ZFのピックアップトラック向け駆動装置「リジッド電動アクスル」を採用か
日本で売れない理由はなく、いすゞ乗用モデルの国内復活に期待
【THE 視点】いすゞは10月6日、1トン積みピックアップトラック「D-MAX」の大幅改良モデルをタイで発表した。10月12日よりタイで販売を開始し、順次グローバルに展開していくという。加えてこの発表でEVピックアップトラックの生産・販売も表明した。
現行型の「D-MAX」は3代目にあたる。2019年10月のデビュー以来、力強いデザインと悪路走破性、優れた燃費性能などが高く支持されている。今回の大幅改良では、内外装デザインに磨きをかけ、世界中のユーザーから求められる幅広いニーズに対応することで、市場により適したピックアップトラックを目指したという。
「D-MAX」は、いすゞのグローバル戦略車として、アジア/欧州/中東/アフリカ/中南米/オセアニアなど100ヶ国以上の国と地域で販売されている。2022年度のグローバル販売台数は約34万台で、特に1トン積みピックアップトラック最大市場であるタイでは約18万台(シェア45%)を販売した人気モデルである。
タイのバンコクで行われた発表イベントに出席したいすゞの南真介COOは次のように述べた。
「いすゞは、カーボンニュートラル社会実現に向けて積極的に取り組んでいます。今後、タイにてバッテリーEVピックアップトラックの生産を計画しており、まずは欧州から導入し、タイを含め市場のニーズに応じて順次投入を検討していく予定です」
「EVピックアップトラック」との表明であったが、この会場で発表したということは「D-MAX」ベースのEVとみて間違いない。
詳細は明らかにされていないが、「エルフEV」のモーターがZF社のものだ。前にレポートした今年の「人とクルマのテクノロジー展」でのZFのブースにはピックアップトラック用の「リジッド電動アクスル」なるものが展示されていた。「D-MAX EV(仮)」には、このZFのものが採用されると推測している[関連記事はこちら<click>]。
これまでいすゞは、「東京モーターショー」に「D-MAX」を参考出品として展示してきた経緯がある。その時のいすゞの話では、「ディーゼルエンジンの排ガス規制の問題で日本に輸入できない」と言っていた。EVになれば排ガス規制は関係ないので「D-MAX EV」を日本で売れない理由はなくなる。
日本ブランドのタイ製のピックアップについては、トヨタが「ハイラックスRevo BEVコンセプト」を発表済み。三菱も新型「トライトン」発表の際に数年後にEVも発売することを表明している。「ハイラックスEV」に「トライトンEV」そして「D-MAX EV」が出そろえば、日本ブランドのEVピックアップトラックの熾烈なシェア争いが始まるだろう。
忘れてはいけないのが日本市場である。「ハイラックス」は日本に導入済みで「トライトン」が2024年初頭に日本導入予定。「ハイラックス」は人気モデルに成長し、それとともにピックアップトラック市場が日本でも盛り上がりつつある。
時間はかかるだろうが、筆者としては両車のEVモデルの日本導入を強く望んでいる。クルマとして魅力的で、「エコカー」ではなく「面白いクルマ」としてEVを定着させるためにも必要だと思うのだ。カナダへ旅行した際に見たEVピックアップ「リヴィアン」で覚えた高揚感が、日本のEVにもほしい[関連記事はこちら<click>]。
どのメーカーにせよ、EVピックアップトラックが日本導入となった暁には、ぜひいすゞにも参入してもらいたい。名車揃いであるいすゞの乗用モデルの国内復活を、期待せずにはいられないのだ。
(福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)
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デイリーEVヘッドライン[2023.10.20]