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ホンダの電動戦略のカギは脱着式可搬バッテリーにあり……現役EV開発エンジニアによる「スマートエネルギーWeek 春」探訪前編[THE視点]


TEXT:福田 雅敏 PHOTO:福田 雅敏
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モバイルバッテリーからEVまで対応可能な「ホンダ・モバイル・パワー・パック e:」

「スマートエネルギーWeek 春」内「第13回 国際スマートグリッドEXPO春」が3月15~17日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された。出展社の中には本田技研工業(ホンダ)もあった。その展示内容がユニークだったのでレポートする。

今回の一番の特徴は、ホンダブース内の展示物全てが現在拡販を狙っている脱着式可搬バッテリー「ホンダ・モバイル・パワー・パック e:」(MPP)を電源とした製品を展示していること。その活用事例が今回の展示のコンセプトだ。

まずはその核となる「MPP」のスペックは、バッテリーパック1個あたり50.26Vを発生するリチウムイオン式で、容量1.314kWh/重量10.3kgとなっている。今回は価格も発表されており、8万8,000円(税込)/個となっている。ただしカタログには法人限定販売と書かれていた。理由はバッテリーリサイクルの社会的責任からだという。

そして今回の展示物の中でひときわ目立っていたのが、初公開となった「N-VAN」をベースとしたEVだ。ホンダは昨年12月、「2024年春に「N-VAN」ベースのEVを発売する」と発表していた。しかし今回展示されていた車両は正式版ではなくあくまでもコンセプトカーで「MEV VAN Concept」と名付けていた。

このコンセプトカーの特徴は、MPPを8個搭載しており、総容量は10.4kWhでEVとしては少ない。しかし交換できるのが特徴で、それに要する時間はわずか数分。そのため、交換用バッテリーの用意があればすぐに走り出せるので充電時間が省けるとし、「固定式バッテリーとは異なる魅力と価値の提供を検証する」としている。

クルマの仕様としては、出力14kWのモーターを前後に配置した4WDで、最高速度が70km/h以上、航続距離は75kmと発表されている。2024年春に発売が予定されている量産EVは、床下固定式とのことでバッテリー容量が多い実用的なものになるだろう。

そのほか、ホンダブース内に展示されていたものとしては以下のとおり。

・MPPを24個同時充電できる充電設備「モバイル・パワー・パック・エクスチェンジャー e:」
・MPP1個を充電できる専用充電器「パワー・パック・チャージャー e:」。
・ポータブル電源「パワー・エクスポーター e:6000」とその小型版「パワー・ポッド e:」
・三輪のEVスクーター「ジャイロ キャノピー e:」
・電動パワーユニット「eGX」搭載の「レーシングカート」
・「耕うん機」
・「小型船舶向け電動推進機」
etc…

ホンダのラインナップだけでもこれだけ多彩に展示されていた。

他社へも惜しみなく供給、犬猿の仲とも言われたヤマハ発動機にも

次に目を引くのが、ヤマハ発動機と協業して開発されたパーソナル低速モビリティの汎用プラットフォーム・コンセプト「ヤマハ・モーター・プラットフォーム・コンセプト」だ。なんとホンダのブースにヤマハ車の展示である。

そして建機の展示へと続く。3月14日のEVヘッドラインでも紹介したコマツの電動マイクロショベル「PC05E-1」[詳細はこちら]。これには「MPP」と同時に、ホンダの電動パワーユニット「eGX」も採用されている。

このほか「MPP」を活用した各社のさまざまなコラボレーションモデルが展示されていた。

・電動バイブレーションローラーのコンセプトモデル(三笠産業)
・電動ハンドガイドローラーのコンセプトモデル(酒井重工業)
・スプリットライトLED投光機 PL-241SLB(デンヨー)
・秋田版スマート農業モデル創出事業「大玉トマト収穫ロボットコンセプト」(デンソー)
・DX-CELLコンセプト(デンソー)
etc…

あたかもホンダのブースだけで、電動モデルの見本市のようであった。

このMPPにより、建機などが大型の電動工具のようになることで、排ガス・騒音の問題をクリアでき屋内でも使用可能というケースも増えるかもしれない。振動も少ないことから身体への負担も軽減でき働き方改善にもつながる。

電動化により、これまで競合していた企業やホンダとも関わりのなかったであろう企業との間にイノベーションが生まれている。これからもより多くのモデルが、ホンダのMPPを活用して生まれることを願うばかりである。MPPに対する意気込みを非常に強く感じたホンダのブースであった。

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