2023年7月
横浜市内で実施された、トヨタ「アルファード」「ヴェルファイア」の報道陣向け公道試乗会の様子
TEXT:桃田 健史
新型アルファード・ヴェルファイアのBEV化はいつか?横浜公道試乗会でトヨタ開発者らに聞く

トヨタが2023年6月21日、新型高級ミニバンの「アルファード」と「ヴェルファイア」を発売した。「アルファード」としては4代目となる。これに伴い、トヨタは同年7月下旬、横浜市内で報道陣向けに両モデルの公道試乗会を実施し、筆者も参加した。 プラットフォームを刷新 開発コンセプトは、「大切なご家族とのご移動や大事なお客様の送迎などのシーンで、運転する方も、後席にお乗りになる方も、乗る人全てが相手を思いやり感謝し合える空間を実現するため、”快適な移動の幸せ”を極めること」とした。 これを実現するためには、内外装の意匠(デザイン)や、車内で快適に過ごすための各種装備はもちろんのこと、乗り心地やハンドリングのカイゼンで様々な新規開発を行った。 その中で、3代目までと大きく違うのが、車体構造だ。 これまでは、トヨタがMCと呼ぶプラットフォームを段階的に改良してきた。 それを今回から、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・プラットフォーム)のKプラットフォームに刷新した。 ということは後述するように、「アルファード・ヴェルファイアのBEV化は十分に可能」という考え方もできる。

TAG: #アルファード #ヴェルファイア #トヨタ
TEXT:烏山 大輔
BMWジャパン、日本でiX5ハイドロジェンの実証実験を開始。市販燃料電池車の開発に活かす

BMWジャパンは7月25日にBMW Tokyo Bay(東京都江東区)で開催した記者会見において、同日より燃料電池実験車両「BMW iX5ハイドロジェン」の公道走行による実証実験を開始すると発表した。 電気自動車の開発と同じステップを踏む BMWは、2020年代後半に予定しているFCEV(燃料電池車)の発売に向けて、今年の2月からドイツやアメリカでiX5ハイドロジェンの実証実験を行っている。今回、その実験実施国に日本が加わった。 日本に持ち込まれたiX5ハイドロジェンは3台で、日本各地での走行テストだけでなく、官公庁や行政機関、大学などとも連携し、専門家からのフィードバックを得る予定だ。集まったデータはドイツ本社に送り開発に役立てられる。なお、日本での公道テストは2023年末までの予定である。 BMWは、BEV(バッテリー電気自動車)の開発から発売に至る工程でも、「MINI E」と「BMW ActiveE」をパイロット車両として開発に用いて、BMW初の市販BEVである「i3」の発売につなげた。 FCEVでも同じステップを踏む。今回のiX5 ハイドロジェンはパイロット車両で、6年以内にリリースされる予定のFCEVの開発を支える役目を担う。 「iX5ハイドロジェンは、南フランスでのサマーテストを2回、スウェーデン北部でのウィンターテスト3回を含む4年にもわたる量産車と同じテストを実施しました。さらにこの車の開発プロジェクトは次の重要なフェーズである公道でのテストに入ります」と同車のプロジェクト・マネージャーのロバート・ハラス氏は述べた。 401psのRWD、0-100km/h加速は6秒以下 iX5ハイドロジェンを構成するシステムをみていこう。FCEVは、車両から供給する水素と空気中の酸素を燃料電池で化学反応させ、電気を作りだし、その電気でモーターを回転させることでクルマを走らせている。その要の燃料電池システムは125kW(170ps)を連続して出力することができる。燃料電池セルは2013年からFCEVを共同開発しているトヨタから調達したものだ。 「この安定した出力によりアウトバーンでの長距離移動も問題なくこなすことができます」とハラス氏が自慢げに語った。 水素タンクはCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製で、センタートンネルと後席下に2基が設置され、700気圧の気体水素を6kg貯めることができる。もしタンクが空になっても満タンにするのに3分ほどしかかからない。航続距離(WLTP)は504kmだ。 リヤには第5世代の「BMW eDrive テクノロジー」が搭載される。これは電気モーター、トランスミッション、パワー・エレクトロニクスをまとめたものだ。この車両専用に開発したリチウムイオンバッテリーを組み合わせて、最高出力295kW(401ps)のパワートレインを実現した。これにより0-100km/h加速は6秒以下、最高速は約185km/hのパフォーマンスを発揮する。 車両重量の発表はなかったが、同クラスのBEVよりは軽く、PHEV(プラグイン・ハイブリッド車)と同等程度とのこと。 iX5ハイドロジェンはミュンヘンにあるBMWグループ研究革新センター(FIZ)のパイロット・プラントで製造される。

TAG: #BMW #iX5ハイドロジェン #燃料電池車(FCEV)
ロールス・ロイス スペクターのフロントビュー
TEXT:小川フミオ
ロールス・ロイスが提案する電気時代の高級車とは。「スペクター」海外試乗記

ロールス・ロイス初のピュアEV「Spectre(スペクター)」にいよいよ試乗する機会が到来。テストの舞台となったのは米ナパバレーだ。電気で走っても、ロールス・ロイスはロールス・ロイスたりえるのか。グッドウッドが生んだ最新電気自動車の実力に迫る。 創業者が見つめていた電気の可能性 ロールス・ロイス・モーター・カーズが、同社初の量産BEV「Spectre(スペクター)」を発表したのは、2022年10月。 そのとき私も、英グッドウッドにある本社で、世界各地からやってきたジャーナリストたちといっしょに、堂々たる雰囲気のクーペボディを見る機会があった。 なめらかなルーフラインをもつファストバックボディと、巨大なフロントグリルと、それに、もうすこしで派手すぎになるぎりぎりの華やかな内装の仕上げに感心したものだ。 「(ロールス・ロイス創始者のひとりである)ヘンリー・ロイスは、父が電気エンジニアの家庭に育ち、自身、電気で走るキャリッジ(クルマ)の可能性について、つねに言及していました」 発表会の場で、同社のトルステン・ミュラー=エトヴェシュCEOは、そう語った。 EU委員会をはじめとする各国の排ガス規制や、地球環境保全(サステナビリティ)をうんぬんする以前から、ロールス・ロイスは、自社の製品のパワートレインとして電気モーターがふさわしいと考えていたといわんばかりだった。 BMW i7とは「まったく違うクルマ」 はたして、2023年7月に、米西海岸のナパバレーで、ついに実車の試乗がかなった。 サンフランシスコの空港から送迎用のゴーストで2時間かけて走っただけでも、ぜいたくなドライブだが、着いたホテルに並べられていたスペクターの姿はさらに圧倒的だった。 スペクターは、全長5,475mmのボディを3,210mmのホイールベースをもつシャシーに載せている。102kWhのリチウムイオンバッテリーに、2つのモーターを組み合わせた全輪駆動だ。 おなじBMWグループから、さきに発表された「BMW i7」(2022年4月)との関連性は、常にさまざまなメディアから質問されるようだ。 「靴を履くとかジャケットを着るとかいっても、10人いれば10人が違うように装うのと同じで、まったく違うクルマです」 開発のトップを務めるドクター・ミヒア・アヨウビは言うのだった。 もうすこしちゃんと説明すると……と、ドクター・アヨウビは続ける。 「シャシーがまったく違います。i7はモノコックですが、スペクターは、私たちが“アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー”と名づけたアルミニウムの押し出し材を使ったスペースフレームですから」 じゃあ、どっちが優れたクルマかというと……ドクター・アヨウビは、私が質問してもいないことについても言及する。 「たしかにi7は、私の意見では、現在世界中の競合車種のなかでもっともよく出来た、優れたBEVです。じゃ、スペクターはその下かというと、こちらももっとも優れている。ただし2車は別の次元に存在するのです」 せっかくだから、「BMW i7 xDrive60」の概略を比較すると以下のようになる。ボディはそもそも4ドアのセダン。全長5,391mm(スペクターが84mm長い)でホイールベースは3,215mm(同5mm短い)。 パワートレインの出力は、スペクターが最高出力430kW、最大トルク900Nmであるのに対して、i7は400kW、745Nm。静止から時速100kmまでの加速は、i7が4.7秒、対するスペクターは(車重が2890kgあるけれど)4.5秒である。 Vol. 2へ続く ロールス・ロイス スペクター 全長:5,475mm 全幅:2,144mm 全高:1,573mm ホイールベース:3,210mm 車両重量:2,890kg 乗車定員:4名 交流電力量消費率:23.6-22.2kWh/100km(WLTCモード) 一充電走行距離:530km(WLTCモード) 最高出力:430kW(585ps) 最大トルク:900Nm(91.8kgm) バッテリー総電力量:102kWh モーター数:前1基、後1基 駆動方式:AWD 車両本体価格:4800万円

TAG: #クーペ #スペクター #ロールス・ロイス
KGモーターズ・ミニマムモビリティ(photo= ABT werke)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
超小型EVでお手軽MaaS事業⁉︎……KGモーターズが1人乗り自動運転車と新事業を考案[2023.07.26]

車両コストに見合う1人乗り専用のオン・デマンドサービスを提案 車両を使わない時間はオーナーの収入源として活用 【THE 視点】短距離移動に特化した1人乗りの超小型EV「ミニマムモビリティ」の量産販売を計画するKGモーターズは7月24日、「ミニマムなMaaS」のビジョンを公開した。人口減少時代であるこれからの未来には「1人乗りであること」が交通課題の解決につながると予測し、車体の販売だけでなくMaaS事業の展開も目指す。 「ミニマムモビリティ」は、コンパクトな1人乗りのEV。80年代のポラロイドカメラをモチーフにしたレトロさを醸し出すデザインを採用している。 2023年の「東京オートサロン」にてコンセプトモデルを発表し、「大阪オートメッセ」にも出展した。募集した事前モニター登録では、5,800件の申し込みを獲得し、現在は2025年の量産販売に向けて準備中である[関連記事はこちら<click>]。 車両のスペックは、全長2,450×全幅1,090×全高1,500mm。定格出力0.59kW(0.8ps)、最大出力5kW(6.8ps)のモーターを搭載し、航続距離は100km。乗車定員は1名で、販売価格は100万円を切ることが目標だ。 公共交通機関の現状の課題として、ドライバー不足のほか乗客の減少・コストの高騰・財源不足により維持が困難となってきている。解決方法として自動運転が期待されるが、大型車ではコストが見合わず維持が困難。加えて大型車用に経路設計をする必要がある。 対してKGモーターズは、1人乗りの小型車による自動運転にて、パーソナルで自由な移動を解決方法として提案する。車両の維持費や償却コストも、大型車と比較すると低く抑えることができ、エネルギー効率も高く電気代も安い。個々人が、自分のいる地点から行きたい地点へ直接移動できるので、ユーザーにとっての利便性も高い。 将来的には、完全自動運転で1人乗り専用のミニマムモビリティ・ロボタクシーを考えているが、普及のステップとして、自動運転レベル4(※)での「ワンウェイ型シェアリングサービス」を戦略的に行う。 ※レベル4の自動運転:特定条件下における完全自動運転(国土交通省定義) このサービスは、KGモーターズが主体となって行うのではなく、自動運転対応の「ミニマムモビリティ」を購入したオーナーが主体となって運営できるプラットフォームを作り、KG側は手数料収入を得るビジネスモデルだという。一種のフランチャイズ方式と言えるが、これにより各オーナーの指向に合わせて最適化が可能となる。 地方や高齢者向けの次世代の移動手段として自動運転車が期待されている。しかし、多くは小型シャトルバスなどを使用し、走行ルートも必然的にバスが通れるルートとなる。今回KGモーターズが発表した施策は、一人乗りの小型EVでタクシーのように利用できるというもの。ビジネスモデルも異なり、小型EVユーザーが自動運転事業者として手数料収入を得られる仕組みとなっている。EVユーザー自身が使用していない時間などに、MaaSのサービスに充てることで収入を得られ、EVの導入コストも償却可能となる。 「ミニマムモビリティ」は、車両価格100万円切りで販売する計画だというが、原付4輪規格としては、内燃エンジン車に比べて高額と言える。そのコスト差を埋める手段としても考えられた施策だが、車両のレンタルにあたっては、個人間カーシェアリングなどを利用すれば貸し出しが可能と思われる。EVユーザーも利用者もメリットがあるこの施策は、是非とも成功して欲しいものである。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★BMW、FCEVの実験車「iX5ハイドロジェン」を日本で実証実験……2023年末まで公道で実証 ★★日産、軽EVの「サクラ」の受注が5万台超え……2022年6月の発売から約1年で、2022年度のEV全体の販売の約4割を占める ★★自然電力、EVなどをソースとするVPP(仮想発電所)事業を本格稼働……専門子会社「Shizen Connect」を2023年10月に設立、2030年までに100億円の売り上げを目指す ★フィアット、移動型の電源供給サービス「E-Gap」にEVバン「E-スクード」を導入……60台を配備、“電欠の救急車”自体を完全電動に ★トヨタ、電動車を“動くワーキングルーム”化する「トヨタ「#電気が動くとできること」ワーケーションPROJECT」を推進……定額制多拠点居住プラットフォームの「ADDress」と協業し、給電機能をもつトヨタ車ユーザー向けのキャンペーンを実施 ★テラモーターズ、島根県益田市にEV用充電器を大規模設置……益田市役所ほか公共施設に合計100基以上を導入 ★テラモーターズ、タマホームの新築マンションにEV用充電器を導入……「グレンドール五反田」<東京都品川区>に導入、2024年4月下旬に竣工予定 ★レクシヴ、東京都八丈島においてEVのカーシェアリング事業を展開……八丈ビューホテルを基点に7月20日より開始 ★タクシー企業のMKグループ、「社会福祉法人京都ライトハウス」に「日産サクラ」を寄贈……ボーリングのイベント「第15回 MKチャリティカップ」の一環として デイリーEVヘッドライン[2023.07.26]

TAG: #MaaS #THE視点 #国内ビジネス
TEXT:生方 聡
軽の枠からはみだしたeKクロスEVのパフォーマンス [三菱eKクロスEV試乗記]

660ccのガソリンエンジンに代えて、最高出力47kWの交流同期モーターを手に入れたeKクロスEVの走りにはどんな特徴があるだろうか。 パワートレインが変わるだけで、車はここまで高級になる 「eKクロスEV」に搭載される交流同期モーターは、最高出力47kW、最大トルク195Nmの実力を誇る。ガソリンエンジンの「eKクロス T」の660ccターボが47kW、100Nmだから、最高出力こそ同じ数字だが、最大トルクはほぼ倍である。しかも、eKクロスEVのモーターはその最大トルクを0rpmから発揮できるのが強みなのだ。 eKクロスEVには3つの走行モードが用意され、標準的な「NORMAL」に加えて、電費重視の「ECO」と、力強い加速が自慢の「SPORT」を選ぶことができる。このうち、もっとも穏やかなECOを選んでも、発進加速には余裕が感じられ、パワートレインのスムーズさや静かさも手伝って、高級車顔負けの気持ちよさを味わうことができる。 しかも、エンジン車と違って、アクセルペダルを踏む右足の動きに即座に反応するからストレスとは無縁であるし、アクセルペダルを踏み込んで素早い加速をする場面でも室内にエンジンノイズが響きわたらないEVは、常に心地よくドライブできるのがうれしいところだ。60km/hを超えたあたりから多少加速が鈍るものの、高速道路の合流などでもたつくことはなかった。 走行モードをNORMALやSPORTに切り替えると加速はさらに力強くなるが、ふだん運転するうえではECOだけで十分だった。

TAG: #eKクロスEV #三菱
TEXT:生方 聡
ダイナミックシールドが三菱を救う!? [三菱eKクロスEV試乗記]

共同開発の「日産サクラ」とは大きく異なるデザインを採用する「三菱eKクロスEV」。なかでも「ダイナミックシールド」を採用するフロントマスクが、三菱らしさを強烈にアピールする。 ダイナミックシールドが三菱車ファンのハートを鷲づかみ 「サクラ」と「eKクロスEV」は、日産と三菱が共同で開発したハイトワゴンタイプの軽EVだが、見た目の印象は大きく異なっている。とくにフロントマスクは対照的で、サクラが上品で落ち着いた印象にまとめられているのに対し、eKクロスEVは力強さを前面に出したデザインに仕上げられている。これは、三菱が「ダイナミックシールド」と呼ぶデザインコンセプトで、ランプ類を上下に分けるデザインにより力強さと安心感を表現。三菱の人気モデルである「デリカD:5」や「アウトランダー」を彷彿とさせるだけに、三菱車好きにはたまらないはずだ。 eKクロスEVのデザインは、ガソリン車の「eKクロス」を受け継ぐが、よく見るとラジエターグリルの部分がほぼ塞がれており、また、フロントフェンダーに「EV」と書かれたバッジが備わるのがガソリン車と見分けるポイントだ。eKクロスの給油口がボディ左側(助手席側)のリアフェンダーに設けられているのに対して、eKクロスEVの充電口が普通、急速ともにボディ右側(運転席側)にあるのも異なるところ。急速充電器に横付けする状況では、ボディの左側に充電器がくることが多く、充電口もボディ左側にあるほうが便利だと思うのだが……。 ちなみに、eKクロスEVでは200V/2.9kWの普通充電と最高20kWの急速充電に対応。さらに、バッテリーに蓄えた電気を取り出して自宅に給電する「V2H」や、家電などに給電する「V2L」に対応しており(いずれも専用の機器が必要)、停電などの際に非常用電源として使えるのは頼もしいかぎりだ。

TAG: #eKクロスEV #三菱
「大阪・関西万博」にて岩谷産業が運行するFC船(photo=岩谷産業)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
水素燃料電池は船舶をも動かす……岩谷産業が「大阪・関西万博」で日本初のFC船を運行へ[2023.07.25]

中之島ゲートから大阪・関西万博の会場となる夢洲をつなぐ航路に日本初就航 におい・騒音・振動などがない快適な旅客船が誕生へ 【THE 視点】岩谷産業は7月20日、2025年に開催される「大阪・関西万博」にて、水素燃料電池船(FC船)を運行すると発表した。中之島ゲートから大阪・関西万博の会場となる夢洲をつなぐ航路にて、国内初となるFC船による旅客運航を行う。運航は京阪グループの大阪水上バスに委託する方向で進めているという。 今回のFC船は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として採択されている。 船の概要は、全長30m×全幅8m。定員は150名で船速 は10ノット(およそ20km/h)。運行時にCO2や環境負荷物質を排出しない高い環境性能を有するだけでなく、におい・騒音・振動のない快適性も備えている。 デザインは、カーデザイナーの山本 卓身氏が手掛けた。「水素の先進性を訴求すべく、未来を感じられる斬新なデザイン」を意識したようだ。本船は海上の「動くパビリオン」と位置付け、「大阪・関西万博」会場までの移動を特別な体験に変えることで水素エネルギーの魅力を世界に発信することを目指すという。ちなみに山本氏は、プジョー・シトロエンの市販車やコンセプトカーなどのデザインを担当している。 岩谷産業は、1941年に水素の取り扱いを開始して以来、製造から輸送・貯蔵・供給・保安まで一貫した全国ネットワークを築いている。FCEVに乗る筆者としては非常に身近な企業で、先の週末も2回ほど岩谷産業の水素ステーションを利用した。 岩谷は、水素事業におよそ1,800億円を投資すると発表している。今回のFC船は無関係ではないだろう。 昨今は、港湾や船舶の脱炭素化も求められるようになっている。商用FCEVと同様に、FC船は水素充填時間がバッテリー式よりも少なくて済むと思われる。その分、港に長時間停泊する必要や停泊場所の限定がないため、港湾内の交通整理も楽になるだろう。旅客だけではなく、タンカーなどへの応用も期待したい。 今回の発表は岩谷の水素事業への意気込みを強く感じ取れた。筆者もFC船に乗ってみたいと思う。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★KGモーターズ、超小型EV「ミニマムモビリティ」をMaaSに活用……1人乗りの自動運転EV事業を検討 ※MaaS:地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス(政府広報より) ★★ステランティス、サムスンと合弁でアメリカに2ヵ所目のバッテリー工場を建設へ……2027年初頭に生産開始を計画、34GWh/年の初期生産能力 ★★スカイドライブ、ベトナムの無人航空機事業のCTグループと「空飛ぶクルマ」導入に関する覚書を締結……最大100機の大規模プレオーダー ★新電元工業、最高出力150kWのEV用急速充電器「SDQC2F150シリーズ」が充電器の国際通信規格「OCPP」に対応……事業者が独自に料金や決済方法を設定可能になる規格、「eモビリティ・パワー」が対応済み ★スカイドライブ、大阪における空飛ぶクルマの航路実現性を調査……「大阪・関西万博」での実装を見据え、離着陸ポートや航路を検証 ★つちうらMaaS、JR常磐線神立駅<茨城県土浦市>にてグリーンスローモビリティの実証実験を開始……神立駅西口地区循環として導入(乗車無料)、2023年7月18日〜2024年2月29日まで ★テラモーターズ、道の駅「伊勢本街道御杖」<奈良県御杖村>にEV用充電器を導入……50kWタイプの急速充電器を導入予定 ★自然電力、エネルギー管理システム「シゼン・コネクト」が東京ガスのEV導入支援サービスに採用……再エネ発電や蓄電池・EVなどのエネルギーリソースを集合的に制御可能なシステム デイリーEVヘッドライン[2023.07.25]

TAG: #THE視点 #その他モビリティ #燃料電池(FC)
TEXT:生方 聡
軽EVの時代がやって来た! [三菱eKクロスEV試乗記]

いま日本のEV市場をリードしているモデルといえば、軽自動車EVの「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」だ。このなかから、今回は軽EVのパイオニアが手がけたeKクロスEVにスポットを当て、その実力に迫ることにする。 軽EVが過半数を占める 2022年夏の発売以来、日本のEV市場でシェアを急伸させているのが、日産と三菱が共同で開発した軽EVの「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」だ。発売直後は供給が需要に追いつかない状況となり、一時、受注が停止する時期もあったほど。また、2022-2023「日本カー・オブ・ザ・イヤー」など、主なアワードをこの2台が総嘗めにするなど、2022年を代表するモデルとなったのは記憶に新しい。 話題性だけではなく、実際の販売台数でも、その勢いを確認することができる。下の表のとおり、2023年1月から6月の登録台数は、普通乗用車と小型乗用車、軽四輪乗用車タイプのEVの合計が45,663台であるのに対して、サクラとeKクロスEVは半数を超える24,629台を記録(自販連および全軽自協発表の統計データをもとに集計)。つまり、新車で販売されるEVの2台に1台が軽EVのサクラ、または、eKクロスEVという計算になる。 1月 2月 3月 4月 5月 6月 計 シェア 乗用車EV 3,415 1,771 5,149 3,309 3,280 4,110 21,034 乗用車+軽四乗用車EV 8,492 6,954 9,581 6,212 6,516 7,908 45,663 SAKURA 4,213 4,109 2,888 2,370 2,773 3,236 19,589 43% eKクロスEV 864 1,074 1,544 533 463 562 5,040 11% SAKURA+eKクロスEV 5,077 5,183 4,432 2,903 3,236 3,798 26,629 54% […]

TAG: #eKクロスEV #三菱
ヘッドマッサージのイメージ(photo=ゴールデンフィオールド)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
EVと人を“同時充電”……日産が「悟空のきもち」とコラボ、EVオーナー専用スパを高速SAに開設[2023.07.24]

EVの充電20分間でドライバーも回復させる専用マッサージコースを開発 充電を“待つ”時間から“活用”するサービスの契機となる予感 【THE 視点】頭のもみほぐしサービス「悟空のきもち」を運営するゴールデンフィールドは7月20日、東名高速足柄サービスエリアにおいて、EVオーナー向けのマッサージサロンを期間限定でオープンすると発表した。本取り組みは、日産自動車発のEVオーナー優遇サービス「グリーン・パス」にの一環として実現した。 EVを充電する間、ドライバーも同時に回復させるEVオーナー専用スパ「FULL-CHARGE SALON(フルチャージ・サロン)」を、東名足柄サービスエリア上り<静岡県御殿場市>にて2023年7月21日(金)より、新名神宝塚北SA上下集約<兵庫県宝塚市>にて8月24日(木)より期間限定でオープンする。利用対象者はEV充電の全利用者となる。 サロンの運営は「悟空のきもち」が担当する。日産・新潟大学と共同でEVの運転疲労と回復について試行錯誤・実証実験を経て、運転疲労に特化した「ドライバー専用リラクゼーション」を作り上げた。EVの充電時間を20分と設定し、マッサージもそれに合わせたコースとなるようだ。 ほぼ全ての人を10分で眠らせるという「悟空のきもち」の得意分野を活かし、施術後の眠気を残さない専用技法を開発したという。新潟大学との実証実験では、短い施術時間でも疲労の緩和と減少が見られたとのこと。 ちなみにサロンの施設には、環境に配慮するため廃棄物由来の素材を混合した再生素材「SOLID」を使用しているという。再生素材の活用は、EVにおいても世界的に導入の流れがある。 施設には、同乗者も利用可能な休憩ラウンジも用意。レストランガイドブック「ゴ・エ・ミヨ 2022」でベストパティシエ賞を受賞した加藤 峰子氏監修のもと、廃棄果物やオーガニック素材を有効活用した“身体をチャージする”スペシャルドリンクも提供するという。 EVの急速充電時間は平均的に30分。その間、EVもドライバーも同時に“充電”するという発想は素晴らしい着眼点だ。しかも「悟空のきもち」は国内の5店舗全てが向こう3ヵ月待ちの予約という状況で、キャンセル待ちが71万人もいるという超人気サービスである。今回の施策もかなりの人気が出るのではないだろうか。 人気サービスを利用できるという面白さもあるが、マッサージを受けることにより事故を未然に防ぐことにもつながるだろう。今後徐々に増えてくるだろう大型のEV用充電施設にも設置して良いと思う。 こういったサービスが増えれば、EVの充電時間がただ“待つ”時間から“活用”する時間へと変化する。新たなビジネスが生まれる予感がする。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ステランティス、充電制御機器とインバーターを統合した新型バッテリー「IBIS」のプロトタイプを発表……車体スペースをさらに効率化、10年以内に実用化へ ★★トヨタ、月面探査機「ルナクルーザー」に再生型の燃料電池を採用……2029年の打ち上げに向けて2024年中から開発 ★★自動車用のノイズキャンセリング技術が日本で体感可能に……イスラエルのSilentiumが名古屋オフィス<JPタワー21階/中村区>に体感シートを用意、EV化で目立つようになったロードノイズを除去 ★BMW、中国上海にR&Dセンターを開設……次世代のEV「ノイエ・クラッセ」開発の重要拠点に ★ZMP、自動運転EVバス「RoboCar Mini EV Bus」の最新型の受注を開始……独自の自動運転OS「アイザック」を搭載、OSのOEM供給も開始[詳細はこちら<click>] ★岩谷産業、「大阪・関西万博」にて世界初のFC船を運行へ……中之島ゲートから万博会場の夢洲のルートに就航、カーデザイナーの山本 卓身氏がデザインを担当 ★ニデック(旧日本電産)、2024年4月〜6月期の売上高が601億5,200万円……四半期ベースで過去最高、「イー・アクスル」事業も黒字化 ★東京都、江東区新砂地区の水素ステーションの運営業者を公募……FCEVバス・トラックに対応した大型のステーション、7月20日〜8月18日まで ★三菱重工、「船舶向けゼロエミチャージャー普及推進協議会」を設立……EV船舶用充電インフラの規格化を目指す ★空飛ぶクルマのASKA、米国連邦航空局(FAA)に型式証明申請……陸上走行も可能な「A5」を申請、レンジエクステンダー方式のEV ★テスラ、橋本スーパーチャージャー<神奈川県相模原市>にて特別試乗会を実施……7月29日(土)開催、「モデル 3」「モデル Y」を用意 ★岩谷産業、「液化水素貯槽の大型化に関する研究開発」がNEDOの助成対象に……トーヨーカネツとの共同研究事業、2030年ごろに本格稼働する水素発電事業に液化水素の貯蔵が有用 デイリーEVヘッドライン[2023.07.24]

TAG: #THE視点 #充電インフラ #国内ビジネス
無人フォークリフトの最新モデル
TEXT:桃田 健史
無人フォークリフト、ZMP「CarriRO Fork」最新モデル発表。台車ロボット「Carrio」シリーズの導入実績は約300社、決めては統括管理システム「Robo-HI」

FA(ファクトリーオートメーション)や物流の分野で自動運転搬送ロボットの導入が進んでいる。そうした中で、無人フォークリフトが導入も始まった。ZMPはより高性能な製品を発表。強みはCarriROシリーズでの知見と統括管理システム「Robo-HI(ロボハイ)」だ。 「CarriRO Fork」に新機能搭載 自動運転技術の開発を手がけるZMP(本社:東京都文京区)が、無人フォークリフト「CarriRO Fork」の最新型を発表し、受注を開始した。 基本的なハードウエアとしては、2021年に市場導入された「CarriRO  Fork」を継承する。 ドイツのリンデ社のフォークリフトに、ZMPが自社開発した自動運転OS(オペレーティング・システム)の「IZAC」を搭載している。 モデルは、リーチタイプとウォーキータイプの2つ。 前者は、車体重量2.98トン、可搬重量は最大1.4トン、そして最大揚高さは5.9m。 後者は、同1.76トン、同0.65トン、同2.95mとした。 ともに電動車であり、満充電までの時間は8時間、また稼働時間も8時間とした。 自動運転の方式は、レーザー誘導型を採用する。 これは、自車に搭載する3D-LIDARから照射するレーザーを施設内に設置した反射ポールが反射することで、自車位置を測定する仕組みだ。ZMPが開発した専用アプリによって、タスク指示の作成や変更が簡単にできるのが特徴である。

TAG: #CarriRO Fork #ZMP

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2025年はBYD Auto Japanの設立3周年記念! お買い得な限定車「ATTO 3 Black Style」を 全国50台限定で発売
EVミニバンは誰が買うのか? VWが明かした意外な「ID.Buzz」の購入者像
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コラム
急速充電は人間の「早食い競争」のようなもの! 急速充電の多用が電池の劣化を早めるワケ
スバルに求めてるのはコレよ! 新型EV「トレイルシーカー」の日本導入を切望!!
いまサクラもeKクロスEVも売れている! かつて三菱が挑戦したi-MiEVはもっと評価されてもいいクルマだった
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インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
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試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
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イベント
公道レース「フォーミュラE東京」が帰って来る! チケットを持っていなくとも無料で1日遊び尽くせる2日間
災害に備えて未来を楽しむ! 「AWAJI EV MEET 2025」の参加はまだまだ受付中
災害時にも活躍できるEVの可能性を淡路島で体験! 「AWAJI EV MEET 2025 from OUTDOOR FEELS」開催決定
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