュアルウルトラ戦略」によって、シャオミの高級ブランド戦略をさらに推し進めようとする狙いが見えます。 まず、SU7 Ultraの特筆するべきスペックについて、シャオミの独自内製モーターである、最高回転数が2万7200rpmを実現するV8sをリヤ側にふたつ、さらに最高回転数が2万1000rpmを実現するV6sをフロントにひとつ搭載するトライモーター仕様によって、最高出力は1548馬力(1138kW)、最大トルクも1770Nmを実現。0-100km/h加速は、ワンフットロールアウトを差し引いて1.98秒と極限の加速力を実現しています。 さらに、200km/hまで5.86秒、400mを9.23秒で加速することが可能です。気になる最速速度も350km/h以上という、スーパーカーを凌ぐ動力性能を実現しています。また、3つのモーターによるトルクベクタリング機能によって、サーキット走行におけるトラクションを最大化します。 次に、EVのサーキット走行においてもっとも大きなボトルネックとなるバッテリー性能について、UltraではCATL製のQilinバッテリーの第二世代を世界初採用。最大放電におけるCレートは16C、1330kWに到達。また、SOC20%の段階においても800kWもの出力を発揮可能です。充電性能も最大480kWの超急速充電に対応して、SOC10-80%を11分で充電可能です。 さらに熱対策として、45ccコンプレッサー、400Wの冷却ファンをふたつ、530Wのウォーターポンプ、そして28kWのパワーを有するパワートレイン冷却システムを合わせることによって、冷却性能を飛躍的に向上。これらの技術により、熱ダレすることなく1周20km以上あるニュルブルクリンクを2周ほど、全開で走破できると豪語しています。 また、制動力について、アケボノ製のカーボンセラミックブレーキを採用することで、100km/hからの制動距離も30.8mを実現しながら、180km/hからの急停止を10回繰り返したとしてもブレーキがフェードすることがないと豪語。回生ブレーキも最大減速Gが0.6Gに到達。400kWもの回生力を備えています。 さらに、加速減速の際の擬似エンジン音を含む3種類の加速音を流すことが可能です。車外にも加速音を流せるように40Wもの外部スピーカーも搭載するユニークさも注目点です。 その上、サーキット走行の様子をさまざまに確認、記録できるように、中国国内の20ものサーキットと連携してサーキット走行における走行状況を同期。しかも、サーキット走行時の走行データ、さらには車載カメラを使用して走行映像も録画可能です。 それらの走行データや映像を解析しながら、Ultraユーザーのサーキット走行データと共有して比較することも可能となります。

TAG: #SU7 Ultra #シャオミ #中国
TEXT:桃田健史
中国のEVバブルは終了! 雨後の筍のごとく登場したEVベンチャーは淘汰され「ホンモノ」だけが残る

EVメーカーの競争が激化 中国のEVといえば、BYDを筆頭として日本ではあまり馴染みのないさまざまなEVブランドが混在している。だが、そうした新興EVメーカーの栄枯盛衰はあまりにも早い。少し前まで人気を誇っていたはずなのに、いつの間にかブランド自体が消滅したり、またメーカーそのものが経営破綻するケースもある。 背景にあるのは、過剰な競争環境だ。 時計の針を少し戻すと、中国でのEV市場が産声を上げたのは、いまから15年ほど前だ。2000年代後半から2010年代にかけて、中国政府はEV事業の推進を国家戦略として打ち出した。 最初は、3つの国際行事をターゲットとした。2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博、そして同年に広州で開催されたアジア競技大会だ。 これら3大行事では、都市部でのEVバスやEVタクシー、さらに会場内での小型EVなどを導入。中国の自動車産業が新世代に移行するという印象を、中国の国内外に向けて強く発信した。 これを土台として、続く2011〜2015年に国家戦略「第12次5ヵ年計画」の中核に、EVの開発と普及を掲げた。 その実現に向けては、海外メーカーとの合弁企業におけるEV共同開発を中国政府として後押ししたり、そこで集積した技術を国家機関のなかで分析・解析した。そのほか、中国の国家自動車研究所である中国自動車技術研究センター(CATARC)などが、グローバルEV市場の状況を把握しながら、独自にEV研究開発を進めた。 そうしたなかから、乗用車向けのEVベンチャーになるような技術の芽が育ち始めた。また、中国におけるEV市場の将来性を見込んで、欧米メーカーのEV研究開発者らが中国系の投資家などから資金を調達して、EVベンチャーを設立する動きも加速した。 こうして中国におけるEVベンチャーが活躍するステージが整い始めたころ、欧州を起点とするESG投資に起因するEVシフトの大波がグローバルで一気に広がった。 ESG投資とは、従来のような財務情報だけではなく、環境(エンバイロメント)、社会性(ソーシャル)、そしてガバナンスを考慮した投資のことだ。 このESG投資バブルが中国EV市場にも大きな影響を与えたのが、2010年代後半から2020年初頭にかけてだ。 だが、ESG投資バブルが弾けるのと時を同じくして、中国の国内経済が低調となり、結果的に中国のEVベンチャーの淘汰が進んだといえよう。 中国EVベンチャー乱立時代は終止符を打ち、真の技術力と経営能力、さらに政治力をもつブランドのみが生き延びている。

TAG: #メーカー #中国
TEXT:高橋 優
中国市場は「中国国産」BEV強し! テスラが奮闘するも日本もドイツも苦戦

新車に占めるNEVの販売比率は52.33% 中国市場における最直近11月のEV販売動向の詳細が判明しました。新車販売の2台に1台以上がすでに新エネルギー車に置き換わるなか、日本メーカーの苦しい販売動向と見通しを中心に考察します。 まず、中国市場におけるBEVとPHEVの合計を示した新エネルギー車の販売台数は126.8万台と、前年同月比で50.8%もの増加を記録しました。新車販売全体に占める新エネルギー車の販売比率も52.33%と、歴史上最高水準の電動化率を達成しています。 ただし、販売シェア率は3カ月連続でわずかに低下を続けている状況です。この理由は、現在中国市場における経済対策の一環として、いまある車両を下取りに出して新車を購入すると、排気量2リッター以下のガソリン車の場合は1.5万元(日本円で約32万円)、新エネルギー車の場合は2万元(約42万円)が補助されるという政策を実施中だからです。 よって、NEVとともにガソリン車の需要も同じく増加しているのです。ちなみにこの補助金制度は2024年末まで実施され、自動車だけではなく、冷蔵庫や洗濯機、テレビ、エアコン、コンピュータなどの家電などにも買い替え支援策を展開しています。 他方で注目するべきは、新エネルギー車のなかでもBEVとPHEVの販売割合という観点です。2021年11月時点での新エネルギー車全体に占めるBEVのシェア率は79.63%と圧倒的なシェア率を示していたものの、直近の2024年11月単体では59.78%と、PHEVのシェア率が急速に増加しています。 ちなみに9月からPHEVとEREVをわけて統計情報が発表されており、11月単体のシェア率は、BEV:PHEV:EREV=60%:32%:8%という販売割合です。 そして、もっとも注目するべきはBEVに絞った販売シェア率の変遷です。11月単体のシェア率は31.28%と史上最高を達成しました。PHEVの販売増加以上にBEV販売も伸びていることを示しているのです。 世界の主要マーケットにおけるBEVの販売シェア率の変遷を比較すると、水色で示されている中国市場が欧米などを大きくリードしている状況です。果たしてBEVシェア率が最大化する年末までにどれほどシェア率が伸びるのかに注目が集まります。 それでは11月にどのようなEVが人気であったのか、そして2025年以降、どのEVに注目するべきなのかを分析します。 まず初めに、11月の内燃機関車も含めたすべての販売車種ランキングトップ30を確認しましょう。ピンクが新エネルギー車、そして緑が内燃機関車を示しています。 トップに君臨したのがBYDシーガルです。その次にテスラ・モデルY、BYD Song Plus、BYD Qin Plus、Hong Guang Mini EVと続きますが、トップ10のうち内燃機関車は第7位の日産シルフィと第8位のフォルクスワーゲンLavidaしかランクインすることができていません。トップ20に広げてみてもたったの6車種です。つまり、人気車種のマジョリティが、BEVかPHEVという新エネルギー車で占められてしまっているのです。 次に、このグラフは新エネルギー車に絞った販売ランキングトップ30を示したものです。黄色がBEV、水色がPHEVを示します。BYDが13車種を席巻しながら、トップ10に限ると7車種とBYDの強さが見て取れます。 そして、注目するべきは、このトップ30のうち海外メーカー勢はテスラ・モデルYとモデル3の2車種しかランクインできずに、残りはすべて中国勢が席巻しているという点です。

TAG: #EVシフト #中国 #販売
TEXT:桃田健史
いまやEV先進国! 安全面も気になる「中国」「韓国」のバッテリー性能ってどう?

中国は官民連携でEVの研究を進めてきた グローバルでEVの普及が進むなか、搭載されるバッテリーも世界各国で生産されるようになっている。そうしたなかで、中国製や韓国製のバッテリーの生産量も増加してきた。日本製バッテリーと比較して、性能はどうかという視点をもつ人がいるかもしれない。 また、EV市場規模で見れば、中国が世界最大の生産・販売大国であるので、自ずと中国製バッテリーの性能も、いまや世界の水準以上、または世界的に見て高水準であるはずと思う人もいるだろう。 韓国についても、ヒョンデ「IONIQ 5」の世界累計販売台数が34万台を突破しているなど、韓国ブランド車のEVシフトが着実に進んでおり、バッテリー性能も当然に高いと考える人が少なくないはずだ。 時計の針を少し戻してみると、中国でのEVシフトが鮮明になったのは、2000年代後半から2010年代前半にかけてだ。 当時、3大国家イベントだった2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博、そして同年の広州アジア競技大会を、中国政府は中国のEV開発実態を内外に示す貴重な機会と位置付けた。それにあわせて、バッテリー、モーター、制御システム等、EV関連部品については、高度な次世代技術開発を国として統括する「863計画」が中核となり、官民連携でEV関連の研究開発を加速させた。 バッテリーについては、サイズの指標を示すなどして、メーカー間の性能差を可能な限り少なくする試みを行っていた。 そうした流れのなかで、BYDやCATLが事業基盤を徐々に築いていった。また、海外資本メーカーが中国国内でEVを製造する際、中国地場のバッテリーを導入することが必須であったことも、中国バッテリーメーカーの知見を増やすために大いに役立ったといえるだろう。

TAG: #バッテリー #中国 #韓国
TEXT:高橋 優
中国車との兄弟車と噂される日産N7! 中国で起死回生の1台となるか?

N7はeπ007のリバッジモデルである可能性が高い 日産の新型ミッドサイズEVセダンのN7について、中国の合弁先であるDongfengのリバッジモデルである可能性が報道されています。詳細なEV性能をはじめとして、日産の中国市場における最新動向を分析します。 11月中に開催されていた中国のGuangzhouオートショーにおいて世界初公開された日産N7は、全長4930mm、全幅1895mm、全高1487mm、ホイールベースが2915mmという中大型セダンセグメントに該当します。さらに、N7には高級シートを採用したり、中国の自動運転スタートアップMomentaと開発した高性能ADASの搭載が発表されています。これは中国市場におけるトレンドをキャッチアップしており、2025年初頭にも発売される見通しであることからも、N7に対する期待が高まっていました。 とくに日産は中国市場の販売割合がグローバル全体の25%程度を占めており、北米市場に次いで非常に重要なマーケットであることから、中国を捨てるわけにはいきません。直近の2024年Q3の中国国内の販売台数は13.6万台であり、前年同四半期で-16.7%と急速に販売台数が低下中です。さらに日産が現在ラインアップしているBEVのアリアは、10月でたったの19台しか売れておらず、EV販売という観点で根本的な問題を抱えてしまっています。いずれにしても、中国市場における販売台数とEV販売をテコ入れするという観点で、この新型EVセダンのN7は、2025年シーズンの日産にとって重要な一台となり得るのです。 そして、新たに判明したN7の最新情報として、複数の現地メディアがN7には兄弟車が存在すると指摘しています。これは、合弁先のDongfengがすでにラインアップしているEVセダン、eπ007のリバッジモデルなのではないかという点です。 このeπ007は全長4880mm、全幅1895mm、ホイールベースが2915mmと車両サイズがN7と酷似しています。さらに、車内中央に配置された15.6インチのタッチスクリーンもN7に搭載されているセンターディスプレイとまったくく同じサイズです。 その上、中国EVに必須となっている、サッシュレスドア、および格納式ドアハンドルのデザインもeπ007とまったく同じデザインです。 いずれにしてもこれらの観点から、日産の新型EVセダンであるN7は、日産が独自に開発したEVではなく、合弁先であるDongfengのEVセダン、eπ007のリバッジモデルなのではないか。つまり、マツダEZ-6とDeepal SL03との関係性と同じように、中国製EVのガワだけを変えたモデルである可能性が濃厚ということになるのです。 今回注目されているeπ007のスペックを概観しましょう。まずはBEVとともに中国市場で急速に人気が高まっているレンジエクステンダーEVもラインアップしているという点が重要です。EREVの場合28.4kWhバッテリーを搭載することでEV航続距離200kmを確保。45リットルのタンク容量を活用すると最大航続距離は1200kmを実現しています。BEVの場合、最大70.26kWhバッテリーを搭載することで620kmの航続距離を確保。Cd値が0.209と優れていることもあり電費性能も比較的優秀です。 また、AWDグレードの場合、デュアルモーターシステムによって最高出力400kW、最大トルクも640Nmを発揮。0-100km/h加速も3.9秒と俊敏です。 さらに最小回転半径は5.6m、20ものスピーカーシステムを搭載。1.8平方メートルという巨大なガラスルーフ、高張力鋼とアルミニウム合金の配合割合も71.5%と、衝突安全性を意識したボディの堅牢性を確保しています。 そして肝心な値段設定について、BEVとEREVともに日本円で280万円を実現しており、N7もコスト競争力の高い一台として期待することが可能でしょう。

TAG: #中国 #新型車
TEXT:桃田健史
メルセデス・ベンツとBYDが中国で合弁事業を解消! 「EVはまだまだこれから」という時期に袂を分かつ理由とは

BYDが騰勢(Denza)を完全子会社化 ドイツのメルセデス・ベンツは中国BYDとの合弁事業を見直す。両社は、BYDの高級ブランド「騰勢(Denza)」を手がける、深圳騰勢新能源汽車を共同で運営してきたが、ここからメルセデス・ベンツが完全に手を引く。 時計の針を戻せば、いまから13年前の2011年、メルセデス・ベンツ(当時のダイムラー)が中国の新興勢力であるBYDとEVなどを共同開発するというニュースに、世界の自動車業界関係者は大いに驚いた。当時、BYDはまだ「知る人ぞ知る」といった存在であり、いまのようにグローバルでのEVリーダー的な役目を担うと想像した人はいなかったはずだ。 筆者は、2000年代に入ってから、いわゆるBRICsと呼ばれる新興国での取材活動が増え、そのなかで中国市場についても各方面での現地取材を行うようになっていた。 深圳に本拠を持つBYDについて記事として取り上げることも多かったのだが、まさかメルセデス・ベンツ(当時のダイムラー)がBYDとの事業提携を行うとは予想していなかった。メルセデス・ベンツ(当時のダイムラー)としては、アメリカでテスラと「スマート」を活用したEV共同開発を行う事例もあった。 つまり、メルセデス・ベンツにとっては、市場拡大が未知数のEVに関して、当時の世界最大自動車市場であったアメリカと、近年中にアメリカに代わって世界最大自動車市場の座につくことが予想された中国において、それぞれの国で将来有望なベンチャーEV企業の「お手並み拝見」といったスタンスだったのかもしれない。 それが2010年代から2020年代にかけて、中国はEV黎明期から一気に世界最大のEV市場へと躍進し、いまやBYDが日本を含むグローバル市場でも注目される存在となっている。 技術面から見れば、メルセデス・ベンツとしては、BYDとのファーストステージを解消する時期だと判断したものであろうし、BYDにとってはメルセデス・ベンツとの協業で十分な知見を得たということであろう。 法律上の観点から見れば、中国政府は2022年に乗用車向けの国内・販売についての外資規制を撤廃したことが、今回の2社の提携解消の背景にあると思われる。 外資が中国市場に参入する際、出資比率は最大で50%とされていた。EVに限れば、この規制は2018年に撤廃されている。メルセデス・ベンツは直近で、出資比率を10%まで下げていたが、これをBYDが買い取る形で、深圳騰勢新能源汽車は100%BYD傘下となったのだ。 メルセデス・ベンツとBYDによる合弁事業の解消は、中国自動車市場が大きな転換期に入ったことを象徴する出来事に思える。

TAG: #中国 #合弁会社 #外資規制
TEXT:TET 編集部
ホンダの新世代EV「e:NP2」と「イエ」シリーズはここから生まれる! 中国合弁会社「広汽ホンダ」の新工場が広州市に誕生

高効率・スマート・低炭素な生産体制を目指して建設 ホンダの中国における四輪生産販売合弁会社である広汽本田汽車有限公司(以下、広汽ホンダ)が、2024年12月23日から、中国広東省広州市に新設した「開発区新エネルギー車工場」と呼ばれる新工場の稼働開始を発表した。 ホンダは、中国国内に四輪車の生産販売合弁会社をグループ内に2社保有している。ひとつは東風本田汽車有限公司(以下、東風ホンダ)であり、もうひとつが今回新工場が稼働した広汽ホンダである。 前者の東風ホンダは、湖北省武漢市で2004年4月に第1工場を稼働させたのを皮切りに、2019年に第3工場の稼働を開始。それぞれ年間24万台の生産能力を誇る。そして直近の2024年9月からは、全世界のホンダの生産工場でも初の試みとなる、電気自動車(EV)専用の生産工場「新エネルギー車工場」を年間12万台の生産能力で稼働させている。 後者の広汽ホンダは、広東省広州市に拠点を構え、第1工場である黄埔工場を1999年3月に稼働させて以降、増城工場と呼ばれる第2・第3工場を2015年までに順次稼働を開始させている。3つの工場はそれぞれ年間24万台の生産能力を備えている。 その広汽ホンダの新工場「開発区新エネルギー工場」は、約34.9億元(日本円にして約750億円)もの金額が投じられ、高効率・スマート・低炭素な生産体制を目指して建設された。プレス・溶接工程においては、部品搬送の自動化により物流要員のゼロ化を実現し、AIによる溶接強度検査をホンダとして初採用。組立工程では、工程全体の約30%を自動化することで、高効率な生産ラインを実現しているとされている。 環境面では、工場敷地内に合計22メガワットの太陽光発電システムを設置し、再生可能エネルギーを活用することで、中国政府によるCO2排出に関する基準に対し、年間約1.3万tのCO2排出低減を見込んでいるという。 また、新開発した低VOC(揮発性有機化合物)塗料の採用や、工場排水に含まれる有害物質を100%処理できる設備の導入により、環境負荷の低減を図っている。工場からのVOC排出量は大気汚染への影響を最小限とするため、広東省の基準限度に対してさらに70%以上の削減を目指すとしている。 ホンダは「2050年にホンダが関わるすべての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルの実現」というグローバル目標に向けて動いている。 中国においては、2022年に販売を開始したEV「e:N(イーエヌ)」シリーズに加え、2024年度に販売開始を予定している新世代EVシリーズ「烨(yè:イエ)」もあわせて、2027年までに10機種のホンダブランドのEV投入を予定している。 それらにより、ホンダは2035年までに中国でのEV販売比率を100%にまで押し上げる計画だ。 新工場「開発区新エネルギー車工場」は、その計画の要となる「e:NP2」と「イエ」シリーズの生産が予定され、年産12万台の生産能力を備える。まさにホンダが掲げる目標達成の道筋においては、重要なピースであるといえるだろう。

TAG: #ホンダ #中国 #生産
TEXT:石橋 寛
寒中EV航続距離レースでぶっちぎりの優勝! テスラを破った中国の高級EV「HiPhi Z」ってなにもの?

中国の新興EVメーカーから登場した「HiPhi Z」 寒くなるとEVはバッテリーの性能が低下して、航続距離や充電時間などが通常時よりも悪化する。 EVユーザーならば先刻ご承知かと思いますが、これをきちんとテストしている「極寒のEV航続距離レース」があるのはご存じでしょうか。1月とか2月、もっとも気温が下がり、積雪まであるというノルウェーの地で行われるテストで、各国メーカーのEVが競い合っているのです。 ご想像のとおりというべきか、2020年から3年はテスラが圧勝。ですが、2024年の冬はテスラ・モデル3が23台中22位という惨敗に終わっただけでなく、中国の高級EV「HiPhi Z」がトップに躍り出るという予想外の結果となったのです。 HiPhi Zは、中国の新興EVメーカーHuman Horizons(華人運通)が2022年に発売した4ドアセダン。GT-Rにどことなく似た顔つきや、4066個のLEDで構成される世界初のラップアラウンド・スターリングISDライトカーテン、120kWhという数値を誇る高性能かつ大容量なバッテリーパックを搭載し、航続距離705km、0-100km/h加速は3.8秒というスペックを引っさげての登場でした。 これが、ノルウェー自動車協会が主催する「El Prix」すなわち、毎年夏と冬に行われるEV航続距離レースに参戦。今回は気温がマイナス10°以下の環境で航続距離を競い合ったということです。ちなみに、El Prixは実際に走り切った航続距離のほか、WLTP基準の航続距離と、氷点下で実際に走行できる航続距離との差も明らかにしています。

TAG: #HiPhi #中国
TEXT:高橋 優
ドイツ御三家もポルシェも中国では厳しい戦い! もはやプレミアムセグメントでさえ中国のEVメーカーが席巻

ドイツ御三家にプレッシャーをかけるファーウェイ 中国市場におけるEVシフトの急加速によって、じつは日本メーカー以上に打撃を被ってしまっているドイツ御三家について、その苦しい販売動向を詳細に分析します。 今回注目するのが高級車セグメントです。とくに、その高級車セグメントでこれまで圧倒的なシェアを築いていたのが、アウディ、BMW、そしてメルセデス・ベンツというドイツ御三家です。中国人の間では、このドイツブランドという価値は絶対的であり、よってこれまで中国メーカーは、安いガソリン車を作り続けることで販売シェアを伸ばそうとしていたわけです。 ところが、ドイツ御三家が支配していたプレミアムセグメントに地殻変動が起こっています。まず、中国EVメーカーとしてNIOとLi Autoが2014年に設立。NIOは、バッテリー交換というコンセプトを打ち上げて、2024年5月から9月まで、5カ月間連続で月間2万台超を発売することに成功。 Li Autoは、当初はレンジエクステンダーEVのパイオニア的な存在として、とくにプレミアムセグメントを購入検討する富裕層の場合、EVが欲しいが急速充電に対する不安を抱える層が多かったこともあって需要とマッチ。 さらに、富裕層のファミリー層に特化した、高性能シートやエンタメ機能という快適性を追求することによって、これまで中国車が立ち入ることができなかったプレミアムセグメントで急速にシェアを拡大中です。直近の9月は5万台超という史上最高の販売台数を更新しました。 さらにその上、中国の既存メーカーも独自のプレミアムEV専門ブランドを次々と立ち上げています。BYDはDenza。GeelyはZeekr。SAICはIMモーター。BAICはArcfox。ChanganはAvatr。DongfengもVoyahなどを立ち上げています。 さらに、第三勢力として注目を集めているのが、シャオミとファーウェイというテック企業の存在です。 まずシャオミは2024年4月からSU7の納車をスタート。このSU7はプレミアムEVセダンの王者「テスラ・モデル3」を凌ぐEV性能を実現することによって、現在急速に販売シェアを拡大中です。 その上、現在ドイツ御三家に対してもっともプレッシャーをかけてきているのがファーウェイです。ファーウェイはマーケティング戦略をはじめ、ファーウェイストアで車両を販売するまでを包括的に担当するHarmony Intelligent Mobility Alliance、通称HIMAを設立。すでにSeresと立ち上げたAITO、Cheryと立ち上げたLuxeed、BAICと立ち上げたStelato、そしてJACと立ち上げるMaextroという独自ブランドをそれぞれ設立し、販売規模を拡大中です。 現在、月間4万台級の販売規模を実現しており、Li Autoとともに、中国のプレミアムEVセグメントで2強体制を構築しています。 そして、これらの存在によって、ドイツ御三家の販売台数に大きな影響が出始めています。とくに直近の2024年Q3でトップの販売台数を達成したのがテスラの存在であり、前年同期比で30.3%ものプラス成長を実現しています。また、NIOも前年同期比で10.1%ものプラス成長を実現。さらにファーウェイも11.3万台以上を売り上げて、前年同期比で8倍もの急成長を実現しています。そして、Li Autoも前年同期比で45.4%もの急成長を達成し、ドイツ御三家を上まわる販売規模すら実現しています。 その一方で、Li Autoに販売台数で抜かれたドイツ御三家の販売台数は減少傾向です。アウディは前年同期比で18.1%ものマイナス成長。メルセデス・ベンツも前年同期比で12.2%ものマイナス成長。そしてBMWはQ3単体で12.7万台と、ドイツ御三家としてはもっとも販売台数が少なく、ファーウェイの販売台数とも接近。しかも前年同期比30%ものマイナス成長です。

TAG: #ドイツ #中国 #販売
TEXT:高橋 優
BEV大国の中国はもはや「中国メーカー」だらけに! テスラ以外の輸入メーカーは惨敗という現実

BYDが圧倒的な存在感を放つ 中国市場における9月のEV販売動向の詳細が判明し、新車販売の2台に1台以上がすでにBEVかPHEVに置き換わり、BYDをはじめとする中国勢がさらに爆発的に販売台数を増加。そのBYDなどのプレッシャーにさらされている日本メーカーの危機的な状況について考察します。 まず、中国市場におけるBEVとPHEVを合わせた新エネルギー車の販売台数は112.3万台と、前年同月の74.4万台という販売台数と比較しても50.9%もの販売台数の増加を記録。そして、新車販売全体に占める新エネルギー車の販売比率は53.2%と、史上最高水準の電動化率を達成しています。 四半期別の動向も、Q3の新エネルギー車比率は52.74%と、史上初めて四半期でも50%の大台を突破。2023年Q3の電動化率が36.84%だったことからも、ここにきて電動化のスピードが加速していることがわかります。 また、バッテリーEVに絞った販売シェア率は、9月単体で30.54%と、こちらも史上最高水準の販売シェア率を達成。2023年Q3が24.73%だったことからも、バッテリーEVシフトが加速している状況です。 このグラフは、世界の主要マーケットにおけるバッテリーEVの販売シェア率の変遷を比較したものです。水色で示されている中国市場が欧米などを大きくリードしている状況であり、9月に1.75%だった日本と比較しても、その差は歴然です。 次に、9月に中国国内でどのようなEVが人気であったのか、そして2024年末にかけて、どのEVに注目するべきなのかを詳細に確認しましょう。 このグラフは、内燃機関車も含めたすべての販売ランキングトップ30を示したものです。ピンクが新エネルギー車、緑が内燃機関車を示します。トップはテスラ・モデルYで、BYDシーガル、BYD Song Plus、BYD Qin L、そしてBYD Qin Plusと続いていますが、ポイントは、トップ10のうち、なんと内燃機関車は日産シルフィとフォルクスワーゲン・ラヴィダしかランクインできず、トップ20に広げてみても、たったの6車種しかランクインすることができていないという点です。 つまり、すでに人気車種のマジョリティが、バッテリーEVかPHEVという新エネルギー車で占められているということを意味します。また、そのなかでも、トップ20のうちBYDが9車種もランクインしているという驚異的な支配構造も見て取れるでしょう。 次にこのグラフは、新エネルギー車に絞った販売ランキングトップ30を示したものです。黄色がバッテリーEV、水色がPHEVを示します。この通りBYDが13車種を席巻しながら、トップ20に限ると12車種、トップ10に限ると7車種、トップ5に限ると4車種を席巻。 同じくBYDの驚異的な支配構造が見て取れるでしょう。また、日本勢やドイツ勢などの海外メーカー勢はトップ30ではテスラ2車種のみであり、残りはすべて中国勢と、まるで販売規模では勝負になっていない様子も見て取れます。 また、このグラフはバッテリーEVに絞った販売ランキングトップ30を示したものです。この通り、黄色で示されたBYDがトップ20のうち8車種を席巻、トップ10に絞ると5車種を独占。2024年中旬から投入されている新型BEVが、さっそく上位にランクインしてきているという点も重要です。 具体的には、9月から納車がスタートしたばかりのXpengのMONA M03が第18位。4月に納車がスタートしたシャオミSU7も第14位。さらに、8月から発売がスタートしているGeely GalaxyのコンパクトSUV、E5も第13位にランクイン。 いずれにしても、新型EVの存在によって、ランキングトップ層の新陳代謝が行われている点も、この中国市場の競争の激しさが見て取れるわけです。

TAG: #中国 #新車 #販売

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「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
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試乗
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
ボルボEX30で11時間超えの1000km走行チャレンジ! 課題は90kWまでしか受け入れない充電性能
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イベント
災害時にも活躍できるEVの可能性を淡路島で体験! 「AWAJI EV MEET 2025 from OUTDOOR FEELS」開催決定
売り物ではなく概念を展示するモデリスタ! 正体不明なトヨタbZ4Xはブランドの「新化」という概念を示すスタディモデルだった【大阪オートメッセ2025】
子どもに大人気の電動バギーに大迫力のエアロキットや色が変わるフィルムまで登場! 大阪オートメッセのEV関連出展物はどれもユニークすぎた
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