中国での20万台販売増と安いLFPバッテリー導入を目指す「The Arc」への懸念
日産が新たな中期経営戦略である「The Arc」を発表しました。2026年度までにグローバルで100万台の販売台数増加を目指しながら、安価なLFPバッテリーの導入、全固体電池によるEVテクノロジーの革新など、さらなるEVシフトの詳細を発表した一方で、この日産の経営戦略において指摘しなければならない、日産の大きな問題点について解説します。
それでは、今回の日産の中期経営戦略であるThe Arcの内容に関して、個人的に懸念せざるを得ないポイントをいくつか指摘していきたいと思います。
第一に、やはり販売台数を増加させるという点で、とくに中国市場の販売台数を20万台も増加させるのは不可能に近いという点です。
まずこのグラフは、グローバル全体の日産の販売台数を中国BYDの販売台数と比較したものです。日産の販売台数というのは、2020年シーズンの400万台という規模と比較しても、2023年シーズンは337万台とさらに落ち込んでしまっています。
もちろんこれは、短期的な収益性を確保するために、生産台数の損益分岐点を引き下げたことによるものという見方が可能であり、ここから販売台数を増加させていくという可能性は残されています。
他方で、中国市場における主要な自動車ブランドの年間販売台数の変遷を見てみると、紫で示された日産については、なんと2019年シーズンと比較して、2023年シーズンは50万台も販売台数を落としてしまっている状況です。
これを3年後に20万台も増やすというのは、さすがに中国市場における見通しが甘すぎやしないかということなのです。
中国市場の事実上の販売戦略となっているシルフィ一本足打法についても、BYDの大幅値下げ戦略によって大きな悪影響が出始めている可能性が高い状況です。
むしろ3年後に販売規模をキープできていれば、それはもう御の字であり、むしろ販売台数を大きく増やそうというのは無理筋なのではないかと感じます。いずれにしても、この中国市場における楽観的な見通しそのものが、中国市場の最新動向を、経営陣がどこまで把握できているのか首を傾げざるを得ないわけです。