試乗
share:

ロールス・ロイスが提案する電気時代の高級車とは。「スペクター」海外試乗記


TEXT:小川フミオ PHOTO:Rolls Royce Motor Cars
TAG:
ロールス・ロイス スペクターのフロントビュー

ロールス・ロイス初のピュアEV「Spectre(スペクター)」にいよいよ試乗する機会が到来。テストの舞台となったのは米ナパバレーだ。電気で走っても、ロールス・ロイスはロールス・ロイスたりえるのか。グッドウッドが生んだ最新電気自動車の実力に迫る。

ロールス・ロイス スペクターのキャビン

創業者が見つめていた電気の可能性

ロールス・ロイス・モーター・カーズが、同社初の量産BEV「Spectre(スペクター)」を発表したのは、2022年10月。

そのとき私も、英グッドウッドにある本社で、世界各地からやってきたジャーナリストたちといっしょに、堂々たる雰囲気のクーペボディを見る機会があった。

なめらかなルーフラインをもつファストバックボディと、巨大なフロントグリルと、それに、もうすこしで派手すぎになるぎりぎりの華やかな内装の仕上げに感心したものだ。

「(ロールス・ロイス創始者のひとりである)ヘンリー・ロイスは、父が電気エンジニアの家庭に育ち、自身、電気で走るキャリッジ(クルマ)の可能性について、つねに言及していました」

発表会の場で、同社のトルステン・ミュラー=エトヴェシュCEOは、そう語った。

EU委員会をはじめとする各国の排ガス規制や、地球環境保全(サステナビリティ)をうんぬんする以前から、ロールス・ロイスは、自社の製品のパワートレインとして電気モーターがふさわしいと考えていたといわんばかりだった。

ロールス・ロイス スペクターのフェイシア

BMW i7とは「まったく違うクルマ」

はたして、2023年7月に、米西海岸のナパバレーで、ついに実車の試乗がかなった。

サンフランシスコの空港から送迎用のゴーストで2時間かけて走っただけでも、ぜいたくなドライブだが、着いたホテルに並べられていたスペクターの姿はさらに圧倒的だった。

スペクターは、全長5,475mmのボディを3,210mmのホイールベースをもつシャシーに載せている。102kWhのリチウムイオンバッテリーに、2つのモーターを組み合わせた全輪駆動だ。

おなじBMWグループから、さきに発表された「BMW i7」(2022年4月)との関連性は、常にさまざまなメディアから質問されるようだ。

「靴を履くとかジャケットを着るとかいっても、10人いれば10人が違うように装うのと同じで、まったく違うクルマです」 開発のトップを務めるドクター・ミヒア・アヨウビは言うのだった。

もうすこしちゃんと説明すると……と、ドクター・アヨウビは続ける。

「シャシーがまったく違います。i7はモノコックですが、スペクターは、私たちが“アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー”と名づけたアルミニウムの押し出し材を使ったスペースフレームですから」

ロールス・ロイス スペクターのリヤビュー

じゃあ、どっちが優れたクルマかというと……ドクター・アヨウビは、私が質問してもいないことについても言及する。

「たしかにi7は、私の意見では、現在世界中の競合車種のなかでもっともよく出来た、優れたBEVです。じゃ、スペクターはその下かというと、こちらももっとも優れている。ただし2車は別の次元に存在するのです」

せっかくだから、「BMW i7 xDrive60」の概略を比較すると以下のようになる。ボディはそもそも4ドアのセダン。全長5,391mm(スペクターが84mm長い)でホイールベースは3,215mm(同5mm短い)。

パワートレインの出力は、スペクターが最高出力430kW、最大トルク900Nmであるのに対して、i7は400kW、745Nm。静止から時速100kmまでの加速は、i7が4.7秒、対するスペクターは(車重が2890kgあるけれど)4.5秒である。

Vol. 2へ続く

ロールス・ロイス スペクター

全長:5,475mm
全幅:2,144mm
全高:1,573mm
ホイールベース:3,210mm
車両重量:2,890kg
乗車定員:4名
交流電力量消費率:23.6-22.2kWh/100km(WLTCモード)
一充電走行距離:530km(WLTCモード)
最高出力:430kW(585ps)
最大トルク:900Nm(91.8kgm)
バッテリー総電力量:102kWh
モーター数:前1基、後1基
駆動方式:AWD
車両本体価格:4800万円

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
中国から地球上最強コスパの新星EV現る! IMモーターL6の驚くべきスペックとは
BYDの売り上げ鈍化に注目しても意味なし! むしろ心配すべきはテスラか? BYDは利益率も投資額も驚くべき水準だった
いすゞがピックアップトラック「D-MAX」にBEVを用意! バンコク国際モーターショーでワールドプレミア予定
more
ニュース
ホンダの電動ロボット芝刈機/草刈機「ミーモ」シリーズが大幅改良! 国内で年間500台のセールスを目指す
ホンダCR-Vが帰ってきた! 新型燃料電池車「CR-V e:FCEV」が登場
「ノート オーラ NISMO」がマイナーチェンジ! 初の4WDモデル「NISMO tuned e-POWER 4WD」が登場
more
コラム
電動化の失速どころかEV&PHEVがバカ売れ! テスラもドイツ御三家も押し出す中国メーカーの勢い
日本での走行テストを確認! 中国BYDの新たな刺客「Sea Lion 07」の驚異の性能
日本のEVシフトは2024年に入り低迷気味! 軽のサクラ&eKを除けば海外勢の健闘が目立つ
more
インタビュー
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
災害に強いクルマは「PHEV+SUV+4WD」! 特務機関NERVがアウトランダーPHEVを選ぶ当然の理由
more
試乗
EV専業の「テスラ」とEVに力を入れる従来の自動車メーカー「ヒョンデ」! モデルYとコナを乗り比べるとまったく違う「乗りもの」だった
誰もが感じる「ポルシェに乗っている」という感覚! ポルシェはBEVでもやっぱりスポーツカーだった
佐川急便とASFが共同開発した軽商用EV「ASF2.0」に乗った! 走りは要改善も将来性を感じる中身
more
イベント
中国市場のニーズに合わせて開発! 日産が北京モーターショー2024で新エネルギー車のコンセプトカーを出展
レース前に特別に潜入! フォーミュラEに参戦する日産チームのテント内は驚きと発見が詰まっていた
日産がフォーミュラE「Tokyo E-Prix」開催前スペシャルイベントを開催! 六本木ヒルズアリーナに1夜限りのサーキットが出現
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択