「電欠の救急車」や開発現場などにも使える“電気の携行缶”
筆者も10年以上前に開発を検討したEV時代のマストアイテム
【THE 視点】ベル エナジーは8月21日、ポータブルEV急速充電器「Roadie V2」の国内販売・受注台数が100基を突破したと発表した。日本初のモジュール式ポータブル急速充電器で、EV普及に伴い増加傾向にある「電欠」に対応するべく開発された製品だ。
単独での使用が可能なスタンドアローン設計となっているため、固定式充電設備を置く場所がなくてもEVの充電設備を作ることができる。そのため、EVやバッテリーの開発現場や研究室への活用も期待される。
本体は、2種類のユニット(急速充電ユニット<CHAdeMOまたは米国のCCS1>/蓄電ユニット)からなる。急速充電ユニットは最高出力20kWで、これに3.35kWh/個の蓄電ユニットを最大4個繋ぐことで約14kWhの容量となる。約10分の充電で航続20kmほどの電力を回復することができる。蓄電ユニットへの充電は家庭用100Vでの充電が可能で充電時間は約4時間となっている。
筆者は「スマートエネルギーWeek」<東京ビッグサイト/今年3月15日〜17日>にて、「日産サクラ」が「Roadie V2」を搭載したベルエナジーのサービス「電気の宅配便」の展示を実際に確認している[詳細はこちら<click>]。ロードサービスなどにうってつけで、今後のEVの普及を考えると非常に有用なシステムだと感じていた。「Roadie V2」は、エンジン車でいう“燃料の携行缶”に例えられよう。
筆者自身、実は10年以上前に同様のシステムの製作を検討した経緯がある。電欠の場合は車両自体は生きているのだから、最寄りの充電設備までの電力を回復できれば充分。電話を受けたロードサービスや整備工場がユニットを乗用車などに積んで行くだけで良いので、人的コストも移動コストも削減でき合理的なのだ。
開発に向け色々とヒアリングしたが、当時のバッテリーの性能や価格面でのハードルが高く断念してしまった。
ベルエナジーは100基の受注数を突破したとのことだが、実際にロードサービス会社への納入事例が多く、コンパクトな上に家庭用電源で充電できる手軽さが拡販につながった要因だろう。
ちなみに個人でも、長距離旅行などの“携行缶”にと思いつく人もいるかもしれないが、正直導入は困難だ。今回は価格の発表が無かったが、電池の容量から推測するに、1基あたり数十万円から100万円台の価格になると思われる。頻繁に電欠するほど公共充電器が不足しているわけではない。万が一の事態の際は“電欠の救急車”を頼んだ方が良さそうだ。
(福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)
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デイリーEVヘッドライン[2023.08.22]