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BYDシールで1000km走って「充電性能の安定性」に衝撃! リアルワールドでも「コスパ最強」が証明された


TEXT:高橋 優 PHOTO:EV NATIVE/THE EV TIMES
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テスラを上まわるコスト競争力を実現していた

3)草津PA上り→湾岸長島PA上り(150kW級急速充電器)

・走行距離:84.1km
・消費電力量:31%→13%
・平均電費:約6.04km/kWh(165Wh/km)
・外気温:27℃→29℃
・充電セッション:13%→70%(33分)

最後の充電スポット予定は湾岸長島PA上りです。タイムトライアルにおけるわずかなミスとしては、SOC13%で到着している点です。このSOCを減らしたぶんだけ、150kW級で充電できる割合が増えるわけで、1000kmチャレンジのタイム短縮につながるからです。

BYDシールのフロントスタイリング

これにはじつは理由があり、じつは以前、Atto 3とドルフィンではSOC10%以下まで減らすと充電残量表示が急速に減っていくという挙動を経験していたことから、このシールでも警戒し、SOC10%以下まで攻めることを避けました(このSOC急減問題については湾岸長島・海老名間でシールでは問題ないことが判明しています)。

そして、SOC70%までの充電セッション中、SOC60%前半まで105kW、 さらにそれ以降は80kW前半と、熱ダレのような挙動は一切確認されずに安定した充電を行えました。

4)湾岸長島PA上り→海老名SA上り(ゴール)

・走行距離:297.5km
・消費電力量:70%→2%
・平均電費:約5.73km/kWh(175Wh/km)
・外気温:29℃→30℃

海老名SA直前で走行距離1000kmを達成しました。海老名SAには充電残量2%で到着。この海老名SA到着時点での充電残量が少なければ少ないほど、最後の充電時間を短縮することができるわけですので、綿密な充電残量コントロールが求められるわけです。その意味においては、完璧な充電残量コントロールを達成できたといえそうです。

BYDシールのリヤ

 

じつはAtto 3とドルフィンの検証においては、SOC10%以下になると充電残量の減り方のペースが加速し、SOC5%に到達した段階でニュートラルに入ってしまってアクセル操作ができなくなってしまうという挙動を確認しています。よって、このシールも同様の挙動を警戒していたのですが、結果的に充電残量の急減や出力制限の挙動が一切確認されませんでした。

BYDジャパンからは、LFPバッテリーの特性上、定期的な満充電状態を行っていないとSOC判定に誤差が発生してしまうと説明を受けていますが、今回のシールとAtto 3、ドルフィンの挙動の差は、LFPの特性によるものなのでしょうか? 個人的な推測として、じつはAtto 3とドルフィンは58.56kWhと、中国本土や海外市場の60.48kWhよりもやや少ない、世界で唯一のバッテリー容量という特殊な仕様となっています。もしかしたらバッテリーマネージメントのソフトウェアが日本仕様の58.56kWhバッテリーに対応できていないのではないかと睨んでいます。ソフトウェアのバグであると仮定すると、なぜSOC10%以下で充電残量表示が急減するのかもしっくり来ます。

いずれにしてもAtto 3とドルフィンに関しては、今後BYDジャパン側に対しても、より詳細に確認していきたいとは思います。

トータルの所要時間は10時間9分と、私がこれまで行ってきた1000kmチャレンジの検証のなかではテスラ車以外で、メルセデスEQEやEQSという高級車に次ぐ好タイムを叩き出すことに成功しました。とくにAtto 3の12時間27分と比較すると、長距離走行性能という観点では比較にならない性能を有していることが見て取れます。

テスト結果

そして、この1000kmチャレンジを通じて判明した、Atto3・ドルフィンとの明確な違いというのが、充電性能の安定性です。じつはAtto 3とドルフィンでは、最大85kW級の充電出力が、一定のバッテリー温度の数値を超えると制御が入るという、いわゆる熱ダレの挙動が確認されています。これがAtto 3における充電時間3時間オーバーの要因だったわけです。

ところが、シールでは熱ダレの挙動は一切確認されず、すべての充電セッションで安定して105kWを持続。とくに120km/h制限区間を走り切ったあとでも問題なく105kWが持続したことからも、シールの電池冷却性能の高さが見て取れるでしょう。

また、ドルフィンの検証では充電エラーが頻発してしまっていたものの、シールでは一切の充電エラーは確認されませんでした。この1000kmチャレンジ以外の検証でも複数の充電器を使用しましたが、充電エラーであったり、規定の充電出力を発揮できないという相性問題すら確認されず、ここはBYDジャパン側がチャデモ規格に対するローカライズを徹底したことを賞賛したいと思います。

これらの熱ダレ、充電エラー、相性問題を解消しながら、高い充電性能と比較的優れた電費性能を総合すると、ファーストカーとして極めて実用的に長距離を乗りまわすことができるEVに仕上がっているといえるでしょう。

いずれにしても、今回のシールRWDは、1000台限定で495万円からのスタート。さらに、45万円の補助金を含めると、実質450万円から購入することが可能です。よって、コストに対する1000kmチャレンジのタイムという指標では、テスラすら上まわるコスト競争力を実現しているともいえます。

東京大阪間程度であれば、途中10分程度の充電を挟むだけで、120km/h制限区間をフルで飛ばしたとしても余裕を持って走破できるとイメージしてみると、シールの高いEV性能をイメージできると思います。

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